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(情報掲載日:2020年11月9日)


人生100年時代を迎え、ますます多様化が進んでいく環境下では、自分の考えや意見を相手にしっかり伝えることが大切です。加えて、自分とは異なる意見を持つ相手の声にも耳を傾け、それをふまえ生かす「傾聴力」が重要になると言われており、経済産業省も社会人基礎力の一つとして挙げています。今の時代に必要とされている「傾聴力」を磨いてみませんか。

●社会人基礎力の一つ

経済産業省は、2018年に「人生100年時代の社会人基礎力について」を発表しました(※)。その中で挙げられている1つが「傾聴力」です。傾聴力とは、相手の意見を丁寧に聴く力を指します。

「社会人基礎力」とは同省が2006年に提唱したもので、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」と定義されています。
その後、IoT・AI・ビッグデータに代表される技術革新や人生100年時代の到来によって、「社会人基礎力」の重要性はさらに増しました。そこで、2年前に発表されたのが「人生100年時代の社会人基礎力」です。今後さらに長くなると考えられる、企業・組織・社会と個人との関わりの中で、ライフステージの各段階で個人が活躍し続けるために求められる力に関して、まとめられています。
具体的には、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という3つの能力と、それぞれに含まれる12の能力要素が示されています。「傾聴力」は、「チームで働く力」の能力要素の1つです。

これからの社会では、多様な価値観を持つ人たちと共に、チームのように協力しながら前に進めていく力がより重要になると考えられています。協力し合うためには、自分の意見を伝えつつも、他の人の考えも受け入れながらゴールへと向かっていく姿勢が大切です。そこで不可欠になる要素が、「傾聴力」と言えます。

●「聞く」のではなく「聴く」

傾聴は「active listening」と英訳されるように、相手の話を「単に聞く」のではなく、「積極的に聴く」というところが、「傾聴力」の持つ意味合いの大きなポイントです。
傾聴は、カウンセリングに用いられるテクニックの1つでもあります。相手をより理解するため、よりよい関係を築くために、言葉の意味を理解するだけでなく、相手の気持ちに積極的に寄り添って話を深く聴くという行為です。このような聴き方は、カウンセリングに限らないシーンでも、相手の真意を引き出したり理解したりすることにつながっていきます。

傾聴の「聴」という漢字も、傾聴の本質をよく表しています。「聴」には「耳」「目」「心」といった文字が含まれており、「耳だけではなく、目と心も使って聴く」ことが表現されていると解釈できます。
目を使って聴くとは、表情やしぐさなど相手の様子に注意しながら聴くこと、心を使って聴くとは、相手の言葉の背後にある感情や思いを推察し受け止めながら聴くという意味です。
耳以外の自分の感覚を総動員させて、相手が発する言葉自体には表れていないような、裏側に潜む真のメッセージも察知し、寛大な姿勢で接しながら相手の意思を汲み取っていくことを、「聴」という漢字は物語っています。

同じ組織・文化・風土に属する人と人の間では、阿吽(あうん)の呼吸や以心伝心のような反射的な理解のしやすさは、コミュニケーションとして成り立ちますが、外の世界では難しいと言えます。そこでは「傾聴力」が強く求められることになります。

:「人生100年時代の社会人基礎力について」経済産業省 産業人材政策室 https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/jinzairyoku/jinzaizou_wg/pdf/007_06_00.pdf新しいウィンドウが開きます

●自分自身を向上させる力

傾聴力を磨くと、相乗的に他の力も高められます。
相手の気持ちに寄り添って耳を傾けていると、自分の考えや視点との違いに気づきやすくなります。すると、自分を俯瞰できる、多面的に物事を見ることができるようになるため、「客観視する力」が高まります。

相手の話をじっくりと聴く姿勢でいると、相手は表面的な話だけを伝えたり、内容を端折って語ったりせず、丁寧に話せるようになります。すると、話の背景や流れなども掴めてより確実に把握ができるため、勘違いや誤解が避けられて「正しく理解する力」が高まります。

また、相手に対して共感的に聴いていると、相手は承認欲求が満たされていきます。承認欲求とは、「他者から価値ある存在として自分を認められたい」という、米国の心理学者アブラハム・マズロー氏が「マズローの欲求5段階説」にて理論化した人間の欲求の一つです。承認欲求が満たされると、相手は好感を持って気持ちよく話せるようになるため、「信頼関係を構築する力」が高まります。

●相手の力を引き出す力

傾聴力には、相手の力を引き出す効果もあります。
相手は、自分の気持ちに寄り添ってじっくりと話を聴いてもらえると、自分の胸の内にある感情や思いが自然に掘り起こされていきます。話しているうちに、頭の中にある思考の整頓が一つ一つ進みます。そこから新たな気づきが生まれる、自己の再認識に通じるなど、「次のステップを目指す力」に通じます。

相手は、自分の話に対して共感的な反応があると、心理的な充足や得られて、自信が高まります。気持ちがより前向きになり、言動にも積極性が増していきます。モチベーション高く物事に向き合い、「果敢に挑戦する力」が育まれます。

組織やチーム内で傾聴を続けていくと、個々の力が引き出されていくことになります。個々の力の向上や変化は、互いにいい刺激となって交流が活性化し、さらに意識や行動にプラスの影響を与えます。ひいては、「組織力やチーム力」の強化につながると考えられます。

自分にとっても相手にとっても大きな価値を持つという傾聴力について、偉人も言及しています。
例えば、現在のパナソニックの創業者である松下幸之助氏が、「素直に謙虚に人の意見に耳を傾ける。確固たる信念とともに、そうした姿勢を持っていれば、事はおのずとうまくいく」と語ったエピソードはよく知られています。著書「人を動かす」などで有名な米国の実業家デール・カーネギー氏も「人の話を聞くことにより、人生の80%は成功する」という言葉を残しています。

●意識したいこと

傾聴力を高めるためには、まず、相手に対して好奇心を持つことが大事です。相手への興味・関心を持って会話に臨み、会話のどこかに何かのきっかけがあると考えます。「相手は自分にはないユニークな考えを持っている」「新しいアイデアのタネを与えてくれる」「ヒントや参考になる話題を提供してくれる」といったプラスのイメージを意識して接してください。

相手の立場を尊重するという意識も、傾聴には欠かせません。「相手が心から望んでいることは何か」「どんな解決したいテーマを抱えているのか」「本当は何を主張したいのか」と、自分の経験や知識をいったん脇に置き偏見をできるだけ持たないようにして、広い気持ちで向き合うようにします。
相手の話を急かさない、相手が考えている間(ま)・沈黙を破らない、話の腰を折らない、ということも忘れないようにしてください。あくまで相手のペースを守るように心がけます。

●しぐさの活用

姿勢や動作を活用すると、傾聴力はよりステップアップします。傾聴する姿勢の基本は、体は相手の正面、視線の方向は相手の目や目の周辺(顔)あたりです。上半身や首はやや前のめり気味に傾けると、積極的に話を聴く雰囲気が増します。柔らかい表情、温和な表情を心がけると相手もリラックスできます。

相手の話に対する反応の仕方として、次のようなテクニックを使うと、心理的な安心感や親密感が伝わって会話が円滑に進む効果があります。



最近増えているオンライン会議では、タイムラグが生じる、聞き取りにくい、見えにくいといった現象は避けられません。その場合は、表情やしぐさを少し大げさにする、言葉のスピードを少し落とす、チャットやスタンプツールを併用するなど、試みてください。ちょっとしたひと工夫が傾聴に役立ちます。

コミュニケーションの中に、傾聴の意識を持つようにすると、いつもと違う会話に発展する機会が増えて、課題解決や新しい取り組みへと結び付く可能性も高まります。これからの時代に重視される異なった価値観を上手に受け入れ、より円滑に仕事を進めていくためにも、ビジネスパーソンとして欠かせない「傾聴力」を磨いていきましょう。

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