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【2025年10月改正】雇用保険法のポイント|企業に求められる対応策とは

公開日:2025.07.11

法律

2025年10月1日に、雇用保険法の改正が施行されます。改正のポイントは、従業員のスキルアップを支援する「教育訓練休暇給付金」が創設される点です。これに伴い、企業は従業員が制度を活用できる環境を整えなくてはなりません。

本記事では、企業が雇用保険法改正に向けて理解すべきポイントや、推奨される対応策について解説します。

2025年10月雇用保険法改正の概要

2025年10月の雇用保険法改正の概要について解説します。

改正雇用保険法の施行日とポイント

雇用保険法改正は、2025年10月1日に施行されます。ポイントは、「教育訓練休暇給付金」の創設です。この「教育訓練休暇給付金」とは、雇用保険の被保険者が職業関連の教育訓練を受けるために無給の休暇を取得した際、その期間中の生活費を支援する仕組みで、従業員が経済的負担を軽減しながらスキル向上のための学びに専念できる環境整備を目指すものです。

教育訓練休暇給付金とは

「教育訓練休暇給付金」とは、雇用保険の被保険者が職業関連の教育訓練を受けるために無給の休暇を取得した際、その期間中の生活費を支援する仕組みで、離職時に支給される基本手当(失業手当)に相当する額が給付されます。

例えば、ある会社員がデータ分析の専門スキルを習得するために3ヶ月間の無給休暇を取得した場合、この期間中に給付金が支給される可能性があります。

教育訓練休暇給付金
対象者
  • 雇用保険の被保険者
支給要件
  • 雇用保険の被保険者期間が5年以上であること
  • 教育訓練のための休暇(無給)を取得すること
給付内容
  • 離職した場合に支給される基本手当の額と同じ
給付日数
  • 被保険者期間に応じて90日・120日・150日を上限とする

この制度は、スキルアップやキャリア形成を目的とした教育訓練に限定されていて、趣味や職業とは無関係な講座は対象外です。

また、給付日数は被保険者期間に応じて最大90日から150日までとなり、休暇開始前の雇用保険加入期間が5年以上あることなどの条件を満たす必要があります。

※参考:教育訓練休暇給付金について

法改正の目的

教育訓練休暇給付金の創設は、労働者が経済的負担を軽減しながらスキル向上のための学びに専念できる環境が整備されるよう目指すものです。

法改正の背景には、労働市場の変化や、人材育成の重要性が増していることが挙げられ、昨今の多様化するはたらき方や、労働者のスキルアップを支援するためのセーフティネット強化を目的としています。

※引用:教育訓練休暇給付金について

企業に求められる対応策

法改正に際して、企業は教育訓練休暇給付金制度を活用し、従業員がスキルアップできる環境を整えることが求められるでしょう。つまり、教育訓練休暇制度の導入や、その運用方法について検討する必要があります。

厚生労働省の令和5年度「能力開発基本調査」の結果によると、教育訓練休暇制度を導入している企業は8.0%(前回より0.6ポイント上昇)でした。前回の調査より微増しているものの、まだまだ割合として少ないことがうかがえ、労働者にとってはスキルアップの機会を得ることが難しい現状があると考えられます。2025年10月の雇用保険法改正で創設された教育訓練休暇給付金は、こうした課題を解消し、労働者が安心して教育訓練に専念できる仕組みを提供するものです。

自社で教育訓練休暇制度を設計する

まずは、自社で教育訓練休暇制度の内容を検討しましょう。有給・無給のいずれで実施するのかの区別や、休暇期間などの詳細な制度設計を行い、それを就業規則に明記して従業員へ周知することが必要です。また、その際には休暇中の給与保障や、教育訓練費用の補助などのインセンティブも検討します。

教育訓練休暇制度は、従業員の自発的な能力開発を促すことを目的としています。そのため、企業があらたに教育訓練休暇制度を導入する際には、従業員がどのようなスキルアップを求めているのか、そのためにはどのような支援が必要かを把握することが重要です。

企業が活用できる支援制度

企業が教育訓練休暇制度を運用していくために活用できる支援もあります。

例えば、人材開発支援助成金(教育訓練休暇付与コース)などの国の支援制度を活用することで、人材育成にかかるコストを軽減しつつ効果的な運用が可能になるでしょう。

人材開発支援助成金(教育訓練休暇付与コース)とは、企業が従業員の教育訓練を支援するため、有給の教育訓練休暇制度を導入した場合に、助成金を受け取れる制度です。この助成金は、労働者が自発的に職業能力の向上や資格取得を目的とした教育訓練を受ける際、勤務先の休暇制度を利用するのを促すことが目的です。

具体的には、企業が3年間で5日以上の有給教育訓練休暇制度を導入し、労働者がその制度を利用して教育訓練を受講した場合に助成されます。雇用保険の被保険者を対象とし、日単位で取得可能であることが条件です。また、この制度は就業規則または労働協約に明記し、労働基準監督署への届け出や従業員への周知も必要です。助成額は1事業主あたり30万円で、一定の条件を満たす場合には6万円の加算も受けられます。

ただし、助成は1回限りであり、既に類似の制度を導入済みの企業や、過去に同様の助成金を受給した企業は助成対象外となります。

企業が教育訓練休暇給付金制度を活用するメリットと留意点

企業が教育訓練休暇制度を導入することは、複数のメリットがあると考えられます。

例えば、従業員が主体的にスキルアップに取り組むことで専門知識や技能が向上し、それが企業全体の生産性向上やイノベーションにつながることが期待できます。また、従業員満足度が向上し、優秀な人材の確保や定着にも寄与するでしょう。

しかし、一方で留意点もあると言えます。制度を導入しても、従業員が利用しなければ意味がないため、利用促進策が必要です。また、休暇中の業務負担や費用負担、公平性確保なども慎重に検討しなければいけません。

従業員のスキルアップを積極的に後押ししましょう

本記事では、2025年10月1日に施行される、雇用保険法改正の概要について解説しました。ポイントは、「教育訓練休暇給付金」が創設される点です。企業は、この教育訓練休暇給付金制度を活用し、従業員がスキルアップできる環境を整えることが求められており、教育訓練休暇制度の導入や、その運用方法について検討することが推奨されます。

従業員一人ひとりがスキルアップに取り組むことで、組織の活性化や生産性向上なども期待できるでしょう。ぜひ、自社でも教育訓練休暇制度の創設について議論してみてください。

監修者

HRナレッジライン編集部

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