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派遣の特定行為とは?禁止の背景や注意点をわかりやすく解説

公開日:2023.08.25

法律

企業が、労働者派遣契約締結に際し、派遣スタッフを面接・選考などによって特定する行為は、労働者派遣法で禁止されています。面接の他にも、履歴書の提出を求める、若年者に限定して派遣元に依頼する、性別を特定して派遣元に依頼するといった行為も「派遣スタッフの特定行為」とされます。

  • なぜ特定行為が禁止されているのか
  • 特定行為を行ってしまった場合の罰則はあるのか

など疑問を持たれる方も多いでしょう。
本記事では、禁止されている「派遣スタッフの特定行為」について詳しく解説します。

派遣スタッフを特定する行為の禁止について

企業が、労働者派遣契約締結に際し、派遣スタッフを面接・選考などによって特定する行為は、労働者派遣法で禁止されています。直接雇用を前提に派遣を行う紹介予定派遣においてのみ、派遣先による派遣スタッフの面接・選考が可能となっています。
労働者派遣法では、以下のように規定しています。

第二十六条6項 労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣スタッフを特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。

派遣スタッフが業務内容や職場環境を確認するために事業所を訪れることは問題ありません。ただし、派遣先企業は面接や試験を行うことはできず、派遣スタッフの選考を目的とした行為は禁止されています。

特定行為が禁止されている理由

なぜ派遣スタッフの特定行為をしてはいけないのでしょうか?その理由を説明します。

労働者派遣は、人材派遣会社(派遣元)が雇用主としての責任を負い、派遣先企業は指揮命令を行う仕組みです。

人材派遣とは

この図のように、派遣先企業(自社)と派遣スタッフとの間に雇用契約がないため、そもそも派遣先企業(自社)には面接やテストなど選考する権利がありません。この前提で派遣スタッフ受け入れにあたってのルールが決まっています。派遣スタッフの職業能力評価は雇用主である人材派遣会社が行い、派遣先企業の要望に適しているかどうかを的確に判断して派遣を行います。

平成11年の労働者派遣法改正で、派遣先企業による派遣スタッフを特定することを目的とする行為の禁止が、派遣先企業の努力義務として明確に規定されました。

派遣スタッフの特定行為となる例

具体的にどのような行為が特定行為とみなされるのか、例を示します。あらかじめ特定行為の例を知っておくことでトラブルを防ぎましょう。

  • 事前面接の要請・実施
  • 履歴書の提出を求める
  • 年齢や性別を限定する
  • 適性検査や筆記試験の実施
  • 個人情報や業務関連能力以外の情報を聞く

事前面接の要請・実施

派遣先企業は依頼したい業務に沿った人材のリクエストをすることはできますが、その内容から誰を派遣するかは人材派遣会社が判断します。そのため、派遣スタッフの選考を目的とする面接もできません。

履歴書の提出を求める

労働者派遣法では、事前面接と同様に、事前の履歴書の提出を求める行為も禁止しています。

年齢や性別を限定する

派遣先企業が人材派遣会社に指定できる項目は、業務に必要なスキルにかかわるものに限られます。年齢や性別を指定することはできません。

職業安定法では以下のように規定しています。

第三条 何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。但し、労働組合法の規定によって、雇用主と労働組合との間に締結された労働協約に別段の定のある場合は、この限りでない。

適性検査や筆記試験の実施

派遣スタッフを特定するための適性検査や筆記試験を実施することは禁じられています。

業務に必要なスキルを指定するため、技術・技能レベル(取得資格など)などを記入するスキルシートを派遣先企業が人材派遣会社に送付することは、派遣スタッフを特定する行為にはあたりません。ただ、スキルシートに年齢や前職の退職理由など個人情報を記載した場合は違法となります。

職場見学の際に個人情報や業務関連能力以外の情報を聞く

職場見学とは、派遣スタッフの希望により派遣先企業を訪問し、派遣スタッフ自ら直接、業務内容や就業環境など確認することをいいます。

そのため、職場見学の際に派遣先企業ができる質問は、派遣業務にかかわる派遣スタッフの業務経験、知識、技術などの内容に限られています。

住所、氏名、年齢、家族構成、前職の社名、退職理由、未婚・既婚などはプライバシーにかかわる事項や個人情報にかかわる事項となります。これらは業務に必要なスキルを判断する上で不要なため、質問することはできません。

派遣スタッフの特定行為の罰則について

派遣先企業が特定行為を行った場合、都道府県労働局から是正指導が入ります。ただ、労働者派遣法第26条の条文は「努めなければならない」とされており、法律的には努力義務のため、罰則はありません。

派遣スタッフの特定行為に関するよくあるご質問

特定行為の具体例な罰則について把握した上で、さらに理解を深めるために、派遣スタッフの特定行為に関するよくあるご質問とその回答をご紹介します。

Q.個人情報にかかわる質問とは何を指しますか?

A. プライバシーや個人情報にまつわる質問を指します。これらに関する質問をすることは禁止事項に該当する恐れがあり、注意が必要です。

禁止されている質問の具体例は以下の通りです。

  • 住所
  • 氏名
  • 年齢
  • 家族構成
  • 家族の職業
  • 学歴に関する学校名
  • 前職の社名や退職理由
  • 未婚・既婚
  • 出産予定
  • 出身地
  • 国籍
  • 信仰している宗教 など

Q.スキルに関する質問はしてよいのですか?

A. 個人情報に関する質問は禁止されていますが、業務内容や条件のすり合わせをしたり、スキルなどを確認する質問は問題ありません。

Q.派遣元の営業担当者不在で職場見学を実施してよいのですか?

A. 原則、営業担当者同席のもと実施します。人材派遣会社(派遣元)の営業担当者には、職場見学で派遣先企業が特定行為をしないかを確認する役目があります。職場見学は、派遣先企業の社員、人材派遣会社の担当者、派遣スタッフの三者で行うものとされています。

ただし、派遣スタッフが希望した場合、人材派遣会社の担当者が不在でも職場見学を実施することができます。

紹介予定派遣について

派遣スタッフの特定行為は禁止されていますが、紹介予定派遣の場合は面接・適性検査、履歴書の確認が可能です。

紹介予定派遣とは、派遣先企業との直接雇用を見据えて一定期間(最長6ヶ月)派遣し、派遣期間終了後に直接雇用に切り替えることができるシステムです。派遣期間を通して適性などを見極め、派遣先企業と派遣スタッフの双方の希望が合致した場合、採用が決定します。

紹介予定派遣については、こちらでさらに詳しくご説明しています。
>>紹介予定派遣とは?仕組みやメリット、通常の派遣との違いまで解説

派遣スタッフの特定行為は禁止されている

派遣先企業は派遣スタッフを選考する立場にないため、事前面接をはじめとした派遣スタッフを特定する行為は禁止されています。トラブルのリスクがあり、労働局から是正するよう指導される可能性もあるため注意が必要です。

禁止されている背景をきちんと理解し、自社の希望に沿った派遣スタッフと出会えるように、依頼時には派遣会社と詳細をすり合わせましょう。派遣先企業の法律に対する正しい理解と協力が必要です。パーソルテンプスタッフでは法令を遵守し、適正な対応を行っています。人材派遣サービスについてご不明点があればお気軽にご相談ください。

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