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人材派遣の5年ルールとは?概要や3年ルールとの違いを解説

公開日:2024.04.12

法律

有期契約労働者(派遣スタッフ、パートタイマー、アルバイト、契約社員、嘱託社員など)は契約期間が限定的なため、安定的な雇用の確保が課題となっていました。
その問題を解決するために始まったのが5年ルールとも呼ばれる無期転換ルールです。本記事では、このルールの概要や対象者、企業にとってどのようなメリットや留意点があるかを解説しているので、ぜひ参考にしてください。

人材派遣のいわゆる「5年ルール」とは

同一の企業との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールを無期転換ルールといいます。このルールを5年ルールと呼ぶことがあります。
労働者から無期転換の申し出があった場合に無期労働契約が成立し、申し出を受けた企業は断ることができません。

いわゆる「人材派遣の5年ルール」という言葉を耳にした方もいると思いますが、上記のように、このルールは派遣スタッフに限ったものではありません。

無期転換ルールが導入された目的

有期労働契約は、1年や6ヶ月単位などあらかじめ期間を決めて締結する労働契約を指します。その契約期間が満了した際、契約更新されるか終了となるかは企業の判断に委ねられがちだったため、有期契約労働者の処遇の改善が課題となっていました。

有期労働契約を反復更新して労働者を長期間継続雇用するという有期労働契約の濫用的利用を防ぎ、有期雇用労働者の雇用の安定を図ることを目的に、無期転換ルールが制度化されました。

5年ルールと3年ルールの違い

いわゆる5年ルールとは、同一の企業に5年を超えて勤務した有期契約労働者が申し出た場合、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。

一方、いわゆる人材派遣の3年ルールとは、派遣スタッフを同一の派遣先企業にて継続して受け入れることができる期間(派遣可能期間)の制限のことです。
5年ルールと大きく異なる点は、対象が派遣スタッフのみであることです。5年ルールのようにパート・アルバイトや契約社員は対象にならず、派遣スタッフに適用される制度が3年ルールです。

3年ルールについて詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
>> 派遣法の3年ルールとは?概要や対象外となるパターンなどを解説

無期転換ルールの適用条件

どのようなケースで無期転換が可能なのでしょうか。2012年の労働契約法改正で、無期労働契約への転換ルールが規定されました。

それによって、派遣スタッフをはじめ、パートタイマー、契約社員など有期労働契約の労働者は、条件を満たしていれば無期雇用契約に転換できるようになったのです。

直接雇用のパートタイマーや契約社員といった労働者から申し出があった場合には、自社で無期雇用へ転換することになります。ただし派遣スタッフの場合は、自社(派遣先企業)が無期転換することはありません。雇用主は人材派遣会社のため、派遣スタッフが無期雇用を申し出る場合には人材派遣会社に申し込みをします。

以下の条件・ケースを全て満たせば、無期転換が可能となります。

  • 有期労働契約期間が通算5年を超えて更新された場合
  • 有期労働契約の更新が1回以上ある
  • 有期労働契約を結んでいる

それぞれについて詳しく解説していきます。

有期労働契約期間が通算5年を超えて更新された場合

派遣スタッフとして同一の使用者との間で、通算5年を超えて何回も更新されている場合には、無期転換ルールが適用されます。派遣スタッフ側から人材派遣会社に無期転換の申し込みがあった場合には、断ることはできません。労働契約法によって、必ず受け入れなければならないことになっています。

例えば、1回の契約期間が1年間と定められていた場合には、5回目すなわち5年たったときに無期転換申し込み権が発生します。

※引用:厚生労働省|無期転換の概要 事業主や人事労務担当者の方 | 有期契約労働者の無期転換サイト

有期労働契約の更新が一回以上ある

同一の使用者との間で契約の更新回数が一回以上あることも、無期転換ルールが適用される条件となります。

有期労働契約を結んでいる

上記の無期転換ルールが適用される派遣スタッフは、人材派遣会社との有期労働契約の期間中であることが条件となります。
※参照:無期転換ルールについて(厚生労働省)

無期雇用派遣について詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
>> 無期雇用派遣とは?活用するメリットや留意点についてご紹介

無期転換ルールのメリット

無期転換ルールに基づいて労働者を有期雇用から無期雇用に転換することは、労働者だけでなく企業にとってもメリットがあります。考えられる主なメリットは以下の2つです。

  • 人材を長期的に雇用することができる
  • 採用コストや教育コストを削減できる

それぞれについて詳しく解説していきます。

人材を長期的に雇用することができる

無期転換することで、労働者を長期的に雇用でき、企業の業務に精通する社員を確保することができます。労働者も安定的に就業でき、自社の業務に特化したスキルを蓄積することができ意欲的に就業することができます。
その結果、業務プロセスの効率も向上し、業務の安定性と品質は向上するでしょう。
また、無期雇用で労働者が長期間勤務すると想定すれば、長期的な人材戦略が立てやすくなります。専門的なスキルを身に付けてもらう、もしくは幹部候補として教育するなど、人材育成を考える上でも可能性は広がります。

採用コストや教育コストを削減できる

同一企業での勤務年数が5年を超えているということは、その労働者が現在の職場環境になじみ、業務を理解した上で貴重な存在になっている証拠と言えるでしょう。

つまり、企業はあらたな人材を確保する必要がなくなり、教育コストを削減できる可能性があります。引き続き業務に携わってくれるため、即戦力としてこれまで同様に活躍が期待できます。

無期転換ルールの留意点

無期転換ルールには企業にとってメリットがありますが、その一方で下記のような留意点も存在します。

  • 人材の配置が難しくなる可能性がある
  • 正社員と無期転換したスタッフの差がでてしまう可能性がある

人材の配置が難しくなる可能性がある

無期転換ルールに基づく無期雇用契約は、長期的に人材を確保したい企業にとっては歓迎すべきものです。その一方で、急な業務変動に応じ柔軟に人員調整しづらくなるという面もあります。

例えば、有期雇用労働者の場合、契約期間に応じて雇用契約を終了することが可能です。しかし、無期雇用契約の場合は、契約期間の満了はなく、雇用契約終了に際しては、労働基準法や就業規則に基づき、厳格におこなわなければなりません。そのため人員を自由に調整することが難しくなります。

社員と無期転換した社員の待遇差が出ないように配慮する

特に留意しなければならないのは、待遇についてです。無期転換者を社員にした際は問題ないのですが、もし社員にしなかった場合、待遇や福利厚生の面で既存の社員と差が生じる可能性があります。

社員と同内容の業務を担当しているにもかかわらず、社員より給与が低かったり昇進が望めなかったりする場合、モチベーションの低下や離職のリスクが高まります。加えて、組織全体の協調性に影響が出るおそれもあります。

そうならないためにも、無期転換者に対しては昇進の機会や賃金制度について明確に提示しておきましょう。

無期転換ルールの適用条件やメリット、留意点を理解する

有期契約労働者が同じ企業で5年以上はたらいた場合、無期転換ルールが適用されます。5年を超えた期間を含む有期労働契約期間内に無期転換申込権が発生し、その期間内に使用者に対して権利行使をすると、その契約期間が終了した翌日から無期雇用労働者になります。有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申し出により無期労働契約が成立し、申し出を受けた企業は断ることができません。また、派遣スタッフに関しても派遣元に対して無期転換することが可能です。

無期転換は、不況時や閑散期において人材の配置が難しくなるという留意点が存在します。その一方、自社の業務に精通した労働者が長期間定着するという点が企業にとってはメリットです。これらのメリットや留意点を踏まえた上で、無期転換した社員にも十分に活躍してもらいましょう。

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