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派遣法の3年ルールとは?概要や対象外となるパターンなどを解説

公開日:2023.08.25

更新日:2024.09.12

法律

期間制限の対象外に該当する場合を除き、派遣先企業が派遣スタッフを受け入れることができる期間には制限があります。

  • 派遣法のいわゆる「3年ルール」の概要
  • 3年ルールができた背景
  • 3年ルールが適用されないパターン など

本記事では「3年ルール」と呼ばれるこのルールができた背景や理由などをご紹介します。また、3年ルールの対象外となるパターンや、派遣スタッフだけでなく、有期契約者全般における、「通算5年雇用した場合、期間の定めのない無期雇用に転換しなければならない」という有期労働契約のルール、いわゆる「5年ルール」との違いを解説します。

派遣法のいわゆる「3年ルール」とは派遣スタッフを受け入れることができる期間(派遣可能期間)の制限のこと

人材派遣の「3年ルール」とは、派遣スタッフを受け入れることができる期間の制限を指します。

派遣の期間制限とは

派遣期間制限は、労働者派遣法で定められた派遣スタッフを受け入れることができる期間の制限を指します。派遣スタッフが社員の代替とされてしまうことや、派遣就業を望まない派遣スタッフが派遣就業に固定化することを防止するために設けられました。

派遣の期間制限には2種類ある

期間制限には「事業所単位」と「個人単位」があります。

事業所単位の場合、同一の事業所において派遣スタッフを受け入れることができるのは原則3年までと定められています。3年を超えて派遣スタッフを受け入れようとする場合(派遣可能期間を延長する場合)は、事前に派遣先事業所の過半数労働組合などに意見聴取を行う必要があります。事業所単位は、厚生労働省の「平成27年労働者派遣法改正法の概要」に、以下のように定義されています。

  • 工場、事務所、店舗等、場所的に独立していること
  • 経営の単位として人事・経理・指導監督・はたらき方などがある程度独立していること
  • 施設として一定期間継続するものであること

事業所単位の考え方は、基本的に雇用保険の適用事業所単位と同じです。規模が小さい出張所や支店などで、本社や上部の組織に人事・経理・経営(業務を含む)などの機能がある場合は、本社や上部の組織に包括して一つの事業所として取り扱われます。「本社管轄で運営されている出張所や支店」などがこれにあたります。

  • 派遣先事業所単位の期間制限
事業所単位の派遣受け入れ期間制限

個人単位では、同一の派遣スタッフを自社(派遣先企業)の同じ組織単位(課など)で受け入れることができる期間は3年までと定められています。個人単位の期間制限には延長の概念はありません。派遣スタッフの従事する業務が変わったとしても、同一の派遣スタッフを3年を超えて同一の組織単位で受け入れることはできません。

組織単位とは、厚生労働省の「平成27年労働者派遣法改正の概要」にて以下のように定義されています。

  • 業務としての類似性や関連性がある組織
  • 組織の長が業務配分や労務管理上の指揮監督権限を有するもの

また、「課」など、自社(派遣先企業)の組織の最小単位(係・班・グループ・チームなど)よりも一般的に大きな単位が想定されますが、小規模事業所においては組織単位と組織の最小単位が一致する場合もあります。

  • 派遣スタッフ個人単位の期間制限
個人単位の派遣受け入れ期間制限

「5年ルール」との違い

平成 25年4月1日に改正労働契約法が施行され、無期転換ルールが規定されました。これがいわゆる「5年ルール」です。無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されることを指します。有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申し込みをした場合、無期労働契約が成立し、使用者は断ることができません。

労働契約法の5年ルールは、有期契約者全般が無期雇用になる権利を定めたものである一方、派遣法の個人単位の3年ルールは同一の派遣スタッフが同一の派遣先部署で終了できる最長期限を定めたものです。

5年ルールについては、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>人材派遣の5年ルールとは?概要や3年ルールとの違いを解説

3年ルールができた背景

派遣スタッフを受け入れる期間に制限が設定された理由は、派遣スタッフの雇用を安定させるためです。労働者派遣法では「派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とする」と定義されており、3年を超える期間で人材が必要な場合は、自社(派遣先企業)で直接雇用すべきという考えのもと、定められています。

平成27年9月の労働者派遣法改正前は、専門性の高い業務である「専門26業種」に従事する派遣スタッフに対しては、派遣可能期間に上限がありませんでした。自社(派遣先企業)は、上限なく派遣スタッフを受け入れられる一方で、人材派遣会社(派遣元)との契約を満了すれば、契約終了が可能なため派遣スタッフの雇用が安定しにくいことが課題となっていた背景もあります。

3年ルールが適用されないパターン

この章では、派遣の期間制限が対象外となる5つのパターンについてご説明します。

60歳以上の派遣スタッフ

1つ目の対象外条件は年齢です。60歳以上の派遣スタッフには、3年間という期間制限がありません。60歳以上の派遣スタッフについては、キャリアアップよりも安定して雇用されることが重視されるため、期間制限の対象外となります。

派遣元企業に無期雇用されている派遣スタッフ

2つ目は、派遣スタッフが無期雇用の場合です。派遣元と、期間の定めのない労働契約を結んでいる派遣スタッフには、期間制限は適用されません。

無期雇用派遣については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>無期雇用派遣とは?活用するメリットや留意点についてご紹介

有期プロジェクト業務

3つ目は、終了期間が明確なプロジェクトで派遣スタッフを採用する場合です。事業の開始、転換、拡大、縮小、廃止のための業務であり、一定の期間内に完了することが予定されているプロジェクトであれば、期間制限の対象外となります。「一定の期間内」とは、特に年数を定めるものではありませんが、終期が明確でなければなりません。

日数限定業務

4つ目は、人材派遣の日数が限定されている業務に従事する場合です。具体的には、派遣先企業で就業する労働者の月の所定労働日数が半数以下であり、なおかつ10日以下の日数で発生する業務がこの例外に当てはまります。

産前産後、育児休業・介護休業代替業務

最後の対象外となるパターンは、派遣先企業で産休や育休、介護休業を取得している社員の代わりに、派遣スタッフを受け入れるケースです。この場合、休業が終了するまでの延長が認められるため、それまではクーリング期間を設けずに就業を続けることができます。

なお、休業に入る労働者が、その前後に派遣スタッフに引継ぎを行う場合も、その期間が必要最小限のものであれば、休業代替業務に含めて差し支えないとされています。

3年を超えても就業が継続する場合

3年を超えて派遣スタッフを受け入れるにはどのようなパターンがあるのかご紹介します。

事業所単位の期間制限延長手続き

事業所単位での3年ルールを超えるためには、以下の方法があります。

派遣可能期間の延長手続きをする

自社(派遣先企業)の派遣可能期間を延長するためには、以下のフローに沿って手続きが必要です。

自社(派遣先企業)の事業所抵触日の1ヶ月前までに、その事業所の過半数労働組合または過半数代表者に書面による意見聴取を行う必要があります。自社(派遣先企業)に事業所が複数ある場合は、事業所ごとに意見聴取が必要となります。意見聴取の回答が「異議なし」の場合、最長3年まで派遣可能期間を延長できます。

もし、意見聴取の回答が「異議あり」の場合には延長する期間や理由、異議への対応方針などを事業所抵触日の前日までに、過半数労働組合または過半数代表者に説明することで、派遣可能期間の延長ができます。過半数労働組合または過半数代表者の意見を、十分に尊重するよう努めることが重要です。

派遣可能期間の延長が決まった場合、意見聴取を行った書面の保管(3年間)と自社(派遣先企業)の事業所の社員へ周知が必要です。また、それに合わせて延長された抵触日の人材派遣会社(派遣元)への通知も必要となります。延長後、さらに派遣可能期間を延長する場合も同様の手順で行います。

派遣可能期間を延長する際に活用する書面のフォーマットを提供しています。ぜひご活用ください。
>>(意見聴取)通知書兼意見書 テンプレート
>>(異議があった場合の)対応事項説明書 テンプレート

個人単位

個人単位の期間とは派遣スタッフそれぞれについて、同じ組織単位での派遣可能期間を制限するものです。個人単位の期間制限には延長の概念はありませんが、下記のようなパターンがあります。

直接雇用する

派遣スタッフを、派遣先企業で直接雇用をすることになった場合です。これまでの雇用条件を確認し、派遣就業時よりも悪い条件にならないように留意します。

派遣元が派遣スタッフを無期雇用する

無期雇用とは期間の定めのない契約(無期契約)で雇用することです。同一事業所の同一組織において3年以上派遣就業見込みのある派遣スタッフを、派遣元が無期雇用派遣スタッフとして雇用することで、派遣先は期間制限を受けずに派遣を受け入れることができます。

異なる組織単位で派遣スタッフを受け入れる

同じ派遣先事業所であっても、課やグループなどの組織単位が変われば、同一の派遣スタッフを受け入れることが可能です。例えば、A社の人事課で3年間派遣スタッフを受け入れていた場合、同一の派遣スタッフについて3年間、継続してA社の会計課で派遣スタッフとして受け入れることができます。

3年ルールを違反した際の罰則

3年ルールを違反していた場合、人材派遣会社(派遣元)には、「30万円以下の罰金」という罰則がある(労働者派遣法第61条第3号)上に、行政指導を受ける可能性があります。自社(派遣先企業)に対しても行政指導が行われ、指導に従わない場合には、企業名が公表される可能性があります。

また、罰則ではありませんが、3年ルールを超えて派遣スタッフを受け入れていた場合は、自社(派遣先企業)が派遣スタッフに対して、直接雇用を申し込んだとみなす「労働契約申込みみなし制度」が適用される可能性があります。

労働契約申込みみなし制度については、こちらでさらに詳しくご説明しています。
>>労働契約申込みみなし制度の対象となるのは?ポイントと対策を解説

3年ルールについて理解し、派遣サービスを活用する

派遣スタッフを受け入れる際には必ず覚えておく必要がある「3年ルール」とは、派遣可能期間の制限を指しています。派遣スタッフを守るためにあるこのルール、何のためにルールがあるのかも理解しながら、自社の業務への影響が出ないよう、正しい方法で派遣サービスを活用していくことが大切です。


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