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(情報掲載日:2015年3月10日)

いまを勝ち抜く人間力

デフォルト・モード・ネットワークを活用

VOL.38

ぼんやりした姿というのは、怠けていたり集中力を欠いていたり効率的に仕事ができていないように周囲からは見られてしまうものです。しかし、そういったぼんやりしている時間に、脳が重要な働きをしていることが、ここ数年の研究結果から発見され、注目されてきました。「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれるその働きは、〈働き詰めるだけが成果に繋がる訳ではない〉という、歓迎したくなるような仕組みを示しています。そんな「デフォルト・モード・ネットワーク」について、ご紹介します。

脳の科学的な仕組みを簡単解説

●ぼんやり時間に脳が消費するエネルギーの多さ

人間の脳が使うエネルギーのうち、本を読んだり、会話をしたり、メールを打ったり、といった意識的な活動に消費される量は3%程度に過ぎないそうです。また、約20%は脳の細胞の維持や修復に充てられています。残りの75%もの脳のエネルギーは、なんと、何もしていない無意識の状態下で使われていることが分かりました。これほど大量のエネルギーが一体、何に使われているのでしょう。そういった疑問などをきっかけにして研究が進み、導き出されてきたものが「デフォルト・モード・ネットワーク」という脳内で起きている現象です。
デフォルト・モード・ネットワーク状態になると脳内では、分散しているいくつかの脳領域のネットワーク間で情報の交流が盛んに行われるようになります。そして、記憶やイメージや感情、運動などそれぞれの働きを担う領域同士を関連づけて、つないだり束ねたりするのです。この活動は、無意識の状態下で活性化するわけですが、逆に、脳が意識的な状態へと入っていくと低下してしまいます。


●デフォルト・モード・ネットワークの注目ポイント

デフォルト・モード・ネットワークによる情報の交流が行われると、脳内において、自分の経験・知識・記憶などが整理整頓されることになります。これは、その後に自分自身が取る言動が、より効率的・能率的・スムーズになされるための準備、言わば、スタンバイ状態作りを意味しています。例えるなら、本や書類や文具などが散乱しているデスク周辺を、快適に効率よく仕事に臨めるように、〈いつの間にか自動的に〉整えてくれる、という陰の功労者的な働きです。しかも、散乱したデスクで本や書類に向き合っている時にはほとんど働いてはくれず、デスクから離れている間にこそ、こっそり力を発揮してくれるところが注目したいポイントです。
ですから、脳をフルに回転させてひたすら考えたり、根詰めて働き続けたりするだけではなく、ぼんやりする時間を適宜取り入れたほうが、効率的に仕事を進められると言えます。「次々と仕事をこなしていくべきだ」という思いには拘らずに、「リラックスした時間も持つべきだ」ということは、覚えておきたいものです。何より、私たち人間の脳が持っている働きに基づいた見解なのですから。

あの学者、あの創業者たちの実例

●有名な原理や発明が生まれた場所

デフォルト・モード・ネットワークの効果は、偉人の伝記や有名人のエピソードの中にもしばしば登場しています。
例えば、〈アルキメデスの原理〉の話が挙げられます。王様から「この王冠は純粋な金なのか、不純物を含んでいるものなのか、調べてほしい」と命令されたアルキメデスは、食べ物も喉を通らないほど昼夜考え続けたものの、一向に答えが見つかりませんでした。困り果てたある日、気晴らしに風呂屋へと出掛けお湯に浸かってリラックスしていた時に、この原理を思いついたと伝わっています。〈万有引力の法則〉が生まれた時の話も有名です。アイザック・ニュートンが、ケンブリッジ大学が休校となったために、学問漬けの日々から離れて実家に戻っていた時、りんごの木から実が落ちるのを目にして閃いたと言われています。また、産業革命の大きな原動力となった〈蒸気機関〉の新しい仕組みが考え出されたのは、ジェームス・ワットが休日に牧草地を散歩していた最中だったというエピソードが残されています。「相対性理論」などを構築したアルベルト・アインシュタインは、ヒゲを剃っている時によくアイデアが浮かんできたと語っていたことが伝えられています。


●新戦略やヒット商品の生まれた時

「20世紀最高の経営者」と呼ばれている、GE(ゼネラル・エレクトリック)社のCEOを務めたジャック・ウェルチ氏が〈ナンバーワン・ナンバーツー戦略〉を思いついたのは、レストランで一杯飲んでくつろいでいた時でした。それを忘れないようにと、すぐに彼は手元に置いてあったお店のナプキンに、その場で書き留めておいたそうです。この戦略は、各事業がそれぞれの市場においてナンバーワンかナンバーツーでなければ再建か売却か閉鎖する、というもので、のちに広く知られるようになる代表的なモデルです。
アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏のミーティングは、散歩しながら行うスタイルだったそうです。従来型と全く異なるモダンなデザインとしても注目された〈ひまわり型〉のデスクトップ型パソコン(iMac G4 ※ひまわりのようにモニターの角度が自在に変更可能なタイプ)のアイデアが生まれたのは、庭を散歩していた時だったと伝わっています。
他にも、有名企業のトップが、ウォーキングやジョギングをしている時に面白い発想が浮かんでくるといった話を、雑誌やブログなどで自ら語っているケースは少なくありません。
また、哲学者や作家や学者が、思索や構想を得るために、敢えて書斎や研究室を離れて近所を散歩したり、沿線の電車に乗って車窓をぼんやり眺めたりしていたというのも、しばしば聞かれる裏話です。


●きっと誰にでも身に覚えのある〈こんな経験〉

デフォルト・モード・ネットワークの効果を得ているのは、もちろん、このような有名人や著名人に限ったことではありません。知らず知らずデフォルト・モード・ネットワークを既に体験していたという方は、実は多いはずです。
例えば、なんとか思い出そうと一生懸命記憶を掘り起こしてみても、まったく思い出せなかった名前や場所が、その後、電車に座ってぼんやりしていた時に「あ、あの人だ!」「あの場所だ!」と、ふと思い出せたことはありませんか。または、会議の場で「ああでもない」「こうでもない」とみんなで延々と議論していた時は糸口が見つからなかったのに、会議を終えて何気なく窓の外を眺めながらコーヒーブレイクしていた時に、スーッといいアイデアが浮かんできたことはありませんか。これらは、デフォルト・モード・ネットワークによって脳内が整理整頓されたために、呼び出された記憶だったり導き出されたと考えられます。

オフィスワークへの採り入れ術

●一人で実践できる簡単な方法

このようなデフォルト・モード・ネットワークの効果を、オフィスワークの中で発揮させない手はありません。では、具体的にどのように採り入れればよいのでしょうか。実際に企業などで導入されているものも含めて、デフォルト・モード・ネットワークが活性化する状態を作る方法をいくつかご紹介します。
まずは、一人で簡単に取り組めるものとしてお薦めしたいのは、〈一人ランチ・デー〉です。週に1日でも、同僚や知り合いがほとんど来ないような店に入り、誰にも話し掛けられない環境を作って一人だけの静かな昼休みを過ごします。スマホや携帯の電源をオフにして、他に何もせず、ただ食べるだけの時間にしましょう。
仕事の合間、コーヒーなどを買いに行く時などに実践したいのが、一人で出掛けて必ず決まったルートを辿るという〈プチ散歩〉です。いつも同じ店に行き同じ道順を歩くことが重要なポイントになります。違う店や違う道を選ぶと、新たな景色や新たな道順に対応しようとする意識が生じてしまいデフォルト・モード・ネットワークが働かないためです。
洗面室に誰もいないような時間帯を選んでの〈じっくり歯磨き〉は、簡単に毎日の習慣に組み込めるものではないでしょうか。歯磨き中は、誰かが洗面室に来ても口が塞がっているため会話ができませんし、いつも決まった手の動きをするだけなので、脳をぼんやりさせやすいと言えます。


●周囲と一緒に取り組む方法

机が並んでいるオフィスの中では周囲のメンバーとの交流は欠かせませんから、デフォルト・モード・ネットワークが活動するような状態を作ることは、なかなか容易ではありません。ですから、できれば身近なグループや課のメンバーと一緒に試みるよう働きかけてみてはいかがでしょうか。
例えば、〈ノー・ミーティング・タイム〉や〈ノー・コンタクト・タイム〉の実施です。会議や打ち合わせをしない、パソコンや電話を使わない、という時間帯を一斉に作るのです。新たに外から入って来る情報をシャットダウンするだけでも頭の中は整頓されていきますし、必要性の低いミーティングややりとりをする時間が減ってスリム化されるといった別の効果も期待できます。
10〜20分程度の昼寝を個人で自由に持つことを認める〈シエスタ・タイム〉は、専用の別室を設けて導入している企業の例が国内外にあり、仕事の能率アップが報告されているそうです。昼寝の時間を持つことによる思考への好影響については、古代ギリシアの哲学者であるアリストテレスやスペインの有名な画家であるサルバドール・ダリも実感し、積極的に活用していたと伝えられています。


●中国の「三上」、西洋の「3B」にもヒントあり

脳科学の世界でデフォルト・モード・ネットワークが注目される以前から、実はその効果を簡潔に表した言葉が存在しています。
11世紀の中国学者・政治家・詩人である欧陽脩(おうようしゅう)は、頭が働きやすい三つの場所として、「三上」という言葉を掲げました。「三上」とは、「馬上」「枕上(ちんじょう)」「厠上(しじょう)」を指します。現在の言葉で表すと、「乗り物(電車・バス・飛行機など)に乗っている時」「布団やベッドやソファーで横になっている時」「トイレに入っている時」を意味しています。同じように、西洋で聞かれる言葉が「3B」です。これは、Bath、Bus、Bedの頭文字を取ったもので、バスルーム、バス、ベッドが、アイデアが生まれやすい場所だと挙げています。さらにBar(飲み屋、バー)を加えて「4B」とも言われています。

「三上」「3B」にも共通して言えるのは、どれも、一人きりになれて、ぼんやりとリラックスできる場所や時間になっていることです。これらの言葉もヒントにしながら、自分なりにそれにあてはまるような場所を見つけ、意識的に何もしない時間を持つよう心掛けてみてはいかがでしょうか。デフォルト・モード・ネットワークを活用すれば、より上手により賢く、そして無理なく、毎日を過ごすことができるはずです。

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