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人材派遣とは?仕組みやメリット、人材紹介やアウトソーシングとの違いを解説

公開日:2022.12.16

更新日:2023.08.08

人事ナレッジ

「繁忙期だけ増員したい」「専門スキルがある人材を受け入れたい」などの課題があり、解決策として人材派遣の活用を検討されている方も多いのではないでしょうか。人材派遣は、必要な時に必要な人材を受け入れられるため、人材に関する課題を解決できます。しかし、

  • どのようなシーンで人材派遣を利用すればよいか分からない
  • 人材派遣やアウトソーシング、人材紹介などとの違いを知りたい
  • 利用にあたって注意すべき点があるか知りたい

などの、悩みや疑問がある方も多いと思います。

本記事では、人材派遣の仕組みやメリット、アウトソーシングや人材紹介などとの違い、注意点などについて詳しく解説します。また、人材派遣の利用の流れも解説します。

人材派遣は必要な時に必要な人材を活用できるサービスのこと

人材派遣とは、厚生労働大臣に認可された派遣事業を行う事業者が、雇用している派遣スタッフを派遣する仕組みで、必要なスキルをもった人材を必要なタイミング・必要な期間に活用できます。

人材派遣の契約は、下記の図のように派遣元である人材派遣会社と派遣スタッフが雇用契約を結ぶ形態です。派遣スタッフを受け入れる派遣先企業と派遣会社が結ぶのは労働者派遣契約です。

人材派遣とは

労働者派遣契約の締結によって、派遣先企業は派遣スタッフを受け入れることができ、業務指示が出せるようになります。派遣スタッフは、派遣が禁止されている適用除外業務(港湾運送業務など)と士業以外のほぼすべての職種の業務に従事可能です。人材派遣のサービスは労働者派遣法で定められています。

人材派遣を活用するメリット

人材派遣を活用するメリットには以下の3つがあります。

  • 必要な時に、必要なスキルを持つ人材を活用できる
  • 人材確保のコストや工数を軽減
  • 労務管理の負担が軽減する

それぞれのメリットについて解説します。

必要な時に、必要なスキルを持つ人材を活用できる

人材派遣の最大のメリットは、期間や業務内容など、必要に応じて柔軟に派遣スタッフを受け入れられる点です。

例えば、繁閑期の業務量の差が大きい場合、繁忙期の短期間だけ派遣スタッフを受け入れることが可能です。さらに、短時間勤務や週3日などの時短勤務、社員の育児休業や介護休業などの一時的な欠員の補充のために活用するなど、自社の状況に合わせて柔軟に人員追加できます。

また、人材派遣会社にはさまざまな経験やスキルを持つスタッフが登録しています。そのため、自社が必要とするスキルを持った即戦力人材の受け入れが可能です。

このように人材派遣を活用すれば、必要な時に必要な人材の確保ができるので人材不足の解消に効果的です。

人材確保のコストや工数を軽減

人材派遣を利用する場合、人材確保にかかるコストや工数が軽減できます。自社で社員を採用する場合、募集から書類選考、面接などの採用業務や、採用した社員のスキルに合わせた教育業務が必要です。

自社で社員を採用する場合の流れ
人材派遣の活用の流れ

自社で採用を行う場合の懸念点として「募集をしても求めている人材の応募がない」「採用した社員が定着するかどうか」などが挙げられます。

なかなか採用ができない場合は欠員期間が長くなってしまい、社員の負荷が大きくなってしまいます。また、採用した社員が早期退職してしまった場合は、採用や教育を再度しなければならなくなります。

しかし人材派遣を利用する場合は、人材派遣会社が自社の要望にあった人材を提案するため、上記のようなリスクが少なく、人材を確保することができます。

労務管理の負担が軽減する

派遣スタッフの労務(給与計算や支払い)、社会保険(健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険)の加入手続きなどは派遣元である人材派遣会社が対応します。そのため派遣先である自社がこれらの業務に対応する必要がありません。

ただし、人材派遣を利用する場合、派遣スタッフに対して自社でも以下のような管理は必要となります。

  • 労働時間の管理
  • 業務で利用する機械や薬品など、危険防止の措置
  • 適切な就業環境の整備

人材に関するお困りごとはお気軽にご相談ください

人材派遣と他の方法との違い|メリット・注意点

人材派遣と比較されるのが、「アウトソーシング」「人材紹介」「紹介予定派遣」です。

アウトソーシングは、一般的に自社の業務に必要な人的資源やサービスを契約によって調達し、生産性向上や競争力強化などを目指す経営手法を指します。主に業務単位、または前後のプロセスも含め、外部企業に委託します。

人材紹介とは、人材紹介会社が自社の求める人材と求職者をマッチングするサービスのことです。採用業務の効率化や負荷軽減などを目的に活用されます。

紹介予定派遣は、直接雇用を前提に派遣スタッフとして人材を受け入れます。派遣可能期間は最長6ヶ月で、自社と派遣スタッフの希望が合致した場合、採用決定となります。主に、採用のミスマッチを防ぎたい場合に適しています。

それぞれのメリットと注意点を以下の表で比較します。

メリット 注意点
人材派遣
  • 必要な時に、必要なスキルを持つ人材を活用できる
  • 人材確保のコストや工数を軽減
  • 労務管理の負担が軽減する
  • 原則として、利用できる期間に制限がある
  • 業務指示や労務管理を直接行う必要がある
アウトソーシング
  • 業務運用の管理工数を大幅に削減できる
  • 業務運用に受託会社のノウハウを活用できる
  • コストを最適化できる
  • 直接業務指示を行うことができないため、定型化できない業務には適さない場合がある
  • 業務設計やマニュアル作成など、導入までに準備期間が必要になる
人材紹介
  • 効率的で精度の高い採用活動ができる
  • 募集、採用の工数が軽減できる
  • 求人広告などを出すことなく、非公開で採用活動ができる
  • 求人票には書かれていない企業の魅力を訴求できる
  • 複数名を採用する場合、1人あたりの採用費用が割高になることがある
紹介予定派遣
  • 派遣期間に企業と派遣スタッフがお互いを見極めることができ、ミスマッチを防げる
  • 募集・採用の工数が軽減できる
  • 派遣期間に最長6ヶ月までという制限がある

人材派遣と他の方法との違い|契約・法律・雇用関係など

人材派遣とアウトソーシング、人材紹介、紹介予定派遣の契約や法律に関する違いは以下の通りです。それぞれサービス内容や契約形態、料金が異なります。

人材派遣 アウトソーシング 人材紹介 紹介予定派遣
サービス内容 必要な人材の派遣 委託業務の遂行・納品 採用支援 採用支援
契約形態 労働者派遣契約 業務委託契約 有料職業紹介契約 労働者派遣契約
雇用元 人材派遣会社 外部企業 自社 派遣期間:人材派遣会社
切替時:自社
スタッフの選考 不可
派遣期間 最長3年 最長6ヶ月
料金体系 派遣料金(実働時間数×時間単価)※ 固定額、従量単価など 紹介手数料(採用決定の場合) 派遣期間:派遣料金
紹介手数料(採用決定の場合)

※契約によっては必要な費用を別途精算する場合があります。

人材派遣の適した利用シーン

人材派遣を利用するシーンとして次の3つの例を解説します。

  1. 専門スキルの活用
  2. 繁忙期の人員補充
  3. 急な退職や育児休業などの代替

専門スキルの活用

派遣スタッフは高い専門性をもった人材が多くいるため、専門スキルを持った人材を活用したい際に適しています。

例えば、法務関連の知識や経験がある派遣スタッフを受け入れ、契約書の確認や見積書の作成サポート、契約台帳の作成などを担当してもらうことにより、自社社員の負担を軽減できます。

上記のように派遣スタッフは、該当業務の知識や実務経験が豊富な人材が多いため、基本的な業務内容について教える必要がなくすぐに専門スキルを持った人材の活用ができます。

繁忙期の人員補充

人材派遣は必要な時に必要な期間だけ受け入れることができるため、繁忙期の一時的な人員補充にも向いています。

例えば、年度末や月末月初などに発生する業務負荷の軽減に活用されます。適切なタイミングで人材派遣を活用すれば、自社の社員に過度の業務を任せる必要がなく、時間外労働の賃金負担の軽減や、労働環境の健全化も期待できます。

急な退職や育児休業などの代替

人材派遣は、社員の急な退職や育児休業などの代替としても活用できます。

自社で採用する場合、すぐに即戦力となる人材を見つけることは難しく、業務未経験者しか採用できなかった場合は、教育に時間を要します。また直接雇用の場合は、雇用期間が長期になりやすく、限られた期間での採用にはあまり向いていません。

しかし人材派遣は必要なタイミングで必要な期間に派遣スタッフを受け入れることができます。

人材派遣の料金体系

人材派遣会社に支払う料金は、「派遣スタッフの実働時間数×時間単価」となり、派遣スタッフを受け入れている期間発生します。時間単価は、派遣スタッフの業務内容や期間、地域などの諸条件をもとに、異なります。

人材派遣会社へのお問合せから、派遣スタッフの決定、労働者派遣法締結までに、費用や手数料が発生することは基本的にありません。すでに就業している派遣スタッフが契約更新できなくなり、別の派遣スタッフを新たに紹介してもらう際の紹介料や手数料も不要です。

派遣の料金には、派遣スタッフに支払う賃金のほか、派遣スタッフの社会保険料や有給休暇を取得した場合の賃金、福利厚生費、人材派遣会社の運営経費が含まれています。

人材派遣の料金の詳細は、こちらをご覧ください。

人材派遣を利用する際に気をつけたい点

人材派遣を活用する際、主に以下の6つに注意が必要です。

  • 業務指示を直接行う必要がある
  • 派遣スタッフの選考や特定する行為は不可
  • 対応できない業務がある
  • 受け入れ期間に制限がある
  • 契約書に記載されていない業務は任せられない
  • 二重派遣にならないように気を付ける

それぞれの注意点について詳しく解説します。

業務指示を直接行う必要がある

派遣スタッフは、自社(派遣先企業)の社員から直接業務指示を受けながら社内で業務を行います。

派遣スタッフが自ら業務内容を判断することが難しいため、派遣先企業で派遣スタッフに何を依頼するかを判断・管理する必要があります。

派遣スタッフの選考や派遣スタッフを特定する行為は不可

派遣スタッフは派遣元である人材派遣会社と雇用契約を結んでおり、自社と人材派遣会社は労働力の提供を目的とする労働者派遣契約を結びます。自社と派遣スタッフは雇用関係がないため、自社が誰を派遣スタッフとして受け入れるかを選ぶことはできません(労働者派遣法第26条第6項)。

自社は依頼したい業務にそった人材のリクエストをすることはできますが、その内容から誰を派遣するかは人材派遣会社が判断します。そのため派遣スタッフを選考することを目的とした面接もできません。

受け入れ前に行われる職場見学は、あくまでも派遣スタッフが希望した場合に派遣先企業を訪問し、派遣スタッフが業務内容や就業環境などを確認することを目的として実施します。

対応できない業務がある

労働者派遣法第4条と労働者派遣法施行令第2条によって、派遣スタッフができる業務に制限があります。
禁止されている業務は以下の通りです。

  • 港湾運送業
  • 建設業務
  • 警備業務
  • 医療関係業務
  • いわゆる「士」の業務(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士など)
  • 人事労務管理関係のうち、派遣先において団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結などのための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務

受け入れ期間に制限がある

人材派遣では、派遣スタッフを受け入れられる期間が事業所単位と個人単位で次の通り定められています(労働者派遣法第40条の2)。

事業所単位の期間制限は原則3年まで、個人単位の場合も3年までです。事業所単位の場合は、派遣可能な期間を延長することが可能ですが、個人単位の場合は同一の派遣スタッフの受け入れの延長はありません(期間制限の例外に該当する場合を除く)。

【事業所単位】

事業所単位の派遣受け入れ期間制限

※参照:厚生労働省|パンフレット(派遣先の皆さまへ)

【個人単位】

個人単位の派遣受け入れ期間制限

※参照:厚生労働省|パンフレット(派遣先の皆さまへ)

人材派遣の受け入れ期間の詳細は、こちらをご覧ください。

契約書に記載されていない業務は任せられない

派遣元である人材派遣会社と自社の契約では、派遣スタッフの業務内容が取り決められており、契約書にない業務に派遣スタッフを従事させることはできません。

もし、契約外の業務を派遣スタッフに依頼した場合には派遣法26条の違反による行政指導の対象となる可能性があります。

そのため、依頼したい業務、もしくは今後発生するかもしれない業務については、契約書に記載しておく必要があります。また契約当初は想定していなかった業務が発生した場合には、人材派遣会社へすぐに相談しましょう。

二重派遣にならないように気を付ける

二重派遣とは、人材派遣会社から派遣スタッフの紹介を受けて、契約した自社ではなく、異なる会社で働かせることです。二重派遣をすると、派遣スタッフの給料が不当に減ってしまう可能性があります。

二重派遣は中間搾取につながりかねないため、労働者保護の観点から認められていません(労働基準法第6条、職業安定法44条)。

人材派遣会社を選ぶ際のポイント

人材派遣会社を選ぶ際の基準は、主に以下の2つがあります。

  • 「労働者派遣事業許可証」が交付されているか
  • 自社が依頼したい業務やエリアに対応しているか

それぞれの基準を解説します。

「労働者派遣事業許可証」が交付されているか

労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣に対して申請を行い、その許可を受ける必要があります。適切な雇用管理、資産要件などさまざまな基準をすべて満たしていると認められた場合に許可番号が付与され、「労働者派遣事業許可証」が交付されます。

「労働者派遣事業許可証」が交付されていない無許可事業主から派遣労働者を受け入れることは、労働者派遣法によって禁止されているため、「労働者派遣事業許可証」の有無を必ず確認しましょう(労働者派遣法24条の2)。

自社が依頼したい業務やエリアに対応しているか

人材派遣を利用する際、対応可能業種や業務、エリアの確認を行いましょう。

人材派遣会社によって得意とする業界や業種、業務内容が異なります。また地域によっては対応できない、対応できる派遣スタッフが少ない場合があります。

人材派遣会社を選ぶ際は必ず対応可能業種や業務、エリアが自社の要望に合うか確認しましょう。

人材派遣を利用する流れ

ここからは、人材派遣の活用を検討されている方に向けて、お問い合わせから派遣スタッフを受け入れるまでの流れを解説します。スムーズに派遣スタッフの受け入れをできるように、依頼前に必要なスキルや依頼したい業務内容などを整理しておくとよいでしょう。

人材派遣の活用の流れ

STEP1 人材派遣会社に依頼

依頼をするにあたり、下記のような内容が必要となります。

  • 業務内容
  • 派遣期間
  • 就業開始希望日
  • 求めるスキル
  • 必要な人数

自社の要望に合った人材を選定してもらうために、上記の項目の他にも業務内容の詳細や、職場環境、就業条件などを人材派遣会社とすり合わせします。

また、受け入れる事業所の事業所名称や抵触日、比較対象労働者の待遇に関する情報を人材派遣会社に提供します。

STEP2 派遣契約締結、派遣スタッフの決定

STEP1のすり合わせ内容に基づいて、人材派遣会社から自社の要望に合った派遣スタッフの提案を受けます。派遣スタッフの希望があれば、職場環境を確認するために職場見学を実施する場合があります。

また、派遣スタッフの雇用元である人材派遣会社から、はじめて派遣スタッフを受け入れる場合は、まず「労働者派遣基本契約」を締結します。労働者派遣基本契約とは、派遣料金の支払条件、守秘義務、損害賠償など、すべての個別契約(労働者派遣契約)に共通する契約条件を定める契約です。

労働者派遣基本契約を締結後、「労働者派遣契約」を締結します。労働者派遣契約は「個別契約」とも呼ばれ、受け入れる派遣スタッフの業務内容、就業場所、指揮命令者、派遣期間などが定められています。

STEP3 派遣スタッフの就業開始

諸手続きが完了次第、派遣スタッフの受け入れが可能となります。スムーズに仕事ができるように、以下のような受け入れの準備が必要です。

  • 派遣スタッフを受け入れる旨を社内に周知する
  • 入館証やIDカードを発行しておく
  • 使用する備品の準備とセットアップ(パソコン、デスクなど)
  • 社内ネットワークなどの利用手続き
  • 引継ぎ書やマニュアルの準備
  • 担当業務の指令命令系統の明確化

また、就業初日は関係者への紹介や社内設備の案内、社内ルールなどを説明すると派遣スタッフが安心して就業できます。

契約更新の有無を人材派遣会社に明示

一般的に、契約満了の1ヶ月前までに、人材派遣会社から契約更新の有無の確認があります。人材派遣は自動更新ではないため、契約更新の有無を自社と人材派遣会社で取り決める必要があります。派遣スタッフへの契約更新の意思確認は、人材派遣会社が行います。

契約更新の意思確認以外にも、就業上の課題解決を行い、安定した就業をサポートする目的で、人材派遣会社の営業担当者から定期的なフォローが入ります。何か気になることがある場合は、相談するとよいでしょう。

人材派遣の活用で人材不足などの課題を解決しよう

人材派遣は、必要な時に必要な期間、専門スキルを持った人材を受け入れることができ、固定費だった人件費が業務量によって最適化され、企業経営に大きなメリットをもたらします。それだけでなく、採用工数やコスト、労務管理の負担などを軽減でき、社員の負担を減らすことにもつながります。

人材派遣を活用する場合は、注意点や人材派遣会社を選ぶ基準を把握した上で、導入することが大切です。本記事を参考に、人材派遣の活用で、自社の人材に関する課題解消に役立ててください。

「人材派遣」ならパーソルテンプスタッフ

人材に関するお困りごとはお気軽にご相談ください

監修者

パーソルテンプスタッフ株式会社
法人マーケティング第二室 室長
河内 諒子

パーソルテンプスタッフに入社後、都内にて派遣サービスの法人営業を7年担当。その後、営業企画部門で法人向けのコンテンツ制作および法改正時の対応、グループ統合対応などに従事。2022年より現職、法人マーケティング第二室の責任者として、記事やセミナー、メールなどのコンテンツを通して情報発信を行う。

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