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(情報掲載日:2020年7月13日)


テクノロジーの進歩によって、毎日膨大な情報に接する機会が得られるようになり、知っておきたい情報、処理したい情報量は増えています。それら全てをしっかりと記憶して仕事に役立てることは容易ではありません。ところが、アナロジー思考を使えば、わずかな情報量や知識で理解を深めて能力を広げることができます。この思考法についてご紹介します。

●一を聞いて十を知る

アナロジー(analogy)という英語は、類推、類比、類似、比論などと訳されます。アナロジー思考とは、ある物事から他の物事を類推することです。言い換えると、全く違う分野の物事に見られる類似性に着目して、応用したり真似をするという思考法です。

この思考の大きな特徴は「一を聞いて十を知る」ことができる点です。知っている情報や経験をあまり知らない新しい分野に当てはめて応用するため、わずかな情報を元にして多くの情報の推測が可能になります。ゼロから情報を探したり多くの情報を集めたりしなくとも、既に知られている情報をヒントにして推測を広げて、知らない情報を効率よく察して、目的に近づくことができます。意思決定や問題解決にも役立ちます。

アナロジー思考を使えば、過去のビジネスの事例の中に見られる戦略や方法を、これから始める新たなビジネスに応用することもできます。
例えば、カーシェアリングというビジネスの「空いた時間や使わない物を活かす」「共有する」という類似性に着目し応用して生まれたビジネスが、シェアオフィスや民泊です。
ある時代の流行曲や人気番組、売れ筋の本に、曲調や構成やテーマなどの類似性が見られるのは、アナロジー思考に基づいて考案された結果のヒット、と読み取ることもできます。

●イノベーションにも発展

今の時代は、既存のサービスや製品のブラッシュアップというモデルよりも、独自のアイデアや新しい発想といったイノベーションが求められる傾向が強くあります。イノベーションは、「従来にない全く新しいものではなく、既にあるものの新しい組み合わせから生まれる」と経済学者のシュンペーターは述べました。アナロジー思考では、全く違う分野の物事に着目するため、イノベーションの可能性を高めると考えられています。

全く違う分野の物事の中でも、近い分野より遠く離れた分野に着目する方が、アナロジー思考によって得られる価値や効果は一般的に大きくなります。誰にも注目されないような、思わぬ類似性に気づいて応用したり真似たりするほうが、画期的な進歩をもたらすためです。イノベーションも同様に、遠く離れた分野に大きなヒントが潜んでいることになります。
遠く離れた分野というのは、仕事から離れた分野も該当します。例えば、伝統芸能からは昔ながらの型や技の中に、海外旅行からは日本にはない習慣や文化の中に、仕事へ応用や真似ができる類似性が見つかるかもしれません。

スペインの代表的な画家・サルバドール・ダリは「真似をしたがらない者は何も生み出さない」という言葉を残しています。多作な芸術家として知られるピカソは「優れた芸術家は真似をするだけだが、偉大な芸術家は盗む」と語り、それをスティーブ・ジョブズは引用しました。
著名な先人たちが、真似を取り入れながら活動し優れた足跡を残してきたことからも、アナロジー思考の有効性は伝わってきます。

●「具体化→抽象化→応用化」

アナロジー思考を実践するための基本は、3つのプロセスです。
最初のプロセスは「具体化」です。
既に知っている物事をいろんな側面から捉えて、できるだけ具体的で詳細な言葉で分析・分解することを指します。具体化によって、なんとなく抱いていたイメージや無意識に感じていたイメージが明確になり、物事の特徴がはっきりと把握できます。また、既に知っていた物事を客観的に再認識することができます。

次のプロセスは「抽象化」です。
具体化されたそれぞれの言葉は「要するにどういうことなのか」「何を意味するのか」と、一言で表現することを指します。抽象化によって、物事の持っている要素や仕組みなどのポイントが浮かび上がり、本質がつかめます。また、言葉を抽象化すると、あまり知らない物事との類似性に気付きやすくなります。

最後のプロセスは「応用化」です。
抽象化された言葉を、全く違う分野の物事の状態や手法など、類似した部分に当てはめてみることを指します。全ての抽象化された言葉を対象とせずに、気になるものだけに絞り込んでみたり、わかりやすいものだけに注目して変換を試みても問題ありません。この応用化を実際に行動に移してみたことによって好ましい結果や手応えが得られれば、共通して使えるルールや法則として他にも汎用するなど、可能性はさらに広がっていきます。

●アナロジー思考の例:弁当店の「おにぎり」を花屋の「花束」へ応用化



●身につけるためのキーワード

アナロジー思考を身につけるために、役立つ3つのキーワードがあります。
1つ目は、「観察」を意識することです。「具体化」のプロセスにおいて、物事の特徴に気づきやすくなるために、日頃から多面的に物事を見つめてみる習慣をつけます。
気づきが鈍らないようにするため、「常識」「当たり前」に基づいた判断・認識には注意するように心がけます。

2つ目は、「洞察」を意識することです。「抽象化」のプロセスにおいて、本質をつかみやすくするために、観察したことを手掛かりに、その背景にあるものや意図へと考えを広げていきます。
物事をそのまま素直に受け止めるのではなく、「それはなぜ?」「どうなっている?」と繰り返して考えるクセを作るように心がけます。

3つ目は、「仮定」を意識することです。「応用化」のプロセスにおいて、変換をしやすくするために、洞察によって得たいくつかの要素や仕組みを、「異なる物事に用いてみたらどうなるか」「通用する面はないか」と想像してみます。
厳密に捉えずに、「部分的に通じている」「ここを微調整すれば合う」と柔軟に考えてみるように心がけます。

●学びが加速、アイデア創出

アナロジー思考の実践が進むと、学びが加速すると考えられています。
具体化・抽象化するプロセスの性質上、「情報を整頓する力」「分析する力」が増します。応用化するプロセスの性質によっては、「情報を活用する力」「展開させる力」が増します。これらの複合的なスキルの向上は学びを加速させるうえ、視野が広がり、モチベーションアップにも繋がります。
また、応用化するプロセスにおいては、全く違う分野の物事を引き合いにして考えるため、一定の思考パターンに凝り固まることのない、自由で斬新なアイデアの発想力が期待できます。

●相手に伝える力

3つのプロセス通じて、様々に言葉を変換する作業を行うことから、何かに例える・なぞらえる、といった隠喩表現・比喩表現が磨かれていきます。
例えば、「あなたの仕事に例えるなら◯◯のようなことを指します」「あなたの業界で言うところの◯◯になります」と、相手の専門分野に沿っていたり、相手に馴染みのある言葉を使った表現で伝えることができ、円滑で分かりやすいコミュニケーションに役立ちます。
「◯◯に例えられる話ですね」「それは◯◯のようなことですか」と、相手の言葉を噛み砕いたり言い換えたりして意思や内容を確認することもでき、相互理解も進みます。

経営者やマネジメント層が戦国武将やスポーツ監督の本を好む傾向があるのは、アナロジー思考の効果を知っているためとも考えられます。ビジネスのヒントを得る、発想の幅を広げるといった効果にとどまらず、有名人や著名人にまつわる比喩・暗喩を用いた伝達は、相手に理解されやすい、より印象に残り続ける、という大きな影響力を発揮します。


アナロジー思考を使えば、日々見聞きする多くの情報の受け止め方が変わり、上手にインプットして思考を繰り広げられるようになります。仕事の様々な場面で幅広く活用でき、自分自身の成長にもより手応えがつかる思考法を始めてみませんか。

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