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派遣社員への残業指示は可能?36協定や残業代の計算方法を解説

公開日:2023.07.19

更新日:2025.11.27

法律

派遣社員の残業は自社社員とは対応が異なり、人材派遣会社と派遣社員の間で「36協定」が締結されている必要があります。

この記事では、36協定の詳細や、派遣社員に残業を依頼する場合に必要な対応、派遣社員の残業代の計算方法などについて解説します。

派遣社員は派遣元の36協定の範囲内で残業をする

労働基準法では、1日および1週間の労働時間、ならびに休日日数を定めています。これを超える残業が必要な場合には、あらかじめ「36協定」を締結し、労働基準監督署に届け出ることになっています。

派遣社員の残業が発生する場合、派遣社員は派遣先企業の36協定ではなく、派遣元の36協定の範囲内で残業をすることになるので注意が必要です。

36協定について

36協定は「サブロクキョウテイ」と読み、労働基準法36条に基づく労使協定です。法定労働時間を超えた残業が必要な場合には、「36協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出を行います。36協定では、「時間外労働(残業)を行う業務の種類」や「1日・1ヶ月・1年あたりの時間外労働(残業)の上限」などを決めなければならないため、各社で36協定の内容が異なるのです。

しかし、協定を結べばいくらでも残業が可能になるわけではない点には注意が必要です。残業の上限(限度時間)は、月45時間・年360時間となり、臨時的に特別な事情がなければこれを超えることはできません。

さらに、臨時的に特別な事情があって労使が合意する場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることは禁じられています。また、月45時間を超えることができるのは、年間6ヶ月までと定められています。

このような臨時的で特別な事情を「特別条項」といいます。繁忙期など通常期よりも残業が多く発生する時期がある場合には、上記の上限以内で残業を行う場合があります。

違反した場合の罰則

36協定や特別条項に関するルール違反は、労働基準法違反として、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑罰が法律上定められています(労働基準法32条違反)。

派遣社員はあくまで派遣元の36協定が適用されるので、自社の36協定ではなく派遣元の36協定の内容を理解し、それをもとに残業を指示します。

派遣社員に残業を依頼する場合に必要な対応

派遣社員に残業を依頼する場合、自社の社員とは異なる対応が必要です。どのような対応が必要かを解説します。

残業が発生する場合は事前に派遣元へ通知する

労働時間や賃金などの労働条件は、労働基準法によって、使用者は労働者に対し明示することが義務付けられています。この場合の使用者は派遣元を指しています。派遣先は残業が発生する場合には、派遣依頼時に残業が発生することを派遣元へ伝えておくようにしましょう。

所定労働時間と法定労働時間の違いとは

「所定労働時間」とは、就業規則や労働者派遣基本契約書で定められた1日あたりの労働時間です。所定労働時間は労働者と結ぶ雇用契約内容によってさまざまです。

また、「法定労働時間」は、労働基準法で「1日8時間、週40時間まで」と定められています。原則として、この時間を超えて労働をさせてはいけません。

この両者の違いは、所定労働時間が「法定労働時間を超えない範囲」で自由に定められるのに対し、法定労働時間は「1日8時間を超えてはならない」という厳格なルールがある点です。

派遣社員の残業代の計算方法

派遣社員と正社員など雇用区分によって法定労働時間の違いはありません。法律で1日8時間、週40時間まで、と定められています。
法定労働時間を超えた残業代は以下のように計算します。

1時間あたりの基礎賃金 × 残業時間 × 1.25(割増賃金)

残業が月60時間を超えた時や、法定労働時間を超えた上で22時以降勤務させた場合は、1.5倍の割り増しになります。

例えば時給1,500円で9~17時(休憩1時間)というはたらき方の派遣社員が、2時間の残業をして19時まで働いた場合、残業代は以下のようになります。

9~17時:1,500円 × 7時間 × 1.0 =10,500円
(法定時間内残業)17~18時:1,500円 × 1時間 × 1.0 =1,500円
(法定時間外残業)18~19時:1,500円 × 1時間 × 1.25=1,875円

時給1,500円で10時~18時(休憩1時間) というはたらき方の派遣社員が、23時まで残業した場合は以下のとおりです。

10~18時:1,500円 × 7時間 × 1.0=10,500円
(法定時間内残業)18~19時:1,500円 × 1時間 × 1.0=1,500円
(法定時間外残業)19~22時:1,500円 × 3時間 × 1.25=5,625円
(法定時間外深夜残業)22~23時:1,500円 × 1時間 × 1.5=2,250円

派遣社員の残業に関するよくある質問

ここでは派遣社員や派遣先企業が抱えるよくある質問に回答します。

Q1.派遣社員に残業を頼むことは可能ですか?

残業を依頼する自体は問題ありませんが、家庭の事情で残業できない場合や定常的な残業を希望しないスタッフもいます。残業が定常的に発生する場合や繫忙期がある場合は事前に派遣元企業と派遣社員へ伝えるようにしましょう。

また、派遣社員は派遣元の36協定が適用されるため、残業を依頼する場合は派遣元である人材派遣会社への確認を行いましょう。

Q2.派遣社員に残業を断られた場合はどうしたらいいですか?

派遣社員が残業を断る権利があるかどうかは、人材派遣会社と派遣社員が取り交わしている契約書の内容によって異なります。

一般的に「就業条件明示書」と呼ばれる書類に残業の規定が明示されているのなら、原則、派遣社員は残業を受け入れる必要があります。

しかし、残業なしで派遣社員が契約を交わしている場合は残業を依頼することは難しいでしょう。派遣社員を受け入れる前に残業の可否を確認しておきましょう。

その他、人材派遣に関するよくある質問についてはこちらでご紹介しています。

派遣社員の残業は派遣元の36協定の締結が必要なことを理解する

派遣社員に残業を依頼しなくてはならない場合、労働者派遣契約(個別契約書)に残業が発生する旨の記載があるかを確認してください。その上で、自社ではなく派遣元と派遣社員の間で36協定が締結されているかを確認しましょう。

36協定が締結されていないまま残業をさせることは違法であり、罰則の対象となります。派遣元との36協定の内容を確認し、労働時間の管理を徹底してください。

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監修者

HRナレッジライン編集部

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