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無期雇用派遣とは?活用するメリットや留意点についてご紹介

公開日:2023.06.26

人事ナレッジ

人材派遣のはたらき方の中でも、最近注目を集めているのが、「無期雇用派遣」です。人材派遣は、「登録型派遣」と「常用型派遣」の大きく2つのはたらき方に分けられます。「登録型派遣」とはいわゆる「有期雇用派遣」のこと、また「常用型派遣」が「無期雇用派遣」で、人材派遣会社と期間の定めがない雇用契約を締結しているスタッフのことを指します。

無期雇用派遣は、将来に向けて深刻な労働力不足が問題となっている今、派遣先にとってもメリットがあるはたらき方と言えます。どのようなメリットがあるのか、その活用方法など、詳しく解説します。

無期雇用派遣とは

無期雇用派遣では、派遣元企業(人材派遣会社)と派遣スタッフの間で期間の定めがない雇用契約を締結します。

労働者派遣法に基づく労働者派遣事業の場合、派遣スタッフが雇用契約を結ぶのは、人材派遣会社です。雇用主は人材派遣会社となり、人材派遣会社から賃金が支払われます。そして、人材派遣会社は派遣先企業と労働者派遣契約を結び、派遣スタッフを派遣します。派遣スタッフの指揮命令を行うのは、就業先である派遣先企業となります。

これは、有期雇用派遣も無期雇用派遣も同じです。異なる点は、派遣スタッフが人材派遣会社との間で期間の定めがない雇用契約を締結していることです。

無期雇用派遣とは

人材派遣会社と無期雇用派遣契約を締結している派遣スタッフは、派遣先企業での就業期間が終了した場合でも、人材派遣会社との雇用関係が継続します。

派遣スタッフの多くは、「登録型派遣」で有期雇用契約です。人材派遣会社に登録し、派遣先の企業に派遣されてはたらきますが、派遣期間が定められています。

自社で雇用している社員との違い

自社で雇用している正社員と無期雇用派遣は、期間の定めなく企業に雇用されている点では同じといえます。ただし、両者には明らかな違いがあります。無期雇用派遣スタッフは、正社員と異なり実際に就業している会社には雇用されていません。派遣スタッフが無期雇用契約を締結しているのは人材派遣会社との間で、派遣先企業である自社とは契約していません。つまり雇用主は人材派遣会社です。

そして、無期雇用とはいえ派遣先では期間を定めてはたらいているケースがほとんどです。ただし、有期雇用の登録型派遣スタッフと異なり3年という個人単位の期間制限はないので、期間を定めずに自社で長くはたらいてもらうことも可能です(事業所単位の期間制限は3年です)。

そのため、勤務先である自社において正社員と同じく業務上の経験を積んでもらうことができます。昇給や昇格、賞与を自社で考える必要はありませんが、人材派遣会社はスタッフが担う業務のレベルやそれに対する技量などによって昇給制度を導入しているところもあり、スタッフの給与が上がるケースもあります。有期雇用契約とは違い、ようやく仕事を覚えて職場環境にも慣れたときに職場を去らなくてもよいことは、派遣スタッフにとっても大きなメリットと言えます。

有期雇用派遣(登録型派遣)との違い

派遣スタッフと聞いて多くの人がイメージするのは、人材派遣会社に登録して、期間をあらかじめ決めて派遣先企業に派遣する形態です。これは「登録型派遣」といい、人材派遣会社と派遣スタッフは有期雇用契約を締結しています。

一方、人材派遣会社と無期雇用契約を締結している派遣スタッフは、派遣先企業での就業期間が終了した場合でも、人材派遣会社との雇用関係が継続します。無期雇用派遣契約のスタッフは、派遣先企業で就業していない期間は次の就業先が決まるまで待機するか、次の就業に向けての研修などを行います。また、派遣されていない期間にも給与、あるいは休業手当が支払われます。

    • 有期雇用派遣と無期雇用派遣、正社員との違い
有期雇用派遣 無期雇用派遣 正社員
契約の期間 有期契約 無期契約 無期契約
雇用主 人材派遣会社 人材派遣会社 自社
雇用期間 派遣先での就業期間 無期限 無期限
給与の支払い 派遣先での就業期間のみ人材派遣会社から支払われる 派遣先での就業期間にかかわらず人材派遣会社から支払われる 自社から支払われる
給与や福利厚生など 人材派遣会社の規則が適用される 人材派遣会社の規則が適用される 自社の規則が適用される
はたらき方 登録後、派遣期間だけ人材派遣会社の派遣スタッフとして就業する。 採用選考を経て、人材派遣会社の派遣スタッフとして入社する。 採用選考を経て、正社員として入社する。

無期転換が可能な条件について

では、どのようなケースで無期雇用派遣が可能なのでしょうか。2012年の労働契約法改正で、無期労働契約への転換ルールが規定されました。

それによって、派遣スタッフをはじめ、パートタイマー、契約社員など有期労働契約の労働者は、条件を満たしていれば無期雇用契約に転換できるようになったのです。

直接雇用しているパートタイマーや契約社員といった労働者から申し込みがあった場合には、自社が無期雇用転換することになります。ただし、派遣スタッフの場合は、自社が無期転換することはありません。雇用主は人材派遣会社なので、派遣スタッフが無期雇用転換したい場合には人材派遣会社に申し込みをします。

以下の条件・ケースであれば、無期転換が可能となります。

  • 有期労働契約期間が通算5年を超えて更新された場合
  • 有期労働契約の更新が1回以上ある
  • 有期労働契約を結んでいる

それぞれについて詳しく解説していきます。

有期労働契約期間が通算5年を超えて更新された場合

派遣スタッフとして同一の使用者との間で、通算5年を超えて何回も更新されている場合には、無期転換ルールが適用されます。派遣スタッフ側から人材派遣会社に無期転換の申し込みがあった場合には、断ることはできません。労働契約法によって、必ず受け入れなければならないことになっています。

例えば、契約期間が1年間と定められていた場合には、5回目すなわち5年たったときに無期転換申し込み権が発生します。

有期労働契約の更新が1回以上ある

同一の使用者との間で契約の更新回数が1回以上あることも、無期転換ルールが適用される条件となります。

有期労働契約を結んでいる

上記の無期転換ルールが適用される派遣スタッフは、人材派遣会社との有期労働契約の期間中であることが条件となります。

※参照:無期転換ルールについて(厚生労働省)

さらに最初から有期雇用派遣ではなく無期雇用派遣としてスタッフを受け入れることもできます。こちらは、有期雇用契約の労働者の雇い止めの不安を軽減するために設けられました。

無期雇用派遣が注目されている理由

無期雇用派遣が注目されるようになったのは、有期雇用の労働者が無期転換権を行使できるようになった2018年頃からです。

将来に向けて深刻な労働力不足が問題となっている今、企業は人材を採用するのに苦心しています。そんな中、無期雇用派遣は、労働者と企業側双方に安定した雇用を提供できる方法としても注目を集めています。

無期雇用派遣を活用する2つのメリット

派遣スタッフには無期転換することで安定した収入を得られるというメリットがありますが、派遣先企業側にも無期雇用派遣スタッフを受け入れることで、以下のようなメリットがあります。

  • 受け入れ期間の制限がない
  • 引継ぎや教育の機会が少なくなる

それぞれを詳しく解説していきます。

受け入れ期間の制限がない

有期雇用の登録型派遣スタッフの場合、派遣先の同一の事業所において継続して派遣を受け入れることができる期間(派遣可能期間)は原則3年までです。派遣先が3年を超えて派遣スタッフを受け入れようとする場合は、抵触日の1ヶ月前までに派遣先事業所の過半数労働組合などから意見聴取を行う必要があります。

一方、無期雇用派遣スタッフを受け入れた場合には、派遣の期間制限の対象外となり、3年を超えての受け入れが可能となります。

引継ぎや教育の機会が少なくなる

有期雇用の派遣スタッフの場合、派遣先が派遣スタッフを受け入れられる期間が原則3年と定められているため、3年を超えると後任の派遣スタッフを再度教育する必要があります。

しかし、無期雇用派遣スタッフは期間制限を受けることなく、長期的に就業できる可能性があるため、有期雇用の登録型派遣スタッフと比較すると引継ぎや教育に時間をかけることなく就業することが可能です。

無期雇用派遣を活用する上でのメリットや留意点を理解する

ここまで、無期雇用派遣を活用する上での、派遣先企業側のメリットを見てきました。例えば、派遣先企業にも、派遣スタッフが交代するたびに発生する引継ぎや教育が不要であり、長くはたらいてもらえるというメリットがあります。ただし、無期雇用派遣はメリットばかりというわけではありません。

留意点としては、派遣スタッフが無期転換したとしても、そのまま自社に残ってくれるとは限りません。また、自社に1年以上就労している無期雇用派遣スタッフがいる事業所では、有期雇用派遣スタッフと同様に正社員を募集する際にはその情報を当該スタッフに伝える必要があります。

これらの留意点を踏まえた上で、人材派遣会社に相談して無期雇用派遣の方に活躍してもらいましょう。

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