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自社に合った採用チャネルの選び方|コストを最適化して人材を獲得する方法

公開日:2025.06.12

企業の課題

近年、人材採用を取り巻く環境は大きく変化しています。労働人口の減少や、はたらき方の多様化により、採用の難易度は以前にも増して高まっています。従来の採用手法だけでは、必要な人材にリーチできないと感じている人事担当者も多いのではないでしょうか。

こうした中で注目されているのが、求職者との接点となる多様な「採用チャネル」です。この記事では、採用チャネルの基礎知識からそれぞれの特徴、自社に適した選定方法、効果的な活用戦略までを詳しく解説します。

採用チャネルとは?定義と見直しの必要性

採用チャネルとは、企業が求職者と出会い、採用につなげるための手段や経路の総称です。

近年では、求人広告や人材紹介といった従来の手法に加え、企業から直接アプローチするダイレクトリクルーティングや、SNSを活用した採用活動といったあらたな手法も登場し、重要性を増しています。

これらの多様なチャネルをいかに戦略的に選択し、活用するかは、採用活動の成果を大きく左右する重要な要素となっています。

なぜ今、採用チャネルの見直しが必要なのか

採用チャネルの見直しが必要とされている背景には、採用を取り巻く環境の大きな変化があります。従来の手法だけでは、求める人材を確保することが難しくなっているのです。主な理由は以下の2つです。

第一に、少子高齢化による労働人口の減少やはたらき方の多様化が進んだことで、企業が人材を獲得するための環境そのものが変わりつつあります。そのため、従来の画一的な採用手法だけでは、ターゲットとする人材に効果的にアプローチすることが難しくなっています。

第二に、採用市場における企業間の競争の激化が挙げられます。多くの企業が限られた人材プールから優秀な人材を獲得しようとさまざまな工夫を凝らしており、効果的なチャネルを選び、戦略的に活用しなければ、競争で優位に立つことが困難な状況です。

このような理由から、変化し続ける市場の動向に対応し、激化する人材獲得競争の中で確実に成果を出すためには、採用チャネルの戦略的な見直しが不可欠です。

現在利用しているチャネルの効果を定期的に分析し、自社のターゲット層に効果的なチャネルは何かを見極め、それらを計画的に活用していくことが求められます。

採用戦略の立て方や、人材獲得競争を勝ち抜くための具体的なアプローチについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>【採用戦略の決定版】人材獲得競争を勝ち抜くための体系的アプローチ

主要な採用チャネルの種類と特徴

採用チャネルは多岐にわたるため、自社の状況や採用したいターゲットに合わせて適切に使い分けることが大切です。

ここでは、代表的な採用チャネルの種類とその特徴について解説します。

公募型採用チャネル

求人広告媒体への掲載や、自社で運営する採用サイト(オウンドメディア)などを通じて、不特定多数の求職者に広くアプローチする採用手法のことです。

広く情報を届けられるため、一度に多くの人材を採用したい場合や、まずは企業の認知度を高めたい場合に適した手法といえるでしょう。

ただし、応募者が必ずしも自社の求める要件に合致するとは限らず、マッチングの精度にばらつきが出やすいという側面があります。応募数は多く集まる可能性がある一方、応募者の質を見極める必要がある点に留意しましょう。

人材サービス利用型チャネル

人材紹介会社(エージェント)などの外部サービスを利用し、企業の採用要件に合った人材の紹介を受ける採用手法のことです。

人材紹介会社が、企業の採用要件に基づいて候補者を探し出し、スクリーニングを行った上で企業に紹介・推薦してくれます。このチャネルの大きなメリットは、自社で候補者を探す手間や初期の選考プロセスを省略でき、採用にかかる工数を大幅に削減できる点です。

また、人材紹介会社ごとに得意な業種・職種や独自のネットワークを持っているため、特定の専門職や管理職、あるいは即戦力となる人材を採用したい場合に有効です。

能動的採用チャネル

ダイレクトリクルーティングやリファラル採用(社員紹介)など、企業側が主体となって候補者を探し、積極的にアプローチするチャネルのことです。

求人広告代理店や人材紹介会社を介さず、自社の採用担当者や社員が直接、本当に必要としているスキルや経験を持つ人材にアプローチするため、ミスマッチのリスクを低減できる点が大きな強みです。

ただし、これらのチャネルは運用に相応の工数がかかる側面があります。例えば、ダイレクトリクルーティングは、潜在的な転職希望者にもアプローチできる一方で、候補者の選定からスカウト送付、その後のコミュニケーションまで一連のプロセスに手間がかかります。

また、リファラル採用は社員の個人的なネットワークに依存するため、常に十分な数の紹介があるとは限らない点にも留意が必要です。

ソーシャル・イベント型チャネル

SNSを活用したソーシャルリクルーティングや、合同企業説明会・転職フェアといった採用イベントを通じて、企業の魅力や情報を求職者に直接届けるチャネルのことです。

SNSは、うまく活用すれば非常に高い拡散力とコスト効率を発揮する可能性があります。一方で、継続的な情報発信や魅力的なコンテンツ作成には手間がかかり、不適切な発信による炎上リスクにも注意しなければなりません。

採用イベントは、求職者と直接対面することで相互理解を深めやすく、企業の雰囲気を直接感じてもらえるよい機会となります。しかしながら、出展費用やブース設営、当日の人員配置など、準備にかかる手間や費用負担が大きいという側面もあります。

各チャネルの効果を高める上で重要となる、企業の魅力向上や採用ブランディング戦略について知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
>>採用ブランディングで応募者を増やす!企業の魅力を最大化する戦略
>>【ナレッジインタビュー】core words 佐藤氏 採用ブランディングから読み解く人事の「原点」【前編】

各チャネルの特性を徹底比較

採用チャネル マッチング精度 コスト 運用負荷 向いているケース・特徴
掲載型求人広告 低〜中 低〜中(掲載料型) 母集団形成・大量採用向け。応募数は集まるがミスマッチも多い。
運用型求人広告 低〜中 変動制(クリック課金) 中(運用が必要) 費用対効果を見ながら運用。求人内容次第で効果に差が出る。
人材紹介(エージェント) 高(成功報酬型) 低〜中 専門職・即戦力採用に強い。選考効率が良いがコストは高め。
ダイレクトリクルーティング 中〜高(媒体課金) 高(スカウト運用) ハイクラス・技術職・転職潜在層向け。攻めの採用。
オウンドメディアリクルーティング 中〜高 中(制作費・運用) 高(継続運用必要) 中長期ブランディング施策。採用広報と兼用で運用するケースも多い。
ソーシャルリクルーティング 低(自社運用) 高(運用・発信必要) 若手・デジタル人材向け。SNS拡散力活用。ただし炎上リスクあり。
リファラル採用 低(紹介インセンティブ) 中(制度設計必要) ミスマッチが少なく定着率が高い。紹介数には限界がある。
ハローワーク 低〜中 無料 コスト重視の採用。地域採用・シニア層にも対応できる。
合同説明会・採用イベント 中〜高 中〜高(参加費用) 高(準備・運営必要) 直接会えるためミスマッチ減。企業理解促進。新卒採用などに有効。

ここからは、主要な採用チャネルそれぞれの特性について、より詳しく比較・解説していきます。

自社の採用目標や予算、かけられるリソースなどを考慮しながら、どのチャネルが最適か、あるいはどのように組み合わせるのが効果的か、ご検討ください。

掲載型求人広告

掲載型求人広告は、求人サイトや専門誌などに一定期間広告を掲載する採用チャネルです。料金は、掲載期間や広告スペースに応じた掲載課金型が一般的で、媒体やプランにより数万円から数十万円程度が相場となります。

掲載型求人広告は、短期間での大量募集や幅広い層へのアプローチに適しています。また、業種や業界に特化したメディアを選ぶことで、ターゲットをある程度絞り込むことも可能です。

ただし、応募者が必ずしも自社が求める人材像と一致するとは限らず、マッチングの精度は他の手法に比べて低い傾向が見られます。さらに、応募者が多数の場合には、その対応や選考プロセスに多大な工数が必要となる可能性も考慮しなければなりません。

運用型求人広告

運用型求人広告は、広告が表示された回数やクリックされた数といった成果に応じて費用が発生する採用チャネルです。

従来の掲載期間が保証される広告とは異なり、掲載途中でも予算や求人原稿の内容を柔軟に変更できる点が大きな特徴で、近年この運用型が主流になりつつあります。

広告を掲載するにあたっては、まず予算と期間を設定します。ただし、クリック単価やクリック数は、募集する職種や地域における競合の状況などによって変動します。

この変動に対応し、広告の効果を最大限に引き出すためには、継続的なデータ分析と改善の取り組みが欠かせません。

もし社内に運用を担当できる人員やノウハウが不足している場合には、専門の外部業者へ委託することも有効な選択肢となるでしょう。

人材紹介(エージェント)

人材紹介(エージェント)は、企業が求める条件に合った候補者を、専門の紹介会社が見つけ出して紹介する採用チャネルです。

費用形態としては成功報酬型が一般的で、採用が決定した際に、その候補者の年収の35%程度を手数料として支払うケースが多く見られます。

他のチャネルに比べると1人あたりのコストが高額になりがちですが、人材紹介会社が候補者を事前にスクリーニングしてから紹介するため、マッチング精度が非常に高く、採用にかかる工数を削減できます。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、企業が転職者データベースなどを活用して候補者を自ら探し出し、直接アプローチする採用チャネルのことです。

費用面では、一般的に転職者データベースの利用料や、送信するスカウトに対する課金が発生します。スカウトの課金方式は、従量課金型、月額固定制、成功報酬型など、利用するサービスによって異なります。

スカウトメールを通じて、企業の担当者が直接熱意を伝えられるため、求職者の関心を引きつけやすく、結果としてマッチングの精度を高める効果が期待されます。

ただし、候補者の絞り込みから、個別のスカウト文面の作成・送信、候補者からの返信への対応、そして採用決定までの継続的なコミュニケーションといった一連のプロセスには、相応の手間と時間が必要です。

オウンドメディアリクルーティング

オウンドメディアリクルーティングとは、自社の採用サイトやブログ、SNSなどを活用して継続的に情報発信を行い、企業文化や価値観に共感した人材からの応募を促す採用チャネルです。求人媒体の中の自社ページも、広義にはこのオウンドメディアに含まれます。

主な費用としては、サイトの制作・維持費、コンテンツ作成費、人件費などが挙げられます。社内での内製化によりコストを抑えることも可能ですが、効果が現れるまでには一定の時間がかかります。

現代の求職者は、関心を持った企業について主体的に情報を収集する傾向があります。そのため、オウンドメディアは企業の「顔」として採用ブランディングにおいて重要な役割を果たし、他の採用チャネルの効果を高めることにもつながります。

ソーシャルリクルーティング

ソーシャルリクルーティングとは、各種SNSを活用して採用活動を行う採用チャネルのことです。企業や社員のアカウントから日常の風景や求人情報を発信し、ユーザーとの双方向コミュニケーションを図ります。特に若年層やデジタル人材へのアプローチに効果的とされます。

自社運用ならプラットフォーム利用料がほぼかからず低コストで始められ、SNSの拡散力を活かせば広告費なしで広範囲に情報を届けられる可能性があります。カジュアルな対話で相互理解を深めやすい点もメリットです。

最大の注意点は、炎上のリスクです。発信内容や対応を誤ると、批判を招き企業イメージを損なう危険があります。導入時には、ガイドライン策定やリスク管理といった慎重な準備と運用が求められます。

リファラル採用

リファラル採用とは、自社の社員に友人や知人などを紹介してもらう採用チャネルのことです。「社員紹介制度」とも呼ばれ、採用決定時に紹介者である社員へインセンティブを支払うのが一般的です。

紹介者を経由して候補者が企業理解を深めた上で応募するため、入社後のミスマッチが少なくマッチング精度が高い傾向にあります。また、費用も主にインセンティブとなるため、他のチャネルに比べてコストを低く抑えられます。

一方で、社員の人脈に依存するため紹介数は限られ、短期的な大量採用には向きません。さらに、単に制度を設けるだけでなく、求める人材像の明確化やプロセスの簡略化、継続的な告知や協力依頼など、社員が紹介しやすくなるような運用上の工夫が不可欠です。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は、国が運営する無料の職業紹介サービスの採用チャネルのです。全国に拠点があり、地域に密着した採用やU・Iターン採用、また若者からシニアまで幅広い層を対象とした採用に活用できます。

企業は求人掲載を無料で行えるため、採用コストを抑えたい場合に有効な選択肢となります。近年はインターネットサービスの利便性も向上しています。求人票の作成・提出は必要ですが、掲載後の運用負荷は比較的軽い点も特徴です。

ただし、基本的には応募を待つ形式のため、求めるスキルを持つ人材からの応募が確実にあるとは限りません。

合同説明会・採用イベント

合同説明会・採用イベントとは、複数の企業が一つの会場に集まり、求職者に対して自社の説明や個別面談などを行う採用チャネルのことです。

最大のメリットは、多くの求職者と直接対面でコミュニケーションが取れる点です。担当者が企業の雰囲気や魅力を細かく伝えることができます。また、その場で質疑応答を行うことで相互理解が深まり、ミスマッチの軽減につながります。

一方で、出展料やブース設営費、販促物制作費、人件費などの費用が必要となり、コストは高めです。また、戦略立案から資料・ブース準備、担当者研修といった入念な事前準備に加え、当日の運営にも多くの時間と労力がかかるため、運用負荷が高いチャネルといえます。

自社に最適な採用チャネルの選び方

チャネル選定の実践的な考え方を4つのステップで解説します。

1.採用ターゲットを明確にする

最初のステップは、「どのような人材を、いつまでに、何名採用したいのか」というターゲットを具体化することです。

年齢や経験、スキル、価値観などを詳細に設定し、求める人物像(ペルソナ)を明確にします。ターゲット像が具体的であれば、その層が利用する可能性の高いチャネルを推測しやすくなります。

【例】
■職種
DX推進を担う若手WEBエンジニア

■ターゲット状況
技術情報が共有されるWEBサイトや、技術系の勉強会・ミートアップ、SNS上の技術コミュニティを通じて積極的に情報収集している。

■有効な採用チャネル

  • 技術ブログ(オウンドメディア)での技術スタック・開発文化の発信
  • 技術カンファレンスへのスポンサー参加や、勉強会での登壇・ネットワーキング
  • GitHub(R)※1やQiita(R)※2などのコード共有プラットフォームでの接点づくり
  • ビジネスSNS(例:LinkedIn(R)※3)でのダイレクトスカウト

※1 GitHub…GitHub, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です
※2 Qiita…Qiita株式会社の登録商標です
※3 LinkedIn…LinkedIn Corporationの登録商標です

2.コスト・工数・スピードを比較する

次に、候補となる各採用チャネルについて、「コスト」「工数」「スピード」の3つの軸で比較検討します。自社の採用予算、担当者のリソース、そして採用の緊急度に合わせて、現実的に運用可能な方法を選びましょう。

【例】
■コスト重視
広告予算に限りがある場合は、リファラル採用やSNSを活用したダイレクトリクルーティングなど、比較的低コストなチャネルが選択肢となる。

■工数重視
採用担当者のリソースが限られている場合は、人材紹介など、準備や対応に時間がかからない手法が適している。

■スピード重視
急募ポジションの場合は、即効性のある人材紹介や求人広告が有効。一方、オウンドメディアリクルーティングは中長期向きである。

3.チャネルを組み合わせてリスク分散&シナジーを狙う

多くの場合、単一の採用チャネルだけに依存するのは得策ではありません。特定のチャネルに頼りすぎると、市場環境の変化やそのチャネル自体の仕様変更などによって、採用活動が困難に陥ってしまうリスクがあるためです。

そこで、特性の異なる複数のチャネルを戦略的に組み合わせることが重要になります。これにより、採用活動全体のリスクを分散できるだけでなく、チャネル間の相乗効果(シナジー)を生み出すことも可能です。

【例】
■採用目的
一定の母集団形成をしつつ、自社にフィットした人材の質も担保したい

■状況
幅広い層にリーチしながらも、関心を深めて応募につなげたい

■戦略的チャネル構成

掲載型求人広告 広く露出し、母集団を形成
Instagram(R)※4やX(R)※5などのSNS 企業のリアルな雰囲気やカルチャーを発信して関心を醸成
リファラル採用 SNSでの情報共有を通じ、社員からの質の高い推薦を促進

このような組み合わせにより、例えば「求人広告を見た人がSNSで企業の雰囲気を確認 → 興味が深まり応募につながる」「SNS投稿を見た社員が知人を紹介」といったチャネル間の連動効果も期待できます。

※4 Instagram…Meta Platforms, Inc.の商標または登録商標です
※5 X…X Corp.の商標または登録商標です

4.成果を数値で振り返る

チャネル運用においては、定期的に各チャネルの成果を客観的な数値データで振り返り、その効果を検証することが極めて重要です。

チャネル別の応募者数や書類選考通過率、面接設定率、内定率、そして最終的な採用決定数、さらには採用単価などの指標について、データを集めて記録していきます。

これらのデータを分析することで、「どのチャネルが最も費用対効果が高いか」「どのチャネルからの応募者が内定につながりやすいか」といった傾向が見えてきます。

【例】
運用中のチャネルを比較する

チャネルA(求人広告) 費用50万円
応募200名
採用決定1名→採用単価50万円
内定率0.5%
チャネルB(リファラル採用) 費用35万円(インセンティブ費用)
応募20名
採用決定1名→採用単価35万円
内定率5%

チャネルAは応募数は多いものの、採用決定に至る割合(内定率)が極端に低く、結果的に一人あたりの採用単価がチャネルBより15万円も高くなっていることが分かります。

採用成果を測るためのKPI設定や具体的な活用方法について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。
>>採用KPI設定の5ステップ|人事担当者が知っておくべき指標と活用法

最適な採用チャネルを選定することで、採用戦略を成功に導く

採用市場が変化し続ける現代において、適切な採用チャネルの選択と活用は、採用を成功させる上で極めて重要です。

まずは採用ターゲットと目標を明確にし、予算やリソースを踏まえて最適なチャネルを選びましょう。単一チャネルに依存せず、複数を戦略的に組み合わせ、リスク分散と相乗効果を図ることが大切です。

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