(情報掲載日:2019年1月9日)


世界的なイノベーションとグローバル化によって、先行きの予測が難しいといわれる時代に入り、VUCA(ブーカ)という言葉が社会を表すキーワードとしてよく使われるようになりました。この言葉が意味すること、VUCAの時代の中で私たちが向き合う姿勢について考えます。

●VUCAとは何か

VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの頭文字を並べたものです。社会や経済の情勢が予測困難になったという、時代が直面している状況を指す言葉です。
VUCAは1990年代後半に、アメリカ国内で軍事面に関して使われ始めました。当時起こった紛争は国境を超えた民族や宗教や思想が絡み合ったもので、従来のような国家対国家型とは異なり複雑で、予測が難しくなったためです。その後、ビジネス界でも2010年代頃からVUCAという言葉が使われるようになりました。背景にあるのは、テクノロジーの進歩やイノベーションの加速です。既存ビジネスモデルの崩壊や再構築が始まったことで、事業や商品の新陳代謝が激化し、企業の長期的で安定的な運営もいっそう厳しさを増しました。情勢の予想が困難となり、VUCAが実感され広く認識されたことの表れといえます。

●国際的な注目

国際的な場では、2014年のASTD(米国人材開発機構)国際大会、2016年のWEF(世界経済フォーラム)、IMD(国際経営開発研究所)などにおいて「VUCAの時代」「VUCAワールド」と、数多くVUCAが話題にのぼるようになりました。人材育成法や組織戦略についても、従来通りでは通用しない時代に入ったという認識が共有され、組織と個人が今後生き抜いていくための人材開発論や組織論に関する議論が盛んに交わされました。個人のキャリア形成や教育研修の見直し、組織の役割分担や関係性構築のために欠かせないキーワードとして、注目されています。

経済産業省も「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」報告書の中で「VUCA 時代においては、『個人』が、自らの問題意識で、学び、働くことを通じて、自らの『羅針盤(GPS)』をもってキャリアを構築していくことの重要性がますます高まっている。」と記しています(※1)。また、アニュアルレポートでVUCAに触れるグローバル企業も見られるようになりました。

テクノロジーの進化・輸送手段の発達・海外ネットワークの広がりにより、国境を超えた企業活動はますます加速すると考えられます。同時に、異業種からの参入や多角化も盛んになり、各業界の全体図は境界の線引きが難しくなってきました。また、ITの進歩はまだまだ続くうえ、その影響を全く受けない業種は皆無に等しいため、想定できない範囲は増しています。世界的なVUCAの流れは今度も止まりそうにはありません。それだけ未来の可能性は広範囲に広がっていると考えられます。

※1:経済産業省中小企業庁「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(人材力研究会)報告書
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180319001_1.pdf

●Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)の事例

Volatility(変動性)をもたらす代表的なものは、ITの驚異的な進化です。これによりビジネス面では、新事業が誕生・衰退するスピードが加速し、安定的成長は難しくなります。そこで、ハイペースで変動する環境に対して、常に適応していくことが重要になります。
例えば、携帯電話からスマートフォンへと主流が変動したため、それに応じたアプリケーションや周辺機器、アクセサリーへと開発がシフトし、新しい市場が誕生しました。EV(電気自動車)やIoT家電などへの商品展開も、Volatilityの表れといえます。

Uncertainty(不確実性)をもたらす代表的なものは、自然災害です。これによりビジネス面では、施設や工場に思わぬ被害を受けるケースがあり、計画の変更を余儀なくされます。そこで、想定外の事態に対して、準備や代替策を用意しておくことが重要になります。
例えば、過去に例を見ないような異常な降雨や高温などが続くため、企業はBCP(事業継続計画)(※2)を策定したり、避暑対策や涼感のための商品を開発しました。自然災害に備えた情報が公開、通知される仕組みが増えたり見直されたりしたことも、Uncertaintyの表れといえます。

※2:Vol.56「ニッポンの人材」危機に備えるBCP@計画策定編
https://www.tempstaff.co.jp/magazine/nippon/vol56.html

Vol.57「ニッポンの人材」危機に備えるBCPA運用編
https://www.tempstaff.co.jp/magazine/nippon/vol57.html

●Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の事例

Complexity(複雑性)をもたらす代表的なものは、各国の法律、習慣、文化です。これによりビジネス面では、グローバル化によって多部署・多企業・多地域が絡み合うといくつもの慣習や感覚が交錯し、日本国内と同じようには物事が進められなくなります。そこで、それぞれの地域性を考えて、判断基準を置くことが重要になります。
例えば、同じ食品であっても海外各地の消費者の嗜好や関心はさまざまであるため、マーケットごとに味付けやパッケージデザインは作られました。各国の法に基づいた成分表示の違いへの対応や宗教による食材の選定も、Complexityの表れといえます。

Ambiguity(曖昧性)をもたらす代表的なものは、人々の価値観です。これによりビジネス面では、インターネットなどによる情報発信の影響を受けて消費者の考えや動きが急激に変わるため、過去の企画やマーケティングの手法は通用しにくくなります。そこで、臨機応変に素早く手を打つフットワークの良さが重要になります。
例えば、カーシェアリングやシェアオフィスは、シェアリング・エコノミー(※3)として海外から伝わり、日本でも一気に注目されてマーケットが伸びました。世の中の動きを敏感に察知しようと、企業でビッグデータの活用が進むのも、Ambiguityの表れといえます。

※3:Vol.62「いまを勝ち抜く人間力」シェアリングエコノミー・エコノミーを職場に
https://www.tempstaff.co.jp/magazine/ningenryoku/vol62.html

●大切な3つの姿勢

先行きの予測が難しいVUCA時代の中では、これまではよしとされてきたような考え方や方法だけでは、仕事やビジネスがスムーズにいかなくなると考えられています。上手にVUCA時代に向き合っていくために、身に付けたい3つの姿勢があります。
1つ目は、「固執しない」姿勢です。ゴールに執着せず、経過に重心を置くようにします。適した方法や目指す目標は1つだと限定して考えずに、複数の方法を試しても構わない、目標を柔軟に変えても構わない、というゆったりした心持ちです。

2つ目は、「即断即決する」姿勢です。念入りにシミュレーションをしても、想定を超える事態が次々発生するという前提に立ち、考えたり話し合うことに時間を費やすよりも、次に進んでみるようにします。悩んでもそうは結果は変わらないだろうと踏ん切る構えです。

3つ目は、「変化を楽しむ」姿勢です。変化をネガティブに受け止めずに挑戦できる機会だと捉えて、好奇心やチャレンジ精神を持つようにします。予期せぬ事柄であっても、そこに楽しさや面白さが含まれている可能性があるという前向きな意識です。

●心がけたい行動ポイント

上の3つの姿勢を身に付けるために、日頃から心がけたい行動のポイントがあります。 まずは、「情報に貪欲になること」です。情報というものは、いつも正しいわけではなく鮮度が落ちることを意識して接するようにします。すると、予測不能な事態に直面しても、従来の状態に固執せずに新たな策や道に目が向けられます。

次に、「場当たり的に流されないこと」です。状況が変わった時点で初めて対処法を考えるのではなく、状況のバリエーションのパターンをいつも頭の中にいくつか並べておくようにします。すると、状況の変化に慌てることなく次のステップが即断即決できます。

最後は、「自分だけで解決しないこと」です。難しいテーマは自分で抱え込まずに適任者に委ねたり、他の人を巻き込んで一緒に行うようにします。すると、他の人とのコミュニメーションによって可能性が広がったり、思わぬ知見が得られることもあり、変化を楽しめます。

VUCA時代に突入し、各国も企業もそれに応じた舵取りをしています。個人としても、この時代の波の特徴を知って、うまく波に乗れるように、考え、行動することが大事です。環境の変化に流されず、自分らしく生きるためにも、VUCAにしっかりと向き合ってみませんか。

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