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エンジニア人手不足の現状と原因、解決方法を徹底解説
公開日:2024.01.16
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IT関連事業が著しく発展を続けている中で、エンジニアの人手不足が深刻化しています。経済産業省が2019年3月に発表した「IT人材需給に関する調査」によると、2030年までに最大約79万人のエンジニアが不足すると懸念されるほど、状況は深刻です。
現在、どの業界においてもエンジニアは必要とされており、企業にとってエンジニアの人手不足は早急に取り組むべき課題です。
本記事では、エンジニア不足の現状とその原因について解説するとともに、エンジニア確保のために取るべき対策をご紹介します。企業の人事担当者の方は、ぜひご一読ください。
目次
エンジニア人手不足の現状
経済産業省が2019年3月に報告した「IT人材需給に関する調査」において、2030年時点で最大約79万人ものIT人材が不足するという試算が発表されました。

※引用:経済産業省|IT 人材需給に関する調査
需要の伸び率によって必要とされる人数に違いが出るため、経済産業省は高位(約9~3%)・中位(約5~2%)・低位(1%)の3段階でシミュレーションを実施しています。高位シナリオの経過をたどった場合は、最大約79万人の需要ギャップが発生するということです。中位シナリオを見ると2030年には約45万人、低位シナリオでも約16万人の人材不足となる可能性があります。
エンジニア人手不足の原因
IT人材が不足している背景には、主に以下の3点が挙げられます。
- 労働人口の減少
- エンジニア人材の需要増加
- 求められるスキルの難易度が高い
それぞれの背景を詳しく見ていきます。
労働人口の減少
総務省統計局の「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約」によると、2022年の労働力人口は、前年と比較して5万人減少しました。その原因は、少子高齢化に伴う労働人口の減少です。

※引用:総務省統計局|労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約
内閣府が出した「令和4年版高齢社会白書」によると、令和3年10月1日時点の日本の総人口は1億2,550万人となっています。65歳以上人口は3,621万人となり、総人口 に占める割合(高齢化率)が30%近くを占めているのが現在の日本です。少子高齢化が進むことで、労働力人口の割合が減り続けている状態です。
しかし、経済産業省の発表した「IT人材需給に関する調査」に記載されている、2030年時点で最大約79万人ものIT人材が不足するという試算からも分かる通り、ネットワーク技術はもちろん、アプリやWebサービスを提供するために、エンジニア人材の需要は増加しています。そうした状況における労働人口の減少は、エンジニアの人手不足の要因となります。
エンジニア人材の需要増加
多くの分野・業界でDX化などIT技術の導入に取り組む企業が増えています。IT技術を導入している企業では、不具合なくシステムが作動するよう管理することが重要であり、あたらしいシステムへの更新も必要になってきます。
このようにIT需要は高まっていくと考えられ、さまざまな場でエンジニアが求められるようになり、結果としてエンジニアの人手不足に拍車をかけることとなりました。
求められるスキルの難易度が高い
エンジニアの人手不足が起こる理由として、求められるスキルの難易度の高さが挙げられます。ITの技術は日々進化しており、あらゆる業務の機械化・自動化が進んでいます。これはエンジニアにとって、常にあらたな勉強分野が増えることを意味します。
その結果、最新の技術を扱える人材の数は絞られていきます。スキル習得の困難化によって、先端技術を扱うエンジニアは常に不足しています。
需要が高まるエンジニアの主な種類
エンジニアと一口に言っても、さまざまな種類があります。その中でも今後も需要が伸び続け、特に将来性が高いとされるエンジニアは以下の4つです。
- クラウドエンジニア
- セキュリティエンジニア
- IoTエンジニア
- AIエンジニア
それぞれのエンジニアの詳細や、需要が高い理由について解説します。
クラウドエンジニア
クラウドエンジニアは、インターネット上にデータを保存するクラウドサービスを利用し、企業のさまざまなシステムの開発・運用管理をするエンジニアです。
以前はデータを企業のデータベースに保存するオンプレミスが主流でしたが、近年は保守管理を外部に委託するクラウドサービスを積極的に利用する企業が増えています。
また、総務省が発表した「令和5年版 情報通信白書」によると、国内のクラウドサービス市場の規模は拡大しており、今後もクラウド化はさらに進んでいくことが予想されます。そのため、クラウドエンジニアの需要も高まっていくといえるでしょう。
<日本のパブリッククラウドサービス市場規模(売上高)>

※引用:総務省|令和5年版 情報通信白書
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアは、顧客の個人情報や企業内で扱う機密情報の漏えいを防止し、企業のさまざまなサービスやシステムをサイバー攻撃やコンピューターウイルスの感染といったセキュリティの脅威から守る役目を担います。
総務省が発表した「令和5年版 情報通信白書」によると、世界のサイバーセキュリティ市場の規模は拡大しています。
<世界のサイバーセキュリティ市場規模の推移及び予測>

※引用:総務省|令和5年版 情報通信白書
近年、サイバー攻撃は増加しており、セキュリティ対策強化の必要性は高まっているため、セキュリティエンジニアの高い需要が見込まれます。
IoTエンジニア
IoT(Internet of Thing)エンジニアとは、モノ同士をインターネットでつなぎ、遠隔操作などを行えるITシステムを開発する技術者のことです。スピーカーとインターネットをつなげたスマートスピーカーや、エアコンや給湯器を遠隔で操作できるシステムなどがIoTの代表例として挙げられます。
※IoT(Internet of Thing)とは、物理デバイスがインターネットを通じて通信、データ共有、制御するテクノロジーのこと
また、総務省が発表した「令和5年版 情報通信白書」によると、世界的なIoTの急速な普及と、その普及が今後も高成長するとの予測が報告されています。
<世界のIoTデバイス数の推移及び予測>

※引用:総務省|令和5年版 情報通信白書
快適な生活をサポートするIoT製品が増えている中、今後も成長が見込まれるため、IoTエンジニアの需要は高いと言えます。
AIエンジニア
AIエンジニアとは、最先端の技術であるAI(人工知能)の開発をはじめ、AI技術を活用したソフトウェアの開発、AIに必要なデータの収集と解析をする「機械学習」を行うエンジニアのことです。
すでにAIは、私たちの生活に密接にかかわっています。加えて、自動運転や画像分析、自然言語処理など利用範囲は広く、AIは日本経済の発達にも大きく貢献しています。よって、AIエンジニアの将来性はとても高いといえるでしょう。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」でも、「AIのさまざまな分野での応用が広がる今日、AIエンジニアの需要は極めて高い」と報告されています。さらに、同サイトが示す「労働者過不足判断」を見ると、AIエンジニア(正社員)が不足していることがわかります。
<労働者過不足判断>

- ※グラフの数値が大きいほど、労働者が不足と判断できる。
- ※引用:厚生労働省|職業情報提供サイト「jobtag」
- ※産業景況データ_労働者過不足判断_情報通信業のグラフを見る
AIエンジニアが不足しているということは需要が高まることを意味し、AIエンジニアの将来性の高さを表しています。
エンジニア人手不足の解決方法
深刻なエンジニアの人手不足を解消することは簡単ではありません。エンジニアの待遇改善をし、未経験者でもはたらきやすい環境を整えることが重要です。エンジニアの人手不足を解消するための方法4つご紹介します。
社内でスキルアップ支援や育成を行う
エンジニアの人手不足の深刻化を防ぐ手段として、社内でのスキルアップ支援や育成が挙げられます。自社にIT人材がいる場合、教育体制を強化することも大切です。社内人材が成長を果たせば生産性の向上につながり、人材にとっても仕事の幅が広がってモチベーションが向上するというメリットが生まれます。スキルアップや資格取得のために社内勉強会を行う、もしくは社外研修の費用を補助するという方法もよいでしょう。
エンジニア未経験の人材からも募集をかける場合は、着実に技術が身に付けられる環境を整え、社内の教育体制を強化することが重要です。未経験者向けのエンジニア研修制度やeラーニングが効果的です。
エンジニア採用に対する待遇を見直す
エンジニアの人手不足を解消するために、待遇面を見直すことも重要です。
過度な時間外労働や休日出勤が発生している場合、業務の効率化や人員配置の最適化などを行い、ワーク・ライフ・バランスに関する施策を推進していくのが効果的です。また、フレックスタイム制やリモート勤務を導入するなど、柔軟なはたらき方ができる環境を準備するのも有効です。
また、評価基準を明示し、成果に応じて給与面を優遇することで、高いスキルを持った人材を確保することが可能となります。
2021年に経済産業省が発表した「我が国におけるIT人材の動向」によると、日本のIT関連産業では「能力・成果重視型」の企業で最高水準の年収を達成したとしても、「年功序列型」企業において最高水準の年収を達成した場合と比べ、大きな差が出るわけではないという事実が報告されています。
加えて「能力・成果重視型」企業における最高水準と最低水準の差も、2倍未満となっています。米国と比べるときわめて低い現状も明らかになりました。

※引用:経済産業省|我が国におけるIT人材の動向
IT業界は今後さらに重要度の高い分野になっていきます。エンジニアの待遇の見直しは人材の流出を防ぎ、企業を成長させる効果が期待できます。
人材派遣を活用する
自社採用にこだわるのではなく、人材派遣を活用するのも手段の一つです。外部サービスを活用することで、人手不足が解消できる可能性があります。加えて、外部人材は高い専門性を持っているため、自社の人材を育成するケースとは異なり教育コストが抑えられます。また、業務の分量に応じた契約を結ぶため、人件費の削減にもつながります。
IT人材の外部サービス活用をご検討の方は、ぜひパーソルテンプスタッフへご相談ください。
▼IT・Web・テクニカルの人材派遣

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アウトソーシングを活用する
人材派遣だけでなく、アウトソーシングの活用でもエンジニアの人手不足を解消できる可能性があります。例えば、業務システムの運用を担当する人材が不足している場合、その業務に限定して発注することが可能です。
アウトソーシングを活用した場合、人材派遣の活用と同様にコストを最適化しながら高いスキルを持ったエンジニアに活躍してもらえるでしょう。さらに、アウトソーシングでは外部委託を行うため、自社内で設備投資をする必要がありせん。
エンジニアのアウトソーシングサービス活用をご検討の方は、ぜひパーソルテンプスタッフにご相談ください。
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エンジニア人手不足を解決する方法を知る
本記事では、エンジニアが人手不足になる原因と解決方法を解説しました。エンジニアの人材不足は深刻化しています。そして、ITの発展や労働人口の減少などにより、今後さらにエンジニアの需要は増えていくと考えられます。
エンジニアが不足すると、システムの保守などに手が回らなくなる可能性があり、情報漏えいのリスクが高まるだけでなく、あらたなシステムを開発できず競争力を失うなど、企業にとって大きな問題へ発展する可能性もあります。
解決策としては、社内でエンジニアの育成やスキルアップ支援を行い、未経験者を含めて幅広い層をターゲットにすることが有効です。また、エンジニアにとってはたらきやすい環境を用意したり、人材派遣やアウトソーシングの活用を検討したりするのもよいでしょう。
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