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(情報掲載日:2020年4月13日)


企業における先達の「成功・失敗の決断」の事例は、社内のコミュニケーションを図るうえで有効な素材になります。過去の決断にどんな背景や経緯があったのかを知ることで、そこから貴重な教訓が得られると同時に、自社におけるビジネスとは何かについても学ぶことができます。先達の決断に学ぶ手法について解説します。

●先達の決断に学ぶことの意義

企業には先達の決断に基づいた個別の歴史があります。一つひとつの決断に至るまでには当時の個々の背景があり、そこに関わった社員による議論があったはずです。こうした過去の決断の事例は、社員がビジネスを学ぶ素材としても貴重であり、また、社内でのコミュニケーションを図る話題としても非常に有効です。他にも先達の決断を学ぶことには次のようなメリットがあります。

先達の決断に学ぶことのメリット

・社員にとって共有しやすい話題であり、コミュニケーション素材になる
・身近な素材であり、詳細な情報や関係者の具体的な発言が得られる
・ビジネスの現場をリアルに知ることで、ビジネスの疑似体験ができる
・自社の事業における具体的な方法論が学べ、学習の時間短縮につながる
・自社の発想の形が見え、新しいアイデアが出やすくなる
・同じ失敗を避けるなど、将来のリスク回避につながる
・社員に対し、企業としての姿勢や方向性を示せる


●過去の意思決定の事例を基に経営陣と若手社員が対談

ある企業では、役員と本音で話したいという若手社員からの意見をきっかけに、経営陣と社員が、過去の意思決定の事例について意見を交わす対話を行っています。参加する社員は、経営陣が過去に下した意思決定について、「誇りに思うもの」「競争に遅れを取り、挽回が必要になったもの」「社内外を混乱させたもの」の三つに分類。それぞれの分類での、企業にインパクトを与えた決定ごとに理由と意見をまとめて対話を行いました。

対話では、経営陣は意思決定の裏側にあった当時の考え方や思いについて話し、社員側は質問をしたり、意見を述べながら、企業の将来に役に立つような改善点やアイデアについて考えていきました。対話の中で出た提案については、経営陣が実際に検討しています。この試みは社員の学びにつながるだけでなく、経営陣にとっても社員の本音が聞け、それを有効なアクションにつなげることができています。これは一つの例ですが、先達の「成功・失敗の決断」の実例は、社員が事業を考える素材として、また、社内のコミュニケーション素材として大変有効だといえます。

●経験から教訓を引き出すリフレクション(振り返り)

過去の決断を分析する手法として有効なのは「リフレクション(振り返り)」です。これは物事について客観的に振り返って教訓を引き出し、改善のアクションに変えていくものです。リフレクションに類するものに「反省」がありますが、これは誤りに焦点をあててその原因や理由について深掘りするものです。リフレクションは一連の行動や環境など出来事の全般について考えるものであり、経験について未来志向で振り返り、その中に学びを得ていく点に違いがあります。

先達の決断から教訓を引き出す振り返りのステップには、「出来事を振り返る」「環境や周辺、他者を振り返る」「自身について振り返る」の三つのステップがあります。経験した事実をそのまま振り返って、そこから望む結果に近づけるために何を変えていけばいいのかを考えていきます。

先達の決断から教訓を引き出す振り返りのステップ


実際の決断を振り返る際に有効な手段といえるのがフレームワークです。決断を振り返るフレームワークの一つに、次のようなものがあります。PMDは決断がもたらした利益、KPTは行動をしてみた結果、AARは物事の流れに焦点を当てます。こうした振り返りを行って、社内のコミュニケーション材料にしてみるとよいでしょう。

先達の決断を振り返るフレームワーク

(堀公俊『フレームワークの失敗学』PHP研究所を参考に作成)

●過去に起きた課題を疑似体験するケースメソッド

過去の経験に学ぶ手法の一つにケースメソッドがあります。これは、実際に体験していない問題が与えられ、その解決の過程を疑似体験しながら学んでいく手法です。メリットには「実例から解決策を考えるという演繹(えんえき)的な経験をすることで、問題の形成・把握・分析能力を啓発できる」「他者と意見をやり取りすることで、自分にはない観点に気付ける」「答えのない問題に取り組むことで、自由な発想力を啓発できる」があります。

研修の流れは、事前にケース事例の資料を受講者に渡し、受講者は当事者となって資料を分析して解決策を考え、具体的な提案を準備。用意した提案をもとに数名程度でグループディスカッションをした後、最終的には講師のリードで参加者全員によるクラスディスカッションを行います。実際に起きた問題に対して、自分で考えるとともに多くの意見を集め、一つの結論へと集約させる工程を疑似体験することで、組織での意思決定に至る実践的な考え方が身に付きます。


●失敗なくして前進なし。貴重な失敗の体験を個々の成長に活かす

企業において失敗は付き物であり、過去の失敗体験は貴重な学習素材となります。ただし、組織における失敗には次のような情報の特性があり、なかなか正確に伝わらない点に注意が必要です。失敗に関する情報を偏りなく把握することから振り返りは始まります。

組織での失敗に関する情報の特性

(畑村洋太郎『図解 使える失敗学』KADOKAWA/中経出版を参考に作成)

●失敗を振り返る際に考えるべきこととは

失敗を振り返るときに重要なことは、その過程における迷いや違和感、気付きといったものをすべて洗い出すことです。こうした点が見えてくる失敗こそが、振り返りに適した素材といえます。関係者にしっかりヒアリングすることで貴重な素材が得られます

失敗を振り返るときのポイント

・どのような順序で出来事が起こったか
・挑もうとしていた課題は的確で妥当なものだったか
・途中で誤った仮定をしていなかったか
・小さな失敗はなかったか。それが大きな失敗の原因になっていないか
・コントロールできることとできないことを正しく見極められていたか
・同じ状況において他に選択肢はなかったか
・失敗から教訓は生まれたか。それが活かされているか

企業において「決断の事例」は日々蓄積されていきます。一方で社員は少しずつ入れ替わっていきますから、それによって貴重な経験が共有されないとすると、これは実にもったいないことだといえるでしょう。先達の「成功・失敗の決断」を学習素材としてまとめることは、貴重な経験を伝承するうえでも大きな意味を持ちます。そして、企業の過去を知り、過去に学ぶ姿勢を持つことが、企業文化を育むことにつながっていくのです。

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