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(情報掲載日:2020年6月15日)


新聞やニュースなどでDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を見聞きする機会が増えてきました。経済産業省においてもDXに関する研究会が発足したように、これからのビジネスにとって欠かせないキーワードの一つと言えます。そんなDXについて、意味やポイントをご紹介します。

●より良い変化を起こすテクノロジー

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、スウェーデンの大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念です。「進化し続けるテクノロジーが浸透していき、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」を意味します。

「Digital Transformation」は頭文字を取るとDTになりますが、接頭語「trans」を英語圏では「x」と表記することが多いため、DXの2文字で表されています。「trans」が意味する「〜を越えて、〜の向こう側へ、〜を横切って」から、2本の横切った線がイメージされて「x」という文字で表されるようになったと言われています。
「transformation」には「変換、変形、変態」という意味があり、「Digital Transformation」を直訳すると「デジタル変換」になりますが、単なる「デジタル変換」にはとどまらない発展した意味を含んでいます。IoTやAIなどのデジタル技術によって、既存の価値観や枠組みを根底から覆すようなイノベーションがもたらされ、企業・組織や働く人たちのあり方や関わり方をも変化させるような、圧倒的で大規模な変革というニュアンスです。

2018年に経済産業省に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」が設置され、「デジタルタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」がまとめられました(※1)。このレポートではDXをもう少し詳細に定義しており、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と記しています。

※1:経済産業省「デジタルタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf


●技術進歩と政府の指針により注目

今から10年以上も前に提唱されたDXという概念が、近年注目されるようになった背景には、デジタル技術の急激な進歩があります。SNSやインターネット上のスピーディーな情報によって企業は消費者とのバーチャルな接点が増え、市場の変化を素早く察知し対応できるようになりました。同時に、従来の手法が適用しにくくなった面もあります。
データやデジタル技術を駆使しての消費者ニーズの発掘、新しいサービスや製品の提供は、どんな業界にとっても欠かせない企業戦略の一つになってきたと考えられます。

政府の指針として2016年に発表された「第5期科学技術基本計画」には、「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことができる」という超スマート社会の実現に向けて、「Society5.0」を更に深化させつつ強力に推進していくと記載されています(※2)。科学技術のイノベーションが新たな社会を先導して成長力を牽引していく社会像「Society5.0」の中では、DXは必須と言えます。

※2:内閣府「第5期科学技術基本計画」
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5honbun.pdf

●デジタライゼーションとの違い

DXに似た言葉として知られているのが「デジタライゼーション」です。IoT(モノのインターネット:身の回りのさまざまなモノがインターネットに繋がる仕組み)やAI(人工知能:人工的につくられたコンピューター処理による知能)、クラウドサービス(インターネットを経由してデータやソフトウェアなどを利用できる形態)といったデジタル技術を取り入れて、機能を進化させることを指します。
具体的には、アナログで処理されてきたもののデジタル化を進めて、既存の製品やサービスの付加価値を高める・従来にはなかった利便性を生み出す・業務の効率化を図る、といった成果を目指す取り組みです。デジタライゼーションの目的は「価値向上・利便性追求・効率化」になります。

一方でDXの目的は、デジタル技術の活用によって、企業にとって競争上の優位性確立にも繋がるような「経営の変革」を起こすことであり、働く人や消費者を「本質的なところから大きく変化」させることです。DXは、デジタライゼーションを超えた次のステージにあり、DXの前提としてデジタライゼーションは欠かせない、という関係になります。

●DX実現までのフェーズ

DXに至る段階は、3つのフェーズに分けられると考えられています。
第1フェーズは「デジタル技術を利用して業務プロセスを強化する段階」です。書類や情報の流れ・処理の仕方や手順などの標準化された業務プロセスを、デジタル化されたシステムを取り入れることで、人の手によるミスやエラーを減らし、業務・品質やサービスの確実性を徹底させることが可能になります。

第2フェーズは「業務をデジタル技術に置き換える段階」です。第1フェーズをふまえながら、業務の一部をデジタル技術に代替させて自動化します。人が行なっていた作業をソフトウェアやシステムが処理するために、労働時間は短縮し、業務・品質やサービスのレベルを向上させることが可能になります。

第3フェーズは「業務がデジタル技術へ、デジタル技術が業務へと途切れることなくスムーズに変換される段階」です。第2フェーズをふまえながら、データ把握と最適な分析によって業務を改善しつつ回します。加えて、人の手が入るアナログの業務と巧みに連携させながら、変化する環境や条件に対応した業務プロセスのアップデートを繰り返し、常に最適な状態を維持します。業務・品質やサービスの向上がさらに進化し続けていくために、ビジネスモデルの変革や価値創造が可能になります。DXはこのフェーズに含まれます。

最新のデジタル技術を導入したとしても、短期間でDXを実現するのは容易ではありません。第1フェーズ、第2フェーズへと丁寧に段階を踏むことがDXへの近道です。
また、デジタル技術を使うのはあくまで人であるため、一人一人の意識付けや理解は欠かせません。デジタル技術の活用が進んでいる部門に限定せずに、部門や階層を超えて企業全体で取り組んでいけるような企業文化を醸成していくことは重要なポイントになります。

●2025年の崖を克服するために

経済産業省は『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』の中で「2025年までの間にDXを実現することにより、2030年の実質GDP130兆円超の押上げを実現する」というシナリオを発表しました(※3)。「2025年の崖」とは、DXに向けた既存システムや業務自体の見直しができない場合、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性を指摘した言葉です。

「2025年の崖」をスピーディーに克服するために、「DX を推進するための新たなデジタル技術の活用と IT システム刷新に関するガイドライン」が策定されました。ITシステムを構築していく上でのアプローチや必要なアクション、失敗の典型パターンが示されています(※4)。
環境整備に関しては、積極的に推進していくマインドセットの醸成、推進・サポート部門の設置や体制づくり、各事業部門において業務内容に精通しつつデジタルで何ができるかを理解しDXの取り組みをリードする人材とその実行を担っていく人材の育成・確保、が必要であると掲げています。

※3:経済産業省『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf

※4:経済産業省「DX を推進するための新たなデジタル技術の活用と IT システム刷新に関するガイドライン」
https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000180135

●DXの身近な事例

すでに身近なところでも、DXによって誕生した画期的なサービスは始まっています。
モノのデジタル化が進んで生まれたものとしては、スマートフォンやパソコンで楽しめる音楽や映像のストリーミングサービスがあります。インターネット上で送金や資金運用ができるフィンテック(FinanceとTechnologyを組み合わせた造語)も現金のデジタル化により実現されたサービスです。他にも、Web会議サービス、オンライン美術館、電子書籍などが挙げられます。

知識や情報のデータ化が進んで生まれたものとしては、カーシェアリングや民泊などの各種シェアリングサービスがあり、個人や企業の所有しているモノやサービスのデータ化によって生まれたビジネスです。自動車メーカーや通信会社などによる事業提携は、異業種間でデータ化された情報の共有と分析により実現した新形態と言えます。他にも、オンラインで顧客の問い合わせに自動回答するチャットボット、タクシー配車アプリケーション、フリーマーケットアプリケーションなどが挙げられます。

2020年に導入された5G(第5世代移動通信システム)の実用が進んでいけば、IoTの普及、ビッグデータの集積、AIによる分析などが加速していくと予想されます。それらは同時に、DXの新たな市場を拡大させていくと考えられます。仕事だけでなく生活にもより良い変革をもたらすDXに注目してみませんか。

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