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派遣の3年ルールとは?概要や例外となるパターンなどを解説
公開日:2025.05.28
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企業が人材派遣を活用する際は、派遣の3年ルールと呼ばれる制限に注意が必要です。派遣の3年ルールとは、派遣社員を受け入れられる期間の制限を指します。
この記事では、派遣の3年ルールの概要やルールが適用されない例外的なパターン、3年を超えて派遣社員が就業を続けられる方法などについて解説します。人材派遣の活用をご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
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派遣の「3年ルール」とは派遣社員を受け入れられる期間の制限のこと
人材派遣の3年ルールとは、派遣社員を受け入れることができる期間の制限を指します。
派遣の期間制限とは
派遣期間制限とは、労働者派遣法で定められた派遣社員を受け入れることができる期間の制限です。派遣社員が企業に直接雇用されている社員の代替とされることや、派遣就業を望まない派遣社員が派遣就業に固定化することを防止するために設けられました。
派遣の期間制限には2種類ある
期間制限には「事業所単位」と「個人単位」があります。
事業所単位の場合、同一の事業所において派遣社員を受け入れることができるのは原則3年までと定められています。この期間制限が、一般的に派遣の3年ルールと呼ばれているものです。
3年を超えて派遣社員を受け入れようとする場合は、事前に派遣先企業の過半数労働組合などに意見聴取を行う必要があります。事業所単位は、厚生労働省の「平成27年労働者派遣法改正法の概要」に、以下のように定義されています。
- 工場、事務所、店舗等、場所的に独立していること
- 経営の単位として人事・経理・指導監督・はたらき方などがある程度独立していること
- 施設として一定期間継続するものであること
事業所単位の考え方は、基本的に雇用保険の適用事業所単位と同じです。規模が小さい出張所や支店などで、本社や上部の組織に人事・経理・経営などの機能がある場合は、本社や上部の組織に包括して一つの事業所として取り扱われます。本社管轄で運営されている出張所や支店などがこれにあたります。
- 派遣先企業の事業所単位の期間制限

一方、個人単位の期間制限では、同一の派遣社員を派遣先企業の同じ組織単位で受け入れることができる期間は3年までと定められています。個人単位の期間制限には延長の概念はありません。派遣社員の従事する業務が変わったとしても、同一の派遣社員を3年を超えて同一の組織単位で受け入れることはできません。
組織単位とは、厚生労働省の「平成27年労働者派遣法改正の概要」にて以下のように定義されています。
- 業務としての類似性や関連性がある組織
- 組織の長が業務配分や労務管理上の指揮監督権限を有するもの
また、「課」など、派遣先企業の組織の最小単位(係・班・グループ・チームなど)よりも一般的に大きな単位が想定されますが、小規模事業所においては組織単位と組織の最小単位が一致する場合もあります。
- 派遣社員個人単位の期間制限

派遣の3年ルールと「5年ルール」との違い
派遣の3年ルールと似た名前の規則として5年ルールがありますが、これらは内容が異なります。
5年ルールとは、同一の使用者との間で有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者からの申し込みにより、期間の定めのない労働契約に転換できるというルールです。5年ルールは、平成25年4月1日に施行された改正労働契約法により規定されました。
5年ルールに基づき、有期契約労働者が使用者に対して無期転換の申し込みをした場合、無期労働契約が成立し、使用者は断ることができません。
労働契約法の5年ルールは、有期契約者全般が無期雇用になる権利を定めていることに対して、派遣の3年ルールは同一の派遣社員が同一の派遣先企業で就業できる期限を定めている点が異なります。
5年ルールについては、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>人材派遣の5年ルールとは?概要や3年ルールとの違いを解説
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派遣の3年ルールができた背景
派遣社員を受け入れる期間に制限が設定された理由は、派遣社員の雇用を安定させるためです。
労働者派遣法では、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とすると定義されています。3年を超える期間で人材が必要な場合は、派遣先企業で直接雇用すべきということが基本的な考え方です。
平成27年9月の労働者派遣法改正前は、専門性の高い業務である専門26業種に従事する派遣社員に対しては、派遣可能期間に上限がありませんでした。派遣先企業は、上限なく派遣社員を受け入れられる一方で、人材派遣会社との契約期間を満了すれば契約を終了できるため、派遣社員の雇用が安定しにくいことが課題でした。この課題を解決することが、派遣の3年ルールができた背景です。
派遣の3年ルールが適用されない例外的なパターン
派遣の3年ルールには、期間制限が適用されない例外的なパターンがあります。期間制限の対象外となる場合は以下の5つです。
60歳以上の派遣社員
一つ目の対象外条件は年齢です。60歳以上の派遣社員には、3年間という期間制限がありません。60歳以上の派遣社員については、キャリアアップよりも安定して雇用されることが重視されるため、期間制限の対象外となります。
派遣元企業に無期雇用されている派遣社員
2つ目は、派遣社員が無期雇用の場合です。人材派遣会社と、期間の定めのない労働契約を結んでいる派遣社員には、期間制限は適用されません。
無期雇用派遣については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>無期雇用派遣とは?活用するメリットや留意点についてご紹介
有期プロジェクト業務
3つ目は、終了期間が明確なプロジェクトで派遣社員を受け入れる場合です。事業の開始や転換、拡大または縮小、廃止のための業務であり、一定の期間内に完了することが予定されているプロジェクトであれば、期間制限の対象外となります。一定の期間内とは、特に年数を定めるものではありませんが、終期が明確でなければなりません。
日数限定業務
4つ目は、人材派遣の日数が限定されている業務に従事する場合です。具体的には、派遣先企業で就業する派遣社員の月の所定労働日数が半数以下であり、なおかつ10日以下の日数で発生する業務がこの例外に当てはまります。
産前産後、育児休業・介護休業代替業務
最後の対象外となるパターンは、派遣先企業で産休や育休、介護休業を取得している社員の代わりに、派遣社員を受け入れるケースです。この場合、休業が終了するまでの延長が認められるため、それまでは就業を続けることができます。
なお、休業に入る社員が、その前後に派遣社員に引継ぎを行う場合も、その期間が必要最小限のものであれば、休業代替業務に含めて差し支えないとされています。
3年を超えても就業が継続する場合
3年を超えて派遣社員を受け入れるにはどのようなパターンがあるのかご紹介します。
事業所単位の期間制限延長手続き
事業所単位の期間制限については、所定の手続きを行うことで3年を超えて延長し、派遣社員の受け入れを継続できます。
派遣可能期間の延長手続きをする
派遣先企業の派遣可能期間を延長するためには、以下のフローに沿った手続きが必要です。

派遣先企業の事業所抵触日の1ヶ月前までに、その事業所の過半数労働組合または過半数代表者に書面による意見聴取を行う必要があります。派遣先企業に事業所が複数ある場合は、事業所ごとに意見聴取が必要です。意見聴取の回答が異議なしの場合、最長3年まで派遣可能期間を延長できます。
もし、意見聴取の回答が異議ありの場合には、延長する期間や理由、異議への対応方針などを事業所抵触日の前日までに、過半数労働組合または過半数代表者に説明することで、派遣可能期間を延長できる可能性があります。過半数労働組合または過半数代表者の意見を、十分に尊重するよう努めましょう。
派遣可能期間の延長が決まった場合、意見聴取を行った書面を3年間保管することや、派遣先企業の事業所の社員へ周知が必要です。また、延長された抵触日の人材派遣会社への通知も必要となります。延長の回数に制限はなく、2回目以降も同様の手順で延長が可能です。
派遣可能期間を延長する際に活用する書面のフォーマットを提供しています。ぜひご活用ください。
>>(意見聴取)通知書兼意見書 テンプレート
>>(異議があった場合の)対応事項説明書 テンプレート
個人単位
個人単位の期間とは派遣社員それぞれについて、同じ組織単位での派遣可能期間を制限するものです。個人単位の期間制限には延長の概念はないものの、以下のようなパターンでは就業を継続できます。
直接雇用する
派遣社員を派遣先企業で直接雇用すると、就業を続けてもらえます。ただし、直接雇用に切り替える際には、派遣社員として就業していた時よりも悪い条件にならないような配慮が必要です。
人材派遣会社が派遣社員を無期雇用する
人材派遣会社が派遣社員を期間の定めのない契約で雇用している場合には、派遣の3年ルールは適用されません。そのため、同一事業所の同一組織において3年以上派遣就業見込みのある派遣社員を、人材派遣会社が無期雇用派遣社員として雇用することで、派遣先企業は期間制限が適用されず、派遣社員を受け入れられます。
異なる組織単位で派遣社員を受け入れる
同じ派遣先企業であっても、課やグループなどの組織単位が変われば、同一の派遣社員を受け入れることが可能です。例えば、A社の人事課で3年間派遣社員を受け入れていた場合、同一の派遣社員を継続してA社の会計課でまた3年間、派遣社員として受け入れることができます。
派遣の3年ルールに違反した際の罰則
労働者派遣法によると、派遣の3年ルールに違反していた場合、人材派遣会社には30万円以下の罰金が科される上に、行政指導の対象となるケースがあります。また、派遣先企業に対しても行政指導が行われ、指導に従わない場合には、企業名が公表される可能性があります。
また、罰則ではないものの、3年を超えて派遣社員を受け入れていた場合は、派遣先企業が派遣社員に対して直接雇用を申し込んだとみなす「労働契約申込みみなし制度」が適用される可能性があります。
労働契約申込みみなし制度については、こちらでさらに詳しくご説明しています。
>>労働契約申込みみなし制度の対象となるのは?ポイントと対策を解説
派遣の3年ルールのメリットと留意点
ここでは、派遣の3年ルールのメリットと留意点について、派遣先企業と派遣社員のそれぞれの立場に分けて解説します。
派遣先企業にとってのメリット・留意点
派遣先企業にとってのメリットは、最長3年での担当者の変更により、業務の属人化を防ぎやすくなることです。また、直接雇用への切り替えを行う場合、自社の業務に3年間携わった人を直接採用できる可能性があります。
一方、派遣先企業にとっての留意点は、担当者の入れ替えによって引継ぎや再教育の手間が発生することです。
派遣社員にとってのメリット・留意点
派遣社員にとってのメリットとして、派遣期間の満了後に直接雇用ではたらける可能性があります。また、終了時期が明確なため、はたらく上での計画を立てやすいこともメリットです。
一方、派遣社員側の留意点としては、3年で就業先が変わるためスキルや経験を身に付けにくいことが挙げられます。また、次の就業先が見つからなかった場合、収入が不安定になることも留意点です。
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派遣の3年ルールについて理解し、人材派遣を活用しましょう
派遣の3年ルールとは、派遣先企業が派遣社員を受け入れられる最長期間を定めたものです。
派遣期間制限には事業所単位と個人単位の2種類があり、事業所単位の期間制限は延長手続きを行うことで、3年を超えて派遣社員を受け入れられます。個人単位の期間制限には延長の概念がないため、期間満了後も就業を続けてもらいたい場合には直接雇用への切り替えや、受け入れる組織単位の変更などが必要です。
派遣の3年ルールの仕組みや例外となるパターンなどを理解した上で、人材派遣をご活用ください。
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