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(情報掲載日:2015年1月13日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

「顧客感動」をもたらす人材育成

VOL.36


似たようなモノやサービスがあふれる中で、「顧客満足」以上の「顧客感動」をもたらしている企業があります。「顧客感動」を実現する企業の人材育成、さらには従業員満足向上につながるポイントについてご紹介します。

顧客満足から顧客感動へ

●期待以上の品質と価値が求められている

景気回復が進めば人々の財布の紐が緩み、日用品の買い物ばかりでなく少々贅沢なモノ・サービスに対する出費が増えると期待されています。しかし、日本百貨店協会によると、全国百貨店の売上高の前年同期比は2014年の4月から10月まで7ヶ月連続でマイナスとなっており、消費の拡大は簡単ではないようです。 (※1)。
最近では、人々の消費行動はさまざまで、以前のように特定の商品が飛ぶように売れる現象は見られなくなっています。また、「ナンバーワンよりオンリーワン」と言われるように、自分のライフスタイルにこだわる消費者が増え、量や価格といった外形的な価値だけではなく、心地よさ、喜び、楽しさといった目に見えない感覚的な品質を重視する傾向が見られます。消費者に「自分が求めていたのはまさにこれだ」と思ってもらえるような商品を生み出す企画力と、顧客をもてなす現場での提案力があって初めて、付加価値の高いモノやサービスが売れると言えそうです。消費者は、「期待通り」ではなく、「期待以上」の品質と価値を求め、自分を驚かせ、感動させてくれるモノやサービスを求めているようです。


●「満足」を上回る「感動」をもたらすには

消費者の好みが多様化し、自分なりのこだわりが重視される今、企業には、顧客満足を上回る顧客感動をもたらすことが求められるでしょう。顧客感動は英語のCustomer Delightの訳語であり、顧客満足(Customer Satisfaction)のCSに対してCDと略されます。顧客の期待を上回る価値や、想定外の喜びの提供が、顧客感動につながります。


●利用者の口コミが購買動機に影響を与える

一般的にモノやサービス購入後のアンケートは、「大変満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「大変不満」といった5段階評価が多く用いられます。
また、インターネット上のショッピングモールなどでは「5段階で平均4.3点」などと評価が点数化され、店舗別の比較が可能になっています。飲食や旅行といった、実際に体験してみなければ価値が分からないサービスについては、利用者の口コミが人々の購買動機に大きな影響を与えていると考えられます。
そのため、企業によっては、「普通」では評価が高いとは言えず、「大変満足」や「やや満足」の合計が9割以上でなければ合格点ではないと判断し、新たなモノやサービスと入れ替えをする場合もあります。企業は口コミの重要性を認識し、顧客満足以上の顧客感動を提供しようと考えています。


●顧客感動の実現は従業員の対応力が鍵となる

顧客感動は、顧客と従業員のやりとりの中から生まれ、従業員が顧客の期待以上の配慮・判断・行動をしたときにもたらされます。
例えば、顧客がホテルのフロントで近くにインターネットのできるカフェがあるかと尋ねたときに、「インターネットができるかは分かりかねますが、こちらのホテルの周辺のカフェをご紹介した地図があります」などと対応してくれた場合は、ごく普通のレベルと言えるでしょう。
もし、従業員がインターネットのできるカフェについて、座席数とともにあらかじめ調べておいた情報を提供すれば、顧客満足レベルに到達できるでしょう。
さらに、従業員がカフェへ電話をかけて調べ、「10席中の7席が空いているそうです。当ホテルからですと、歩いて5分ほどになります。道順は…」などと対応すれば、想像以上の丁寧な対応に驚き、感動するでしょう。
顧客感動の実現は、顧客とモノやサービスの間に介在する従業員の対応力が鍵となります。マニュアル通りの対応では顧客満足をもたらすことはできても、顧客感動につなげることは難しいでしょう。従業員の機転、気配り、思いやり、豊かな感性といった要素が重要な役割を果たしていると考えられます。
ある有名な老舗の温泉旅館では、顧客に「できません」とは言わず、1人ひとりの顧客と真剣に向き合うつもりで、 サービスにあたることを大切にしています。
従業員が「できません」と言わずに対応することは、簡単ではありません。「できません」と言わないためには、顧客のことを第一に考え、気を配り、解決策を生み出していかねばならないでしょう。そのように顧客に感じさせる接客態度は、日本の伝統的な「おもてなし」にも通ずるものがありそうです。


※1 日本百貨店協会 平成26年10月 全国百貨店売上高概況
http://www.depart.or.jp/common_press_release/list/0

「おもてなしの心」を引き出す人材育成法

●「グッドジョブカード」で好事例をお互いに認め合う

顧客感動は、マニュアル通りではない柔軟な対応力からもたらされるため、誰でもいつでも再現できるように手順化することは難しいでしょう。ただ、好事例をもとにして、顧客感動をもたらす対応力につながる感性や、「おもてなしの心」を養うことは可能です。
いくつかの企業では「グッドジョブカード」と名付けた記入用紙を毎月従業員に配布し、顧客満足向上につながる行動の好事例を投票させる制度をもうけています。いつ、だれが、どのような場面で模範的行動を取ったかを記入するもので、自薦も可能であり、「月間3枚以上は必ず投票する」などと義務づける企業もあります。投票内容を従業員だけでなく来客からも見える場所に掲示する、年間集計を行って審査し上位者を表彰する、顧客からも投書を募る、メールや電話を通じて寄せられた顧客からの感謝の言葉を投票に加えるなどの例もあります。
このように従業員がお互いの行動を観察し合い、認め合うことが習慣になれば、お互いを見習い、高め合う企業風土の形成が期待でき、顧客感動をもたらすマインドと現場での実践が進んでいくと考えられます。


●傾聴訓練で相手を知る力を養う

顧客感動をもたらすには、相手をよく知らなければなりません。観察力はもちろん、好みや行動パターンなどを上手に聞き出す質問力が必要になってきます。そのような質問力、傾聴力、応答力を養成するための訓練としてロールプレイングを行う企業事例が見られます。例えば、顧客役、従業員役、観察者役の3人1組とし、20分間などと時間を区切り、顧客役は特定のシナリオに沿って話をします。従業員役は傾聴してポイントを復唱し、分かりにくい部分は質問して聞き出し、それに対する顧客の回答に対応するということを繰り返します。そして、顧客が本当は何を求めているのかを把握し、解決の方策を見出していきます。このロールプレイングの後に「ふりかえり」の時間を設けて、従業員役および観察者役が「よくできたところ」と「よくできなかったところ」について意見を言い、顧客役はどのように感じたかについて話します。このようなトレーニングにより、従業員役は自分の質問の仕方、応答の仕方について、内容が適当であったかどうかだけでなく相手に与える心理的影響について知ることができ、改善に結びつけることができます。
傾聴は、単に相手が話し終わるまで待つことではなく、心をこめて聴き、相手の考え方、感じ方を受け止め、共感しようとする態度です。それには自分の価値観をいったん脇に置き、相手の立場に立って考えて想像力を展開できる能力が必要とされます。「この人なら、こういうことを喜ぶのではないか」と想像力を働かせ、具体的な提案ができれば、顧客満足を超える顧客感動を導き出すことができるでしょう。


●顧客感動を志向するマインドを共有する

顧客感動をもたらす起点は、顧客中心の意識です。顧客中心の意識を従業員に根付かせるために、日々、従業員が守るべき行動原則である「クレド」を作成する企業が見受けられます。「クレド」は、「私たちはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています」といった使命、行動原理を明文化した文章です。さらに具体的な行動に落とし込み、「私は、お客様の願望やニーズには、言葉にされるものも、されないものも、常にお応えします」といった、あるべき行動原則を顧客に対する宣誓文のようなかたちで箇条書きにし、小さなカードに印刷して携帯させる企業があります。このようなクレドを、従業員の委員会活動を中心として全員参加体制で作ることにより、いついかなる時も顧客に個別対応のできるマインドを形成しようとするものです。

顧客感動はES向上につながる

●顧客感動をもたらす従業員はESが高い

顧客満足を超える顧客感動は、従業員満足 (ES、Employee Satisfaction)に影響を与え、定着率の向上につながっていきます。従業員は、自分が提案したモノやサービスが顧客に喜ばれ、感謝の言葉をかけられたとき、自らも満足感や喜びを味わうことができるでしょう。「自分もやればできる」と実感でき、その積み重ねが自信や誇りにつながっていくと考えられます。
アメリカの心理学者、マズローが唱えた欲求五段階説というものがあります。人間の欲求は五段階のピラミッドのように構成されており、下位の欲求が満たされるとより上位の欲求が生じるというものです。この説を引き合いに出せば、上から2番目の承認(尊厳)欲求は、顧客感動をもたらす行動ができ、顧客や職場の上司、同僚などから承認され、ほめられたときに満たされます。逆に承認(尊厳)欲求が満たされないままであると、自信の喪失、無力感、意欲の喪失につながっていきます。また、承認(尊厳)欲求が満たされたときに初めて人はその上の自己実現欲求を満たそうとするようになり、自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、その分野のプロフェッショナルになろうとするモチベーションが高まっていきます。

マズローの欲求五段階説

●クレームを前向きに受け止める従業員が成果を出す

顧客からのクレームを、顧客感動を導き出す有益な情報として捉えるか、単なる苦情として捉えるかでは大きな違いがあります。「要求の多い顧客の対応は面倒だ」などと従業員が思ってしまえばストレスになり、従業員満足は低下しますが、「クレーム」は顧客の期待の表れであると受け止め、その期待を満たした先に感動があるという展望を持って取り組み、実際に顧客満足を超える顧客感動をもたらすことができれば、従業員満足は高まっていきます。
ストレスには、人を疲弊させる有害なディストレスと、人の意欲をかき立てる有益なユーストレスの2種類があります。人は、自分の能力よりも高いレベルの目標にチャレンジするときには、身が引き締まるような緊張感を味わうものです。この緊張感がユーストレスの典型的な例です。ディストレスとして受け止めた人はそこから逃げようとしますが、ユーストレスとして受け止めた人は問題を直視し、乗り越えようとします。顧客のクレームをユーストレスとして捉え、チャレンジ精神をもって解決に当たり、実際に解決することができたときには、従業員満足がもたらされることでしょう。


●顧客との接点がない間接部門のES向上にもつながる

顧客満足や顧客感動は、販売、サービスといった、顧客対応の最前線で仕事をする従業員の使命のように思われるかもしれませんが、全ての従業員に顧客中心の意識が求められます。総務や人事などの間接部門は、言わば従業員サービスの部門であり、他の部門の役に立つことができれば使命を果たすことができます。このような間接部門の人のサポートのおかげで、前線で働く営業担当者がお客様のお役に立てたと実感できたとき、営業担当者が「おかげでお客様から感謝の言葉をいただきました」などのフィードバックを行えば、間接部門で働く人は達成感と満足感を味わうことができるでしょう。逆に、両者の間にコミュニケーションがなければ、間接部門で働く人は、自分の仕事の意義を感じにくいかもしれません。従業員満足には、お互いに尊重し合う行動や、そのような行動を促す企業風土が必要であると考えられます。

顧客中心の意識を持ち、相手の立場に立って考え、行動していくことで「顧客感動」はもたらされます。企業が「顧客感動」をもたらすマインドをもつ人材を育成し、従業員同士互いに高め合う風土をつくりだすことができれば、従業員の定着度向上、さらには企業経営の向上にもつながっていくことでしょう。

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