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(情報掲載日:2016年2月10日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

理系人材を採用・育成するためのヒント

VOL.49


近年、新卒の理系学生が減少しています。中途採用市場でも技術者の求人倍率が高くなり、企業にとって理系人材の確保が難しい状況となっています。社内の優秀な理系人材についても、いかに引き止めるかを考えていく必要があります。理系人材の現状やその気持ちをいかに理解し、戦力としていくのか。現状把握、採用、育成のポイントについて解説します。

新卒:理系学生の現状と採用のポイント

●減り続ける理系学生

大学における理学・工学・農学分野の学生数の推移(※1)を見ると、1999年度の63.6万人をピークに減少しており、2013年度で55.4万人となっています。大学生全体に占める理工系学部学生の割合も減少しており、2013年度で21.6%となっています。人数の減少によって、理系人材の確保はより難しくなりつつあります。


理学・工学・農学分野の学生の就職動向(※1)で、1993年度と2013年度を比較すると、農林水産・製造技術者の比率が下がっています。一方、事務・販売・サービス職業等従事者は12.3%→26.3%と大幅に増加しており、第3次産業を含めた人材輩出先の多様化が進んでいることがわかります。また、IT系職種である情報処理・通信技術者は10.2%→14.7%と増加しており、IT業界での理系人材ニーズも拡大。理系人材における就職先の選択肢が増えていることがわかります。

(文部科学省「理工系人材育成戦略」資料より:「学校基本調査報告書」をもとに作成)


さらに近年は、ITで収集できるデータの種類や量が急激に増加しており、いわゆるビッグデータを扱うデータサイエンティスト、データアナリストといったデータ分析系の職種のニーズが増しています。また、スマートフォンなどモバイルを舞台とするビジネスも増え、開発やマーケティングを行うITエンジニアは足りていません。この状況は今後も長く続くと思われます。

●採用活動のポイント

理系学生と採用したい企業の間で、十分な情報交換やマッチングが行われているかというと現状はそうとはいえません。理系学生は大学3年〜4年の就職活動時には、卒業研究に追われており、多くの学生は就職活動に十分な時間を割けない状況にあります。学校推薦、教授推薦で就職先が決まる学生もいますが、そうでない学生は十分な就職活動ができず、中には業務内容を把握しないまま大学の専攻とは関係の薄い企業に就職し、後悔するといったケースも生まれています。

企業側を見ると、大手企業では就職活動サイトから来る多数のエントリーに対応が追い付かず、十分な情報提供の上で理系学生にアプローチするといった活動ができない状況となることがあります。一方、中小企業の中には、大手企業に学生が集まることで、満足できるだけの学生との接触数が確保できないという課題を持つところもあります。今後、企業が理系学生にアプローチしていくには、これまで以上に高い効率性が求められますが、そのためには以下のようなポイントに気をつける必要があります。

・入社後にどんな技術や知識が身につくかを伝える

企業が学生に伝えるべき点としては、モノをつくる、ITサービスを生むといった創造的な観点から見た「プロダクト(製品やサービス)」「他社との差別化ポイント」「業界情報を含めた企業環境」「社会への影響力」「仕事環境」を整理して伝えることが挙げられます。その中で理系学生は「どんな技術、知識が身につくのか」といった、個人の成長に関わるポイントを重視する傾向にあり、それに関する情報提供を意識すべきです。

・大学の専攻がいかに仕事に活きるのかを伝える

就職活動に時間を割きにくいことのある理系学生に向けては、企業側もセミナーでポイントを押さえたアピールが求められます。理系学生はその多くが「専攻が活かせるか」という視点で企業を探し始めるため、専攻で学んだことがいかに仕事に活かせるのかを具体的にわかりやすく伝えることが重要です。

・文系と同じ基準で学生を見ない

新卒採用では人事が一次面接を担当することが多いですが、そこで理系学生を文系学生と同じ価値観で判断しないことが必要な場合があります。理系学生の中にはコミュニケーションが苦手な人もおり、そのようなタイプの人と接しても、面接官はきちんと技術者としてのポテンシャルを見極める必要があります。そのため、面接官に技術者や理系出身者を加える等、多様な視点で学生を見ることが大事です。

・本人が気付いていない「可能性」を伝える

自動車メーカーで情報・通信の研究が活かせたり、半導体メーカーで化学の研究が活かせるなど、一見すると専攻との関連が結びつきにくい仕事でも、学んだことが活かせるケースがあります。文系職の採用で理系のロジカルな思考力を求めるケースも増えています。企業は既存社員の配属例などを示しながら、学生が考える以上に仕事の方向性には広がりがあり、人材への価値観も多様化していると伝えるとよいでしょう。

●学生確保に向けた工夫

最近は理系学生を対象としたインターンシップにおいて、現場技術者も参加し、共に開発を行う体験型が増えています。また、採用試験でも個々の技術力や志向に着目し、「制作したアプリで選考」「プログラミングの実技テストだけで選考」「卒論だけで選考」「ゲームをプレイする様子で選考」といった独自の基準で採用を決める企業もあります。今後、理系学生の採用においては、面接以外に、学生の得意なことや学んだことを伝えられるような選考場面をつくるなど、より適任者が見つかるマッチング手法を考える工夫が必要です。

また、応募者確保のために、地方の理系学生に手を広げ、アプローチする企業も増えており、SNSでの企業アピールやスカイプによる面接などが行われています。企業にはこれまでのやり方に捉われず、より一層接触する学生数を増やす努力が求められています。

※1:文部科学省「理工系人材育成戦略」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/03/13/1351892_02.pdf


中途:理系人材の現状と採用のポイント

●技術系職種(化学/食品除く)は約2〜3倍と非常に高い転職求人倍率

DODA転職求人倍率(※2)を見ると、全体1.21倍に対し、技術系職種はIT・通信3.19倍、電気・機械2.02倍、メディカル1.88倍、建築・土木2.26倍と非常に高くなっており、技術系人材が大幅に不足していることがわかります。

職種別転職求人倍率
(転職求人倍率レポート 転職サービス「DODA(デューダ)」調べ)

特にIT・通信が3.19倍と高倍率となっている背景には、IT技術がこれまで以上に広範囲の分野で活用されている事実があります。ITが企業に導入され始めた当初は、業務の中のルーチンワークの効率化やコストダウンといった、主に現状の仕事へのサポートが目的となっていました。しかし、インターネットの普及とともにインターネット経由でモノが売り買いされるようになり、現在ではスマートフォンなどモバイルを通じた取引も盛んです。そのうえ、ゲームやアプリ、映像配信など、インターネットサービスそのものにお金を払うビジネスも増え、必要とされるIT技術の種類は増加し、レベルも上がっています。

システム開発の体制も、外注が減り、内製による開発が増えています。これまでIT企業に開発を依頼していた企業でもITエンジニアを直接採用する動きが加速し、ITエンジニアの人材難に拍車をかける要因のひとつとなっています。

●仕事そのものへの重視が転職につながっている

特に募集ニーズが高い「IT/通信/インターネット業界」の人材における転職理由(転職サービス「DODA(デューダ)」調べ、※3)を見ると、1位「ほかにやりたい仕事がある」、2位「会社の将来性が不安」、3位「給与に不満がある」、4位「専門知識・技術力を習得したい」となっています。特にニーズが高いITエンジニアの転職理由を見てみると、上位4項目は同じで、「ほかにやりたい仕事がある」「専門知識・技術力を習得したい」といった、「仕事そのもの」を重視して転職を考える傾向が強いといえます。企業は社内の技術者に対しても、外部から採用する技術者に対しても、個々の仕事に対する要望を十分に把握し、対応することが求められます。

IT/通信/インターネット業界の人材における転職理由

ITエンジニアの転職理由
(「転職理由ランキング 職種別 2015年4月〜9月」転職サービス「DODA(デューダ)」調べ)

●技術者確保に向けた工夫

優秀な技術者は仕事における向上心も高く、仕事選びのポイントも「技術を向上させることができるか」「興味のある開発ができるか」といった点が中心になります。人事は応募者の技術内容と自社が募集する職種の仕事内容を正確に把握し、的確なマッチングを行うことが求められます。そのためには以下のようなポイントを押さえる必要があります。

・「得意なこと」「わかっていること」「興味があること」を把握する

技術者のスキルを把握する上で必要な項目は「得意なこと」「わかっていること」「興味があること」の3点です。人材を要求する技術部門には、この3点について期待する内容、その相関について確認しておかなければなりません。その上で応募者へのヒアリングでは、過去の仕事実績やエピソードなど客観的な事実と結び付けて把握します。

・技術力を正確に把握する

中途採用における仕事のマッチングを図るには、応募者のスキルを正確に知る必要があります。ITエンジニアの採用では、応募者の技術力把握のために実際にプログラミングを行ってもらい、スキルチェックを行う企業もあります。どうすれば応募者のリアルな技術力が把握できるのかを、関係部署と相談し、その手法を考えておく必要があります。

・自社の技術者のモチベーションを確認する

起業して間もない企業と大手企業では技術者のモチベーションも違ってきます。技術者にはユーザーが利用する場面に関わる開発が好きな人もいれば、サービスの土台となるプラットフォームの開発を好む人もいます。また、開発にも専門性の追究が求められる仕事もあれば、チームでのスピーディな連携が求められる仕事もあります。自社の技術環境、仕事環境がどのような特徴を持ち、そこに求められる技術者のモチベーションにはどんなものがあるのか。自社の技術者のモチベーションを確認しておくことが大事です。

・プレゼンテーション能力重視の選考を見直す

技術者の選考においては、業務であまり必要とされない面接での自己アピールといったプレゼンテーション能力を問う選考がいまだに多く行われています。面接では技術者の本人の思いを確認する場にするなど、適切な選考となるように配慮する必要があります。

・技術者勉強会に参加するなど、リアルな技術者の声を聞く

技術者向けの勉強会は優秀なエンジニアが集う場となっています。優秀な技術者の興味がどこにあり、その人たちはどのような考えを持っているのかを知ることは採用にも必ず役立ちます。必要ならば社内の技術者に同行する形を取るなどして、最前線の技術者の声を聞く機会を作りましょう。

※2:転職求人倍率レポート(転職サービス「DODA(デューダ)」調べ)
http://www.inte.co.jp/library/recruit/20151207_01.html

※3:「転職理由ランキング 職種別 2015年4月〜9月」(転職サービス「DODA(デューダ)」調べ)
http://doda.jp/guide/reason/2015second/002.html


理系人材を育成する方法

●企業が持つべき育成のスタンス

一般に、技術者がプロジェクト遂行のために必要とされるスキルを考えると、以下の3つが挙げられます。一つ目は仕事を進める職務遂行スキル(技術的スキル)。二つ目は、複数の人が手分けしてスムーズにプロジェクトが進める協力スキル。三つ目は、トラブルを回避する問題解決スキルです。

企業における人材育成では、現在いる人員のスキルを、企業が目指す事業を実現できるだけのスキルに変えることが目的となります。前述の3つのスキルについて、現状と目標のスキルをいかに「見える化」し、本人にとって納得性のあるものにするかが重要です。ただし、技術者の仕事は個々で行う部分も多く、現状のスキルや能力が正確に把握できていないことから、仕事とのマッチングが難しくなっています。加えて、前段の転職理由に「ほかにやりたい仕事がある」「専門知識・技術力を習得したい」とあったように、個々が望む仕事の方向性も十分に把握できているとはいえません。

そのため職場でのエンジニア育成は、上司と部下が密に情報交換を行い、互いの要望を伝えあうことがカギとなります。人事はそのようなコミュニケーションを技術部門にもたらす工夫をした上で、「見える化」されたスキルのギャップを埋めることが求められます。

●効果的な研修とはどんなものか

IT業界を例に取ると、ITエンジニアの新人向け技術研修で、効果が出にくいものには共通点があるといわれています。一つ目は「研修の期間が固定化されていること」です。個人スキルにレベル差があると同じ研修でも習熟の度合いは違ってきます。そこへの配慮が必要になります。二つ目は「教え上手な人が講師になっていないこと」。優秀で苦労を知らないエンジニアがよい講師になれるとは限りません。苦労したエンジニアのほうが教えるポイントを知っていることもあります。三つ目は「個別フォローがないこと」です。成長には、個別面談や個々のプログラムをレビューすることに効果があります。このように技術者の研修では、個々の成長を教える側がきちんと確認するというスタンスが重要になります。

また、IT業界では技術者個々の成長意欲に応えようと、下のような工夫を凝らした研修が行われています。企業は技術者に同じような研修を何度も行うのではなく、「今の仕事のやり方は正しいか」「自身に足りないスキルはないか」「これから必要となるスキルはないか」「より効率的なプロジェクト運営はできないか」「人材育成の手法は的確か」といった問いを与える研修メニューを用意すべきでしょう。そのうえで個人の成長を設計することが求められます。

IT業界の研修事例

忙しい中でも「やりたい仕事」を探し「今より高い技術」を身に付けようとする優秀な理系人材の思いに、企業は気付かなければなりません。そして、その思いをできる限り汲み取りながらも、事業に貢献してもらえるよう配慮しなければなりません。企業と技術者、互いの関係性の理想は双方が相手を必要と思える関係になることです。そのためにどうすべきかを、企業は常に考える必要があるといえます。

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