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(情報掲載日:2012年7月23日)

人材マネジメントライブラリ

企業に求められる「労務コンプライアンス」(2)

〜「就業規則」編

VOL.7

就業規則とは、賃金や労働時間などの労働条件や職場の規律(ルール)を定めるものです。変更する際には従業員の不利益にならないような対応が求められます。なぜなら、従業員は就業規則で定められた条件で就業しているのであり、この契約を会社が一方的に変更することはできないからです(労働契約法第9条)。労務コンプライアンスの観点から、今回は就業規則の変更、さらには降格・減給する際に注意すべき点についてご紹介します。



「就業規則の変更」における労務コンプライアンス

●就業規則とは

就業規則は、従業員が働く上で守るべき規律や労働条件について、会社が具体的に定めた規則類の総称を言います。就業規則を作成する目的は、労使間で実際にトラブルが発生した時の解決策を定めることにより、従業員が安心して働く環境を作るためです。
労働基準法では常時10人以上の労働者を使用する使用者に対し、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届け出ることを義務付けています。この場合、労働者の中には正社員だけではなく、直接雇用となるパートタイマーなども含まれます。パートタイマーの就業の実態が正社員とは大きく異なるような場合、正社員用、パートタイマー用2つの就業規則を作成しなくてはなりません。


●就業規則に記載する事項

就業規則に記載する事項については、労働基準法第89条で定められています。これには、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」@〜Bと、労使間で取り決めをした場合に記載しなければならない「相対的必要記載事項」C〜Jがあります。また、定める義務はないですが、就業規則の目的や就労条件等をより明確にしていくために、以下、「任意的記載事項」のような項目を定めておくとよいでしょう。


【就業規則の記載事項】

【就業規則の記載事項】

(*T)規定することが義務付けられてはいないが、何らかの定めをする場合は、必ず就業規則に記載しなければいけない事項
(*U)特に労働基準法に定められていない事項


●就業規則の作成と届出

就業規則の作成、届出の手順は以下のように行います。なお、変更の際の手順も同様です。

①使用者の就業規則(変更)案作成
  ↓
②当該事業場ごとに過半数で組織する労働組合(または過半数代表者)からの意見聴取
  ↓
③所轄労働基準監督署長への届出
  ↓
④事業所における周知(配布、掲示、備付け等)


●就業規則を変更する際、最低限押さえておくべきポイント

就業規則は、社会情勢や経営状況の変化、法律の改正などにより、変更の必要が生じることがあります。その際、従業員にとって有利になる変更は特に問題とはなりませんが、従業員にとって不利になる変更(労働条件の不利益的変更)はトラブルが生じることがあり、注意する必要があります。
例えば、賃金引き下げ、労働時間の延長など、従業員にとって労働条件が現在よりも悪くなる場合は原則的に変更できません。

労働条件の変更については、労働契約法第8条による使用者と労働者の合意の原則が一般的とされています。しかし、使用者側の一方的な就業規則の変更による労働条件の変更について、トラブルも発生しているため、労働契約法第9条では、使用者は一方的に労働条件を労働者の不利益に変更することができないことを定めています。
なお、就業規則に記載されていなくても、「社内慣行(習慣)」として定着しているものがあれば、労働条件と判断されることがあります。例えば、退職金制度はなくても退職時に祝い金として「退職手当」が支給されているなどです。

では、就業規則はどのような場合に変更できるのでしょうか。
従業員にとって有利になる変更は同意不要ですが、不利益的な変更を行う場合に対して、従来の判例法理を踏まえて労働契約法第10条では、「合理的な理由」があれば、従業員の同意がなくても就業規則を変更できる、としています。
就業規則変更の合理性の判断のポイントは、『就業規則の変更の必要性、内容において労働者が被る不利益の程度を考慮しても、認められるだけの合理性の有無があるかどうか』です。具体的には、以下の要素で総合的に判断されます。

●就業規則を変更する際、最低限押さえておくべきポイント

これまでにも、会社と従業員の合意のない就業規則の不利益的変更は数多くの裁判で争われてきました。それらの判例でのポイントは、「従業員にとって不利益な変更は、合理的な変更と認められる場合に限って、効力を有する」ということになります。この点の「従業員の不利益性」と「会社にとっての合理性」の判断について、以下のように整理することができます。

■図:就業規則の不利益変更の判断

■図:就業規則の不利益変更の判断

しかしながら、どのような案件が合理的であるかの判断は難しく、具体的な核となる基準は未だに確立されていないのが現状です。その意味からも、従業員の過半数で組織する労働組合、または従業員の過半数を代表する者に対して、会社側としては十分な説明を行い、会社の置かれた状況を理解してもらった上で、労働条件の変更を納得してもらうようにしましょう。その上で、従業員から同意書をもらうようにしていくことが大切です。


●就業規則変更についてトラブルを回避するためのチェックリスト

労務コンプライアンスの観点から就業規則を変更する際、トラブルを回避するための主なポイントとなる事項を挙げてみました。自社において、以下の事項が欠落していないかどうかをチェックしてみてください。

□労働条件の変更の必要性はあるか。内容の相当性はあるか
□事業場全体の過半数の代表者の意見を聞き、十分な説明を行ったか
□変更点に、労働基準法等に違反する内容はないか
□従業員に対して、労働条件の変更を周知しているか(いつでも見ることができる状態にしているか)

また詳細については、以下のURLも参照してみてください。

厚生労働省「就業規則作成・見直しのポイント」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/15.pdf



「降格・減給」における労務コンプライアンス

●降格・減給とは

降格とは、役職や職位、職責、資格などを下げることです。これらの措置により、所定の賃金を下げることを減給と言います。


●降格・減給する際、最低限押さえておくべきポイント

職能資格制度や役割等級制度の下で、職能資格や役割等級を引き下げ、それに伴って賃金を引き下げる措置は契約内容の変更ですから、就業規則の規定(降格・減給の規定)で定めておかなければなりません。就業規則の根拠なしに、一方的に行われる降格・減給は認められません。
就業規則における賃金規定について、昇格・昇給と合わせて降格・減給についても、その客観的・合理的な理由と記述が求められます。どのような評価になれば、どのように降格・減給(昇格・昇給)となるかを就業規則(または別途賃金規定)へと明確に示しておくことで有効と判断され、トラブルを防ぐことができます。

【就業規則:降格・減給に関する賃金規定例】

定期賃金の改定
第〇条
会社が毎年行う人事評価において、評価(上位SからA、B、C、Dの5段階)Dを3年連続して受け、今後、改善の見込みがないと判断した者については、降格を行う。
降格に伴い、賃金の5%、または職能資格等級別の賃金テーブルを超過した額のいずれか高い金額を減額する。

基本給・諸手当の改定・廃止
第〇条
経営状況の悪化等を勘案し、基本給・諸手当の金額の一斉、または各人別に基本給を減額・諸手当を廃止することがある。
経常利益が2期連続してマイナスとなった時には、基本給・諸手当の金額を一斉、または各人別に基本給を減額・諸手当を廃止することがある。

就業規則に降格・減給の規定がない場合には、就業規則を変更し、その規定を盛り込まなくてはなりません。
また、新たに降格・減給のルールを導入するに当たっては、事前に過半数で組織する労働組合あるいは従業員代表と協議を行い、意見を聞くことが義務付けられています。

「人事評価」としての降格・減給ではなく、「制裁」としての降格・減給については、その種類及び程度に関する事項を「就業規則」に記載しなければなりません(労働基準法第89条第9号)。
この制裁に伴う減給については、減額の制限があります。例えば、従業員が無断欠勤や遅刻を繰り返したりして職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりする等の規律違反をしたことを理由に制裁が与えられることがあります。その際、賃金の一部を減額する時に1回の減給金額は、平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。また、複数回規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません(労働基準法第91条)。
月給30万円、平均賃金1万円の従業員の場合、1回の処分で5000円が上限(1万円×2分の1)、1か月の減額合計は3万円が上限(30万円×10分の1)となります。


●降格・減給についてトラブルを回避するためのチェックリスト

労務コンプライアンスの観点から降格・減給する際、トラブルを回避するための主なポイントとなる事項を挙げてみました。自社において、以下の事項が欠落していないかどうかをチェックしてみてください。

□降格・減給について、就業規則上に明記されているか
□降格・減給する際の、明確な根拠が示されているか
□制裁としての減給について、労働基準法で示された金額を上回っていないか

また詳細については、前述した厚生労働省のURLも参照してみてください。

「就業規則」は職場のルールを定めた大切なものですが、関連する法律が改正により変更となったり、従業員の就業実態が変わった時などには、これらに合わせて見直しを図り、新たな規定を追加するなど、メンテナンスを行う必要があります。その際、労務コンプライアンスの点からも、一方的な従業員の不利にならないよう事前に話し合いの機会を持ち、説明を行い、意見を十分に聞いた上で変更していくことが求められます。

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