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ダイバーシティとは?推進するメリットや重要性、取り組み事例をご紹介
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ダイバーシティとは多様性を意味し、ビジネスの場では、性別や年齢、人種、国籍、はたらき方など、さまざまな違いを持つ人材が共存しながら企業の成長を目指す考え方を指します。近年は、インクルージョン(受容・包摂)やエクイティ(公平性)と組み合わせたDE&Iとしても注目されており、SDGsやESG投資の観点からも、その重要性はますます高まっています。
この記事では、ダイバーシティの意味や種類、注目されている背景に加え、国や企業が行っている具体的な取り組み、ダイバーシティ経営によって得られるメリット、そして推進する際の課題や意識すべきポイントについて、分かりやすく解説します。
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ダイバーシティとは
ダイバーシティ(diversity)とは、ラテン語のdi:バラバラに+verse:向きを変える(英語のturnと同義)が語源で、日本語では多様性、相違、種々などを意味します。ビジネスの分野では、人々の多様性を認め、さまざまな人材が共存している状態を表す際に、この言葉が用いられます。
外見のみならず内面的にも多様な人材を積極的に登用し、個々の能力を最大限に活かす取り組みを指します。企業がダイバーシティを推進すれば、自社に合った人材の確保や生産性向上といったメリットが期待できます。
多様性の尊重は、企業の発展に欠かせない要素です。また、ダイバーシティの視点から、女性が活躍できる環境を築くことも求められます。はたらきたいと思っているすべての女性が個性と能力を十分に発揮できる社会の実現を目指す女性活躍推進法改正もそのための取り組みの一つです。
女性活躍推進法改正については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
>>女性活躍推進法の改正内容と企業の対応ポイント|企業が取り組むべきこととは
ダイバーシティとはさまざまな人材が共存している状態ですが、「表層的なダイバーシティ」と「深層的なダイバーシティ」の2つに分けられます。
表層的なダイバーシティ
表層的なダイバーシティは、外見などから比較的判断しやすい、目に見える違いのことです。年齢や性別、人種や国籍、障害の有無など、属性としての多様性といえるもので、雇用の公平性など企業の社会的責任にも直結します。
具体的な例としては次のようなものが挙げられます。
- 年齢
- 性別(生物学的な性)
- 人種、国籍
- 障害の有無
- 身体的特徴(身長、髪の色など)
- 使用言語(母国語や日常的に使う言語)
本人の意思で変えることが難しい、あるいは変えられない生来的な要素が多いことが、表層的なダイバーシティの特徴です。企業がこれらの違いを前提として受け止め、公平な採用や評価を行うことが、ダイバーシティ推進の第一歩となります。
深層的なダイバーシティ
深層的なダイバーシティは、外見からは分かりにくい内面的な多様性を指します。価値観や信条、経験やスキル、コミュニケーションの取り方など、一人ひとりの内面にある違いがここに含まれます。目に見えにくいからこそ理解が難しい面もありますが、多種多様な人材を活かす上で、深層的なダイバーシティへの理解は欠かせません。
具体的な例としては次のようなものがあります。
- 価値観・信条:仕事観、人生の優先順位、宗教
- 経験・スキル:職務経歴、専門知識、学歴
- パーソナリティ:内向的・外向的、慎重派・楽観派
- SOGI:性的指向(好きになる性)や性自認(心の性)
- はたらき方:フルタイム、時短勤務、在宅勤務やテレワーク
- コミュニケーションの取り方:直接的を好む、間接的を好む
- ライフステージ:子育て中か、家族の介護を担っているか
- キャリア志向:管理職を目指したい、専門職としてスキルを深めたい
こうした深層的な違いを理解し、尊重し合える環境を整えることで、多様な視点やアイデアが生まれやすくなります。その結果、新しい発想による商品やサービスの開発につながり、企業の成長や競争力の向上にも結びついていきます。
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インクルージョンやエクイティとの関係性
ダイバーシティは、人材の多様性そのものに目を向ける考え方です。一方、その多様性を組織の力として発揮していく上では、インクルージョンやエクイティの視点も欠かせません。
ここでは、ダイバーシティと密接に結び付くインクルージョンとエクイティの意味や役割について解説します。
インクルージョンとは
インクルージョンとは、包括、含有、一体性を意味する言葉です。組織や社会は、性別や年齢、国籍、障害の有無などが異なる多様な人たちで構成されているという前提に立つ考え方です。その上で、マジョリティ(多数派)やマイノリティ(少数派)という区別にとらわれず、一人ひとりが組織の一員として尊重され、受け入れられている状態を目指します。
これをビジネスの場で言い換えれば、国籍や性別、年齢などの違いに関係なく、多様な人材が安心して意見を伝え、能力や経験を発揮できる環境を整えることです。例えば、会議で立場の弱い人の発言が埋もれないように工夫したり、育児や介護と両立しながらはたらける制度を用意したりすることも、インクルージョンの一例といえるでしょう。
ダイバーシティがさまざまな違いを持つ人材がいるという状態そのものだとすれば、インクルージョンは、その違いを前提に一人ひとりが受け入れられ、活躍できる状態をつくることです。
多様な人材を集めるだけでは十分ではなく、インクルージョンを意識した組織づくりを進める上では、マジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)の境界を強調し過ぎない姿勢を意識していかなければなりません。そのため、近年ではダイバーシティとインクルージョンをD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)とセットにして実施するケースが多く見られます。
エクイティとは
エクイティは、公平性を意味する言葉です。一人ひとりの違いや置かれた状況、ニーズを踏まえた上で、機会や情報、教育、サポートなどのリソースを公正に配分・提供しようとする考え方を指します。全員に同じ条件を一律に与えることよりも、何があればその人が力を発揮できるのかという視点から環境を整えていく点が特徴です。
昨今、このエクイティの考え方を踏まえた枠組みとして、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)という言葉が広がりつつあります。DE&Iは、社会には不平等な構造があり、誰もが同じスタートラインに立っている訳ではないという現実を前提としています。そのため、すべての人に同じツールや制度を用意するのではなく、それぞれの違いや状況に配慮して必要な支援を変えていくことを重視します。
多様な人々(ダイバーシティ)が集い、公正な機会(エクイティ)が提供され、全員が尊重され活躍できる(インクルージョン)状態を目指す取り組みが、DE&Iです。つまり、公平な環境を整備することで個々が活き活きとはたらき、成果を出すための考え方だといえます。DE&Iを実践すれば、組織としても持続的な成長を目指しやすくなるでしょう。
DE&Iについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
>>【ナレッジコラム】対話からはじめる本気のDE&I推進 vol.001育休復帰社員への対応は、忖度じゃなく本音を聴き、後押しすることが大切!
ダイバーシティが注目されている背景
ダイバーシティは、今後の日本企業にとって必要性の高いものとされています。ではなぜ、ダイバーシティの推進が急務なのでしょうか。その背景には、以下の4つの要因が挙げられます。
- グローバルな競争の激化
- 産業構造変化の加速化
- 少子高齢化による労働人口の減少
- 企業の長期的な存続にかかわる
それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。
グローバルな競争の激化
近年、国境を越えた取引や、企業の海外進出などによる市場のグローバル化が進んでいます。こうした市場環境の変化に柔軟に対応すべく、海外の文化や言語に対応できる人材が求められています。
グローバルな視野で競争力を確保するには、多種多様な文化的背景や価値観を持つ人材を採用し、活躍できる土壌を整える必要があります。つまり、ダイバーシティを推進することが市場のグローバル化への対応につながるのです。
産業構造変化の加速化
インターネットの普及以降、オンラインでのビジネスが加速し、人々のニーズや価値観、消費行動は多様化しました。それらの変化を素早く察知し、顧客に刺さるサービスを生み出していくために、多様な視点や柔軟性、想像力を持った人材の重要性は高まり続けています。
しかし、日本企業の旧来の人事制度である年功序列型では、多様な人材の確保が難しい場合もあります。ダイバーシティの推進は、変わりゆくニーズや消費行動を迅速にすくい取ることにもつながります。
少子高齢化による労働人口の減少
ダイバーシティが注目されている背景の一つに、少子高齢化に伴う労働人口の減少があります。厚生労働省の資料によると、日本の人口は今後減少していく見通しで、特に15歳~64歳の生産年齢人口は毎年およそ60万人、割合にして1%程度のペースで減っていくとされています。
※出典:厚生労働省「人口減少社会への対応と 人手不足の下での企業の人材確保に向けて」
生産年齢人口が減るということは、企業が確保できる人材の母数が小さくなるということです。すでに多くの業界で人材不足が課題となっており、今後は従来と同じ前提で採用や人材戦略を考えることが難しくなっていきます。
こうした状況の中、女性やシニア、障害のある人、外国籍の人材など、これまで十分に活用されてこなかった層を含めて、さまざまな人たちがはたらきやすい環境を整えることの重要性が増してきています。人材の選択肢を広げ、多様な人材が力を発揮できるようにするダイバーシティの推進は、企業にとって不可欠な取り組みなのです。
企業の長期的な存続にかかわる
SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資(環境・社会・ガバナンス)の考え方が広まり、企業を評価するものさしは、売上や利益だけではなくなってきました。環境への配慮やガバナンスに加え、人権尊重やダイバーシティへの取り組みも、社会的な責任として重視されています。
投資家や金融機関は、中長期的に見て持続可能な企業かどうかを判断する際に、ダイバーシティや人権に関する取り組みも評価対象としています。消費者や求職者も、自分が応援したい企業やはたらきたい企業を選ぶときに、こうした取り組みを重視する傾向が強まっています。
ダイバーシティやインクルージョンに消極的な企業は、優秀な人材の確保が難しくなったり、社会からの信頼を失ったりする恐れがあります。一方、多様な人材が安心して力を発揮できる環境づくりに継続して取り組む企業は、中長期的にブランド価値や企業価値を高めやすくなっています。
つまり、ダイバーシティや人権への配慮は、企業の長期的な存続や持続可能性(サステナビリティ)に直結するテーマです。短期的な成果だけに目を向けるのではなく、自社がどのような社会的責任を果たしていくのかという視点から経営レベルで方針を定め、継続的な取り組みとして位置付けていくことが大切です。
ダイバーシティ推進のための取り組み
ダイバーシティの重要性が高まる中、国も政策や制度の面からその推進を後押ししています。経済産業省は、多様な人材の力を生かしてイノベーションや価値創造につなげるダイバーシティ経営の推進に取り組んでおり、ガイドラインや研修、診断ツールなどを通じて企業を支援しています。また厚生労働省も、雇用の場における均等な機会の確保や、多様な人材が安心してはたらける環境づくりに向けた施策を進めています。
ここでは、国レベルで進められているダイバーシティ推進の取り組みを整理した上で、実際に企業がどのような工夫や制度設計を行っているのかを解説します。
経済産業省の取り組み
経済産業省では、指針の提示から表彰制度、支援ツールの提供まで、さまざまな施策を展開しています。その代表的な取り組みと概要をご紹介します。
ガイドラインの策定
「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」
ダイバーシティ2.0行動ガイドラインは、ダイバーシティを単なる人事施策にとどめず、イノベーションや企業価値の向上につなげるための考え方や具体的なアクションを示したガイドラインです。経営トップのコミットメントや人材ポートフォリオの見直しなど、実務レベルで取り組むためのポイントが整理されています。
※出典:経済産業省「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」
「ダイバーシティレポート」
ダイバーシティ経営に取り組む企業の事例や経営成果との関連分析などを取りまとめた報告書です。多様な人材の活躍が、売上や利益、採用・定着といった指標にどのような影響を与えているかをデータで示しており、自社の取り組みを検討する際の参考資料として活用できます。
※出典:経済産業省「ダイバーシティレポート」
なでしこ銘柄・共働き・共育て支援企業
東京証券取引所と共同で、女性活躍推進や共働き・共育て支援に積極的に取り組む上場企業を選定・公表する制度です。投資家にとっては企業を評価する新たな指標となり、企業側にとっては、女性の活躍やダイバーシティを経営戦略として位置づけるきっかけにもなっています。
※出典:経済産業省「なでしこ銘柄・共働き・共育て支援企業」
支援・啓発活動
「中小企業向け支援(ダイバーシティ経営シートの手引)」
ダイバーシティ経営にこれから取り組む中堅・中小企業向けに、多様な個を活かす経営の第一歩として、ダイバーシティ経営診断シートやその手引きを提供しています。自社の現状を自己診断し、今後の改善ポイントを整理する上での実務的なチェックリストとして活用できる内容です。
※出典:経済産業省「中小企業のためのダイバーシティ経営」
「人材育成の支援(女性起業家・リーダー向けプログラム)」
女性が管理職や役員、起業家として活躍する上で必要なスキルやネットワーク構築を支援するため、女性起業家の支援や、企業・業種の垣根を越えたリーダー育成プログラム(WILなど)を実施しています。交流やメンタリングを通じて、次世代リーダー候補の成長を後押ししている点が特徴です。
- ※出典:経済産業省「女性起業家支援」
- ※出典:経済産業省「女性リーダー育成研修」
「フェムテック(Femtech)の活用支援」
妊娠・出産、更年期、月経など、女性特有の健康課題と仕事の両立を支えるため、フェムテック製品・サービスの導入や実証事業を支援しています。職場での健康課題の見える化、誰もが長く活き活きとはたらける環境づくりを後押しする取り組みです。
※出典:経済産業省「フェムテックを活用した働く女性の就業継続支援」
厚生労働省の取り組み
厚生労働省は、雇用の場における均等な機会の確保や、多様な人材が公平にはたらける環境づくりを進めています。ここでは、特にダイバーシティ推進にかかわりの深い主な取り組みをご紹介します。
女性の活躍推進
「えるぼし認定」
女性の活躍推進に関する取り組み状況が優良な企業を、一定の基準に基づいて認定する制度です。採用や登用、はたらき方などの取り組みを見える化し、求職者や取引先にも分かりやすく伝えられるようにしています。
※出典:厚生労働省「えるぼし認定」
「くるみん認定」
子育てサポート企業として、仕事と育児の両立支援に積極的に取り組む企業を認定する制度です。育児休業制度の利用促進や柔軟な勤務制度の整備など、子育て期の社員を支える環境づくりを評価しています。
※出典:厚生労働省「くるみん認定」
「両立支援等助成金」
育児や介護と仕事の両立に配慮した制度の導入・運用に取り組む企業を対象に助成金を支給する制度です。中小企業を含め、両立支援に取り組みやすくすることを目的としています。
※出典:厚生労働省「両立支援等助成金」
女性の活躍推進については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
>>女性活躍推進法の改正内容と企業の対応ポイント|企業が取り組むべきこととは
障害者雇用の推進
「障害者雇用促進法」
障害者雇用促進法に基づき、一定規模以上の企業には、障害のある方を雇用する義務が課されています。厚生労働省は、この義務としての側面に加え、職場定着のための助成金や相談窓口の整備など、支援の面からも取り組みを進めています。
※出典:厚生労働省「障害者雇用促進法」
「障害者雇用対策」
障害のある方が適性に応じた職務に就き、能力を発揮し続けられるよう、職場環境の整備や雇用管理の工夫を促す情報提供も行っています。
※出典:厚生労働省「障害者雇用対策」
LGBTQ(性的マイノリティ)に関する取り組み
性的指向や性自認に関する理解が広がる中、厚生労働省は主にハラスメント防止と就業環境整備の観点から、企業に対して配慮を求めています。また、相談窓口の周知や管理職向けの研修など、企業が職場環境の整備に取り組む際のポイントもまとめています。
※出典:厚生労働省「性的マイノリティ等多様な人材が活躍できる職場環境」
その他の多様な人材への支援
この他にも、厚生労働省は、外国人労働者や高齢者、非正規雇用ではたらく人など、多様な人材が公平に能力を発揮できるよう、さまざまな制度や支援策を整備しています。
企業の取り組み
ダイバーシティ推進には、国の方針だけに頼るのでなく、企業が自らの経営課題として取り組むことが欠かせません。
ここでは、パーソルグループの事例をもとに、企業がどのようにダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進しているのかを見てみましょう。
トップのコミットメント
パーソルグループでは、海外を含むグループ共通のDE&Iに関する考え方をまとめたポリシーを策定し、日本語版と英語版を公開しています。
また、女性管理職比率の目標値を設定してモニタリングを行い、役員賞与やLTI(長期インセンティブ)の評価指標に組み込むことで、経営レベルでのコミットメントを示しています。
国内グループ横断で女性活躍を推進するジェンダーダイバーシティ委員会を設置し、女性管理職比率向上に向けた施策の検討と実行にも積極的に取り組んでいます。
制度整備
制度面では、多様な属性や価値観、能力を持つ人材が力を発揮できるよう、はたらき方の選択肢を広げる制度整備も進めています。
例えば、ドレスコードの原則自由化や複業制度、フレックスタイム制の導入に加え、リモートワークや在宅勤務の環境整備など、柔軟なはたらき方を支える仕組みが整えられています。これにより、一人ひとりの事情に合わせたはたらき方を選びやすい環境づくりを目指しています。
風土構築
制度だけでなく、多様性が尊重される風土づくりも進めています。多様性への正しい理解と受容、アンコンシャスバイアスの自覚と対処を習慣化することを目的に、全社員を対象としたeラーニング(年1回)やマネジメント層向けのDE&I研修を実施しています。
また、みんなでDEIを考える会などの社内イベントを通じて多様性への理解・受容を深めると共に、社員同士の交流の機会も設けています。
※参考:パーソルホールディングス株式会社「Diversity, Equity & Inclusion | PERSOL(パーソル)グループ 」
ダイバーシティ経営の必要性や得られるメリット
経済産業省では、さまざまな違いを持つ多様な人材を許容し、一人ひとりの能力が最大限発揮できる機会を提供することでイノベーションを生み出して価値創造につなげていく経営がダイバーシティ経営であると定義しています。そのさまざまな違いには、性別、年齢、人種や国籍、障害の有無、性的指向、宗教・信条、価値観などだけでなく、キャリアや経験、はたらき方なども含まれます。
企業がダイバーシティを推進すると、労働者の個性が最大限に活かされ、はたらきやすい環境が整備されます。その結果、企業に以下のようなメリットをもたらします。
- 多様なスキルや考え方を持つ人材の確保ができる
- イノベーション創出の促進につながる
- 企業イメージやブランド価値の向上が期待できる
- 企業のリスク管理能力が向上する
それぞれについて解説します。
多様なスキルや考え方を持つ人材の確保ができる
ダイバーシティの推進は、多様な人材の確保につながります。
従来の日本企業では、1日8時間で週5日勤務、終身雇用制が一般的で、仕事と家事を両立したい、ワーク・ライフ・バランスを充実させたいなどの希望を持つ人の雇用は困難な現実がありました。
しかし、ダイバーシティを推進し、社員に合わせた雇用形態を導入すれば、女性やシニア、外国人労働者、障害者など、幅広い属性の人材を採用できる環境が整えられます。多様なスキルや考え方を持った人材を確保することで、革新的・創造的なアイデアの創出も期待できるでしょう。
イノベーション創出の促進につながる
ダイバーシティの推進により、企業には幅広い属性の人材が集まるようになります。社内のカルチャーやパーソナリティが多様化することで異なるスキルや考え方が持ち込まれると、新たな発想や創造性が生まれやすくなります。一人が出した案を別の人が膨らませるなどの環境を整えることで、企業は発展性を持つことができます。つまり、お互いの能力を生かし合えるのです。
内閣府がまとめた「令和元年度 年次経済財政報告」でも、性別、国籍の多様性と企業業績との相関関係が明らかになっています。
※引用:内閣府「令和元年度 年次経済財政報告第2章 労働市場の多様化とその課題」
企業が海外進出を検討する際も、ダイバーシティの推進は不可欠です。国や地域によって消費者のニーズは異なります。企業に異なる人種や国籍の人材がいれば、自分の属性や価値観と似た市場のニーズを理解した上で、適切な施策を展開できる可能性が高まります。多種多様な人材が集まれば集まるほど、さまざまなニーズの把握へとつながり、新たなビジネスチャンスの機会も広がるのです。
企業イメージやブランド価値の向上が期待できる
ダイバーシティへの取り組みは単なる人事施策ではなく、企業の社会的な責任として評価されるようになっています。先に触れたSDGsやESG投資の広がりもあり、多様な人材を尊重し誰もがはたらきやすい環境を整えているかどうかは、投資家や求職者、取引先などが企業を評価する際の大きな視点の一つになりつつあるのです。
そのため、積極的な情報開示でダイバーシティを戦略的に推進していることをアピールすれば、社会的な信頼の向上や、企業イメージ・ブランド価値の向上につながります。多様な人材に選ばれる企業として認知されれば、採用力の強化や既存社員のエンゲージメント向上にもつながり、中長期的な企業価値の向上にもつながるでしょう。
企業のリスク管理能力が向上する
画一性の高い価値観しかない企業にはグループシンキングが生じやすいといわれています。グループシンキングとは、集団で合意形成をすることで個人への無言の圧力を生み、一人ひとりのアイデアよりも質の劣る好ましくない結論が容認されてしまうことです。
例として、リーマンショックなどの厳しい環境変化があったときの時価総額の推移を見ると、女性取締役がいる企業の方がそうでない企業よりも回復が早い傾向が顕著に表れています。
つまり、企業が多様な価値観を持てばリスク管理の面で大きな効果が望めるということです。
ダイバーシティ経営における課題や意識すべきポイント
ダイバーシティ経営は、多様な人材を採用すれば完了するものではありません。文化や価値観の違いからコミュニケーションや人間関係に課題が生じ、社内制度や評価の仕組みが追いつかず、不公平感や不満につながってしまう場合もあります。
ダイバーシティ経営を進める上では、どのような点がつまずきやすいのかを理解し、あらかじめ意識しておくことが重要です。ここでは、よくある課題と企業が押さえておきたいポイントについてご紹介します。
経営陣による言語化・発信が重要
ダイバーシティ経営の課題としてよく挙げられるのが、経営層や管理職のコミットメントが十分でないことです。人事部だけが担当する人事施策として扱われてしまい、現場のマネジャーや社員には浸透しないケースも少なくありません。
そのような形でダイバーシティを進めてしまうと、具体的な行動につながらず、かけ声だけの取り組みと受け取られてしまう恐れがあります。ダイバーシティ経営を全社的な方針として根付かせるためには、経営陣自らが、なぜダイバーシティに取り組むのか、自社にとってどのような価値や必要性があるのかを言語化し、社内外に向けて発信し続けることが重要です。
トップのメッセージや社内向けの説明会などを通じて、経営戦略との関係や期待する行動を具体的に示せば、管理職や現場の一人ひとりが自分の役割としてとらえやすくなり、ダイバーシティ推進の取り組みを実行段階へと進めやすくなるでしょう。
多様性を尊重する組織風土づくり
ダイバーシティ経営を進める上では、制度だけでなく風土面の課題にも目を向ける必要があります。無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)や差別的な言動がハラスメントにつながったり、特定の層を手厚く支援する施策が他の社員から逆差別ととらえられ、不公平感につながったりすることもあります。こうした行き違いが続くと、多様性を尊重するどころか、人間関係の悪化やチームワークの低下を招いてしまいます。
多様なバックグラウンドを持つメンバーが安心して意見を出し合い、それぞれの強みを発揮できるようにするには、組織としての共通理解を丁寧につくっていくことが欠かせません。そのためには、研修やワークショップなどを通じて、ダイバーシティやインクルージョンに関する社内教育を継続的に行うことが重要です。無意識の偏見に気付くためのプログラムや、事例を用いたディスカッションの場を設けることで、多様性を尊重する姿勢が少しずつ根付きます。
少数派の意見でも発言しやすい雰囲気をつくり、互いの違いを認め合う土台を整えておくことが、ダイバーシティ経営を成功させるためには必要です。
社内制度を整える必要がある
多種多様な属性の人材を集めただけでは、ダイバーシティ経営とはいえません。労働者の能力が最大限に発揮できるように考え、社内制度をダイバーシティ経営に適した形に整えることが大事です。
仕組みづくりが不十分な場合、労働者の不平不満を蓄積させてしまう恐れがあります。特に人事評価制度については、一人ひとりの事情を加味し、公平性や透明性が保たれた仕組みに日々調整していく必要があるでしょう。
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ダイバーシティの種類やダイバーシティ経営の必要性を理解する
解説した通り、ダイバーシティには、国籍や性別など外見から判断しやすい表層的なダイバーシティと、価値観や経験、はたらき方など外見からは見えにくい深層的なダイバーシティの2種類があります。こうした多様性を前提に、一人ひとりが尊重され活躍できるインクルージョンや、公平な機会提供を目指すエクイティも組み合わせて取り組むことで、新たなアイデアの創出やビジネスチャンスの拡大、企業の信頼性向上が期待できます。
一方、ダイバーシティの効果を十分に引き出すためには、経営陣のコミットメントや多様性を尊重する組織風土の醸成、公平性に配慮した制度設計など、いくつかのポイントを意識しなければなりません。コミュニケーション不足や人間関係のトラブルを招かないよう、自社の現状を丁寧に把握しながら、継続的にダイバーシティ経営を推進していきましょう。
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監修者
HRナレッジライン編集部
HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。
編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。
法務監修や社内確認体制のもと、正確な情報を分かりやすくお伝えすることを大切にしながら、多くの読者に支持される存在を目指し発信を続けてまいります。
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