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リスキリングとは?導入による企業のメリットと注意するポイントを解説

公開日:2024.07.12

企業の課題

近年、急速な技術の進化と経済の変化により、各企業は従来のビジネスモデルを再考し、あらたな競争力を獲得するためにさまざまな取り組みを行っています。
その中でも、特に重要視されているのが「リスキリング」です。
日々変化する社会に対応するために、企業は社員のスキルをアップデートし、リスキリングは欠かせない取り組みとなっています。本記事では、リスキリングの重要性や実施方法などについて解説します。

リスキリングとは

リスキリングとは、新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させることです。
また、近年では、特にデジタル化と同時に生まれるあたらしい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指すことが増えています。
リスキリングはこれまで社員が自主的に自身のために行っていたキャリアアップとは異なり、企業側も実施を支援する必要があります。

リカレント教育との違い

リカレント教育では、学校教育を修了した社会人が、その後も学びを続け、就労と学習のサイクルを繰り返します。リカレント教育は、その人が持っているスキルや知識を維持・更新に焦点を当てている一方、リスキリングは急速に変化する市場環境に対応するために、既存のスキルを更新するだけでなく、あらたなスキルや能力の習得を重視している点が異なっています。

生涯学習との違い

生涯学習は、より広い学びを指します。個人が一生涯にわたって自己啓発や成長をするための学習活動全般を指し、趣味や興味に関しての学習も含まれます。一方リスキリングは、ある特定の目標やビジネスのニーズに基づいて行われる学習のため、主に職場で必要とされるスキルや能力の獲得を目的とした学びである点が異なります。

アップスキリングとの違い

アップスキリングは、自身の持っている既存のスキルを磨き、より高度な職務を遂行できるようにするためのプロセスを指します。リスキリングと同じように、職務に応用できる技術や業務上の要求に対応できうるようにするために重要です。リスキリングはあらたなスキルを向上させる一方、アップスキリングは主に既存のスキルの向上に焦点を当てている点が異なります。

リスキリングが必要とされる理由

2020年開催の世界経済フォーラムの年次大会(ダボス会議)にて、目標として「第4次産業革命に対応したあらたなスキルを獲得するために、2030年までに10億人をリスキリングする」が掲げられました。これを機に各国の企業がリスキリングのための教育プログラムを提供するようになりました。

その動きは日本国内でも見られ、2022年10月の岸田首相の所信表明演説では「リスキリング支援で人への投資を5年間で1兆円投じる」といった発言もありました。企業は社員のリスキリングに取り組める環境の整備が求められています。はたらく環境や求められるスキルが変化しており、リスキングが求められているのです。具体的にはどのような理由があるか解説します。

DXの推進

企業が会社全体のデジタル化を進め、変革を起こし、競争力を高めるのがDXです。このDXを推進するためには、デジタルを活用できる社員を増やさなければなりません。これまで以上にデジタルの知識や技術を身に付けてもらう必要があり、社員のリスキリングが重要になってきます。スキルアップして、これまで社内で扱わなかったあたらしい技術やツールを理解し業務を進め、業務効率を高められます。

IT人材の不足

エンジニア人材の需要が増加する一方で、求められるスキルが高まりIT人材不足が発生しています。IT人材不足を解消するためには、専門職だけでなく、全社員を対象にデジタルスキルを向上させる必要があります。具体的には、各部門やポジションに応じたデジタルツール活用、システムの基本的な操作方法を学習する機会を提供し、デジタルリテラシーを高めます。このようにして、全社員がデジタル技術を理解し、IT業務に対する理解が深まるため、企業全体のIT人材不足が解消されます。

エンジニア人材不足について、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>エンジニア人手不足の現状と原因、解決方法を徹底解説

人材の定着と満足度の向上

リスキリングの実施により、社員のキャリアアップを促し、成長機会を提供することで、企業の魅力度の向上につながります。社員があたらしいスキルや知識を獲得して、仕事の満足度が向上することで、離職率の低下も期待できるでしょう。

市場の変化への迅速な適応

常に起こる市場の変化に対応するために、リスキリングは重要なものと捉えられています。あらたな技術の出現や競合他社の動向によって、企業は社員のスキルを迅速にアップデートし、市場の要求に応える必要があります。
例えば、デジタル技術や人工知能、自動化技術などの急速な進化により、業界や職種の要件が変化しています。こうした変化に伴い、社員があたらしいテクノロジーに適応し、活用するためのデジタルスキルやソフトスキルが求められるようになりました。決められた手順に基づいて職務を実行する役割はAIやロボットが担うようになると、社員にはあたらしい付加価値を生み出す方向へのリスキリングが求められるようになるのです。

はたらき方の多様化

働き方改革、新型コロナウィルス感染症などの影響で、はたらき方は変わりつつあります。リモートワークの導入、社内や顧客とのオンラインツールでのやり取りが広く普及しました。

企業にワーク・ライフ・バランス実現の取り組みが求められ、リモートワークやフレックスタイムなどの、従来のやり方に縛られない柔軟なはたらき方が広がると、社員はそのはたらき方に合った自己管理能力やテレワークに適応したデジタルスキルの習得が求められるようになりました。これにより、社員個人のスキルがより重要と考えられるようになったのです。

ダイバーシティについて、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>ダイバーシティとは?必要性や取り組み事例などをご紹介

ワーク・ライフ・バランスについて、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>ワーク・ライフ・バランスとは?概要や取り組み時の留意点について解説

ハイブリッドワークについて、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>ハイブリッドワークとは?メリットや導入する際のポイントを解説

リスキリングが企業にもたらすメリット

リスキリングが企業にもたらすメリットはどのようなものがあるでしょうか。それぞれ例を挙げて解説します。

生産性の向上

最新のスキルや知識を得ることで、業務を効率的に遂行できるようになります。あらたな技術や知識、業務手法の導入により、作業プロセスが改善され、生産性の向上が期待できます。

生産性向上について、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>生産性向上の重要性とは?目的や具体的な施策、助成金制度を徹底解説

社員のスキル・キャリアアップ

リスキリングを通じて、自身の成長やキャリアアップの機会を得られます。
あらたなスキルや知識の習得により、将来のキャリアパスにおいても有利になるでしょう。

あらたな価値やイノベーションの創出

リスキリングによって、あらたなスキルや知識を獲得する機会を提供すれば、社員はこれまでと異なるあらたな視点でアイデアの創出が可能になります。あたらしいアイデアや視点から生まれるイノベーションは、企業の競争力を高め、市場での差別化の促進が期待できるでしょう。

採用コストの削減

これまでにないスキルを持った人材を求める場合、一般的には新規採用を検討する場合が多いでしょう。しかし、リスキリングを行えば、在籍している社員のスキルを強化し、企業は外部からの人材採用コストを削減できます。既存の社員は企業文化や業務にすでに精通しているため、あらたな人材を採用するよりも育成にかける時間やリソースの削減ができるのです。

採用コストについて、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>採用コストとは?相場や削減方法について徹底解説

企業がリスキリングを導入する際の流れ

企業が実際にリスキリングを実施する際にはどのような流れで導入するのでしょうか。3つのステップを解説します。

STEP1.リスキリングの定義設定

はじめに、リスキリングの対象となる社員や部門を定めます。リスキリングの目的、現在の社内で必要なスキルのうち、すでに習得しているものと不足しているものを明確にします。

STEP2.プログラムの策定

リスキリングを行うために、どのようなトレーニング、ワークショップを実施するのか、コース受講はどういったものを用意するかなど、適切な学習方法を選定します。

STEP3.実施機会の提供とフィードバック

スキルを習得するために、リスキリングの実施機会を提供します。ただプログラムを策定するだけではなく、はたらきながら受講するための適切な時間枠を検討する、リソースを確保するなど、学習に集中できる環境を整えるようにしましょう。

後日、フィードバックやフォローアップの機会も設け、学習の成果を確認できるようにします。学んだスキルや知識を実務で実践する機会が設けられているか、実務での経験を通じて得られるフィードバックの仕組みがあるかなどを確認してください。

企業がリスキリングを導入する際のポイント

企業がリスキリングを導入する際に、気を付けるべきポイントが大きく3つあります。それぞれ解説します。

教育体制を整える

リスキリングプログラムの成功には、適切な教育体制が不可欠です。トレーナーやインストラクターの育成や、適切な学習資材の準備、効果的な学習方法の提供など、教育環境を整える必要があります。社員が必要とするスキルや知識を獲得するための教育・トレーニングプログラムが提供されているかどうかは、定期的にチェックをする必要があります。

社員のモチベーション維持を行う

リスキリングプログラムに参加し続けるためには、モチベーションの維持が重要です。モチベーション維持ができないと、学習の継続が難しくなるばかりでなく、リスキリングで習得したスキル・知識を生かして転職してしまうリスクが高まります。自社ではたらきつづける意欲を持ち続けてもらえるよう、適切なサポートやフィードバックを提供し、学習の成果を認めることが必要です。

社外リソースを有効活用する

社外リソースの有効活用もポイントの一つです。社員に取得してほしいスキルに関する外部の専門家や教育機関などのリソースを積極的に活用しましょう。社外のリソースから得た専門知識や経験の活用で、より効果的なリスキリングプログラムの実施が可能です。

リスキリングを導入し企業成長につなげる

DXの推進やIT技術の進化でこれまでにない変化を遂げている業界が少なくない中、企業が行うリスキリングは、企業にとっても社員にとっても、重要な取り組みになります。あたらしいことを学び、あたらしいスキルを身に付け実践するリスキリングは、今在籍している人材を最大限に活用できます。まずは、社内のどんな業務でリスキリングが必要かをよく検討し、プログラムを策定しましょう。リスキリングは、自社の成長と社員のモチベーション向上につなげるカギを握っています。

ミドルシニアのリスキリングについてインタビュー記事があります。ぜひご覧ください。
>>【ナレッジインタビュー】ライフシフトラボ 都築氏 「磨きなおす」ミドルシニアのリスキリング
>>【ナレッジインタビュー 】仕事旅行社 田中氏 ミドルシニアからワクワクはたらく日本を目指す

またパーソルテンプスタッフはHRに関するセミナー「HRナレッジセミナー」を開催しています。リスキリングについてより詳しく知りたい方は、こちらのアーカイブ動画をご参照ください。
>>HRナレッジセミナー|「リスキリング」を科学する

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