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(情報掲載日:2014年10月10日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

企業の高度外国人材採用

VOL.33


子ども向けに職業体験イベントや小・中学校への出前授業を開く企業が注目されています。経済産業省は優秀な事例を表彰する「キャリア教育アワード」を実施し、第4回目にあたる2013年には60件の企業・団体の応募がありました。企業がキャリア教育に取り組む理由やメリットについて好事例を通じて紹介します。

キャリア教育が広がってきている社会的背景

●キャリア教育で中長期的な国際競争力の低下を防ぐ

日本でも欧米同様、若者の失業率が高く、2014年7月の統計では全世代の平均が3.8%であるのに対し15〜24歳の失業率は6.7%にのぼっています(※1)。また、「753現象」と言われるように、入職後3年以内に離職する若者は中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割に達しており、学校から職場・社会への移行に困難を抱え、スムーズに就職できない若者や、早期離職する若者の増加が懸念されています。このような状況が続けば、若者の職業能力の蓄積がなされず、日本の中長期的な競争力・生産性の低下といった経済基盤の崩壊や、社会保障システムの脆弱化、社会不安の増大等深刻な社会問題を惹起しかねないとして、2004年に経済産業省および文部科学省、厚生労働省、内閣府が共同で「若者・自立挑戦プラン」を打ち出し、若者の職業人としての資質・能力の向上や、幼稚園児や小学生のうちから働くことへの関心・意欲の高揚などを目的とした「キャリア教育」の推進が図られてきました。
文部科学省の中央教育審議会の答申では、キャリア教育とは「1人1人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」(※2)と定義され、幼稚園児から大学生に至るまで段階的にキャリア教育に取り組むことが提唱されています。


●次世代育成は企業の社会的責任

国が提唱するキャリア教育を進めていくうえで、産業界と教育界等との間の連携・協働体制が始まっています。平成17年に制定された次世代育成支援対策推進法では、次世代を担う子どもが健やかに生まれ育成される環境を企業が整備するように義務づけています。「次世代育成は企業の社会的責任である」という理念に基づき、従業員の子どもに限らず、社会貢献活動の一環で出前授業などのキャリア教育に取り組んでいる企業事例が多数見受けられるようになりました。
とくに国内雇用を減少させる一因を作っていると言われているグローバル企業の中には、このままでは日本の社会としての持続可能性が失われてしまうという危機感から、次世代を担っていく若者の就業力強化や起業の支援を行っていかねばならないという使命感に突き動かされて子どもや若者のキャリア教育に取り組む事例が見受けられます。

※1 総務省統計局 労働力調査(基本集計)平成26年(2014年)7月分
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/

※2 中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」平成23年1月31日
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2011/02/01/1301878_1_1.pdf

経産省・文科省が企業のキャリア教育を奨励・支援する

●経産省は「キャリア教育アワード」を2010年から実施

官公庁は企業のキャリア教育の取り組みを奨励し、支援する施策に力を入れています。経済産業省は2010年から「キャリア教育アワード」を例年実施し、企業や経済団体・NPOなどが行うキャリア教育の中の優秀な事例を表彰しています。2013年には60件の応募があり、大企業の部では生命保険会社による「ライフプランニング授業」が最優秀賞に選ばれました。他に、中小企業の部ではひきこもりなどの支援の必要な子どもたちのための自立支援プログラムを実施した地元商店街振興組合が、また、地域企業協働の部では自動車部品メーカーによる「環境学習プログラム」が最優秀賞に選ばれています。各社の実際の取り組み内容については、「第4回キャリア教育アワードエントリー事例集」(※3)として公表されているので、今後、子ども向けのキャリア教育を実施しようとする企業にとって参考になるでしょう。


●文科省はポータルサイトを開設して学校と企業を結ぶ

文部科学省は、小・中・高等学校とキャリア教育を行う企業を結ぶマッチングサイトとして「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」(※4)を開設し、情報提供を行っています。キャリア教育を行う企業などは、出前授業などの支援を要望する学校の情報を検索することができ、学校側はキャリア教育の提案・実施を行う企業のプログラムを対象となる小・中・高等学校の学年別に検索できます。中には特別支援学校向けのプログラムもあります。キャリア教育についての情報が不足している学校側と、多くの生徒たちと接点を持ちたい企業側双方にメリットがある仕組みとして役に立ちそうです。

※3 経済産業省「第4回 キャリア教育アワードエントリー事例集」
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/career-education/4th_award_entry.pdf

※4 文部科学省 子どもと社会の架け橋となるポータルサイト
http://kakehashi.mext.go.jp/

企業が行うキャリア教育の事例とねらい

●子ども向け金融教育は1950年代から行われていた

全国銀行協会や証券取引所などは金融教育に力を入れ、金融機関や株式の役割を中心に、個人の資産形成の意味を教える出前授業を行っています。このような子ども向けの金融教育の例は戦後間もなくの時期に見られました。それは小・中学校で児童・生徒が銀行・郵便局などと連携して自主的に運営していた貯蓄制度である子供銀行及び子供郵便局です。1948年に始まり、子供銀行は2001年、子供郵便局は2007年まで続いていました。これは児童・生徒が実際のお金を使って金融機関の職員と預金者を演じる模擬銀行であり、利息を計算し、集めたお金は地域の金融機関に預けられました。1952年には当時の大蔵省銀行局編著で子供銀行の手引き書が発行されており、国をあげて貯蓄の重要性を児童・生徒に教える金融教育の制度であったと考えられます。2010年初めの大阪大学の全国調査によると、小学校に子供銀行の制度があった人のほうが、なかった人よりも老後の貯蓄計画をたてる傾向が高いことが分かったそうです。

●環境教育を通じて人材育成を行う

キャリア教育という言葉が知られるようになる以前から、社会貢献活動の一環で青少年育成プログラムに取り組む企業もあります。ある自動車部品メーカーでは2005年の愛知万博で小学校との協働による環境問題の取り組みの発表会を行ったことをきっかけとして、「持続可能な地域づくりを担う人材育成につながるように」という目的で「環境学習プログラム」を2006年に立ち上げました。2013年までの累計受講者数は1万3,496人、実施校は150校にのぼります。対象は企業の工場・拠点のある地域の小学校が中心で、教室での座学、校外の森や水辺、自社工場などでの体験学習を通じて「人間の暮らしと環境のかかわりについて気づく」ことを目標にし、最終日には学習の成果を発表し、「給食は残さず食べきります」といった内容の「エコ宣言」をして、継続的に環境活動に取り組むことを確認し合います。
地域社会と企業との関係を「環境」及び「持続可能社会」という側面から子どもたちに教えることにより、キャリア教育の目的である「社会的・職業的自立の基盤となる能力や態度」の醸成につながることが期待できそうです。また、企業にとっては、自社の環境ビジネスの側面に対する子どもたちの理解が深まるばかりでなく、自動車部品製造という直接消費者と触れ合う機会が少ない企業活動についてのイメージを具体化し、知名度を向上することもできそうです。

●子どもの理科離れの防止をねらう

ある化学メーカーでは研究所のある地元の中学校を対象に化学実験の出前授業を行い、また各地域の工場を中心に「子ども向け地域イベント」を実施しています。出前授業では学校教員と研究所員の協働で、学校の教科書の内容と連動した分かりやすいプログラムづくりに取り組んでいます。出前授業を行った中学校では、2013年3月に卒業した生徒の76%が「出前授業で理科に興味を持てた」とアンケートに回答しています。
周知のとおり、子どもの理科離れはメーカーの将来の人材確保にとって無視できない問題となっています。グローバル化の熾烈な競争の中で日本企業が生き残るには、ものづくりの分野で他国にないユニークな特色を打ち出し、多くの顧客を獲得することが重要な課題となっています。そのためには子どものうちから理科に興味・関心を持ち、職業選択につながるような働きかけが必要であると考え、キャリア教育に積極的に取り組む企業が増えてきているようです。

●仕事内容の「見える化」で企業イメージの浸透を図る

上記のようなメーカーでは、実際にものづくりの現場を見せ、実験などを通じてものづくりの楽しさを教えることで企業活動に対する理解を深めていますが、IT企業、生命保険会社では戦略立案、ライフプランニングといった形に表しにくい仕事の内容を、ゲーム感覚を加味したシミュレーションを使った出前授業で「見える化」することにより、企業活動の中身をわかりやすく伝えようとしています。
あるIT企業では、中学3年生〜高校3年生を対象にしたチーム対抗形式の「戦略体験プログラム」を実施しています。情報システムの活用で架空のコンビニチェーンの利益を向上させることをテーマとした体験学習であり、生徒からは「情報システムというものに興味が湧いた」「システムエンジニアは、責任を持って取り組まないといけなくて大変だが、とてもやりがいのある仕事だと感じた」「毎日当たり前に接しているコンビニが、情報システムに支えられていることがよく分かった」等の感想が寄せられています。
また、ある生命保険会社がおもに高校生を対象に行う「ライフプランニング授業」は、社員がサポートをしながら仮想上の家族の将来設計を行うもので、家族構成、子どもの教育プラン、住居の計画、働き方、毎月の出費、住宅の購入や家族での海外旅行などの夢の実現について話し合い、その内容を社員が検証し、収支バランスや改善ポイントの解説をするものです。子どもの教育費がいくらかかるなど、将来設計の重要さを目の当たりにすることにより、授業を受けた生徒たちの感想としては、「人生の計画を立てることの大切さを感じた」「お金の使い方について改めて考えてみようと思った」などが多く聞かれるそうです。

●保護者や教員の支持を得てキャリア教育に継続的に取り組む

企業の中には子ども会員制度を設け、イベントに参加してポイントがたまると特典がつく仕組みを設けるなどして、キャリア教育を通年で継続的に行い、固定的なファンの獲得に取り組む例もあります。
子どもの進路選択には周囲の大人が大きな影響を及ぼすため、こうしたキャリア教育の活動は子どもたちだけでなく、周囲の大人と継続的な関係を築くことに大きな意義があると考えている企業も少なくないようです。
とくに、夏休みに企業が行う子ども向け実験教室は、夏休み中の子どもの相手をするのが難しい共稼ぎ世帯に喜ばれているようです。また、少子化で兄弟姉妹が少なかったり、核家族化で年上のいとこやおじ・おばなどの親戚づきあいが頻繁ではなくなった子どもたちにとって、出前授業で外部の大人たちと触れ合う体験は貴重であり、好奇心が刺激され、質問のやりとりを通じてコミュニケーション能力が高まると好評です。

進化する「子どもの職場参観」と波及効果

●職場参観が子どもの職業教育の場になっている

外部の学校向けに行うキャリア教育とは別に、社員の家族を普段働くオフィスや工場に招く「職場参観」を行う企業があり、その内容が進化してきています。施設案内にとどまらず、子どもに親の仕事を擬似体験させるためのプログラムが目立ちます。子どもが親の仕事への理解を深めるだけでなく、職業教育を受ける場にもなっています。
ある金融機関では、職場参観の日に「パン屋さんをはじめよう」と名付けた体験型プログラムを実施しました。40人近くの子どもが参加して小グループに分かれ、「子ども1人でも買いやすい」などと自分たちの店のコンセプトを固めるところから始めて、不動産屋、小麦粉などの原材料の仕入れ先会社、販売員を派遣する人材派遣会社などの役を務める社員とのやりとりを体験します。各グループには社員が助言役として付き、最終的に融資するというゴーサインが出れば合格です。このような疑似体験を通じて、親たちが携わっている融資の仕事の一端にも触れられる仕組みです。参加した社員は、「子どもや配偶者の目を意識することにより、仕事への意欲やプライドが高まり、働く意義を見つめ直す機会になった」「家で仕事について話すきっかけになった」などと話しています。

●子育て世代への共感と理解が生まれる

このように「子どもの職場参観」に社員の子どもや配偶者が参加することにより、社員の仕事に対する理解が深まると同時に、社員自身が仕事に対する責任感や会社への帰属意識を高めていくことができると期待できます。その結果、企業にとっては優秀な人材の離職を防ぎ、企業イメージを高めていくことができるでしょう。また、職場の中に新たな対話が生まれ、人間関係がスムーズになるという副次的効果が出てきています。社員が職場参観という共通の体験を通じて、それまでには見せることのなかった親としての顔をお互いに知ることができたり、子どもの学校行事への参加といった各家庭の事情への共感や理解ができ、休暇を取る際に周りの理解を得られやすくなったという声も聞かれます。

企業が企画・実施する子ども向けキャリア教育は、子どもに企業の現場を見せることで興味・関心を刺激し、将来の職業選択の範囲を広げる機会につながりそうです。企業は社会貢献活動を通じた企業イメージの向上、子どもの進路選択に多大な影響力をもつ親や教員との信頼関係の構築につながり、自社の理念と企業活動に対する理解と共感をもって志望先として選んでくれる「将来の有望人材」の獲得につながっていくことが期待できそうです。また、キャリア教育に参加した社員には仕事に対する意欲や、責任感が高まるというメリットがあります。将来の日本を支える人材を育成していくために、企業、官庁、学校、そして家庭が連携・協働してできることの1つがキャリア教育であると言えそうです。

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