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【2023年版】 労働者派遣法とは?詳しい内容や歴史、違反例を分かりやすく解説

公開日:2023.01.20

法律

企業は労働者派遣法(通称派遣法)を遵守して派遣労働者を受け入れなければならず、違反した場合は厳しい行政処分が科せられるおそれがあります。

この記事では労働者派遣法の基本的な内容や改正の歴史、派遣サービスを活用する際の注意点、よくある違反の事例や罰則、労働者派遣法関連の相談窓口など、労働者派遣法に関する基礎的かつ網羅的な情報をご紹介します。特にはじめて派遣サービスの活用を検討されている方にお読みいただきたい内容となっています。

労働者派遣法とは派遣労働者を守るための法律

労働者派遣法の正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」です。その名の通り、人材派遣会社などが行う労働者派遣事業が適切に運営されることと、派遣労働者の権利を保護することを目的に制定されました。

労働者派遣法制定の背景

労働者派遣法が制定されたのは1986年です。労働基準法第6条では第三者が労働者と企業との間に介入して中間搾取することが禁じられており、労働者派遣もそれに該当しているとみなされていました。

しかしながら、労働者派遣法が制定される前から、労働者派遣事業に近い事業を行っていた会社が存在し、適切に労働者派遣事業がなされるよう、労働者派遣法が制定されました。

派遣形態

ここからは労働者派遣の仕組みについて見ていきます。派遣サービスを活用したい企業は人材派遣会社と労働者派遣契約を締結します。人材派遣会社は雇用している派遣労働者を企業に派遣します。派遣された派遣労働者は企業の指揮命令下で仕事をします。これが労働者派遣の基本的な仕組みです。

労働者派遣には「有期雇用派遣」「無期雇用派遣」「紹介予定派遣」という3種類の形態があり、それぞれ仕組みが異なります。

有期雇用派遣

有期雇用派遣とは人材派遣会社が労働者派遣契約を締結している企業に一定期間派遣労働者を派遣する方式です。一般的な労働者派遣はこの形態で行われています。

有期雇用派遣とは

無期雇用派遣

無期雇用派遣も基本的な仕組みは有期雇用派遣と同様ですが、人材派遣会社が無期雇用契約を締結している労働者を企業に派遣するのが大きな違いです。企業は期間の定めなく派遣労働者を受け入れることができます。

無期雇用派遣とは

紹介予定派遣

紹介予定派遣は企業が派遣労働者を直接雇用することを前提に受け入れる派遣形態です。派遣期間が終了し、企業と派遣労働者の合意があった場合は、直接雇用契約を締結します。

紹介予定派遣とは

労働者派遣の期間制限

労働者派遣法第40条2では一定の期間を超えて派遣労働者を受け入れてはならないと定められていて、同一の事業所において派遣労働者を受け入れられるのは原則として3年までです。3年を超えて派遣サービスを活用したい場合は「抵触日(派遣受入期間の制限に抵触する最初の日)」の1ヶ月前までに企業の過半数労働組合や労働者の過半数を代表する人などに意見聴取する必要があります。同一の派遣労働者を企業の同一組織単位(部署)に対して派遣できる期間も3年が上限です。

抵触日の詳細は、こちらをご覧ください。

人材派遣会社と無期雇用契約を締結している派遣労働者や60歳以上の派遣労働者といった例外はありますが、基本的に受け入れた派遣労働者が就業できる期間は3年までということを念頭に置く必要があります。

労働者派遣法改正の歴史

概要
1986年 労働者派遣法制定
13職種(後に3職種追加)に限定
1996年 対象職種を拡大
16職種から26職種へ
1999年 対象業務のネガティブリスト化
原則として一部の職種以外が対象に
2000年 紹介予定派遣を解禁
直接雇用化を促進する目的とする
2004年 製造業務への派遣解禁と派遣期間の延長
派遣期間の上限が3年に(製造業務を除く)
2007年 製造業務への派遣期間が最長3年に
2012年 規制の強化
日雇い派遣の原則禁止、グループ企業内派遣の規制など
2015年 業務による期間制限を撤廃
事業所単位と個人単位の期間制限上限3年へ
雇用安定措置、キャリア形成支援の義務化
2020年 同一労働同一賃金の適用
同種の業務に従事する場合、派遣労働者にも正規雇用者と同等の待遇が求められる
2021年 派遣労働者への待遇などの説明義務が強化

労働者派遣法は1986年に制定されましたが、社会情勢の変化によって現在まで何度も改正されてきました。ここからは労働者派遣法の歴史について見ていきます。

1986年 労働者派遣法制定

1986年の労働者派遣法施行当初、労働者派遣の対象は「業務は一部の特筆すべき技能を必要とする業務」である13の職種(ソフトウェア開発、取引文書作成、調査、受付・案内・駐車場管理、建築物清掃、秘書、事務用機器操作、デモンストレーション、財務処理、ファイリング、建築設備運転・点検・整備、添乗、通訳・翻訳・速記)に限られていました。

同年10月には3職種(機械設計、放送番組などの演出、放送機器などの操作)が追加され、16職種となりました。

1996年 対象職種を拡大

バブルが崩壊した後の1990年代は不況が続きました。必要なときに雇える人材派遣に対するニーズの高まりから、対象職種に貿易や広告デザイン、インテリアコーディネーター、アナウンサーなど10職種が追加され、合計26職種に拡大されました。

1999年 対象業務のネガティブリスト化

1999年の改正時には大幅な規制緩和がなされ、原則としてどのような職種においても労働者派遣ができるようになりました。

これまでは職種を限定していた「ポジティブリスト方式」でルールを定めていましたが、1999年からは労働者派遣を禁止する職種を定める「ネガティブリスト方式」に切り替わりました。労働者派遣が禁止された職種としては士業(弁護士、公認会計士、税理士など)、医療業務、港湾運送業務、建設業務、警備業務などが挙げられます。また、物の製造業務についても当面の間禁止とされました。

2000年 紹介予定派遣を解禁

翌年の2000年には派遣労働者の直接雇用化を促進するため、紹介予定派遣が解禁となりました。

2004年 製造業務への派遣解禁と派遣期間の延長

2004年には1999年の改正時に当面禁止とされていた製造業務への労働者派遣が解禁となりました。また、派遣期間の上限が1年から3年に延長されました。なお、製造業務については従来どおり1年が上限となっています。

2007年 製造業務への派遣期間が最長3年に

2007年には製造業務の労働者派遣期間の上限についても1年から3年に延長されました。

2012年 規制の強化

規制緩和がなされてきた労働者派遣ですが、日雇派遣や派遣切りなどの問題が顕在化し、2012年には日雇派遣の原則禁止やグループ企業内派遣の規制、人材派遣会社のマージン率公表の義務化、離職1年以内の派遣の禁止など、派遣労働者の権利を守るための規制が強化されました。

2015年 労働者派遣の期間制限を制定

2015年の改正時には労働者派遣の業務による期間制限が設けられました。事業所単位と個人単位の期間制限の上限は3年です。他にもすべての労働者派遣事業を許可制にすること、キャリア形成支援制度の実施の義務化、派遣元による雇用安定措置などが盛り込まれました。

2020年 同一労働同一賃金

派遣労働者と正規雇用労働者の待遇の格差の解消を目指し、派遣労働者にも、同種の業務に従事する正規雇用労働者と同等の待遇が求められる「同一労働同一賃金」がルールとして盛り込まれました。

2021年 派遣労働者への説明義務が強化

2021年には派遣労働者に賃金の見込額や待遇などの説明義務の強化、派遣労働者からの苦情処理義務が強化されました。また、労働者派遣契約書のデジタル記録も解禁となっています。

労働者派遣の8つの注意点

派遣労働者を受け入れる際には以下のような点に注意する必要があります。

日雇派遣の原則禁止

日雇派遣とは1日ごともしくは30日以内の期間を定めて就業することを指します。例外はあるものの、基本的に「今日だけ」「1週間だけ」という日雇派遣は禁止です。派遣労働者を受け入れるのであれば、31日以上は受け入れなければなりません。

二重派遣の禁止

二重派遣とは人材派遣会社から派遣された派遣労働者を他の企業に派遣し、その企業の指揮命令で就業させることです。

例えば人材派遣会社であるA社がB社に労働者を派遣し、B社の指揮命令下で就業するのは問題ありません。A社から派遣された派遣労働者をB社がC社に派遣して、C社の指揮命令で就業することを二重派遣といい、違法となります。

同一労働同一賃金

現在の派遣法では同一労働同一賃金が原則となっています。派遣労働者にも、同種の業務に従事する正規雇用労働者と同等の待遇が求められます。

派遣契約期間の制限

派遣労働者を受け入れる際には労働者派遣の期間制限を厳守しなければなりません。派遣労働者に3年を超えて就業させるのは違法となります。3年を超えて就業してもらいたい場合は、過半数労働組合などへの意見聴取を行うか、直接雇用に切り替える必要があります。

派遣受け入れ時に派遣労働者を特定する行為の禁止

企業が派遣労働者を特定して受け入れる行為も禁止されています。例えば事前に履歴書の提出を求めたり、面接を行うといった行為が該当します。

労働基準法、労働安全衛生法などの適用

派遣労働者であっても労働基準法や労働安全衛生法などを遵守しなければなりません。これらの法律に従って業務に従事させていれば何ら問題はありませんが、労働者派遣法上、派遣労働者の労働時間の管理責任は派遣先に課されており、派遣元(人材派遣会社)が定めた36協定の上限時間を超える時間外労働をさせた場合には、派遣先が労働基準法違反として罰則の対象となります。

派遣契約解除時の留意点

人材派遣会社は、派遣労働者の雇用を守る必要があります。企業から労働者派遣契約が解除された場合、派遣労働者の新たな就業機会を確保する必要があります。例えば人材派遣会社が別の派遣先を探す、企業と連携して派遣先の関連会社などで受け入れるといった措置を取っていれば問題ありません。企業はなるべく派遣労働者が就業し続けられるよう、人材派遣会社に協力する必要があります。

離職後1年以内の派遣労働者の受入禁止

企業を離職して1年以内の労働者を同一の企業が派遣労働者として受け入れることはできません。例えば、企業を退職して半年後に同一企業で派遣労働者として受け入れることはできません。例外として「60歳以上の定年退職者」は1年以内に派遣労働者として受け入れ可能です。

労働者派遣法に違反した場合は行政処分が下される場合がある

派遣先が労働者派遣法に違反した場合、以下のような行政処分が科せられる可能性があります。

企業名の公表

派遣労働者を派遣禁止業務に従事させている場合や、労働者派遣事業許可をもっていない者から労働者派遣サービスを受けている者は、違法行為を是正するよう勧告され、勧告に従わない場合は、企業名が公表されることがあります。

罰則の対象となる

派遣先管理台帳の整備、派遣先責任者の選任が適切に行われていない場合は、罰則の対象となり、30万円以下の罰金が科されます(労働者派遣法61条3号)。

労働者派遣の違反例

労働者派遣法違反で人材派遣会社や企業が処分を下されることがあります。特に注意が必要な二重派遣と受入期間の超過という2つの事例についてご紹介します。

二重派遣が生じたケース

二重派遣とは企業がさらに別の派遣先に派遣労働者を派遣するという行為を指します。二重派遣となると中間マージンが多く発生して派遣労働者に適正な賃金が支払われない、労働条件や業務内容が当初の契約と異なるものになってしまう、労災が発生した際の責任の所在が曖昧になるなど、さまざまな問題が生じるリスクがあります。

受入期間の上限を超えて役務の提供を受けているケース

派遣労働者の受入期間の上限は3年です。3年を超えて、当該労働者に長期で就業し続けてもらうためには、直接雇用に転換するなどの措置が必要となります。

労働者派遣法を正しく理解する

1986年に労働者派遣事業の適正な運営を整備する法律として制定された労働者派遣法は、時代の流れと共に細かく変化を遂げてきました。この法律があるからこそ、派遣労働者は安心して就業することができ、企業は必要な人材を確保できるのです。これから派遣サービスを活用する場合は、労働者派遣法について理解を深め、さまざまなリスクをふまえておきましょう。

パーソルテンプスタッフでは派遣労働者の権利を守りながら、企業と派遣労働者双方が安心していただけるよう、きめ細かいフォローをさせていただきます。派遣サービスの活用を検討される際にはぜひご相談ください。

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