(情報掲載日:2018年7月9日)


外国人観光客が何を購買するのかという傾向を語る際に「コト消費」という言葉がよく使われるようになりました。この「コト消費」は国内でも「モノ消費」に変わる消費の新しいスタイルとして、10年ほど前から徐々に見られるようになってきました。「コト消費」を楽しみながら、プライベートの時間をより豊かに過ごしてみませんか。

●モノ消費とコト消費の意味

従来型の消費スタイルを指す「モノ消費」とは、モノを所有することに価値を感じる消費を意味し、高度経済成長期以降の日本人の象徴的な消費行動と言われています。この時代は、生活に便利な品々が次々と販売され、好景気にも支えられて高い消費欲が見られていました。例えば、冷蔵庫・洗濯機・掃除機を指す「三種の神器」、乗用車・クーラー・カラーテレビを指す「3C」という言葉が流行したように、これらの製品の消費が盛んでした。生活の機能を充足させるための消費、と言い換えることができます。

新しい消費スタイルとして見られるようになった「コト消費」とは、体験やコミュニケーションを楽しむことに価値を感じる消費を意味します。ここ数年来、注目度が増して新聞などメディアでも新たなキーワードや現象として紹介されるようになった消費行動です。例えば、外国人観光客の購買が日本製品の大量購入から文化鑑賞や地元の人との交流体験へシフトしてきたこと、自分のユニークな体験シーンを撮影したSNS投稿が流行っていることは、コト消費への変化を表しています。心を満足させる消費、と言い換えることができます。


●コト消費が増えた背景とは

モノ消費からコト消費へと変化してきた理由としては、消費者の行動の変化が挙げられます。技術進歩やグローバル競争によってより生活に必要なモノが安く手に入るようになり、全国規模の店舗展開やインターネット普及によって入手も容易になりました。ここ数年で急激に増えたシェアリング・エコノミー(※1)によって、高価な車や住居などを安価に消費できるスタイルも誕生しました。モノを消費するハードルが低くなり、消費欲も低下したといえます。

震災の経験や環境保護活動の広まりによる消費者の意識の変化も理由の一つです。幸せや豊かさが見直されるようになり、本当に必要なモノとは何かを考えて所有を控えるシンプルなライフスタイルが台頭し、大量消費や大量破棄に対する問題意識が高まってきました。目に見えて残るモノよりも心の中に残るコトを大切にする、豊かな体験を積み重ねた毎日の生活の充実が豊かな人生につながる、といった志向が強まり、モノを所有することへのこだわりは薄れてきました。

こうしてコト消費が重視され、「新たな体験型」や、モノを購入する際に感動や特別な体験がプラスされる「モノプラス体験型」の商品やサービスが増えてきました。経済産業省も、この傾向は地域活性化にも活かせると捉えて「サービス産業一般の顧客が『時間』を消費できるコトを作る仕事を創出することが重要である」と地域経済産業活性化対策調査報告書(※2)で記述しています。

※1: VOL72「シェアリング・エコノミーを職場に」
https://www.tempstaff.co.jp/magazine/ningenryoku/vol62.html
※2:経済産業省「平成27年度地域経済産業活性化対策調査(地域の魅力的な空間と機能づくりに関する調査)報告書」
http://www.data.go.jp/data/dataset/meti_20151130_0420/resource/d2817a74-77e4-4810-bab6-1644361e67f6

●どのようなコト消費があるのか

「新たな体験型」のコト消費の例としては、移動そのものを体験として楽しむ豪華列車の旅、旅先の観光ではなく特別な体験を目的として楽しむ農業体験・郷土料理教室のツアーなどがあります。
観光庁では、訪日外国人によるコト消費を広げるために、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の活用を推進しています。スマートフォンやメガネタイプの装置を通じて、伝統的な日本文化を見せたり、歴史上の名所で戦国時代の様子や昔の城など当時の風景を再現したり、体験を提供することで観光客をより惹きつけるサービスです。

「モノプラス体験型」のコト消費のなかでは、新しいタイプの商業施設が話題になっています。買う・食べるという消費行動だけではなく、そのために費やす時間を楽しむことをコンセプトとしています。例えば、豆を選ぶ時間やプロが淹れる時間からを楽しみながらコーヒーを飲む、コンシェルジュからの専門的なアドバイスや会話を楽しみながら商品を選ぶ、というスタイルの消費を提供する施設です。
雰囲気作りやエンタテイメント性にこだわっているカフェや書店の増加や、商品を扱う店舗の面積を縮小し、代わりに美術展、エステ、マッサージなどのスペースを拡大する大手百貨店や駅商業施設の動きも、コト消費が意識されてきた表れです。

●コト消費の魅力とは

コト消費の大きな魅力は、再現不可能な時間や空間の体験です。その場・その時・その人限りで、二度と同じ体験は得られないという唯一無二の価値があります。
普段の生活空間にはあまりない音や眺めや香りから伝わる感動や発見が得られるという非日常さも魅きつけられるポイントの一つです。
また、SNSの浸透によって対面せずともコミュニケーションが取れるようになった昨今だけに、新鮮味と密度の高いリアルな臨場感が、周到にお客様へのサービスとして準備されている対話や応対、時間や空間の演出から得られることも魅力といえます。

中でもユニークな特徴は、コト消費の持つ「記憶の継続性」という魅力です。感動や発見が与えるインパクトは強く、心が大きく動かされるために頭の中に残ります。実際に目に見えるモノとして残らないぶん、逆に、頭の中でイメージが膨らんでいき、いい思い出、嬉しい思い出として記憶に残り続けることになるのです。

●コト消費による仕事への効果

コト消費は余暇として価値があるだけではなく、仕事にもメリットがあります。体験によって五感から受けた希少で非日常的な刺激は、新しい価値観、モノの考え方への気づきを与えると考えられます。柔軟性が高くなる、視野が広がる、アイデアに気付きやすくなる、という効果があるほか、頭の中がほぐされるためにストレス解消も期待できます。
コト消費を提供する側は、消費者を惹きつけるための工夫を凝らすため、体験した内容は消費者にとってコミュニケーションのヒントになります。上手な感動の与え方、効果的な情報の伝え方、気の利いたおもてなしなど、参考になるポイントがちりばめられています。

モノ消費からコト消費への変化は大きなビジネスチャンスの一つであり、消費者の創造的な生き方やその人らしさを、体験を通じてサポートし高めることが、これからの時代には求められるだろうと言われています。コト消費の体験は、新たな仕事の発想や手法の手がかりが得られる大きなきっかけになると考えられます。

●簡単に始められるコト消費

コト消費は身近なところでも体験できます。例えば、ショッピングモールを買い物のついでに散策すれば、季節感ある飾り付けのされたショーウィンドウや共有スペースに展示された写真や絵画を楽しむことができます。博物館や美術館にまで足を伸ばせば、最近ではインタラクティブな体験型の展示や専門ガイドによる案内サービスも増えているため、これまでと違った鑑賞ができます。
仕事に関連したコト消費としては、各種講演会や社会人向け大学講座の受講、ワークショップへの参加などがあります。今の仕事に直結するようなテーマや長期にわたるタイプではなく、知らない人が多く拘束期間の短いような場を選ぶと気軽に始められます。

コト消費を何から始めてみようか迷った時には、最近気になるコト、一度はやってみたいコト、面白そうに感じるコトなど、新たに試してみたいと感じて「楽しむ」意識が湧いてくるかどうかを選ぶ基準にすることがポイントです。

今後ますます進化するであろうIoTやAIの技術によって、労働生産性は高まり、仕事の進め方が変化し、休日の過ごし方も変わっていくと予想されています。コト消費の内容も変化に富んでいくと考えられます。余暇をさらに有意義に、自分らしく過ごすためにも、仕事をより充実させるためにも、モノ消費だけではなくコト消費を楽しんでみませんか。

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