(情報掲載日:2017年11月10日)


近年、CSR(企業の社会的責任)に対し、CSV(共通価値の創造)という新しい概念が登場しています。CSVとは、企業が世の中の社会課題に目を向け、それを本業で解決することで事業機会を生み出し、自社の成長につなげる考え方です。CSVの概要、CSRとの違い、実例などについて解説します。

●CSVとは「共通価値の創造」

CSV (Creating Shared Value)は「共通価値の創造」という意味であり、企業が社会的課題に取り組むことで社会的価値を創造し、同時に企業自体としても生産性を高めていく活動です。2011年にハーバードビジネススクールの教授であるマイケル・E・ポーター氏とマーク・R・クラマー研究員が提唱しました。社内の人のつながり(企業組織)、社内と社外の人のつながり(世間)、社外と社外の人のつながり(市場)といった人のつながりの中で、そこで必要とされる価値について考え、創造していくものです。日本でいえば近江商人の心得である「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の三方よしに近い考えといえます。三方よしでは、売り手と買い手がともに満足し、加えて社会貢献もできることがよい商売であるとされています。


●CSV とCSRの違い

これまで企業と社会の関わりを示す活動としてCSR(Corporate Social Responsibility)が行われてきました。CSRとは「企業の社会的責任」の意味であり、企業が社会に対して責任を果たし、社会とともに発展していくための活動です。CSRは一般的に企業戦略とは別に位置づけられ、地球環境や地域社会などの側面において積極的に貢献しようというものです。それに対しCSVはあくまでも企業戦略の一環であり、利益も追い求める点で活動の意味合いが大きく異なります。CSRを企業のイメージづくりに貢献する活動とすれば、CSVは積極的に社会的な課題に関わり事業化する活動といえるでしょう。


CSVとCSRの違い
(名和高司『CSV経営戦略』東洋経済新報社を参考に作成 書籍記載出所:マイケルE.ポーター、マークR.クラマー「共通価値の戦略」『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2011年6月号を参考に作成)

近年、企業にCSVが期待される背景には、社会課題が増加し深刻化する中で、「小さな政府(政府の経済政策・社会政策の規模を小さくし、市場への介入を最小限にする考え方)」を志向する政府に対して、スピード感のある事業運営を行う企業の存在感が増していることがあげられます。また、企業競争によって企業が持つさまざまな能力が鍛えられ、その問題解決力が強化される傾向にあることも理由の一つといえます。グローバル化が進む中で企業の影響力も増す傾向にあり、社会課題の取り組みへの期待も高まりつつあります。


●3つのアプローチ

ではCSVにはどのようなアプローチがあるのでしょうか。マイケル・E・ポーター氏は以下の3つのアプローチがあると述べています。ひとつ目は製品・サービスによるCSV、2つ目はバリューチェーン(価値連鎖)によるCSV、3つ目は地域基盤の構築によるCSVです。これらをみると企業が事業を推進しようとするときの要素すべてが、CSVの活動に活かせることがわかります。

CSVにおける3つのアプローチ
(赤池学、水上武彦『CSV経営』NTT出版を参考に作成)

●企業事例

CSVでは、ビジネスを市場に合わせるといった受け身の姿勢ではなく、自ら世の中にある社会的な課題を探し出し、そこから市場をつくり出そうとする積極性が求められます。以下の事例でも、企業は社会的な課題に積極的に取り組み、地域や社会に貢献しています。


CSVの企業事例


●社会秩序・慣習がもたらす不便から課題を探索

ではどのようにして活動テーマを見つけていくのでしょうか。企業は消費者や顧客、事業に関わる業者といった人たちの動きや、その人たちが住む地域および環境に着目し、社会的な課題を見つけて自身の事業につなげることを考えなければなりません。

以下は社会秩序・慣習の有無と、課題の顕在化の度合いのマトリックスから課題を探索した例です。秩序や慣習があることが不便さにつながるケースもあれば、秩序や慣習がないことで不便となるケースもあります。企業は、社会的課題において市民自身が困っていることに気付けていない領域もある点に注意する必要があります。企業が社会的課題を見つけてその解決策から事業を生み出すには、これまでの枠にとらわれない発想が必要であり、その中で自社の強みを活かして解決に貢献できるような社会的課題に着目し、事業化を検討することになります。


社会秩序・慣習の有無がもたらす不便から課題を探索した例
(藤井剛『CSV時代のイノベーション戦略』ファーストプレスを参考に作成)

●ハード、ソフトの観点でマネジメントを行う

CSVを社内で推進するには以下の表のように、ハード(制度やルールに制定による直接的マネジメント)とソフト(風土づくりや人材教育による間接的マネジメント)のマネジメント手法があります。ハード・マネジメントでは社会動向を理解したうえでビジョンを策定し、それにもとづく目標を決め、PDCAマネジメントによって組織的にアウトプットを管理します。ソフト・マネジメントでは、CSVの考え方やアプローチを組織に浸透させ、社員たちが個々に自社の強みを活かして解決できるような社会課題を見つけ出し、事業化を行うように促していきます。


CSVを推進する際に注視すべきポイント
(赤池学、水上武彦『CSV経営』NTT出版を参考に作成)

世の中にある社会的な課題に取り組むことはビジネスの基本です。かつては多くの企業が同じ思いを持っていたはずですが、利益の追求や規模の拡大、また従業員の待遇改善といった目標を持つことで、既存事業の維持・拡大に忙しくなり、新たな社会貢献に取り組もうとする積極性が薄れつつありました。しかし、今CSVによって企業に対する社会貢献への期待が高まっています。いかにCSVを推進していける「思い」のある人を育てられるか。企業の姿勢が問われています。

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