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派遣先責任者とは?選任方法やよくあるご質問について解説
公開日:2023.08.25
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「派遣先責任者」は人材派遣を受け入れる際に必ず選任する必要があります。しかし、そもそもどのような役割なのか? どのような人材を選任するべきなのか?迷う方も多いでしょう。
- 派遣先責任者とは
- 派遣先責任者の役割
- 派遣先責任者に関するよくあるご質問
本記事では「派遣先責任者」の選任を検討したい方に向けて、その役割や、職務の具体例、兼任の可否や届出の有無についても解説します。
派遣先責任者とは
派遣先責任者とは、労働者派遣法第41条に基づき、派遣スタッフに関する雇用管理上の責任を一元的に負う者として選任される方を指します。選任しない場合、労働者派遣法に抵触し、30万円以下の罰金に処せられる場合があります。
必要とされる派遣先責任者の人数
労働者派遣法第41条、派遣則第34条第2号に定められているように、派遣スタッフの人数が100人あたりにつき1人以上の派遣先責任者が必要となります。派遣先が雇用する社員および派遣スタッフの人数が5人以下の場合は選任不要です。
派遣先責任者になるために必要な条件
派遣先企業が派遣先責任者を選任する条件は、派遣スタッフが就業する事業所ごとに派遣先責任者の選任が必要であること、複数の事業所の派遣先責任者を兼任することができないことです。 なお、派遣先責任者には、派遣元責任者と同様、株式会社および有限会社の監査役は選任することはできません。
また、派遣先責任者を選任するにあたり、労働関係法令に関する知識、人事・労務管理等についての専門的知識や実務経験など、その職務を的確に遂行することができる社員を選任するよう努めることとされています。
派遣先責任者講習について
派遣先責任者としての能力向上を図り、適切な業務が行えるようになることを目的とし、関係法令やその職務に関する必要な知識等を付与するための講習です。
派遣先責任者講習について詳しく知りたい方は、厚生労働省のこちらのページをご覧ください。
指揮命令者との違い
指揮命令者とは、派遣先企業で派遣スタッフに対して「業務指示や管理」をする立場の方を指します。派遣先責任者は派遣スタッフの受け入れ時の事務的な手続きや職場環境の整備を担い、指揮命令者は業務の推進において派遣スタッフに指示を出します。指揮命令者は派遣先企業において、派遣スタッフの「直属の上司」にあたるケースが多いでしょう。また、派遣先責任者と指揮命令者との兼任を禁止する法令の定めはないため兼任が可能ですが、その役割の違いなどを考慮すると、それぞれ別の方を選任するほうが望ましいといえます。
- 派遣先責任者
役割 | 派遣元との連絡調整や派遣労働者の苦情対応などの窓口
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---|---|
選任条件 | 受け入れる派遣労働者の人数・業務内容によって選任する人数が定められています。
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選任のポイント | 派遣先責任者の職務を的確に遂行することができる者を選任するよう努めることとされています。 (例)
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- 指揮命令者
役割 | 派遣労働者に対する業務指示、労働時間・休憩時間・休日の管理 |
---|---|
選任条件 | 特に法令上の定めはありません。下記のポイントを参考に選任ください。 |
選任のポイント | 派遣労働者に対して直接業務を指示する立場にある方を選任してください。必ずしも役職者である必要はありませんが、派遣契約の内容に基づく業務指示を適切に行うことができ、労働時間・休憩・休日の管理や、就業環境への配慮を実施できることをポイントに選任ください。 |
派遣先苦情申出先との違い
派遣先苦情申出先は、派遣先企業ではたらいている派遣スタッフからの苦情を受ける担当者を指します。派遣スタッフが仕事をする上で直面している問題を解決するために設ける窓口です。派遣先責任者と役割は異なりますが、兼任することも問題ありません。
派遣先苦情申出先担当者については特に選任に関する条件などはありません。役割を鑑みた場合、労働関係法令や人事・労務の知識や経験がある人材が適任と考えられるでしょう。また、業務に関する内容だけではなく、職場環境など就業状況に関する苦情も受け付けることができる人が望ましいといえます。派遣先苦情申出先の担当者は、自社の社員だけではなく、顧問弁護士等の第三者の選任も認められています。
派遣先責任者の役割
派遣先責任者はどのような役割があるのでしょうか。具体的な役割をご紹介しますので、派遣先責任者が担うべきことを知っておきましょう。
労働者派遣契約が遵守できているかの確認
労働者派遣契約とは、派遣元と派遣先企業が結ぶ契約です。期間や派遣料金、就業条件に関して、きちんと守られているかを確認します。
適用される労働関係法令や締結した労働者派遣契約の内容などを周知
派遣スタッフに関する法規定、労働者派遣契約の内容、派遣元から受けた通知内容を、指揮命令者などの関係者に周知します。
派遣受入期間の管理
派遣スタッフの受け入れ期間の管理も派遣責任者の役割です。派遣スタッフがいつからいつまでの契約になっているのか、個人単位の派遣受け入れ期間制限の抵触日がいつなのかなど管理します。
派遣先管理台帳の管理
派遣先管理台帳は、派遣スタッフの労働日や労働時間など、就労実態を記載する書面のことです。派遣先企業は、派遣先管理台帳を作成・保管し、その記載内容の一部を派遣元に通知する義務があります。
派遣スタッフからの苦情処理
派遣先責任者は派遣スタッフからあった苦情処理に責任を負います。労働者派遣法第40条第1項に定められているように、苦情の内容を派遣元に通知・連携し、誠意をもって、遅滞なく、適切かつ迅速な処理を図ります。
派遣元と派遣先企業は派遣スタッフが就業するにあたり苦情の申し出を受ける者や苦情処理の方法等についてあらかじめ労働者派遣契約に定めなければならないとされているように、派遣先企業には派遣スタッフから直接苦情の申出を受ける苦情申出先という窓口も設置されています。派遣先責任者と兼務している場合もありますが、苦情の対応窓口が複数あることは、派遣スタッフにとっても一層はたらきやすい環境といえるでしょう。
派遣先均衡待遇確保の管理
2020年4月から「同一労働同一賃金」が施行され、ルールの徹底が求められています。「同一労働同一賃金」では、合理的な理由がない場合、雇用形態にかかわらず同じ待遇にしなければいけません。
派遣先責任者は、公正な待遇が確保されるよう、派遣先企業における均衡待遇に関することの交渉・調整なども行います。
同一労働同一賃金については、こちらでさらに詳しくご説明しています。
>>同一労働同一賃金での中小企業への影響とは?ガイドラインなどをご紹介
安全衛生の管理
派遣スタッフの安全衛生を確保するためには、就業場所において具体的な指揮命令や機械設備の維持管理等が必要です。そのため、安全管理全般と就業に伴う具体的な衛生管理については派遣先企業が、一般的な健康管理等については派遣元が責任を負うことになっています。派遣先責任者は、安全衛生などに関して、派遣元と必要な連絡調整を行う役割があります。
教育訓練の実施
派遣スタッフが業務を行うために必要となるスキルの向上については、派遣元の求めに応じて、派遣スタッフに対しても業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を実施するなどの義務があります。派遣スタッフが自主的に業務上必要なスキルアップを行う場合についても、派遣先企業として可能な限り協力するようにしましょう。
派遣先責任者を選任するポイント
派遣先責任者を選任する条件として、厚生労働省は「派遣先企業が講ずべき措置に関する指針」(第2-13)において以下を挙げています。
- 労働関係法令に関する知識を有する者
- 人事・労務管理等について専門的な知識、または相当期間の経験を有する者
- 派遣スタッフの就業に係る事項に関する一定の決定、変更を行い得る権限を有する者
上記を踏まえて、選任のポイントを3つご紹介します。
労働関連の法律に詳しい
厚生労働省が指定する機関で実施される「派遣先責任者講習」の受講により、上記の1の条件に該当する知識を得ることができます。もともと労働関連の法律に詳しい社員がいる場合も適任でしょう。
※参考:厚生労働省|派遣先責任者講習
人事・労務の知識や実務経験がある
派遣サービスを活用する際には、労働環境などを調整することも発生するため、人事・労務の実務経験があると、よりスムーズです。
人材派遣にかかわる事柄の決裁権がある
人材派遣の受け入れに関して決裁権がない社員の場合、問題の解決ができなかったり、解決までに時間を要してしまう可能性があります。人材派遣にかかわる事柄の決裁権を持った社員が適任と言えるでしょう。
派遣先責任者が気を付けるポイント
派遣先責任者が気を付けるポイントは多数あります。今回はその中でも特に気を付けるべき点を4点解説します。
二重派遣の禁止
二重派遣とは、派遣元と雇用関係にある労働者を受け入れた派遣先企業が、あらたに労働者の供給元となって別の企業に派遣スタッフを派遣する違法行為のことです。業務上必要だとしても、自社で受け入れた派遣スタッフを別の会社に派遣することは法律で禁止されています。
禁止業務に従事させない
労働者派遣法および施行令等によって、次の業務は労働者派遣が禁止されています。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 医療関係業務
- いわゆる「士」の業務(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士 など)
- 人事労務管理関係のうち、派遣先企業において団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務
労働環境の整理
派遣スタッフがより一層はたらきやすくするために、労働環境の整理をすることも大切なポイントです。適正な就業が行えるよう、受け入れ前の準備から受け入れ後の状況の確認まで行うようにしましょう。
個人情報の保護
派遣先企業は、派遣スタッフと雇用関係がないため、個人情報の詳細は原則入手できません。就業管理に必要な個人情報がある場合は、収集する目的、必要な情報、管理方法などを明示した上で、派遣元を通じて派遣スタッフの同意を得て取得する必要があります。もし個人情報を入手した場合は、自社社員の個人情報と同様、厳重な管理が必要です。
派遣先責任者に関するよくあるご質問
派遣先責任者を選任するには正しい知識を身に着ける必要があります。派遣先責任者に関する、よくあるご質問とその回答をご紹介します。
Q. 派遣先責任者は必ず選任しなければなりませんか?
A.原則、派遣先責任者は必ず選任しなければなりません。派遣先責任者の選任を怠った場合には、派遣先企業は、30万円以下の罰金に処せられることがあります(法第61条第1項第3号)。ただし派遣先が雇用する社員および派遣スタッフの人数が5人以下の場合は選任不要です。
Q.派遣先責任者は正社員でなくても可能ですか?
A.正社員でなくても派遣先責任者になることは可能です。しかし、派遣会社との連絡調整、苦情受付などを的確かつ迅速に判断し、対応しなければなりません。そのため契約スタッフ、パート、アルバイトに比べると、正社員のほうがより素早い対応ができる可能性があります。
Q.派遣先責任者は兼任できますか?
A.指揮命令者や苦情申出先と兼任することは可能です。派遣スタッフが就業する事業所ごとに派遣先責任者の選任が必要です。複数の事業所の派遣先責任者を兼任することはできません。
Q.派遣先責任者は事業所に常駐する必要がありますか?
A.役割の一つに派遣スタッフの勤怠管理があるため、実態を把握するために基本的には常駐できる社員を選任することが求められます。
Q.派遣先責任者に関する届出は必要ですか?
A.届出の義務はありませんが、派遣先管理台帳や労働者派遣契約(個別契約書)には記載します。また、社内や派遣元への周知も行いましょう。
派遣先責任者の役割について理解する
派遣スタッフの受け入れの際に必ず選任しなければならない派遣先責任者には、多くの役割があります。派遣スタッフのはたらく環境の整備から、契約書などの事務的な業務までさまざまです。派遣スタッフを適正に受け入れながら業務に携わってもらうために、派遣先責任者の役割についてしっかり理解をしましょう。
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