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派遣スタッフ契約終了時に派遣先がすべきこととは?ポイントをご紹介

公開日:2023.08.08

法律

派遣契約には契約期間があります。当初の契約どおりの期間で終了するケースがあれば、契約を更新するケースもあります。派遣契約を終了する場合、さまざまな点に注意する必要があります。本記事では、派遣契約の終了に際して派遣先企業が留意すべき法律上のポイントを解説します。

派遣スタッフの契約終了までの流れ

一般的に、派遣契約は3ヶ月単位で更新することが多く、人材派遣会社は派遣期間終了の1ヶ月以上前までに、派遣先企業に「当初の契約どおりの期間で終了するか、もしくは更新するか」を確認します。
同時に、派遣スタッフにも契約の継続について意思確認します。派遣先企業と派遣スタッフの双方が更新を希望すれば、同じ派遣先企業での派遣契約が継続し、契約を更新しない場合は、派遣期間の最終日をもって満了となります。

派遣スタッフの勤務開始から契約終了までの一連の流れは、以下の通りです。

  1. 派遣先企業での就業開始
  2. 派遣期間の終了
  3. 期間延長または契約終了

派遣スタッフが契約終了となるケース

派遣スタッフが契約終了となるケースとして、主に以下の3つがあります。

  • 契約期間の終了
  • 派遣スタッフの都合
  • 派遣先企業の都合

それぞれについて解説します。

契約期間の終了

契約期間の終了には、2つのパターンがあります。1つは、最初に契約していた雇用期間が満了となるケースです。例えば、契約期間が4月1日~6月30日と設定されていて、契約を更新しなかった場合、そのまま契約は終了となります。

もう1つは、いわゆる「3年ルール」です。労働者派遣法では、同一の派遣先企業において継続して派遣スタッフを受け入れることができる期間(派遣可能期間)は原則3年までです。平成27年9月30日に「労働者派遣法改正法」が施行されて、この期間制限が設けられました。

派遣先企業と派遣スタッフが契約更新を望んでいたとしても、派遣可能期間を超えて就業し続けることはできません。

ただし、以下の例に当てはまる場合は期間制限の対象外となります。

  • 期限の設けられた有期プロジェクトに従事し、仕事の終了日が定められている
  • 日数限定業務(1ヶ月の勤務日数が通常の労働者の所定労働日数の半分以下、かつ、月10日以下である)
  • 出産前後、育児、介護により休業している社員の代わりとして派遣されている
  • 派遣元で無期雇用されている派遣スタッフ
  • 60歳以上の派遣スタッフ

派遣スタッフの都合

派遣スタッフが契約の更新を希望しない場合は、契約終了となります。例えば、出産や子育て、介護といった家庭の事情や、自身の健康状態によって、勤務が難しくなったなどのやむを得ない理由が考えられるでしょう。

派遣先企業の都合

派遣先企業の都合により契約が終了するケースもあります。派遣先企業が新たに社員を採用した、繁忙期が落ち着いて社員だけで業務に対応できるようになった、などの事情が考えられます。

契約終了時に派遣先がすべきこと

派遣先企業と派遣スタッフの契約終了には、「契約期間満了」と「契約の途中解除」の2通りがあります。派遣先企業がそれぞれの契約終了時にすべきことについて、解説します。

契約期間満了の場合

契約期間満了の場合で、派遣先企業がすべきことして以下の2つがあります。

  • 派遣元に派遣スタッフの評価を報告
  • 派遣スタッフへの感謝を伝える

それぞれについて、解説します。

派遣元に派遣スタッフの評価を報告

派遣スタッフと雇用契約を締結しているのは人材派遣会社ですが、派遣先企業に派遣スタッフの評価に関する協力が求められることがあります。

厚生労働省は2020年4月に労働者派遣法を改正し、「同一労働同一賃金」の原則を施行しました。これは非正規労働者の労働条件を改善し、不合理な待遇差をなくすことを目指したものです。この改正により、派遣スタッフに対しても、派遣先社員との賃金などの差をなくし、公平な待遇を確保することが求められました。

そのため人材派遣会社が派遣スタッフを評価し、賃金を決定することが義務付けられていますが、公正に評価するためには、実際に派遣スタッフが就業している派遣先企業からの情報提供が必要です。また、派遣先企業には派遣会社からの「派遣スタッフの業務遂行状況などの情報提供」の求めに応じる配慮義務が課せられています。

※引用:厚生労働省|派遣先の皆さまへ

派遣スタッフへの感謝を伝える

派遣契約終了を告知する際には、伝え方も重要です。雇用主は人材派遣会社ですので、契約終了については人材派遣会社から派遣スタッフに告知します。
人材派遣会社から派遣スタッフにその旨が伝えられたことを確認してから、派遣先企業からも派遣スタッフに直接感謝の気持ちを伝えましょう。「これまで本当にありがとうございました」「最後までよろしくお願いします」などと声をかけることで、引継ぎに関してもスムーズに進めることができるでしょう。

契約の途中解除

原則、派遣先企業が契約期間の途中で契約を解除することはできません。しかし、経営難による事業縮小などにより、やむを得ず契約を途中解除せざるを得ない場合もあります。

その際は、厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」によって、派遣先企業はさまざまな措置を講じる義務が生じます。

契約終了の告知

派遣先企業が派遣契約の途中解除をする場合、人材派遣会社に相当の猶予期間(30日前まで)をもって途中解除の申し入れをし、了承を得る必要があります。この申し入れが遅れた場合、その間の賃金相当額を人材派遣会社に賠償する義務が生じます。

派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6(2)では、「派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行うこと。」としています。

「派遣先が講ずべき措置に関する指針」は法律上の義務ではありませんが、違反すると都道府県の労働局からの指導監督の対象となります。

契約解除理由の明示

契約の途中解除の理由を人材派遣会社から求められた場合、派遣先企業には説明の義務が生じます。

派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6(5)では、「派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行う場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を当該派遣元事業主に対し明らかにすること」としています。

賃金30日分相当の損害賠償等の支払い

労働者派遣法において、派遣先企業は派遣契約を途中解除する場合、自社の関連会社といった代わりの就業先をあっせんするなど、新たな就業先を確保することが求められます(労働者派遣法第29条の2)。

新たな就業先が確保できない場合は、契約終了の少なくとも30日前までに人材派遣会社に途中解除の申し入れをすることが求められます。この申し入れが遅れた場合、派遣スタッフの30日分以上の賃金に相当する額を損害賠償として人材派遣会社に支払う義務が生じます(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6(4))。

派遣スタッフの契約終了時の留意点

派遣スタッフの契約終了時の留意点として、以下の2つがあります。

  • 契約期間や条件を再度確認しておく
  • 業務の引継ぎ準備などをしておく

それぞれについて解説します。

契約期間や条件を再度確認しておく

派遣契約を更新せず終了することは、契約の途中解除にはあたりません。しかし、「労働基準法第14条第2項」では、契約を3回以上更新、もしくは勤務が1年以上継続した派遣スタッフの契約を終了する場合、契約終了の旨を30日以上前に伝えなければなりません。つまり、派遣契約を更新するか否かは、遅くとも派遣期間終了の30日以上前には確定しておくよう配慮する必要があります。

また、派遣先企業が派遣契約を途中解除できる条件は、人材派遣会社との契約内容で通常は定められています。例えば、経営難による事業縮小や倒産リスクなどがある場合、相当の猶予期間(30日前まで)を設けて途中解除の申し入れをする、などです。

具体的には、派遣契約を途中解除するためには以下の条件を満たさなければなりません。

  • 契約内容に従って人材派遣会社との合意を得ること
  • 相当の猶予期間をもって、人材派遣会社に解除の申し入れを行うこと

業務の引継ぎ準備などをしておく

業務の引継ぎ準備は、以下のような流れで進めます。

  1. 引継ぎ事項を整理する
  2. 後任を手配する
  3. 引継ぎのスケジュールを立てる
  4. 引継ぎの資料を作成する
  • 引継ぎ事項を整理する

まずは、現職の派遣スタッフが担当している業務の棚卸しを実施します。引継ぐべき内容の整理と説明を行います。

  • 後任を手配する

引継ぎ事項を整理したら、誰に引継ぐかを決めます。すべての業務をそのまま後任に引継ぐのではなく、内容や量によっては一部を別の社員へ振り分けるなど調整しましょう。

  • 引継ぎのスケジュールを立てる

現職の派遣スタッフから後任に直接引継ぎを行ってもらう場合は、現職と後任の派遣期間が重なるように調整することが必要です。

  • 引継ぎの資料を作成する

現職の派遣スタッフが退職したあとに後任が見返すために、引継ぎの資料(マニュアル)を用意しておきます。引継ぎの資料の作成にあたっては、はじめてその業務を担当する人の視点で、誰が見ても分かるようにまとめることが大事です。

派遣スタッフの契約終了時に派遣先企業がすべきことについて理解する

突発的な業務発生時、急な欠員補充が発生する場合など、人材派遣サービスは有効な打ち手となります。採用や労務管理など、人材派遣会社が対応することも多く、さまざまな工数を軽減し人材を活用することが可能です。
その一方で、労働者派遣法の改正などにより、派遣契約の途中解除を行う場合は、あらたな就業先のあっせんや損害賠償の支払いなどが派遣先企業に義務付けられるようになりました。留意点をきちんと把握し、派遣スタッフとの契約終了時には、ぜひ参考にしてください。

パーソルテンプスタッフではさまざまな職種の人材派遣サービスを提供しています。派遣スタッフをお探しの際はぜひご相談ください。

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