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派遣先管理台帳とは?記載内容や保管方法をわかりやすく解説
公開日:2023.02.10
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派遣先は派遣スタッフの受け入れ開始に際して「派遣先管理台帳」を作成し、一定期間保管する義務があります。派遣先が派遣スタッフの労働日や労働時間などの就業実態を的確に把握することなどを目的として作成するもので、記載しなければならない事項が決められているほか、一部事項については派遣先から派遣元への通知が必要です。
本記事では、派遣先管理台帳の作成方法や人材派遣会社への通知方法、保管義務とその期間などについて詳しく解説しています。
目次
派遣先管理台帳とは派遣スタッフの就労実態を記載する書面
派遣先管理台帳は、派遣先が作成しなければならない書類です。労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)の第42条に定められている派遣先企業の義務であり、必ず作成する必要があります。ただし、場合によっては、人材派遣会社が代行して作成していることもあるので、人材派遣会社へ事前に確認することも大事です。
派遣先管理台帳には、派遣スタッフ一人ひとりの就業場所や業務内容、就業日などを記載します。
派遣先管理台帳を作成することで、派遣スタッフの就業実態や契約内容が明確になります。誰が、どのような業務内容や条件で就業しているかを把握することは、派遣スタッフの適切な管理や業務指示のために必須です。
同時に、派遣先管理台帳は派遣元である人材派遣会社の雇用管理にも活用されます。そのため、派遣先管理台帳の内容の一部は、定期的に人材派遣会社に通知しなければなりません。人材派遣会社は、派遣先管理台帳に記載された就業日や就業時間、業務内容など法的記載事項に基づいて派遣スタッフの雇用を管理します。
なお、労働者派遣法は2020年に改正され、派遣先管理台帳に記載する項目が追加となりました。本記事では、最新の労働者派遣法に基づき、派遣先管理台帳の記載内容を解説します。
派遣先管理台帳と派遣元管理台帳の違い
派遣先管理台帳の他に、派遣元管理台帳があります。これは派遣元企業に作成が義務付けられた書類です(労働者派遣法第37条による)。
派遣元管理台帳は、派遣先管理台帳と同じく、派遣スタッフ一人ひとりに対して作成する書類です。記載項目も、重なる内容が多くあります。しかし、派遣先管理台帳と派遣元管理台帳には、誰に作成義務があるのかという違いがあります。派遣先と派遣元、双方が管理台帳を作成することで、派遣スタッフの適正な管理をすることができます。
派遣先管理台帳の記載内容と記入例
派遣先管理台帳には、派遣スタッフの業務内容などに関する18項目の情報を記載します。それぞれの項目と記載内容、注意点、記入例を一覧表でご紹介します。
<派遣先管理台帳の記載項目>
No. | 事項 | 記載内容、注意点 | 派遣先から派遣元への通知事項 |
---|---|---|---|
1 | 派遣労働者の氏名 | 派遣元から通知を受けて記載 | ○ |
2 | 派遣元の名称 | 派遣元の企業名 | - |
3 | 派遣元の事業所の名称 | 派遣元のオフィス・支店など事業所名 | - |
4 | 派遣元の事業所の所在地 | 住所、電話番号など | - |
5 | 協定対象派遣労働者か否かの別 | 派遣元から通知を受けて記載 | - |
6 | 無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者かの別 | 派遣元から通知を受けて記載 | - |
7 | 派遣就業をした日 | 実際に就業をした日の実績を記載 | ○ |
8 | 派遣就業をした日ごとの始業・終業時刻および休憩時間 | 実際の始業及び終業時刻ならびに休憩時間の実績を記載 | ○ |
9 | 従事した業務の種類 | 可能な限り詳細に記載する ※政令第4条第1項に定める業務である場合は、号番号を記載する |
○ |
10 | 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度 | 派遣労働者に付与されている権限の範囲・程度等を記載する。チームリーダー等の役職があればその役職、役職がなければその旨を記載すればよいが、より具体的に記載するのが望ましい。 | ○ |
11 | 就業した事業所名称、所在地、その他就業した場所、組織単位 | - | ○ |
12 | 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項 | 苦情を受けた年月日、苦情の内容及び苦情の処理状況を苦情処理にあたった都度記載するとともに、派遣元にも通知する | - |
13 | 紹介予定派遣に関する事項(紹介予定派遣の場合のみ) | 紹介予定派遣である旨、面接等派遣労働者の特定行為を行った場合はその内容および選考の基準、採否結果、職業紹介を受けることを希望しなかった場合や職業紹介を受けた者を雇用しなかった場合はその理由 | - |
14 | 教育訓練を行った日時、内容 | OJTのうち計画的に行われるもの、およびOff-JT | - |
15 | 派遣元責任者に関する事項 | 役職、氏名、連絡方法(連絡先) | - |
16 | 派遣先責任者に関する事項 | 役職、氏名、連絡方法(連絡先) | - |
17 | 期間の制限を受けない業務について行う労働者派遣に関する事項 |
|
- |
18 | 派遣労働者の健康保険、厚生年金保険および雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無(「無」の場合はその具体的な理由) | 派遣元から通知を受けて記載 | - |
<派遣先管理台帳(兼)通知書書式例>
派遣先管理台帳のテンプレートは、人材派遣会社から支給される場合もあります。
指定の項目さえ満たしていれば、独自の形式で作成しても問題はありませんが、派遣先管理台帳のテンプレートが必要な方は東京労働局による「 参考例13 派遣先管理台帳 【excel形式】」もご活用ください。
派遣先管理台帳の通知方法
派遣先管理台帳のうち、一部の項目については、定期的に派遣元に通知する必要があります。通知しなければならない内容と、通知のタイミング、通知方法についてご紹介します。
派遣元へ通知すべき内容
派遣先管理台帳に記載する項目のうち、以下については、定期的に派遣元へ通知しなければなりません。
- 派遣労働者の氏名
- 派遣就業をした日
- 派遣就業をした日ごとの始業・終業時刻および休憩時間
- 従事した業務の種類
- 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
- 就業した事業所名称、所在地、その他就業した場所、組織単位
それぞれの記載項目について詳しくはこちらで解説しています。
通知するタイミングと方法
派遣先管理台帳の内容は、定期的に派遣先から派遣元に通知しなければなりません。
<通知のタイミング>
1ヶ月に1回以上、期日を定めて派遣元に通知します。ただし、派遣元から依頼された場合は、あらかじめ定めたタイミングでなくても通知しなければなりません。派遣先と派遣元の間で、通知のタイミングと方法を事前に定めておきましょう。
<通知の方法>
以下のいずれかの方法で通知します。
- 書面による通知
- FAXによる通知
- 電子メールによる通知
なお、派遣労働者に対してタイムカードの打刻を義務付けている企業では、タイムカードデータの送信によって、派遣労働者の氏名や就業日、就業時間などの通知を行うことも可能です。
派遣先管理台帳の作成義務
派遣先管理台帳の作成、労働者派遣法42条に定められた派遣労働者を受け入れる企業の義務です。派遣サービスを活用する企業は、必ず派遣先管理台帳を作成しましょう。
労働者派遣法第42条
派遣先は、厚生労働省令で定めるところにより、派遣就業に関し、派遣先管理台帳を作成し、当該台帳に派遣労働者ごとに次に掲げる事項を記載しなければならない。
※引用: 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 | e-Gov法令検索
ただし、労働者派遣法施行規則第35条3には、事業所の社員数と受け入れる派遣労働者の合計人数が5人以下であれば、派遣先管理台帳の作成は不要と記載されています。
労働者派遣法施行規則第35条3
当該派遣先が当該事業所等においてその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の数に当該事業所等において雇用する労働者の数を加えた数が五人を超えないときは、派遣先管理台帳の作成及び記載を行うことを要しない。
※引用: 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則 | e-Gov法令検索
例)
所長1人、事務労働者1人、営業労働者2人の事務所で、事務労働者の長期休暇に伴い派遣労働者1人を受け入れる。
上記のケースでは、派遣先管理台帳の作成は義務ではありません。
しかし、派遣先管理台帳を作成すれば、派遣労働者の業務内容や就業状況を文書として明確にできます。
派遣先管理台帳の保管
派遣先管理台帳は、作成後一定期間の保管が義務付けられています。
保管期間
派遣先管理台帳は、労働者派遣法第42条によって3年間の保管が義務付けられています。保管期間の起算日は、派遣期間の終了日です(労働者派遣法施行規則第37条による)。
例)
2020年4月1日から2022年3月31日までの派遣労働者の派遣先管理台帳は、2025年3月30日まで保管する必要があります。
なお、派遣契約を更新した派遣労働者については、最後の契約が終了してから3年間保管しなければなりません。
保管方法
派遣先管理台帳は、紙またはデータで保管します。
なお、就業日や就業時間についてタイムカードなど別紙で管理していた場合は、該当の用紙やデータも併せて保管しておく必要があります。
派遣先管理台帳は人材派遣会社に通知するための重要な書類
派遣先管理台帳は、派遣労働者の就業状況を明確にする大切な書類です。記載項目や保管方法を理解して、不備が生じないよう正しく運用することが必要です。記載内容や記載方法について不明点がある場合は、対応方法について人材派遣会社へ問い合わせてください。
特に、はじめて派遣サービスを活用する場合、派遣先管理台帳を含めた各種書類のやり取りに戸惑われることもあるでしょう。不明点や疑問点に対しわかりやすく対応方法を教えてくれる人材派遣会社を選ぶことが大切です。
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