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(情報掲載日:2012年6月20日)

人材マネジメントライブラリ

企業に求められる「労務コンプライアンス」(1)

〜概略と「雇用契約」&「解雇」編

VOL.6

労務管理をおろそかにした結果、「残業代訴訟」「メンタルヘルス問題」を発生させるなど、労務問題に起因して経営に影響が出るケースが目立ってきています。このような点から「労務コンプライアンス」体制の整備は、企業の重要な課題となってきています。そこで、労務コンプライアンスの持つ意味と、労務の中から「雇用契約」「解雇」についてご紹介します。



労務コンプライアンスとは何か?

●労務コンプライアンスを構成するもの

経営にコンプライアンスが求められることと同様に、労務においてもコンプライアンスが求められる時代となってきました。労務コンプライアンスは、「労働基準法」や「労働安全衛生法」「男女雇用機会均等法」「育児介護休業法」をはじめとする各種労働法に対して、企業が順法精神の下、適正に法律が守られているかどうかということを見るものです。


●労務コンプライアンスが求められる背景

労務コンプライアンスを軽視している企業では、労働者のモチベーションが低下し業務効率が下がるだけではなく、労働者の身体的・精神的健康が害されてしまい、勤務できない状態にまで追い込んでしまうことすらあります。またそれによって、企業の存続が危ぶまれる事態にもなり得ます。
労務コンプライアンスを正しく実践していくことは、企業経営にとって大切な義務です。そのためにも労働法を知り、労務コンプライアンスに則った経営・マネジメントが行われているかをチェックしていく必要があります。



「雇用契約」における労務コンプライアンス

●雇用契約とは

雇用契約とは、労働者が労務に服し、(指揮・命令に従って仕事をする)使用者がそれについて報酬を支払うことを約束することによって成立する契約のことです。民法では「雇用契約」といい、労働基準法では「労働契約」と言われています(本コーナーでは一般的に使われることの多い「雇用契約」という表現を使用します)。
雇用契約には労働基準法が適用され、労働者は労働時間や賃金などの労働条件について、法律や労働協約(労働組合と使用者の間で結ばれた約束)、就業規則などの定める基準での保障を受けることができます。


●労務対策上、最低限押さえておくべきポイント

(1)労働条件の明示

雇用契約を締結する時、会社は労働者に対して賃金や就業時間などの労働条件を明示しなければなりません。明示すべき労働条件は以下の事項です。

【雇用契約の記載事項】

組織として残業削減を図っていくには、以下の手順のように業務改善・効率化の取り組みをフレーム化し、継続して行っていくことが大切です。

【雇用契約の記載事項】

必ず明示しなければならない①〜⑤の事項と、定めを置く場合に明示する事項(⑥〜⑬)があります(労働基準法第15条、労基則第5条)。前者に関しては、④の「昇給」を除き書面で交付することが求められています。労働条件の明示方法には、雇入通知書での通知、就業規則などがあります。
文書で明示していないことが判明すると、労働基準監督署から文書明示義務違反として是正勧告を受けることになります。
また、雇用契約のトラブルは、会社側が採用時に明確な労働条件の明示を行わないことに起因する場合が多いようです。「言った、言わない」の水掛け論となり、労働者との無用なトラブルが発生することが少なくありません。その意味からも、労働条件を文書で明示することは労務トラブルを未然に防ぐために必要です。


(2)雇用契約の期間

雇用期間については、期間を定めることも定めないことも可能です。期間を定める場合は、原則として「3年」(一定の者との間の契約については5年)を超える期間については締結してはなりません(労働基準法第14条)。また、契約更新の有無と、更新がある場合には、その判断基準を明示しなくてはなりません(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号)。

●雇用契約についてトラブルを回避するためのチェックリスト

労務コンプライアンスの観点から、雇用契約についてトラブルを回避するための主なポイントとなる事項を挙げてみました。自社において、以下の事項が欠落していないかどうかをチェックしてみてください。

□雇用契約を締結する際、労働条件について「通知書」を交付している。または、「契約書」を締結している
□書面で明示しなければならない事項について、すべて記載している
□満60歳以上の社員に対して、5年を超える雇用契約を結んでいない
□専門知識等を有する社員に対して、5年を超える雇用契約を結んでいない
□満60歳および専門知識等を有する社員以外に対して、3年を超える雇用契約を行っていない
□極端に短い契約期間で雇用契約を結び、反復更新を行っていない
□有期雇用契約において、契約更新の有無、契約更新の際の判断基準を明示している
□雇用契約を更新しない場合、理由を求められた際の「証明書」を交付している

また詳細については、以下の厚生労働省のURLも参照してみてください。

厚生労働省 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/dl/h1209-1f.pdf



「解雇」における労務コンプライアンス

●解雇とは

解雇とは、労働者の意思に関わりなく、使用者側からの一方的な意思表示により「雇用契約」を終了させることです。解雇には、いくつかの種類があります。

(1)懲戒解雇

懲戒解雇とは、企業経営を行っていく上で必要な秩序・風紀等を労働者が乱したりした場合に、使用者がペナルティーとして課すものです。懲戒解雇の場合は、退職金を支払う必要がなくなったり、解雇予告手当を支払わずに即時に解雇することが可能となるなど、大変重い処分となります。そのため、裁判上でも懲戒解雇の有効性が争われることが度々あります。

(2)整理解雇

整理解雇とは、会社が業績不振となった時などに、リストラ(事業の再構築)の目的で行われる解雇です。解雇の原因が使用者側のみにあって、労働者側には何ら原因がない、まとまった人数の労働者が一斉に解雇される、などの特徴があります。また、整理解雇が有効と認められるには、以下の4つの要件を満たすことが必要です。

①整理解雇をする経営上の必要性があること
②会社として解雇を回避するための努力を十分に尽くしていること
③解雇対象者の選定が客観的、合理的であること
④従業員や労働組合に対して、解雇の必要性や実施方法について納得、協力が得られるように十分に説明し、協議を尽くしたこと

(3)普通解雇

普通解雇とは、労働者の能力不足などを理由として行われる解雇です。心身の障害や虚弱、あるいは勤務成績や作業能力などが著しく不足しており、このまま仕事を続けても上達する見込みのない場合などに行われる解雇です。(1)〜(2)の解雇以外の場合を広く含みます。


●労務対策上、最低限押さえておくべきポイント

(1)解雇する場合の対処方法

使用者が労働者を解雇する場合には、少なくとも解雇の日の30日前に労働者に対して解雇の予告をしなければなりません。解雇予告期間は30日ですが、使用者が労働者に対して解雇予告手当(平均賃金)を支払えば、支払った日数分だけ予告期間が短縮されます。なお、解雇予告手当は解雇の日、ないしはそれ以前に支払わなければなりません。

解雇の予告や解雇そのものは、必ずしも書面で行う必要はありません。しかし、解雇は使用者から行う一方的な契約の破棄ですから、後日の紛争等を防ぐため、さらには意思表示が労働者に伝わったことを確認するためにも、書面で行うことが望ましいでしょう。口頭で行う時は、立会人をつけることによって、書面で通知することに近い効果を得ることができます。

解雇については、使用者側による解雇権利の濫用とならないために、どんな場合に解雇となるかについて、なるべく具体的な根拠を就業規則に示しておくことが望ましいでしょう。「整理解雇」については解雇のための4要件が示されていますが、「懲戒解雇」「普通解雇」については示されていないため、それぞれどの事由が解雇に該当するのか、就業規則等で明確に規定しておく必要があります。

(2)解雇についての制約

解雇については、労働者の保護という観点に立ち、法律や就業規則、裁判例などいくつかの方向から解雇の制限が設けられています。法律で禁止されている主な解雇の制限は、以下の通りです。

①不当労働行為となる解雇(労働組合法第7条)
労働者が組合員であること、労働組合を結成しようとしたこと、労働組合の正当な権利を行使したこと、労働委員会に申し立てを行ったことを理由とする解雇。
②国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)
労働者の国籍、信条(宗教・政治的)、生来の身分を理由とする解雇
③労働基準監督署等に申告・申出をしたことを理由とする解雇(労働基準法第104条)
④性別を理由とする解雇(男女雇用機会均等法第6条第4項)
⑤産前産後休業中およびその後30日間の女性の解雇(労働基準法第19条)
⑥妊娠、出産等に関する事由による解雇(男女雇用機会均等法第9条第3項)
⑦企画業務型裁量労働制の対象となることに同意しないことを理由とする解雇(労働基準法第38条の4第1項6号)
⑧公益通報を理由とする解雇(公益通報者保護法第3条)
⑨個別労働関係紛争に関し、あっせん等を申請したことを理由とする解雇(個別労働紛争の解決の促進に関する法律第4条第3項、第5条第2項、パートタイム労働法第21条第2項、第22条第2項)


●解雇についてトラブルを回避するためのチェックリスト

労務コンプライアンスの観点から、解雇についてトラブルを回避するための主なポイントとなる事項を挙げてみました。自社において、以下の事項が欠落していないかどうかをチェックしてみてください。

□就業規則に「解雇事由」が明確に規定されている
□やむを得ない事由がない場合に、有期労働契約者を契約期間中に解雇していない
□解雇する場合には、30日以上前に予告している
□解雇する場合、30日前に予告できない時は、解雇予告手当を支払っている
□業務上の負傷・疾病の療養のために休職する期間およびその後の30日間は解雇していない
□産前産後の女性社員が休業する期間およびその後30日間は解雇していない

また詳細については、以下の厚生労働省のURLも参照してみてください。

厚生労働省 「解雇や雇止めに関するルール」について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014uzs-att/2r9852000001dhat.pdf

労務コンプライアンスの中でも、「雇用契約」と「解雇」は働くための基本のルールとなる内容を示したものです。会社と雇用契約を結ぶ際の取り決め、解雇に関する事項というのは、労働者にとって極めて重要な部分が含まれたものなのです。現在、雇用不安が社会問題化している中にあって、これらの点に関係する労働法を知り、順守することが大切です。

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