メールマガジンの定期配信をご希望のお客さまは以下のボタンからお申込みください。

配信申込⁄停止

(情報掲載日:2014年7月10日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

進む非正規労働者の組合員化

VOL.30


ある大手金融機関で1万2,000人の契約社員が正社員と同じ労働組合に入れるようになり、注目を集めました。労働組合の組織率は低下していますが、パート、契約社員、派遣などの非正規労働者の組合加入は年々増えています。非正規労働者の組合員化が進んできた背景と、労使それぞれのメリットについて紹介します。

非正規労働者の組合員が増えている

●契約社員7,000人が組合員に

正社員ばかりでなく、非正規労働者も労働組合員として受け入れる動きが活発化しています。ある大手金融機関では窓口業務などを担う約1万2,000人の契約社員が正社員と同じ労働組合に入れるようになり、7,000人が加入しました。契約社員の大規模な組織化は大手金融機関では初めての例とあって、注目を集めています。
上記の金融機関では約4万8,000人いる全従業員の4人に1人が契約社員であり、支店の窓口業務や顧客の案内、後方の事務作業などを担い、職場の過半数が契約社員の支店もあります。
労働組合は職場で存在感を高める契約社員が組合員になれば、より多くの従業員の代表として、会社側に対する交渉力が増すと判断して組織化の方針を決め、2014年3月に組合規約を改正しました。

●労働組合組織率は過去最低の17.7%に低下

厚生労働省の平成25年「労働組合基礎調査」(※1)によると、労働組合員数は987万5,000人で前年に比べて1万7,000人減少し、雇用者のうち労働組合に入っている人の割合を表す推定組織率は17.7%と、調査が始まった1947年以降で過去最低となりました。
労働組合全体の組織率が低下した1つの要因は、正社員の数が減り、非正規労働者の数が増えたことにあります。ちなみに総務省の「労働力調査」(※2)によると、2008年から2013年までの5年間に正社員は3,410万人から3,294万人へと116万人減少したのに対し、非正規労働者は1,765万人から1,906万人へと141万人増えています。
また、役員を除く雇用者に占める非正規労働者の割合は30年前の1984年は15.3%でしたが、20年前の1994年には20.3%になり、2013年には36.6%に高まりました。
戦後、日本の労働組合の中心は、大企業の企業別労働組合であり、所属していたのは大半が正社員でした。多くの企業で労働組合員であることを雇用条件とするユニオンショップ協定が存在していたため、入社と同時に組合員になる人が多く、労働組合の組織率を支えていたのは正社員でした。
他方、非正規労働者に対しては労働組合の加入資格を認めない企業別労働組合が多かったため、雇用者の中の非正規労働者の比率が高まり正社員の数が減少すれば労働組合の組織率が低下するという仕組みになっています。

●パートの労働組合組織率は過去最高の6.5%に上昇

前出の厚生労働省の調査によるとパートタイム労働者の労働組合員数は91万4,000人で、前年に比べて7万7,000人の増加となっています (※1)。推定組織率は6.5%で、こちらは調査が始まった1990年以降で過去最高を更新しました。これまではパートタイム労働者などの非正規労働者は企業別労働組合への加入が認められず、社外の労働組合に加入する例がほとんどでしたが、最近は企業別労働組合で加入を認められる例が増えているため、大幅な増加となっています。

●パートが労働組合員になっている事業所は24.3%

年ごとに異なったテーマで労働組合活動の調査を行っている厚生労働省の「労働組合活動実態調査」の平成22年調査(※3)で、パートタイム労働者、フルタイムの非正規労働者、派遣社員それぞれの労働組合組織化の状況を知ることができます。これによると、非正規労働者の組合員がいる事業所の割合は、パートタイム労働者が24.3%、フルタイムの非正規労働者が26.0%、派遣労働者が1.9%となっています。
ちなみに同調査で非正規労働者が事業所にいる割合をみると、パートタイム労働者が68.4%、フルタイムの非正規労働者が68.9%、派遣労働者が64.6%となっており、非正規労働者がいる事業所は6割以上にのぼりますが、非正規労働者の組合員のいる事業所は全体の2割程度にとどまっていることがわかります。
ただ、産業別に見ると偏りがあり、非正規労働者の組合員がいる事業所が大半を占める産業もあります。パートタイム労働者の組合員がいる労働組合の割合が高い産業は、複合サービス事業(郵便局、協同組合)58.8%、教育・学習支援業55.5%、情報通信業44.1%、電気・ガス・熱供給・水道業43.3%、医療・福祉39.0%、卸売業・小売業38.4%となっています。
実際、パートタイム労働者などの非正規労働者が多くを占める産業では組合員数が前年よりも大幅に増加しており、卸売業・小売業で4万6,000人、宿泊業・飲食サービス業で1万7,000人の増加となっています (※1) 。とくに店舗の従業員の大半をパートタイム労働者などの非正規労働者が占める小売業では以前から非正規労働者の組合員化が進んでいます。ある流通グループの労働組合は、約20万7,000人の組織規模をもち、その80%が非正規労働者の組合員となっています。

※1 厚生労働省 平成25年「労働組合基礎調査」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/13/index.html?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter

※2 総務省統計局「労働力調査」
http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm

※3 厚生労働省 平成22年「労働組合活動実態調査結果の概況」非正規労働者と労働組合の対応に関する事項
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/18-22-06.pdf

非正規労働者の組合員化の背景にあるもの

●正社員だけでは過半数確保が難しくなった

非正規労働者の組合員化が進んできた理由の第1は、正社員の組合員が減少して従業員数の過半数確保が難しくなってきたためと考えられます。とくに従業員の大多数がパートタイム労働者かアルバイトという職場では正社員のほうが少数派となり、正社員のみで組織する労働組合では、過半数を確保できないことになってしまいます。
例えば、企業が社員に残業させるには労働基準法36条で労使協定を結ぶことが義務づけられており、それは従業員の過半数を代表する者との協定です。残業に限らず、労使協定を結ぶ場合は同じであり、労働組合が職場全体の労働条件の改善のために影響力を及ぼそうとするならば、過半数を占めるということが重要になってきます。
そこで、雇用者に占める比率が年々高まっている非正規労働者を組合員として迎えることが、労働組合にとって喫緊の課題となっています。

●非正規労働者の立場や意識の変化が影響している

上記のような量的な拡大に加え、非正規労働者が置かれている立場や就業意識の変化も労働組合の組織化に影響していると考えられます。例えばパートタイム労働者の場合、従来は夫の配偶者控除が受けられる範囲内で働く主婦パート、学生アルバイト、年金の足しに働く高齢者パートといった人たちが中心であり、賃上げなどの待遇改善をそれほど強く求めない人が大半でした。ところが最近では主たる生計費を担う非正規社員が増えてきています。就職氷河期と言われる新卒入社の難しい時期が続いた後で、大学を出ても非正規の仕事しかなく、そうした状況が何年も続いて30代、40代になっても非正規の「フリーター」を続ける人がいて、待遇改善を求める声が大きくなってきています。

●春闘で「パート共闘」が掲げられるようになった

連合(日本労働組合総連合会)は2006年春闘から「パート共闘」を立ち上げ、非正規社員の組織化及び処遇改善の取り組みを開始しました。そして2010年春闘方針から「非正規労働者も含めすべての労働者を対象に賃金、労働条件等を含めた労働条件の改善に取り組む」ことが明記されました。従来の労働組合の活動目標は、正社員の待遇改善が中心でしたが、近年では非正規労働者の処遇改善や、安定雇用と正社員へ転換する制度の創設を活動目標として、非正規労働者の組合員を増やそうとする動きが目立つようになってきました。

非正規労働者の組合員化のメリットと今後の課題

●非正規労働者の不安や不満が吸収される

パート労働法、労働契約法など、非正規労働者に関連する労働法規が改正されて、正社員との格差解消と雇用安定化の方向に向けて国の労働政策が進む中で、企業にとってコンプライアンス重視はもちろん、非正規労働者の不安や不満の解消が重要な課題となってきています。
ただ、企業の人事部などで、すべての非正規労働者に面接し、ヒヤリングを行うことは現実的には難しいでしょう。たとえ実現できても、短時間の面接の中でホンネを引き出すのは容易ではないはずです。その点、労働組合が非正規労働者の不安や不満を受けとめる相談窓口として機能することにより、それだけでも孤立感やストレスが解消される面もあります。
また、正社員と非正規労働者が同じ労働組合の組合員となり、待遇改善や「やりがいのある仕事をつくる」といった共通の目標をもって話し合い、活動をすることにより、職場の人間関係をより良くすることにつながっていくことも期待できます。

●「組合への関心が薄い」という声が多い

非正規労働者の組合員化を進める上での今後の課題としては、まだ「組合への関心が薄い」という声が大半を占めています。パートタイム労働者では60.7%、フルタイムの非正規労働者では54.5%、派遣労働者では49.3%となっています(※3)。次に多いのが「組合費の設定・徴収が困難」です。また、「組織化を進める執行部側の人的・財政的余裕がない」という声も比較的多くあります。
連合の傘下にある労働組合では、組合活動への関心が薄い非正規労働者に働きかけ、組合加入を進めています。奏功している活動内容としては、①正社員の組合員ではなく、同じ非正規労働者から職場の同僚に組合への加入を呼びかけてもらう、②ランチミーティング等を開催して組合員と未加入の人たちがお互いに打ち解けて話し合うことができる雰囲気をつくる、③加入申込書などの書類を渡すだけでなく、熱意と誠意を込めて話して組合活動への理解を求める等があります(※4)。

●多様な働き方を支えあう労働組合へ

非正規労働者の中にはパート、派遣、契約社員などのさまざまな雇用形態があります。今後も、さらに雇用の契約形態が多様化すると、労働条件の均衡化をテーマとしている労働組合の活動に影響してくると考えられます。例えば、労働契約法の改正で「5年ルール」ができたことにより、有期雇用契約から無期雇用契約に転換される労働者が現れてきます。このような「無期雇用社員」は正社員と同等の処遇でなくても良いとされ、逆に言えば正社員との間に処遇の格差が生じる可能性があります。
また、高年齢者雇用安定法の改正で65歳までの雇用延長が企業に義務づけられ、実際には契約社員や嘱託等の非正規労働者として採用される人が多くなっています。さらに、職務や地域を限定した「限定正社員」あるいは「ジョブ型社員」といった働き方の導入が本格化されていけば、雇用契約が細分化され、その中で誰もが同じ仲間意識をもって組合活動に取り組むことができるのかという課題が浮上してくるでしょう。労働組合としては、雇用形態の異なる労働者から不安や不満を吸い上げる聞き取り活動と、交流会などのイベントを通じて組合活動に参加しやすい雰囲気をつくるといった地道な努力がますます求められるようになります。
企業経営の視点から見れば、現場の多様な労働者の声を把握してくれる労働組合と対話を行い、協力して不満解消や処遇改善を図ることができたり、労働組合を通じて経営方針や理念の浸透を進めることが期待できます。その結果として、非正規労働者の定着率の向上、優秀な人材の確保、従業員のモラル向上や生産性向上による企業経営の安定、個別労働紛争の未然防止といったメリットが得られるでしょう。

※4 日本労働組合総連合会 パート共闘連絡会議「中間的取り組み指針」
http://www.jtuc-rengo.or.jp/shuppan/roudou/digitalbook/book_ctts/index.html#page=1

非正規労働者の組合員化は、労使双方にメリットがあると言えますが、今後、労働者の雇用契約の内容や就業意識が多様化する中で、だれもが安心して働き続けられるような職場環境の創出のために労使で協調するという側面がますます重要になりそうです。

配信申込⁄停止

“旬”なテーマで人材活用やビジネスに関するお役立ち情報をお届けします。メールマガジンの定期配信をお申込みのお客様は左のボタンからお気軽にどうぞ。

このページのトップへ

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」 一覧へ