(情報掲載日:2018年1月10日)


2018年、今年は働き方改革の進展に期待が集まります。近年は、社員の健康促進を図る健康経営のもうひとつ先を目指す概念として「ウェルビーイング」が注目されています。これは人が体や心が良好な状態を指す概念であり、「幸福」の状態を意味します。ここではウェルビーイングの概要、どう取り込むべきかについて解説します。この機会に自らの働き方について、あらためて考えてみてはいかがでしょうか。

●ウェルビーイングとは幸福に近い概念

ウェルビーイングとは、人が身体的、精神的、社会的に良好な状態にあり、いわゆる「幸福」といった状態を指します。1946年の世界保健機関(WHO)憲章草案において、「健康」を定義する記述の中で「良好な状態(Well-being)」として用いられたのが言葉の始まりです。

米国ペンシルベニア大学心理学部教授でポジティブ心理学の父と呼ばれるマーティン・セリグマン氏は、ウェルビーイングを測定する要素として以下の構成要素をあげています。これらの要素を高めることで、「持続的な幸福(Flourishing:人間が持続的に心理的に繁栄していく状態)」の実現が可能になるとセリグマン氏は述べています。


ウェルビーイングを測定する5つの構成要素

(マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ』ディスカヴァー・トゥエンティワンを参考に作成)

●健康経営とウェルビーイング経営の違い

社員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」(注1)が近年注目され始めています。健康経営の目的は、社員の健康に企業が配慮することで社員が働きやすくなり、企業の業績に貢献することです。ウェルビーイング経営は、この考え方をさらに推し進め、健康だけでなく上記の5要素にあるような社員のメンタルヘルスや仕事へのやる気、組織への愛着などを社員にもたらす経営手法です。また、積極的に社員の心身共に健康な状態を目指し、仕事や組織にも前向きに関われるようになると言われています。


●幸福感が人の働き方に与える影響

ウェルビーイングに詳しい慶應義塾大学大学院の前野隆司教授によれば、欧米の研究では、幸福な状態が社員の働き方に大きな影響をもたらすことがわかっています。幸福度が高い社員ほど、創造性が高く、欠勤率・離職率が低く、仕事の効率が良いといった傾向にあるということです。その意味では幸福度が高い人は、組織を活性化する人材にもなり得るといえるでしょう。

注1:「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。

●人が幸福になるための4つの因子

前述の前野教授は、長期的な幸福に関する要因についてアンケート調査を実施し、その結果から、人が幸福になるための4つの因子を割り出しています。「やってみよう!因子」は夢や目標に向かう価値の高さを示しています。「ありがとう!因子」はこれだけが他人との関係性に関わるものであり、他者への感謝と自己の存在意義の大切さを示しています。「なんとかなる!因子」は、前向きでいることの大切さを、「ありのままに!因子」は、自分らしくいることの大切さを示しています。

幸福になるための4つの因子

●4因子から見えてくる幸福な職場環境とは

ウェルビーイングのある職場環境には次のような特徴があります。これらをみると、個々のメンバーが自主性を持って行動しつつも、互いが連携し、フォローし合えるような場所が幸福を生み出す職場といえます。これを例えると、個々の動きが全体の動きに自然と連動できるようなサッカーチームをイメージするとよいかもしれません。


ウェルビーイングのある職場環境


●幸せはどのようにすれば測れるのか

幸福度の研究者の間では、アンケート形式での測定尺度を使った幸福度調査が行われています。幸福度の研究者として知られる米国イリノイ大学名誉教授のエド・ディーナー氏は、次のような質問を考案しています。5つの項目について7段階で聞き、回答の合計から幸福度(人生満足尺度:Satisfaction With Life Scale)を測るものです。


人生満足尺度の質問

「人生満足尺度の質問」は総合的に今の幸福度をみるものです。これと同様に、「やってみよう!因子」「ありがとう!因子」「なんとかなる!因子」「ありのままに!因子」ごとに、今の自分について振り返れる質問を考えることで、各々の因子ごとに今どのような状態にあるかをみることができます。

例えば「私は夢に向かって歩いている」「私のことを大切に思ってくれる人がいる」「私は失敗しても立ち直りが早い」など、具体的な質問項目を考え、点数をつけることで現状における自分の思いや今の幸福度を知ることができます。これを部署ごとに集計し分析すれば、その部署の人に対する考え方やより幸福度を高めるためのヒントが見えるようになります。


●幸福度を高めるワークショップ

ではどうすれば職場の幸福度が高められるのか。幸福度を高める手法の一つにワークショップがあります。ここで幸福に関わる経験談を共有すると、どのような幸福があるのかがわかり、自分たちの周辺でも幸福になれる出来事が起きていることが実感できます。前野教授は次のようなワークショッププログラムを行っています。ルールは「相手の話を聞く」「相手を尊重する」「批判や助言はしない」「とにかく言葉にして声に出す」です。業種や職種によって話す内容はさまざまなものが考えられるので、各自で工夫してみるとよいでしょう。

ワークショップのプログラム例

これまで企業では社員の満足度が調査されることはあっても、幸福度が調査されることはほとんどありませんでした。働き方改革でこれまでの働き方が見直され、変わろうとしている今、幸福度が測られるようになれば、そこから新しい働き方が見つかるかもしれません。企業にとって、自社に合った幸福な働き方を見つけ、社員に提供することは使命でもあります。どの企業においても、試行錯誤をしながら、それを探し続ける姿勢を持つことが期待されています。

“旬”なテーマで人材活用やビジネスに関するお役立ち情報をお届けします。メールマガジンの定期配信をお申込みのお客様は左のボタンからお気軽にどうぞ。

このページのトップへ