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採用成功につなげる人材獲得戦略|戦略設計の5ステップ
公開日:2025.06.12
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労働市場は、少子高齢化やデジタル化の加速に直面し、企業間の人材獲得競争がますます激しくなっています。企業が自社の求める優秀な人材を確保できるかどうかは、企業の成長、ひいては持続的な競争力に直結していると言えるでしょう。
そこで本記事では、人材獲得を成功させる戦略設計の方法や具体例などを紹介します。単なる採用活動にとどまらず、入社後の定着・育成までを見据えた「人材獲得戦略」の全体像を詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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労働市場の現状と人材獲得戦略が経営課題となる背景
人材採用の難易度が年々高まる中、「人材を採用すること」は単なる人事部門の課題にとどまらず、経営の中核に直結する重大なテーマとなっています。
少子高齢化と専門人材不足
日本の少子高齢化は加速の一途をたどり、人口構造は大きく変化しています。総務省統計局のデータによれば、経済活動の中心となる生産年齢人口(15歳~64歳)は1995年の8,716万人をピークに減少し続け、2025年1月には6,779万人まで落ち込みました。
さらに、厚生労働省が公表した2024年12月の雇用関連統計によると、有効求人倍率は1.25倍、新規求人倍率は2.26倍と「売り手市場」が続いています。
特に、高度なスキルや専門知識を有する人材は需要が高く、例えば情報通信業の新規求人数(新規学卒者を除く)は22,272人に達し、前年同月比で9.3%増加しています。こうした専門人材の不足感は今後も強まると考えられ、企業にとっては深刻な課題です。
有効求人倍率、労働力調査などの最新データを詳しく知りたい方は、以下のトレンドレポートをご参照ください。
>>テンプトレンドデータ
- ※引用:総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2025年(令和7年)1月分結果」
- ※引用:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年12月分及び令和6年分)について」
DXの波と高度IT人材ニーズの増大
デジタル変革(DX)が加速する現代において、あらゆる業種で高度IT人材のニーズが急速に高まっています。
市場価値の高い人材は、転職市場に出る前に好条件で引き抜かれることが多く、従来の人材採用手法では確保が困難な状況です。また、採用競争の激化による採用費や広告費の高騰、早期離職のリスクなどは、企業の収益性や組織の安定に深刻な影響を与えかねません。
人材獲得は、もはや人事部門だけの課題ではなく、経営層が主体的に必要な人材像を明確化し、戦略的な投資を行うことが不可欠です。
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人材獲得を成功に導く戦略設計|5つのステップ
ここからは、人材獲得を成功に導く戦略設計を5つのステップに分けて解説します。
STEP1:採用課題の可視化と原因分析
まず、現在の採用プロセス全体を見直し、候補者がどの段階で選考から離脱しているのか、選考プロセスにおけるボトルネックはどこかを把握します。
採用がうまくいかない原因を分析する上では、そもそも自社の認知度が低い「認知不足(UNABLE)」なのか、認知度はあるものの魅力が十分に伝わっていない「魅力不足(UNWILLING)」なのか、どちらの課題が大きいのかを明確に区別することが重要です。
現状を把握するために、以下の施策例を参考に、現状分析を行いましょう。
施策例|定量データの活用
応募数や選考通過率、辞退(離脱)率などの数値を、採用管理システム(ATS:Applicant Tracking System)や求人サイトの管理画面、自社サイトのアクセス解析データなどから収集し、具体的な課題を洗い出します。
【具体的な課題例】
状況 | 課題 |
---|---|
応募数が少ない | 認知不足 |
書類選考通過率が極端に低い | 訴求力不足 |
面接辞退が多い | 応募者体験に課題 |
施策例|社内アンケートの実施
現場の管理職や面接担当者など、採用に関わる社員にヒアリングを行い、採用面接時に聞いた「候補者から見た自社の魅力」「懸念点」などの意見を集めます。定量データだけでは把握しきれない現場のリアルな声や課題を可視化できます。
施策例|採用ミスマッチ事例と早期離職の要因を分析
過去に採用したものの、早期離職に至った事例について、原因を分析します。「求人情報と実際の業務内容の乖離」「社風とのミスマッチ」など、具体的な理由を明らかにし、求人情報の改善や選考方法の見直し、入社後のフォロー体制の強化などにつなげます。
STEP2:ターゲット明確化とペルソナ設計
次に、「どのような人材を、なぜ採用したいのか」を具体的に定義します。スキルや経験だけでなく、企業の文化や価値観との適合性も重視しましょう。
施策例|必要人材要件の言語化
経営層や募集部門の責任者と詳細な議論を行い、必要なスキルや仕事への姿勢(マインドセット)、重視する価値観などを明確に言語化します。また、現在活躍している社員の特徴を分析することで、求める人物像をより具体的にイメージできます。
施策例|採用ペルソナシートの作成
理想の候補者像である「採用ペルソナ」を詳細に記述したシートを作成し、採用関係者間で共有します。年齢・職務経験・スキルなどの基本情報に加え、価値観やキャリアにおける目標などの詳細な人物像を描くことで、ターゲットに響くメッセージや効果的なアプローチ方法が明確になります。
採用ペルソナの設計手順や、採用要件との違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
>>採用要件の決め方|具体例や採用ペルソナとの違いを解説
施策例|求職者が求める条件の把握とすり合わせ
作成したペルソナが仕事選びで重視する条件と、自社が提供できる価値を照らし合わせることで、訴求すべき自社の強みや、見直すべき課題を明確にします。
【仕事選びで重視する条件の例】
給与・福利厚生・キャリアパス など
【自社が提供できる価値の例】
仕事のやりがい・成長機会・独自の制度 など
STEP3:「知ってもらう」ための施策強化
STEP1の分析で自社の課題が「認知不足(UNABLE)」と判明した場合、求職者に対し、自社の存在や魅力を効果的に伝える施策を強化する必要があります。そのためには、SNSやオウンドメディアを活用した情報発信を中心に、複数のチャネルを組み合わせた多角的なアプローチが重要です。
施策例|SNS・オウンドメディアの活用
採用サイトやブログなどのオウンドメディアと各種SNSの公式アカウントを通じ、企業の文化やはたらく環境の魅力を積極的に発信します。
社員の日常や職場の雰囲気を紹介する記事や動画などを活用することで、企業のリアルな姿や活気を具体的に伝え、求職者の興味や共感を喚起します。社員インタビューや座談会を公開するのも効果的です。
施策例|ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、企業から候補者へ直接アプローチする採用手法です。スカウト機能を持つ求人サイトやビジネス特化型SNSを利用し、求める経験やスキルを持つ人材に個別にメッセージを送ります。
単なる求人情報の提供ではなく、「なぜ、あなたに興味を持ったのか」や「あなたの経験が、自社のこの部分でどのように活かせるのか」など、個別の関心に合わせたメッセージを作成し、求職者の興味を引くことが重要です。
施策例|リファラル採用
リファラル採用は、自社ではたらいている社員に友人や知人を紹介してもらう採用手法です。社員からの紹介は、候補者のスキルや人物像に対する信頼度が高く、入社後の定着率も高い傾向があります。
制度を活性化するため、紹介プロセスを明確化し、社員が協力しやすい仕組みを構築することが重要です。
STEP4:応募してもらう仕組みづくり
自社の認知度向上だけでは不十分であり、応募につなげるための具体的な施策が不可欠です。求職者との最初の接点となることが多い採用サイトを中心に、応募を促す仕組みを構築することが重要です。
求職者は、求人原稿だけでなく、企業サイトや採用ページなどのオウンドメディアも総合的に評価して応募を判断します。そのため、求人原稿とオウンドメディアの魅力を高めると同時に、応募プロセスの最適化も行う必要があります。
施策例|求人原稿・募集要項の最適化
応募の入り口となる求人原稿を、ターゲットとなるペルソナが「ここではたらきたい」と感じるような内容に最適化します。単なる情報提供ではなく、共感を呼ぶストーリーや言葉遣いを意識しましょう。
施策例|オウンドメディアの改善
求職者は、求人原稿と併せて企業WEBサイトや採用ページ、公式SNSなどのオウンドメディアも参考にします。オウンドメディアは全体の構成(UI/UX)を整え、求職者が必要な情報を見つけやすく迷わず応募ボタンにたどり着けるように設計しましょう。
STEP5:自社を「選んでもらう」ための工夫
STEP1で触れた「魅力不足(UNWILLING)」を解消し、最終的に内定承諾を得て入社してもらうためには、面接段階での工夫が重要です。候補者が選考を通じて感じる「採用CX(候補者体験)」の質を高める施策を実施しましょう。
施策例|面接担当者のトレーニング
面接は相互評価の場であるため、面接担当者には高い質問力、傾聴力、および企業代表としての適切な振る舞いが求められます。効果的な質問設計、評価方法、候補者の意欲を引き出すコミュニケーションなど、面接担当者のスキル向上を図るトレーニングを実施しましょう。
面接担当者が企業の魅力を自身の言葉で語り、体現することで、候補者の企業への興味や入社意欲を高めることができます。
施策例|非金銭的な魅力の訴求
候補者との条件交渉では、給与や待遇だけでなく、非金銭的な魅力を積極的に訴求することが重要です。具体的には、リモートワークやフレックスタイム制度などの柔軟なはたらき方、独自の福利厚生、キャリア支援策、良好な企業文化などを丁寧に説明しましょう。
採用後のオンボーディングと定着・育成施策
採用活動で獲得した社員がスムーズに職場に馴染み、高いモチベーションを維持しながら長期的に活躍するためには、オンボーディングと定着・育成施策の体系的な整備が不可欠です。
オンボーディングプログラムの設計
オンボーディングプログラムは、あらたに組織に加わった社員が円滑に適応し、早期に能力を発揮できるよう支援する体系的なプロセスです。
社員の定着率向上とパフォーマンス発揮に大きく影響するため、企業の組織文化や社員構成に合わせ、入社後数ヶ月間にわたるプログラムを設計しましょう。プログラムの構成要素として、以下のような例が考えられます。
入社直後の研修
企業の理念や事業内容、ビジネスマナー、基本的な業務知識などを集中的に習得する機会を提供します。これにより、新入社員は組織の文化や方針を早期に理解し、スムーズなスタートを切れます。
メンター制度の活用
配属先の上司や先輩社員をメンターとして任命し、業務指導だけでなく、社内での人間関係構築や日常的な疑問・不安の解消をサポートします。既存社員との円滑な関係構築を促進することで、早期の戦力化と職場への適応を支援します。
メンター制度の概要や導入方法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
>>メンター制度とは?概要やメリット、導入までの流れについて解説
オンボーディング期間中の目標設定
入社後の早い段階で、1〜6ヶ月を目安とした初期目標を設定することが重要です。
通常の目標設定とは別に、達成可能な初期目標を設定することで、新入社員は「何をすべきか」や「どのように貢献できるか」を具体的に把握し、早期の成功体験を通じて自信を高めることができます。
キャリアパスと評価制度の連動
高いモチベーションとスキルを持つ人材ほど、自身の成長機会やキャリアビジョンを重視します。
明確なキャリアパスと、それを適切に反映する評価制度が整備されていない場合、モチベーションの低下や早期離職を招く可能性があります。以下のポイントを確認し、必要に応じて見直しを行いましょう。
なお、人事評価制度の設計や活用方法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
>>人事評価制度とは?導入する目的やメリット、設計方法について解説
評価の透明性と公平性
能力や成果を客観的に評価する仕組みを構築し、評価基準を明確に示すことが重要です。評価基準が曖昧であると、社員の不信感を招き、組織全体の信頼性を損なう可能性があります。
昇給・役職登用の基準明確化
「どのレベルの能力や成果を達成すれば昇給できるのか」や「どのような実績が役職昇進につながるのか」といった基準を具体的に提示しましょう。これにより、社員は自身の成長を実感しやすくなり、目標達成に向けたモチベーションを維持できます。
長期的なキャリアビジョンの提示
組織内でのキャリアアップの道筋や将来のキャリアパスを示すことで、社員が長期的な視点ではたらき続けられる環境を整備します。
人材獲得の活用例|リファラル採用
パーソルテンプスタッフ株式会社は、2018年からリファラル採用を本格導入し、わずか6年で応募者数を9倍に拡大。平均内定承諾率も80%超(2023年度は100%)を達成しました。
成果を支えた3つの施策
同社がリファラル採用で大きな成果を上げた背景には、主に3つの重要な施策の実施があります。
- 社内向け特設ページの開設
社内イントラネットに専用ページを設置し、制度概要・操作マニュアル・成功事例をワンストップで提供。問い合わせ件数が大幅に増加しました。 - 積極的な社内周知活動
社内説明会や朝会で制度を丁寧に説明し、その場でシステムへのログインを促進。紹介件数と制度利用率が向上しました。
- インセンティブキャンペーンの実施
社内にリファラル採用を根づかせ、文化として定着させるためには、以下の4つのステップが重要となります。 社内にリファラル文化を根づかせる4ステップ
社内にリファラル採用を根づかせ、文化として定着させるためには、以下の4つのステップが重要となります。
- 認知:イントラネットや社内報で制度を定期発信し、全社員に存在を周知。
- 動機付け:インセンティブだけでなく、「自社の成長への貢献」という意義を経営層が発信。
- 行動:紹介フローを3クリック以内で完結できるよう簡素化し、心理的ハードルを引き下げる。
- 伝播:成功者と入社者のストーリーを社内で共有し、「自分も紹介したい」という好循環を醸成。
リファラル採用を軸に人材獲得を成功させるには、採用ブランディングで自社の魅力と強みを社内外に一貫して発信することが不可欠です。詳しくは以下の記事をご覧ください。
>>採用ブランディングで応募者を増やす!企業の魅力を最大化する戦略【Q&A】採用担当者が抱えがちな疑問と解決策
採用活動において担当者が直面しやすい疑問と、その解決策をまとめました。
Q1.給与面で他社と差別化が図れないが採用は可能ですか?
A1. 給与以外の魅力、例えばやりがいのある仕事内容、独自の企業文化、柔軟なはたらき方(リモートワーク、フレックスタイムなど)、キャリアアップの機会などを積極的にアピールし、応募者の価値観や志向とのマッチングを図りましょう。
採用ブランディングを強化し、「給与だけが全てではない」と候補者に感じてもらえるような情報発信が大切です。
Q2.SNS運用の効果測定方法はどうやって行いますか?
A2. 採用目的のSNS運用では、単なる情報発信とは異なり、採用ターゲットに響くかどうかが重要です。
フォロワー数やエンゲージメント率、SNS経由の求人ページへのアクセス数、実際の応募数などをKPIとして設定し、月単位などで定期的に効果測定を行いましょう。すぐに成果が出なくても、データに基づいた長期的な視点での運用と分析を続けることが重要です。
Q3.オンライン(または対面)面接に抵抗を感じる応募者へのどう対処法すべきですか?
A3. オンラインと対面の双方の面接方法を用意し、応募者の希望に応じて柔軟に対応できる体制を整えましょう。可能な限り候補者の希望に沿った選考方法を提供することで、選考離脱を防ぐことができます。
Q4.人事部の工数が限られている中で、ダイレクトリクルーティングをどう行えばいいですか?
A4. ATS(採用管理システム)やスカウト代行サービスなどを活用し、候補者管理やアプローチの優先順位付けを効率化しましょう。これらのツールやサービスを導入することで、限られた工数の中でも「攻め」の人材獲得戦略を展開できます。
Q5.内定承諾率が低く、辞退も多い状況を改善できますか?
A5. 選考プロセス全体での採用CX向上を意識し、迅速な面接日程調整や結果連絡、丁寧なフィードバックを心がけましょう。
面接官の態度や質問内容、評価基準にばらつきが見られる場合は、社内で面接官トレーニングを実施したり、評価基準を明確化・共有したりすることで、改善が期待できます。
Q6.社内のDX人材が不足していて、ITスキルを持つ応募者が来ない状況を解消するには?
A6. 採用チャネルの見直しを検討しましょう。IT/WEB系の専門分野に特化した求人媒体への掲載や、ダイレクトリクルーティングの活用が有効です。
同時に、社内に目を向け、入社後のスキルアップを支援する研修制度や資格取得支援制度を整備し、その存在を積極的に社外へアピールすることも重要です。これにより、学習意欲の高い候補者に対して「この会社なら成長できる」という魅力を伝えられます。
Q7.評価制度が曖昧で、採用時に魅力を示しきれません
A7. キャリアパスや評価基準をできる限り具体的に提示し、応募者が入社後の自身の成長を明確にイメージできるように伝えましょう。
どのような成果や行動が評価され、昇進・昇給につながるのかを面接時に丁寧に説明すると共に、募集要項にも分かりやすく記載しましょう。これにより、候補者の納得感が高まり、その後のミスマッチや早期離職を防ぐ効果が期待できます。
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人材獲得戦略を成功に導くには、採用課題の分析からターゲット設定、多角的なアプローチによる認知度向上、採用CX(候補者体験)を重視した選考、入社後のオンボーディングや定着・育成に至るまで、一連のプロセスを「仕組み化」することが不可欠です。
従業員が意欲的にはたらき、成長を実感できる魅力的な職場環境を構築することは、リファラル採用の活性化など「採用→定着→育成→応募者増加」の好循環を生み出し、企業の競争力を一層強化します。
人材獲得は、もはや人事部門だけの課題ではありません。経営層が主体的に関与し、全社が一丸となって戦略的に取り組むべき重要なテーマです。
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