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(情報掲載日:2018年10月9日)


コミュニケーション力はたびたび話題にのぼる大切なスキルですが、なかでも、相手を「説得する」力が、ビジネスにおいては特に重要です。「伝える」にとどまらない、説得し、相手を動かす力が求められる場面が多々あるためです。相手を「説得する」ための基本的な方法をご紹介します。

●「説得する」力が必要とされる理由

ここ数年、世界的にポスト真実の時代(客観的事実よりも感情的に訴えかけてくる「信じられる嘘」のほうが世論に大きく影響する状況)になったと言われています。真実と嘘を見極めるために、メディアで報じられた発言や情報の真偽を検証するファクトチェックも進んできました。
一方、企業ではアカウンタビリティー(説明責任)、医療現場ではインフォームド・コンセント(十分な説明と合意)、政界ではマニフェスト(公約の具体的説明)などが取り入れられるようになっています。
これらは、情報を伝えるだけでは信ぴょう性が十分ではなく、納得できる説明や裏付けが求められる時代になってきたことを示しています。「説得する」力が求められているといえます。

広く普及したインターネットによって氾濫している情報の中には、不確かで信用し難い内容があるのも事実です。信頼できる情報の見極めには、背景にある事実やデータの裏打ちは大きな判断基準になります。情報発信者が、表面的な内容だけで受け手を「説得する」ことは容易ではありません。

社会全体の流れとして「説得する」力は重要度を増しつつありますが、これは仕事でも同じです。例えば、プレゼンテーションや会議、商談などの場では、物事を円滑に進めること・相手の理解を得ることが大切になるため、「説得する」力が重要になります。
また、日本人同士で通用するような、空気を読んでくれる・言いたいことを察してくれる、といった認識は外国人には理解されにくいものです。ダイバーシティが進み外国人と一緒に仕事を進めたり協力し合ったりするケースが増えると、「説得する」力の重要度はより増すと考えられます。

●「伝える」と「説得する」の違い

「伝える」とは、考え・提案などを情報として単に知ってもらおうとして、相手に話したり説明することです。相手の行動や感情を意識的に動かそうとはしません。
それに対して、「説得する」とは、考え・提案などを情報として単に知ってもらうだけではなく、相手に納得してもらおうと話したり説明することです。相手の思考や感情に働きかけて言動を促そうとするところが、「伝える」との違いです。

「説得する」にあたっては、基本的なポイントが二つあります。
一つは、相手を尊重することです。自分の論理や価値観で相手を論破するような姿勢は禁物です。人には、誰かに強く説得されることを無意識に拒む傾向があり、一方通行なコミュニケーションは警戒心や不信感を抱かせやすく逆効果になります。
もう一つは、こちらの考えを相手に腹落ちしてもらうことです。その場の勢いや流れに任せて相手が納得してしまうと、後にしっくりしない点が生じてスムーズに物事が進まない場合があります。相手が積極的に肯定したくなる感情が湧いたり気づきがあれば、前向きな気持ちになるため言動にも移りやすくなります。

「説得する」力は、古代ギリシャ時代でも注目されていました。直接民主制だった当時、広場など公衆の面前で持論を語り賛同を得る必要があり、聴衆を「説得する」力が欠かせなかったためです。同時代の哲学者・アリストテレスが説得に関して著した「弁論術」は2000年以上にわたり読み継がれており、「説得する」力は一つのスキルとして今もさまざまに分析されています。

●準備しておきたいこと

説得するために、相手に説明すべき2大要素は「What(理解してほしいこと)」と「why(理解してほしい理由)」です。
2大要素を明確にするだけでなく、2大要素を細分化しておくことは重要です。細分化とは例えば、「What」が「A案を選ぶこと」であれば、A案とは「誰が」「何を」「どの期間に」「どのようにする」ということなのか、「why」が「機能的にしたいから」であれば、機能的とは「どのような現状を改善し」「どんな課題に対応し」「いかなる効果が得られる」ということなのかと、要素を詳細に分解しておくことを指します。
分解された要素に対して納得できる回数が増えると、相手は全体的な納得に近づいていけます。すると、当初は納得しにくい状況であっても、最終的には2大要素に納得しやすくなります。納得しやすい要素を「数多く」語れるような準備は大切です。

表やグラフは、視覚に働きかけて相手の認識のスピードを速めるため、説得に大きく貢献するツールです。
できるだけ複数のものを揃えたほうが、相手は多角的に認識できるため納得しやすくなります。オリジナルのデータには好感が持たれますが、公的機関が出しているデータも合わせて提示すると公正さがより伝わります。過去と現在・AケースとBケースなど、比較できる表やグラフを揃えておくと、判断しやすくなります。
また、事例や第三者の意見もヒアリングしておくと良いでしょう。対立的な内容や反論であっても、それらも既に検討したうえで話していることがわかりますし、好ましい前例や影響力のある人物の賛同的な意見であれば、押し付けることなくアピールができます。

●相手に即した言葉

相手の視点に立って考えて話すことは説得する際に肝心です。
相手にとってのメリットは何か、要望は何か、譲れないものは何か、大事にしているものは何かと考えておきます。好む言葉、好まない言葉、興味を持っている言葉などにも注意します。説得した相手が、次に誰かに対して説得する時に使いやすい言葉かどうかは、言葉選びの一つの基準になります。

説明する内容が専門的であったり、相手にとって馴染みのない話の場合には、例えを用いて話すように心がけます。相手の趣味や得意分野に合わせて、「食事に例えると」「サッカーに例えると」と話せば、相手の理解も進みやすくなります。

「納得した後にどう変化するか」が想像しやすくなる説明を加えることも有効です。「こんな素晴らしいものが出来上がる」「こんなふうに喜ばれる」など、できるだけ具体的に状態を話すようにします。相手のその時の状況に合わせた身近でリアルな表現ほど訴求力を持ちます。

接続語は、話の前後の流れや関係性を示す言葉です。例えば、「つまり」=「言い換え・同じ内容の強調」、「しかし」=「対立・逆接」、「したがって」=「因果・結果」、「なぜなら」=「理由・解説」、「たとえば」=「具体化・事例」を意味します。接続語を話の間に使えば、相手は次に語られる内容をあらかじめ察知したり頭を切り替えられたりできるため、話の展開を把握しやすくなります。

●心が動かされるところ

一人ひとりに個性があり、心が動かされやすい要所があるため、そこを意識して話すと相手は反応しやすくなり、聞く態勢がより能動的になります。
堅実派、人情派、好奇心旺盛タイプ、データ重視型など、性格や志向によって異なる価値観の重心が、どこにあるのかを考えておきます。堅実派であれば支持の多さや信用の高さを中心に説明する、人情派であれば苦労談や美談を話すようにします。

発展・成長のイメージが広がるような未来図を語ることも重要です。社会的な視野の広さ、将来的な目標の高さ、道徳的な深さといった話題には、世間一般的に支持されるような大義が感じられるため、相手の気持ちのスイッチが入りやすくなるといえます。

特に心がけたいのは、肯定的な感情が湧くような話し方です。「○○しないといけません」「○○しないとこうなってしまいます」というネガティブで脅されるような話し方は避け、「○○すればこうなることができます」「○○すればこんなメリットが得られます」とポジティブで期待できるような話し方に変換します。不安や心配よりも、前向きな感情を持ってもらうほうがプラスのイメージが強まり、一歩踏み出す力にも通じます。

●気持ちを盛り上げるテクニック

同じセリフを話すにしても、抑揚やリズムによって聞く側の受ける印象は大きく変わります。強調したい点、肝心な内容を話す時に実践したいのは、「ゆっくり」「ためを作る(間をあける)」「繰り返す」といった話し方です。声のトーンやテンポに変化があると、相手は気になり集中するため、気持ちも動きやすくなります。同時に、相手の目をじっと見る・指で資料を指すなど身振り手振りを交えると、効果は高まります。

相手が頭の中に絵が描けるように話すことをピクチャートークと言います。色、音、匂い、味、手触りなどの五感を話す時にひとこと足すだけでも、現実感が増して気持ちも高まります。オノマトペ(擬態語、擬音語、擬声語)も有効です。例えば、「効率よく」→「サクサクと」、「成長する」→「グーンと伸びる」、「素晴らしい」→「パチパチと拍手の渦が起こる」など、比較的簡単に取り入れられます。

ここぞという時に相手の気持ちを盛り上げるために取り入れたいのが名言です。自分の言いたいことやそれに近いことを代弁している歴史上の偉人や著名人の言葉があれば、使わない手はありません。心を動かす大きな力になるだけでなく、印象にも残り続けます。ことわざ、小説や映画のセリフ、歌詞も活用できます。

自分が思ったまま感じたままを説明するだけでは、相手にしっかりと理解してもらえないことは誰にでもあります。ただ、ちょっとした工夫を凝らせば、気持ちよく相手は納得してくれるものです。コミュニケーションをより円滑にする「説得する」力を高めてみませんか。

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