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(情報掲載日:2017年6月12日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

社員のキャリア自律を支援する

VOL.65


政府が進める「働き方改革」では、ワーク・ライフ・バランスを確保し柔軟に働ける環境整備、ライフスタイルやライフステージに応じたキャリア構築などをテーマにあげています。これから企業には、社員が自ら多様なキャリアを選べるようにする「キャリア自律」に向けた支援を行うことが求められます。企業はどのように社員にキャリア自律を促し、それを自社の成長に活かすのか。キャリア自律支援の現状やその手法について解説します。

なぜ今キャリア自律が注目されるのか

●働き方改革にみるキャリア自律支援の必要性

キャリア自律とは、働き手自らが自律的にキャリア形成をしていこうとする活動をさします。変化の激しい今、個人がキャリアについて自分なりの考えを持ち、自身の力でキャリア開発を行うキャリア自律の環境を、企業が支援していく必要性が出てきました。

政府が進める「働き方改革」では、会議テーマとして「副業など柔軟な働き方への環境整備」「雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成など」「高齢者の就業促進」などがあげられています。その背景には、将来の労働力人口の減少、維持が困難になった終身雇用や年功序列といった雇用制度、年金支給の延期による労働の長期化などがあります。下の図のように、社員からみると、終身雇用や年功序列といった雇用制度が維持されず、そこに成果主義などが導入されたことで、年齢による節目でみる「ライフステージ」と、職制や職位・資格・等級などの節目でみる「キャリアステージ」を、自らが計画して同期させることが困難になっています。そのため、社員自らがライフステージとキャリアステージの将来について考え、その希望に向けて二つのステージを同期させていくためにも、キャリアの自律性が必要となっています。

個人におけるライフステージとキャリアステージの関係
個人におけるライフステージとキャリアステージの関係
(花田光世『「働く居場所」の作り方』日本経済新聞出版社を参考に作成)

これまで企業は組織の雇用責任において、社員のキャリアも管理してきましたが、今後は社員のキャリア自律を支援する役目を担うことになるでしょう。社員のキャリア自律を支援することは、社員個人としてスキルや能力を身に付けることにもつながります。結果として企業の成長につながるものであり、これを促進するのは人事の役割となります。近年、大手企業の中には、人事本部から独立して「キャリア開発本部」を設置する動きもみられ、企業がキャリア自律の支援をする動きが活発化しています。

●副業や兼業を認める動きが顕在化

キャリア自律支援の一環として、大手企業を中心に副業や兼業を解禁する動きがみられています。副業や兼業を容認することは、企業にとっては「個人が持つ情報・スキル・人脈が広がる」「個人のモチベーションアップにつながる」「優秀人材の囲い込みに役立つ」「人材採用で有利になる」「研修代わりになる」など、様々なメリットがあります。

副業や兼業の容認状況をみると、平成26年度の中小企業庁の調査では、副業や兼業を容認している企業は14.7%とまだ少数です。容認している企業の手続き方法は、「特に会社への報告義務等はなし」(48.6%)、「申請書類はないが会社で許可を出している」(28.3%)、「申請書類をもって許可を出している」(23.1%)となっています。これから副業や兼業の容認に踏み切る企業では、対応する就業規則の整備や禁止事項の確認(勤務時間の重複の禁止、労働時間の管理の徹底、競合での就労禁止など)、社員の健康への配慮、情報漏えいの防止といった作業が必要であり、これらの対応は人事に任されることになります。


企業に聞く「社員の副業や兼業への容認」  容認企業に聞く「認めるにあたって必要な手続き」
(中小企業庁「平成 26 年度兼業・副業に係る取組み実態調査」を参考に作成 ※1)


●本業と並行して社会活動を行うパラレルキャリア

また、新たな社員のキャリア開発の動きとして、近年はパラレルキャリアという働き方も注目されています。パラレル(Parallel)は「平行、並列」の意味であり、「本業のキャリアを持ちながら、第二のキャリアを持つこと」を指します。これは現代経営学やマネジメントを生み出したP・Fドラッカーが1999年に著書『明日を支配するもの』の中で提唱した働き方です。

パラレルキャリアは副業・兼業と似ていますが、現状においてパラレルキャリアが意味するものとしては大きな違いが二つあります。一つ目は「働く目的が社会貢献や個人の成長にあること」、二つ目は「報酬を得ることに重きを置かないこと」です。具体的にはボランティア活動やNPO活動への参加などが多くみられ、このような活動を指して「2枚目の名刺」とも呼ばれています。

※1:中小企業庁「平成 26 年度兼業・副業に係る取組み実態調査」
http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/nyusatsu/2016/161128kengyo1.pdf

今後人事が目指すべき方向性

●能力開発は76.6%が企業責任という現状

社員の能力開発はどこが主体となって進めているのでしょうか。厚生労働省の調査で、企業に「社員の能力開発は企業主体か個人主体か」と聞いたところ、「企業主体で決定する」「企業主体で決定に近い」の合計は76.6%でした。企業責任の割合が4分の3を超えています。能力開発は企業主体で進めている企業が圧倒的に多いという結果であり、これから社員個人がキャリア自律を考えるような風土をつくるには、企業側が率先して動く必要があります。

能力開発の責任主体(正社員)
能力開発の責任主体(正社員)
(厚生労働省「平成27年度能力開発基本調査」※2より)

●企業と社員のWin-Winの関係づくり

では、企業はどのように社員のキャリア自律を支援すべきでしょうか。そこでは企業と社員において、自律的な社員の成長が企業の成長へとつながるWin-Winの関係づくりがポイントとなります。人事が行うべき方向性と環境づくりのポイントは以下の表の通りです。企業が社員に対して、キャリアについて考える機会と材料を与え、常にキャリア自律を意識させることが大事になります。また、企業は社員のキャリアに対する意識レベルを把握し、キャリア自律に向けたメッセージを出し続ける必要があります。


キャリア自律に向けた人事の動き
キャリア自律に向けた人事の動き

※2:厚生労働省「平成27年度能力開発基本調査」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11801500-Shokugyounouryokukaihatsukyoku-Kibansetsubishitsu/0000118619.pdf


キャリア自律支援への具体策

●事例にみるキャリア自律支援

実際に企業では、どのようなキャリア自律支援が行われているのでしょうか。特徴的な事例には以下のようなものがあります。よくみられるのは、キャリアや年齢の節目ごとに行うキャリア研修の実施、自由に相談できるキャリア相談窓口の設置、そして定期的な上司とのキャリア面談です。企業は「社員のキャリア自律の支援者」であることを明確に示し、そのうえで社員との間でキャリアについて話すコミュニケーション機会を増やすことが求められます。


特徴的なキャリア自律支援事例
特徴的なキャリア自律支援事例
(厚生労働省「キャリア支援企業好事例集2014、2015」を参考に作成 ※3)

※3:厚生労働省「キャリア支援企業好事例集2014、2015」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/career_formation/career_consulting/goodpractice.html

企業と社員個人にとって、理想のキャリア自律とはどういうものなのか。それは、互いが理想を模索し続けようとする姿勢が生み出すWin-Winの関係の中に存在するのかもしれません。理想のキャリア自律を実現するには、互いに多面的で継続的な接点を持ち続け、互いが情報を提供する必要があります。そして、社員自らが理想のキャリアを築こうと行動することも求められます。まだ注目され始めたばかりのキャリア自律ですが、これからの人事には理想のキャリア自律につながる環境づくりの役割が求められています。

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