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(情報掲載日:2019年12月11日)


IT 化が進む今、情報機器作業を行う労働者が増加し、作業形態も多様化しています。労働者の健康を維持するために、職場の労働条件や作業環境を改善していくことが企業に求められています。それには労働衛生について知ることが重要です。厚生労働省は2019年7月に「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定しました。より安全に健康的に働くにはどうすればいいかについて考えます。

●職場の環境や条件を改善する労働衛生

労働衛生とは、労働者の安全と衛生を確保するためのさまざまな対策を講ずることを指します。近年は、パソコンやタブレット端末等の情報機器を使用し、データの入力・検索・照合や文章・画像等の作成・編集・修正、プログラミング、監視等を行う情報機器作業を行う労働者が増えています。それに伴い情報機器操作による精神的疲労、身体的疲労等が問題になっており、労働衛生が注目されています。労働衛生には主に「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の3管理があり、これらの管理を行うことで、事故や病理を未然に防ぎ、労働者の仕事に対するやる気を維持します。労働衛生で健全な働き方を維持することは人材の流出防止にもつながります。

労働衛生の3管理


●2019年7月に新たな労働衛生のガイドラインを策定

厚生労働省はVDT(Visual Display Terminals パソコン画面等の画像表示端末)作業に従事する者の心身の負担を軽減するために、2002 年4月に「VDT 作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(※1)を策定。事業者が作業環境を整備し、VDT 作業が過度に長時間行われないよう適正な作業管理を行うための指針としていました。しかし、2002年以降、ハードウェアおよびソフトウェアの技術革新で職場におけるIT 化はますます進行。ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT 機器のみならず、タブレット、スマートフォン等の携帯用情報機器を含めた情報機器が急速に普及し、情報機器作業を行う労働者の作業形態もより多様化しました。そのため、厚生労働省は2019年7月に、17年ぶりとなる新たなガイドラインとして「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(※2)を策定しました。

近年のIT化による環境変化

@情報機器作業従事者の増大
A高齢労働者も含めた幅広い年齢層での情報機器作業の拡大
B携帯情報端末の多様化と機能の向上
Cタッチパネルの普及等、入力機器の多様化
D装着型端末(ウェアラブルデバイス)の普及 等

●新ガイドラインでは技術革新に対応し、作業区分を見直し

新ガイドラインでは、技術革新への対応としてタブレットやスマートフォンに関する事項等の技術的見直しと、情報機器作業の多様化を踏まえた作業区分の見直しが行われています。以前は「作業時間×作業の種類」による区分でしたが、新ガイドラインでは「1日に4時間以上の作業を行う拘束性のある作業」と「それ以外」となっています。1日4時間となった理由は、パソコン作業者の調査研究において、1日の作業時間が4〜5時間を超えると中枢神経系の疲れを訴える作業者が増大し、また、筋骨格系の疲労が蓄積するという調査報告を参考にしています。

作業区分の変更内容
○旧ガイドライン(2002年 ※1)


○新ガイドライン(2019年 ※2)


注2:作業時間または作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの(すべての者が健診対象)
注3:上記以外のもの(自覚症状を訴える者のみ健診対象)

※1:厚生労働省「VDT 作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2002年4月)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000184703.pdf

※2:厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2019年7月)
https://www.mhlw.go.jp/content/000539604.pdf

●新ガイドラインには具体的な行動の目安を掲載

「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(※2)には「作業環境管理」「作業管理」「作業機器及び作業環境の維持管理」「健康管理」等の項目があり、一つひとつの項目ごとに具体的でわかりやすい行動の目安が書かれています。じっくり読み込んで、内容にならって実践していきましょう。

新ガイドラインの主な項目
(厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を参考に作成 ※2)

●対策を進めるときはここに注意

労働衛生対策では、それぞれの作業内容や使用する情報機器、作業場所ごとに、健康影響に関与する要因のリスクアセスメントを実施し、その結果に基づいて必要な対策を取捨選択します。「健康管理」に掲げられた対策を優先的に行い、実際の作業を行う労働者の個々の作業内容、使用する情報機器、作業場所等に応じて必要な対策を拾い出しながら進めていきます。留意すべき点として、「安全衛生に関する基本方針の明確化」「適切な労働衛生教育の実施」「作業実態に応じた対応の策定」があります。

対策を進めるに当たっての注意点
(厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を参考に作成 ※2)

●管理職に対する教育の重要性

労働衛生対策を進める上では、現場の管理者の理解も大変重要になります。ガイドラインの概要を伝えたうえで、3管理においては「拘束的な長時間作業の弊害」「個人差の大きさ」「適切な助言の大切さ」等をよく理解させる必要があります。
管理者に対する教育内容
(厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を参考に作成 ※2)

●ガイドラインを参考にして独自の工夫を

労働衛生ではガイドラインなどを参考にしながら、「立って作業」「社内でストレッチ」「昼寝の承認」など独自の施策を行う企業も現れています。より効果的に、より社員に受け入れられるようにするために、独自の施策を工夫しましょう。

企業の労働衛生の施策例

・社員のデスクに昇降デスクを採用し、打合せコーナーの壁面をホワイトボードにして立って作業を行う。
・一般より広めの1.5 倍幅のデスクを採用し、無理のない姿勢で仕事ができるように配慮。
・毎日、昼礼終了時に3分程度の体操を実施。普段は階段利用を促進。
・ぶら下がってストレッチができる雲梯を社内に設置。休憩時の利用で腰痛や肩こりの予防・緩和を図る。
・外の自然光を取り入れるレイアウトを採用し、室内照明と掛け合わせて利用。
・各自のデスクや社用車での昼寝(15〜20分程度)を承認。眠いと感じたタイミングで行える。


●高齢者に対する配慮

見やすい文字の大きさや作業に必要な照度等は、作業者の年齢により大きく異なります。多くの情報機器作業の場合、文字サイズ、輝度コントラスト等の表示条件は使用する機器の設定により調整することが可能であり、作業者にとって見やすいように適合させることが求められます。作業時間、作業密度、教育、訓練等についても、高齢者の特性に適合させる配慮が望まれます。

●障がい等を有する作業者に対する配慮

キーボードやマウス等が使用しにくい障がい者には、必要な音声入力装置等を使用できるようにする等の必要な対策を講じることが求められます。ディスプレイを読み取ることが困難な障がい者には、拡大ディスプレイ、弱視者用ディスプレイ等を使用できるようにする等の対策を講じることが必要です。情報機器は、筋力や視力等に障がいがあっても作業できるように、さまざまな支援対策が準備されているため、作業を快適に行えるよう最大限の工夫を行うことが求められます。

●テレワークを行う労働者に対する配慮

労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働安全衛生法等の労働基準関係法令が適用され、健康確保のための措置を講じる必要があります。テレワークを行う作業場が、自宅等の事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、事務所衛生基準規則、労働安全衛生規則及び情報機器ガイドラインの衛生基準と同等の作業環境となるようにテレワークを行う労働者に助言等を行うことが求められます。

どれだけITが進化しても、それらの機器を扱うのは人であるという点は変わりません。人生100年時代に人が長く働くには、働きながら身体の健康を維持でき、常に最良の状態で仕事に臨めることが求められます。企業には、労働者が安全に健康的に働けているかを常にチェックし、その事実をベースとして最良の労働衛生を実現していくことが求められます。

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