旧メールマガジン⁄テンプの知恵袋

ビジネス英語 性別を限定しない表現

性差別を含む表現の言い換えポイント

■女性の社会的役割や立場を固定していた言葉の言い換え

まずは、日本でもよく知られている言い換え例から見てみましょう。

  従来の表現 言い換え例
女性敬称 Mrs. / Miss. Ms.
客室乗務員 stewardess steward
flight attendant
家族の中で家事の切り盛りを
メインに行う人
housewife homemaker
■manがつく単語の言い換え

次に、たとえば日本では「営業マン」「商社マン」などのように単語にmanをつけて職業を表していた単語の言い換え例を見てみましょう。

  従来の表現 言い換え例
人力、人手 manpower human-powered
muscle-powered
一人一時間の仕事量 man-hours workhours
人工の man-made artificial
マンホール manhole utility cover
スポークスマン spokesman spokesperson
representative
speaker
議長、会長職 chairman chair

<参考> 役割を具体化し、manを排除した単語
これまでchairmanで統一していた役割を具体的に細分化することで、manという単語をつける必要性をなくし、性的中立語にした単語です

主催者、議長 chairman convener
社長、学長 president
議長、座長 presider
党首、隊長 leader
まとめ役、責任者 coordinator
監督、重役 director
  従来の表現 言い換え例
国民、民族 国名+men the+国名
※参考 汎用的な国民や民族を表す場合には、citizensやpeopleを使います
例)英国民 English men the English
議員など公僕 所属組織+men members
legislators
senators
leaders
例)下院議員 congressmen representatives
工事、仕事に従事する人 店舗の種類/仕事の名前+men 店舗の種類/仕事の名前+ people
店舗の種類/仕事の名前+ers
例)ワーキングマン workingmen working people
workers
laborers
例)修理人 repairmen repairers
例)配達人 deliverymen deliverers
■代名詞を使わずに表現する方法

英語の代名詞で性別があるのは三人称単数(he、she)です。あきらかに目の前の男性をhe、女性はsheをつかって表現するのはまったく問題ありません。ここで取り上げるのは、誰か知らない人について書くときに、男性か女性かを正確に決められない場合の表現方法です。his、herなどの代名詞を複数形theirに置き換えたり、定冠詞theを使ったり、受動態を使うなどして性的に中立な表現に置き換えることができます。その方法をいくつか見てみましょう。

1. 複数形代名詞をうまく使うために名詞を複数形にする

男性、女性どちらも含む先行名詞の後に代名詞を使う必要があるときは、複数形を使うことで性的に中立な表現に変えることができます。

従来の表現 言い換え例
The typical American knows his history. Typical Americans know their history.
典型的なアメリカ人はアメリカの歴史を知っている
Every nurse should have her salary raised. Nurses should have their salary raised.
看護師の給料をあげてやるべきだ

2. 代名詞を取り除く

慣例的に使用されている不必要な代名詞を省くことで、性的に中立な言い回しにできます。

従来の表現 言い換え例
A voter should always use his common sense. A voter should always use common sense.
有権者は常に良識を働かせるべきである

また、主語を変えて、不必要な代名詞を回避する方法もあります。

A lawyer who wants to win his case will do his homework. Homework is important to the lawyer who wants to win a case.
裁判で勝訴したい弁護士にとって、入念な下調べは大切である

3. 代名詞に代えて定冠詞theを使う

2の不要な代名詞を取り除くことと似た手段として、定冠詞theを使います。たとえば「彼の仕事」を「その仕事」に変えることで、性別を限定しない汎用的な言い回しにできます。性を示す代名詞よりも、文の意味がはっきりする利点もあります。

従来の表現 言い換え例
A bookkeeper can get used to his detailed work. A bookkeeper can get used to the detailed work.
簿記係は、込み入った仕事に慣れるものだ

4. 名詞を繰り返す

名詞とそれを受ける代名詞が、装飾句や節によって引き離されている場合に名詞を繰り返します。

従来の表現 言い換え例
When the doctor arrived and saw the patient, he was worried. When the doctor arrived and saw the patient, the doctor was worried.
医者が到着し、患者を診察したとき、彼は心配した

従来の表現方法では、医者、または患者のどちらかの性別を男性と決めつけていると同時に、心配しているのが医者なのか患者なのか断定できません。そこで、言い換え例のような表現にすることで、誰が心配しているのかをはっきり伝えることができます。

5. 受動態を使う

目的語を主語にして、受動態で書き直すことで、性的に中立な表現に言い換えることができます。

従来の表現 言い換え例
The gardener uses his tools in his work. The gardener's work is accomplished with the use of tools.
庭師の仕事は道具を使って行われる

6. 排他的なheの代わりにoneを使う

heそのものを取り除き、oneを使うことで性的に中立な表現に言い換えられます。

従来の表現 言い換え例
The price of grapefruit determines his choice of breakfast menu. The price of grapefruit determines one's choice of breakfast menu.
グレープフルーツの値段によって朝食のメニューが決まる

7. 複数形代名詞を要求する単数名詞を使う

every、each、any、someのような不定代名詞の後にも、人称代名詞they(所有格their、目的格them)を使う場合と、he or sheを使った方が良い場合があります。
本来Eachは、単数の代名詞で受けるべきだったのですが、不明な性別の断定を避けるため、下記の言い換え例のようにtheyで受けることが認められるようになってきました。文法学者によって見解が分かれるようですが、ビジネスにおいては、書面・口頭ともにtheyで受けることが主流のようです。
ただし、Each+名詞と、theirが厳密には同じものを指していない場合には、「彼および彼女(his or her)」の複合形を使うことで文章の不明瞭さを解消できます。

従来の表現 言い換え例
Each participant is responsible only for his own materials. Each participant is responsible only for their own materials.
Each participant is responsible only for his or her own materials.
参加者は各自の資料にのみ責任がある

男性代名詞と女性代名詞(he or she、his or hers)の並置は回りくどく聞こえるので、どうしても置き換えられないときに限定して使いましょう。

A mechanic must conduct business according to his or her own standards.
職人は自分の規範に基づいて仕事をしなければならない

The attitudes of a business owner are reflected in his/her employees.
経営者の姿勢は従業員に現れるものだ

Whether or not a barber is successful depends upon the way (s)he treats the customer.
理容師が成功するかどうかは客の扱い方次第である

■ビジネスレターの挨拶文と、正しい書き方

手紙の受取人が誰であるかわからない場合、かつてDear Sir/Dear Madamと呼びかけるのが一般的でしたが、こうした表現方法は減少の一途をたどっています。
代わりに、照会のための一行が冒頭礼辞と同じように手紙の最初にくることが多くなっています。

  従来の表現 言い換え例
〜様、御中 Dear Sir/Dear Madam To the + 役職名
Re: 部署名
例)販売係長殿 To the Sales Manager
例)販売部御中 Re: Sales Department(*)

*「Re:」は古くからビジネス文書で使われていた「regarding」の略

また、特定の人にあてて手紙を出すときには、名前と肩書きだけを使用します。

メアリー・ドー様 Dear Mary Doe,
Dear Dr. Doe,
Dear Professor Doe,

<参考>
Professor(教授)は、たとえば省略してProf. と書いてはいけません。同じようにあつかうものの例として、Senator(上院議員)、Governor(州知事)、President(社長、学長、大統領)などがあります。Dr.は教育機関が与える学位なので省略してもかまいませんが、職業の肩書きは省略せずに明記します。

結婚している男女が、たとえばともに医師である場合など、それぞれの肩書きは平等に扱わなければなりません。「先生と奥様」のような家族関係は入れず、どちらも名前と肩書きで明示します。

  従来の表現 言い換え例
ドー先生とドー先生 Dr. and Mrs. Doe Dr. Doe and Dr. Doe
ドー先生方 Dr. and Mr. Doe the Drs. Doe

ここ10年で、男女の性差をステレオタイプに言及する言葉が急速に使われなくなっており、英語を母語とする人々の間でも性中立語の使用に自信が持てないケースが多いそうです。これから英文の記事や書類を目にするたびに、どんな言葉を使って性差別を回避しているかという観点を持ってみると、いろいろな発見があることでしょう。

【参考文献】
『性差別をしないための米語表現ハンドブック』
ヴァル デュモンド (著), 稲積 包昭 (翻訳), 野谷 啓二 (翻訳)
出版社: 松柏社

このページのトップへ