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派遣先に求められることとは?派遣先企業が知っておくべきことを解説
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派遣先が対応すべき要素は、業務内容や労働時間、休憩・休日の管理など、多岐にわたります。派遣先責任者や指揮命令者の選定、職場環境の整備も欠かせません。
本記事では、派遣先企業と派遣元(人材派遣会社)、派遣社員の関係や、派遣先企業が対応すべきこと、できないこと、知っておきたい法改正のポイントを紹介します。派遣先企業に必要な知識を網羅的にまとめているので、ぜひ参考にしてください。
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派遣先企業とは
派遣先企業とは、派遣社員が、派遣元から紹介を受けてはたらく企業を指します。派遣社員が雇用契約を結んでいるのは派遣元となるため、派遣社員の給与の支払いや社会保険の手続きなども派遣元が行います。
派遣先企業・派遣元・派遣社員の関係

派遣先企業は、日々の業務に関しては派遣社員に対して直接指揮命令を行うことができます。一方で、面接による選考や給与交渉、異動命令などの雇用に関する権限は持ちません。これらの雇用関連の対応は、すべて雇用主である派遣元が担います。
項目 | 派遣先企業 | 派遣元 |
---|---|---|
業務指示 | 〇(可) | ×(不可) |
雇用契約 | ×(なし) | 〇(あり) |
給与・社保の管理 | × | 〇 |
採用・異動の決定権 | × | 〇 |
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派遣先企業が対応すべきこと
派遣先企業が派遣社員を受け入れる際に対応すべきことを知っておきましょう。主に以下7つの項目があります。
業務内容に関する指示
派遣社員に具体的な業務内容を指示するのは派遣先企業です。派遣社員の就業開始前に、依頼する業務の確認、マニュアルの作成、自社内の業務フローの確認・周知などを行います。また、業務遂行ルールに変更が生じたときは、速やかに派遣社員にも周知するようにしましょう。
業務内容が明確でなければ、派遣社員はどの業務に取り組むべきか分かりません。また、派遣先企業としても派遣社員を受け入れたメリットを最大限発揮できない恐れがあります。業務内容を派遣社員に確実に伝え、効率的な業務遂行を目指しましょう。
労働時間に関する指示や管理
「労働時間、休憩、休日等の労働者の具体的就業に関連する事項については、派遣先が責任を負う。」という記載が労働基準法等の適用に関する特例等にもあるように、派遣社員の労働時間に関しては派遣先企業が管理します。ただし、労働条件である労働時間や休日などの就業条件の設定は、雇用主である派遣元が行います。
派遣社員を受け入れる際は事前に労働時間や休日、残業の有無などを確認した上で、日々適切な管理を行いましょう。勤怠管理はシステムの活用や導入などさまざまな方法がありますが、いずれも定期的に確認し、労働時間の超過や齟齬が発生しないよう努めることが大切です。
派遣社員の残業については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>派遣スタッフへの残業指示は可能?36協定を理解する
休憩や休日の指示や管理
上記同様に、派遣社員がきちんと休憩や休日を取得できているかも、派遣先企業が指示・管理する必要があります。特に、派遣社員に具体的な業務指示を出す社員が指揮命令者と別にいる場合は、派遣先企業内での情報交換が欠かせません。
指揮命令者が把握していない中で派遣社員の休日出勤があったり、休憩を十分に取れていなかったりする場合は、トラブルの元になります。派遣社員本人からの申し出はもちろん、社内で「派遣社員の休日出勤や休憩については事前に指揮命令者に相談する」とルールを決めましょう。
派遣社員の有給休暇については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>【企業向け】派遣スタッフの有給休暇の条件やルール、日数について
派遣先責任者の選定
派遣先責任者とは、派遣社員が円滑に就業するための管理を一元的に行う役割です。派遣契約や派遣法の遵守に関すること、派遣社員が安全にはたらける環境の整備、派遣元との連絡調整などの役割を果たします。
派遣先責任者は、派遣社員を受け入れる企業に選任する義務があります。労働者派遣法第41条に基づき選任される役割で、派遣先責任者を選任しなければ労働者派遣法に抵触し、30万円以下の罰金が課される場合があります。
派遣先責任者については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>派遣先責任者とは?選任方法やよくあるご質問について解説
指揮命令者の選定
指揮命令者とは、労働者派遣法により派遣先企業に義務付けられている役割の一つで、主に派遣社員への業務指示を行います。
労働者派遣契約を締結する際には、指揮命令者の氏名・所属部署・役職・連絡先などを記載します。さらに派遣元が派遣社員と交わす就業条件明示書にも、指揮命令42条者の氏名・所属部署・役職などが明記されます。
指揮命令者は派遣社員への業務指示・指導・監督を担うため、派遣社員と同じ組織単位から選出することが必須であり、派遣先企業の直接雇用の社員である必要があります。
指揮命令者については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>派遣法の指揮命令者とは?役割や選び方について分かりやすく解説
派遣先管理台帳の作成
派遣先管理台帳は派遣先企業が作成しなければならない書類です。労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)の第42条に定められている派遣先企業の義務であり、必ず作成する必要があります。ただし、派遣元が代行して作成していることもあるので、派遣元へ事前に確認しておきましょう。
派遣先管理台帳には、派遣社員一人ひとりの就業場所や業務内容、就業日などを記載します。派遣先管理台帳を作成することで、派遣社員の就業実態や契約内容が明確になります。誰が、どのような業務内容や条件で就業しているかを把握することは、派遣社員の適切な管理や業務指示のために必須です。
同時に、派遣先管理台帳は派遣元の雇用管理にも活用されます。そのため、派遣先管理台帳の内容の一部は、定期的に派遣元に通知しなければなりません。派遣元は、派遣先管理台帳に記載された就業日や就業時間、業務内容など法的記載事項に基づいて派遣社員の雇用を管理します。
派遣管理台帳に関して詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
>>派遣先管理台帳とは?記載内容や保管方法を分かりやすく解説
職場環境の整備
派遣社員を受け入れるための職場環境の整備も行いましょう。座席が決まっている職場であれば席を準備し、座席表の発行、内線番号の用意、派遣社員用の備品の準備や入退館用のID、使用するシステムのアカウント発行、各インフラの担当者が分かるものも用意しておくとよいでしょう。
派遣社員の受け入れに関して詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
>>派遣スタッフの受け入れとは?初日に必要な準備や留意点について
派遣先企業ができないこと
派遣先企業が派遣社員に対してできないことや、してはいけないことにはどのような事があるのでしょうか。
派遣社員の選考
労働者派遣法第26条6項にある「労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」という定めに基づき、派遣先企業は派遣社員の選考を行うことができません。
派遣社員が就業を開始する前に、職場見学と呼ばれる企業の事前訪問を実施することがあります。就業開始後のミスマッチを防ぐため、派遣社員の希望により、派遣先企業の担当者から直接業務内容を確認したり、職場の雰囲気を知ったりするための機会であり、派遣先企業の選考のためのものではありません。
契約の更新や終了の意思確認
派遣社員の契約期間は、雇用元である派遣元との「雇用契約」によって定められています。派遣先企業と派遣社員の間に雇用関係はないため、派遣元に代わって更新意思を確認することはできません。
また、派遣先企業から「雇用契約」にかかわる確認を行うと、雇用関係があると誤解される恐れがありますのでご注意ください。派遣社員の意思確認を行う際は必ず派遣元を通じて行います。派遣社員に直接「とても助かっているからぜひ更新してほしい」などと伝えるのは避けましょう。もしも継続を希望する場合は、派遣元に対して考えを伝えましょう。
派遣社員の契約終了時については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>派遣社員の契約終了時に派遣先がすべきことは?契約終了の伝え方や期日などをご紹介
給与額の決定や変更
前述のとおり派遣社員の雇用主は派遣先企業ではなく派遣元です。雇用関係にない派遣先企業には、派遣社員の給与額に関して決定・変更などの権限がありません。自社で雇用する社員の給与改定が行われたからといって、派遣社員の給与を変更することはできないため、混同しないよう注意しましょう。
もしも派遣社員の給与について変更や提案がある場合は、派遣元に相談することが必要です。派遣元が間に入り、交渉や提案を行います。
人材派遣の料金については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>【分かりやすく解説】人材派遣の料金や内訳、マージン率について
勤務地の異動命令
派遣社員は、労働者派遣法により仕事内容や就業先について労働者派遣契約で定め、契約内容に基づいて業務を行います。そのため、原則として部署異動や転勤はできません。契約内容とは異なる仕事に従事することのないよう、派遣社員を守る仕組みとなっています。
派遣先企業が知っておきたい法改正のポイント
派遣先企業として確認すべき派遣法の主要な改正ポイントをまとめました。
電子取引データの保存義務(改正電子帳簿保存法・2024年1月施行)
派遣契約書や就業条件明示書などの帳簿類を電子メール添付やクラウドサービスで授受した場合、改ざん防止措置(タイムスタンプの付与やバージョン管理)を講じた上で、電子保存することが義務付けられています。
この改正は、税務書類全般に適用される法改正であり、派遣関連の契約書類も対象です。紙で印刷して保管するだけでは、電子帳簿保存法の保存要件を満たしたことにはなりません。
派遣先均等・均衡方式の待遇情報提供義務(労働者派遣法・2020年4月施行)
労働者派遣法の改正により、派遣先均等・均衡方式(※)を採用する場合、派遣先企業は自社の正社員(比較対象労働者)の賃金・手当・福利厚生等の情報を、派遣元に対して書面または電子データで提供する義務があります。
これは法的な義務(派遣法第26条第7項)であり、提供を怠ると違反とみなされる可能性があります。あくまで派遣元が適切な待遇決定を行うための前提情報として、派遣先企業の協力が必須とされています。
※派遣先均等・均衡方式…派遣社員の待遇を、派遣先企業の通常の労働者(正社員など)と比べて不合理な格差がないように決定する方式のこと。
なお、派遣先均等・均衡方式と比較されるもう一つの方式である「労使協定方式」については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>労使協定方式とは?均等均衡方式との違いについてご紹介
派遣先企業に関するよくある質問
ここでは、派遣先企業の担当者から寄せられる、労務管理に関する代表的な質問をまとめました
Q1.派遣社員の勤怠は、派遣先企業と派遣元どちらが管理するのですか?
派遣社員の日々の勤怠管理(出退勤時刻、休憩、休日取得など)は、派遣先企業が行うのが原則です。ただし、所定労働時間や休日の設定、時間外労働の上限などの労働条件は、雇用主である派遣元が定めます。
そのため、派遣先企業は日々の勤怠状況を適切に記録・管理し、派遣元と連携して適法な労働時間管理を行うことが大切です。
Q2. 派遣社員が急に欠勤した場合、派遣先企業はどう対応すべきですか?
派遣社員が突然欠勤した場合、派遣先企業は速やかに派遣元へ状況を共有し、今後の対応について連携を取りましょう。派遣先企業が独自に判断して対応を進めてしまうと、労務管理上の問題や責任の所在が曖昧になる可能性があり、トラブルにつながるおそれがあります。
まずは欠勤の状況を正確に記録し、「欠勤の事実」と「業務への影響」を派遣元に伝えてください。その上で、業務調整や代替要員の派遣など、必要な対応について派遣元と協議します。
Q3.派遣社員が契約期間中に辞めたいと言ってきた場合、派遣先企業としてどう対応すればよいですか?
派遣社員の退職や契約途中の終了に関する交渉・判断は、雇用主である派遣元の責任範囲です。そのため、派遣先企業が直接本人とやり取りしたり、退職を承諾したりすることは避けてください。
派遣先企業としては、派遣社員から申し出があった旨を速やかに派遣元へ報告し、対応を一任するのが正しい対応です。派遣元は、本人の意思確認や契約内容の整理を行い、派遣先企業とも調整した上で正式な手続きを進めます。
Q4.派遣社員に賞与(ボーナス)を支給する必要はありますか?
派遣社員に対して、派遣先企業が賞与(ボーナス)を直接支給する義務はありません。派遣社員の給与や賞与などの待遇は、雇用主である派遣元が決定・支給します。
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派遣先企業に求められること
派遣先企業は派遣社員の雇用管理の責任の一部を担っていることを自覚し、派遣社員の雇用管理改善に努めることが必要です。
信頼をおける・安心できる派遣元を選定する
人材派遣サービスを活用する際に派遣元を選定する基準として、派遣料金だけでなく、派遣社員に対するキャリアアップ制度や評価制度の有無、トラブル発生時の対応、セクシュアルハラスメントに対するフォローアップ体制なども検討材料にしましょう。
大きなトラブルが発生すれば、派遣先企業の名前が公表されることもあります。コンプライアンスを遵守し、安心できる派遣元を選んでください。
派遣社員の発注・管理の一元化
大企業を中心に、人材派遣の依頼窓口や管理を本社の人事部や調達部に一元化している企業も多くあります。派遣法などを熟知している担当者に窓口を集約することで、コンプライアンスの遵守につながります。
また、管理を一元化することで、派遣社員の契約更新漏れのリスクも減少するため、人材派遣の発注・管理の一元化はメリットが大きいと考えられます。特に、複数の派遣元から派遣社員を受け入れている企業の場合、管理が煩雑となりトラブルにつながる可能性もあります。
担当者の負担軽減や確実な発注・管理を実施するためにも仕組みづくりから見直すのもおすすめです。企業全体で見直しを行いましょう。
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監修者
HRナレッジライン編集部
HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。
編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。
法務監修や社内確認体制のもと、正確な情報を分かりやすくお伝えすることを大切にしながら、多くの読者に支持される存在を目指し発信を続けてまいります。
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