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(情報掲載日:2021年6月7日)


人材育成が困難になりつつある現代、フィードバックは人材育成において重要な手法となりつつあります。マネジャーは部下の問題点を本人にフィードバックすることで、問題を腹落ちさせ、立て直すことができます。最近では部下の育成度合はフィードバックの質に左右されると言われています。どうすれば有効なフィードバックが行えるのか。効果的なフィードバックの技術について解説します。

●フィードバックは「感謝」「評価」「指導」によって成立する

フィードバックとは、元は制御工学の分野の用語で「ある機構で、結果を原因側に戻すことで原因側を調節すること」(大辞泉)という意味でしたが、そこから一般に広がり、「物事への反応や結果をみて、改良・調整を加えること」(大辞泉)として使われるようになりました。一般に企業で使われるときは、「目標達成に向けて、行動や成果に対する評価内容を本人に伝え、より良い結果へ導くための手法」といった意味合いで使われます。

企業でフィードバックを行う際に、相手との間にフィードバックを成立させるために必要となる要素が3つあります。それは「感謝(ねぎらい)」「評価」「指導」です。これらがないと相手は「自分のことを正しく見てもらえていない」「相手に期待されていない」と思うようになり、関係が悪化してしまいます。「感謝(ねぎらい)」を伝えて日々見ていることを伝え、「評価」では相手への期待を伝え、「指導」によって能力の向上を図ります。

フィードバックに必要とされる要素

(ダグラス・ストーン、シーラ・ヒーン『ハーバード あなたを成長させるフィードバックの授業』東洋経済新報社を参考に作成)

●フィードバックと1on1の違いは何か

最近は1on1を行う企業も多くなりましたが、中にはフィードバックと1on1の内容を混同している人もいるようです。フィードバックは上司から部下への一方的な評価と、今後に向けてのアクションを指導する(時には一緒に考える)マネジメント手法です。一方、1on1は部下の成長をサポートするために行う上司と部下の対話といえます。1on1は上司からの単なるフィードバックや業務報告の場ではありません。実践では、部下が何を考え、何を目指して行動したのかという背景等について、部下本人からいかに話を引き出せるかがポイントになります。そのため、1on1では部下から主体的に話せる環境をつくることがもっとも大切になります。フィードバックも1on1も必ずしも対面で行う必要はありません。報告だけであれば書面で済む場合もあります。フィードバックと1on1はその目的や行う環境によって、頻度ややり方を使い分けることが、より高い効果につながる手法といえるでしょう。

●最近のフィードバックにおけるよくある悩み

以前は長期雇用、年功序列、長時間の職場環境により若手は組織の中である意味、自動的に人が育つ環境がありました。しかし、そうした環境は崩れつつあり、人材育成は難しくなっています。そうした中で人材育成におけるフィードバックは、非常に効果的な手法です。しかし、フィードバックは「なかなかうまくいかない」という声が聞かれています。

よく聞かれる悩みとしては「忙しくて話す時間が確保できない」「相手を指導することに気まずさがある」「なかなか効果が見えにくい」「パワハラにならないか心配」といったものがあります。特に日本では、相手の問題点をはっきり指摘することに慣れていないために実践することの難しさがあります。正直、上司はフィードバックを行うことで、ときには嫌われることも覚悟しなければなりません。それでも部下の成長を促し、よりよい仕事や働き方を実現するため、職場におけるフィードバックは組織全体で取り組む事柄といえます。

●フィードバックの目的は「部下の成長を立て直すこと」

フィードバックに関する多くの著書がある立教大学教授の中原淳氏は、人材育成におけるフィードバックとは「耳の痛いことを含めて、部下の仕事の様子・状況をしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと」(著書『はじめてのリーダーのための 実践! フィードバック 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す「全技術」』より)と述べています。また、「フィードバックとはロケットのようなもの」であり、部下が正しい方向にまっすぐ飛べる(成果を上げる)ように、ときどき傾きを調整し支援する技術であると述べています。まさにフィードバックは情報の通知と立て直しにより、より成果を上げる働き方へと導く部下育成の手法といえます。

●部下へのフィードバックを実践するステップ

では部下へのフィードバックは、具体的にどのように行うとよいのでしょうか。中原氏は「事前準備→実践5つのステップ→事後フォロー」を推奨しています。十分な情報をもとに部下への信頼感を意識しながらフィードバックを行い、部下に問題を腹落ちさせてから、立て直しのサポートを行います。こうしたフィードバックは何か問題が起きたら、すぐに行うことが重要です。また、昇進や異動など役割が変わって間もない時期も、フィードバックが効きやすいため、実践するチャンスといえます。

部下へのフィードバックを実践するステップ

(中原淳『はじめてのリーダーのための 実践! フィードバック 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す「全技術」』PHP研究所を参考に作成)

●組織サーベイで組織を見える化し、ミーティングで問題の解決策を探る

ここからは、組織を活性化させるためのサーベイ・フィードバックについて説明します。最近、企業では従業員満足度調査、360度調査、エンゲージメントサーベイなど、多くのサーベイ調査が行われています。組織サーベイは組織の全体像や実態の把握のために、従業員に質問表に答えてもらう調査のことです。組織サーベイはデータを取るだけでは職場を変えることはできません。まずは、目的・趣旨を明確に伝え、協力してもらう従業員に賛同する気持ちを持って回答をしてもらうことが大切です。また、特に組織サーベイは適切で具体的なフィードバックを行わないと、従業員は「サーベイに答えても何も変わらない」と思うようになり、本気で回答しないようになります。データをもとに何が問題なのかを明らかにし、その解決が必要であると皆で認識し、解決策となるアクションプランを考えて実行することで、ようやく職場を変えることができます。

●データを基に全員参加で、フィードバックのミーティングを開く

サーベイ・フィードバックは「組織の見える化」→「対話」→「アクションプランづくり」という流れになり、ミーティングでは組織サーベイを通してチームや組織の課題を可視化し、組織の問題に全員で向き合って解決策を話し合い、今後のアクションプランをつくっていきます。データについては「どこに注目するか」「それをどのように解釈するか」を話し合い、明らかになった問題点について、皆で意見を出し合って解決策を探ります。サーベイデータは皆が質問に答えて生まれたデータですから、解決策も全員参加で考えていきます。

サーベイ・フィードバックのミーティングの進め方

(中原淳『「データと対話」で職場を変える技術 サーベイ・フィードバック入門 これからの組織開発の教科書』PHP研究所を参考に作成)

●さまざまな方向性でのサーベイの活用

こうしたサーベイによるフィードバックは「上司から部下」へのフィードバック以外に、「部下から上司」「従業員から企業」「従業員同士」といった活用事例があります。サーベイは見えないものを見える化でき、回答者に対しては対象について考える機会を与えることに意義があります。組織の活性化にサーベイをうまく活用してみましょう。

特徴的なフィードバックの活用事例

言いにくいことも含め、人に伝えられる技術を職場が持つことで、人が育つ職場へと変わることができます。フィードバックでは互いの信頼関係をベースに、相手の気持ちや立場に寄り添いながら言葉を投げかけつつも、一方的にならないように注意しましょう。そうした言葉のやり取りは互いの支えとなり、個人の成長を促していきます。そのうえで、フィードバックから生まれた新たな信頼を、組織の成長へとつなげていきましょう。

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