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【ナレッジコラム】
だから、僕たちは組織を変えていけるvol.006
働きがいは、手づくりできる ~仕事の意味とエンゲージメント~

公開日:2026.04.10

スペシャルコンテンツ

ビジネス・ブレークスルー大学 経営学部 教授
株式会社hint 代表取締役
株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役
斉藤 徹 氏

コラム最終回は「エンゲージメント」と「働きがい」についてお伝えします。
働きがいがある状態であることは、「チームを変える」「組織を変える」にあたり、とても大切なことだからです。
自分にとって、組織にとって、社会にとっての「仕事の意味」についても考えます。

▼バックナンバーはこちら
vol.001:はじめに&自走するチームを作りたい ~組織は「統制」から「自走」へ
vol.002:職場の人間関係(1) 言いにくいことを、どう伝えるか
vol.003:職場の人間関係(2) 問題を解決する対話って?
vol.004:職場の人間関係(3) 報告がなく、指示待ちの部下
vol.005:職場の人間関係(4) 数字に厳しく、詰めがちな上司

働きがいは、手づくりできる ~仕事の意味とエンゲージメント~

なんのために働くのか?

働く目的とは?

わたしたちは、なんのために働くのでしょうか。働く目的は何でしょうか。
下のグラフは内閣府の「国民生活に関する世論調査」の「働く目的は何か」の回答をグラフにしたものです。働く目的として「お金を得るため」が最も多く、近年ではその割合が上昇傾向にあります。次いで「生きがいを見つけるため」が続きますが、その割合は低下傾向にあります。

※参考:内閣府「国民生活に関する世論調査」

人にはさまざまな欲求があります。

安心したい。自由に生きたい。家族の笑顔がみたい。
もっといいところに住んで、美味しいものを食べたい。
もっときれいになりたい。ずっと健康でいたい。
もっと大きなことがしたい。みんなに尊敬されたい。

それは、なぜでしょう。

アリストテレスは、「幸福こそ、人間にとって究極の目的であり、最高善である」と説きました。人間にとって「幸せ」が最高善だとすると、もっと真剣に「自分自身の幸せとはなにか」に向き合い、そのうえで、主体的に考え、行動することが大切ではないでしょうか。

では、何が幸せに関係するかを考えてみましょう。国連の持続可能開発ソリューションネットワークが発行する世界最大規模の幸福度調査で、150カ国が参加した「世界幸福度レポート 2023年度版」では、トップ3はフィンランド、デンマーク、アイスランド。アメリカは15位、日本は47位、中国は64位でした。
このデータから幸福度は、収入や健康の相関関係は低く、親戚や友人との助け合いと人生の自由度との関係が高いことがわかりました。
富裕さ、職業、健康、容姿、結婚などの生活環境や状況の違いが幸福感にあまり影響しない現象は、いくら走ってもゴール(幸せ)は達成できないことから「快楽のランニングマシン」と言われています。

幸福感と「意味のある人生」

ポジティブ心理学の父と言われるマーティン・セリグマン博士は、幸福を構成する具体的な要素としてPERMA理論を提唱しました。PERMAはポジティブな感情(Positive Emotion)、エンゲージメント(Engagement)、良好な人間関係(Relationships)、意味(Meaning)、達成感(Achievement)の5つの頭文字を取ったもので、これらを高めることがウェルビーイング(幸福)の向上につながるとされています。

また、人間には幸福を感じる3つのタイプがあります。

  • 喜びの追求(Pleasure):ポジティブな感情(楽しい、嬉しい、満足感など)に焦点を当て、経験や感情を最大化しようとする

  • 夢中の追求(Engagement):自分の長所を活かし、何かに没頭している状態(フロー体験)を追求する

  • 意味の追求(Meaning):自身の才能や長所を、より大きな目的や他者のために活用することで、人生の意味や目的を見出そうとする

この3要素は、ウェルビーイングの5要素(PERMA理論)と関連しており、これらを意識的に生活に取り入れることで、幸福感を高めることができます。
これらは単独で存在するのではなく、互いに深く関わり合い、人の幸福度やウェルビーイングを総合的に高めるものです。例えば、ポジティブな感情は、長所を活かす没頭につながり、さらに他者への貢献へと発展することで、人生の意味を見出すことができます。

ここで言う「意味のある人生」とは「自分より大きな何か」に捧げるために主体的に「自分の最も高い強み」を使うことではないでしょうか。物質的な妥協点を見つけることではなく、「他者の幸せ」が「自分の幸せ」につながるという感覚とも言えるでしょう。

出典:TED Talk マーティン・セリグマン博士「人生の幸福を最大化する、3つの生き方

どんな生き方が、人を幸せに導くのか

組織心理学者であるアダム・グラントは、「やる気・能力・チャンス」に続く、第4の成功要因として「人との相互作用」に着目し、人間の思考と行動を3つのタイプに分けています。

ギバー(与える人) 他人を中心に考え、相手が求めることに注意を払い、受け取る以上に与える人
頭の中はギブのみ。はじめに与える。目的はなく、結果として受け取る人
マッチャー(バランスをとる人) 与えることと受け取ることのバランスをとる人
常に公平という観点で行動し、相手の出方によって、助けたりしっぺ返しをしたりしてバランスをとる人
テイカー(受けとる人) 自分を中心に考え、何を得られるかに注意を払い、与える以上に受け取る人

※出典:アダム・グラント著「ギブ・アンド・テイク」

グラントは多様な人たちを対象に、成功するのはどのタイプが多いのかを調査しました。その結果、もっとも失敗するのはギバーであり、テイカーとマッチャーは成功と失敗の間に位置していることがわかりました。
最も成功するのは「主体性を持つギバー」であり、最も成功から縁遠いのは「自己犠牲のギバー」でした。
そして、人を幸せに導くのは「自分を犠牲にして奉公するギバー」ではなく、「限られた時間の使い方を自己選択し、他者に笑顔を届けるギバー」が豊かな人生を送る確率が高いことが、大規模な研究で立証された、としています。「主体性を持つギバー」は幸福度が高い、と言えるのです。

※出典:アダム・グラント著「ギブ・アンド・テイク」

自分が楽しめること、自分が意義を感じることをする。主体的なギバーは他者からの利益を求めているのではなく「自らが考えた意義」に喜びを感じて仕事をしている。その意義を通じて、自己と他者が一体となり、価値が生まれ、自己成長していく。その繰り返しで、結果的に繁栄したり、高い幸福度を持つことにつながるのだろう。

働きがいをつくるものはなに? ~仕事の意味を考える

働きがいとは?

そもそも、働きがいとは何でしょうか。働きがいのある会社づくりの世界的な専門機関Great Place To Workによると“働きがいとは、快適に働き続けるために就労条件や報酬条件などの「働きやすさ」と、仕事に対するやる気やモチベーションなどの「やりがい」を併せたもの”と定義しています。「働きやすさ」は、快適に働き続けるための就労条件や報酬条件など「見えやすい要因」です。一方「やりがい」は仕事に対するやる気やモチベーションなど「見えにくい要因」と言えます。

※参考:Great Place To Workの考える「働きがい」

これをマズローの「欲求段階説」とハーズバーグの「二要因理論」の考え方に照らし合わせると、以下の図のようになります。

※筆者作成

人の欲求は環境によって変わります。生理的欲求や安全欲求が満たされない人にとって、お金は命の次に大切なものとなりますが、それが満たされた人にとって、お金や出世は人生に満足をもたらすものではないのです。

Vol.001でもふれましたが、「工業社会の組織モデル」(計画し、警戒し、統制する組織)から、「知識社会の組織モデル」(学習し、共感し、自走する組織)に、そして、あるべき組織モデルも「統制」から「自走」に変わりました。情報化社会が指数関数的に変化するようになり、VUCAな環境になっています。

テクノロジーの進歩、社会の変化が組織に突きつけた課題、最適化し続けるには、どのような環境、組織であれば対応できるでしょうか。正解のない環境変化の中で自走する組織をつくるには、社員の内発的動機を生み出す環境にしなければなりません。また、内発的動機を生み出す環境をつくるには「社員の幸せ」を成長エンジンとする組織をつくっていかなければなりません。

※筆者作成

やりがいはどこから生まれる?

「働きがい」の「見えにくい要因」である「やりがい」とはどこから生まれてくるのでしょうか。もし、あなたが「船をつくるミッション」を与えられたリーダーだったら、何をメンバーに伝えるでしょうか。作業や任務を考え、それを割り振ることでしょうか。それとも目の前でキラキラと輝く海の雄大さを熱く語るでしょうか。
リーダーシップや組織論を探求する著述家であるサイモン・シネックは歴史に名を連ねるリーダーの言動を調査し、ひとつのパターンを見いだしました。それは、行動を促す前に、情熱をこめて、その行動の意味を説いていたということです。彼らの言葉は、すべて「WHY」から始まっていたのです。
それは「しなくちゃ」が「しよう」「したい」に変わるからです。これは人が自律的に動くための核心であり「自走する組織」の原動力となるものです。

内発的動機づけの研究で名高いエドワード・デシは「自己決定理論」の中で、動機づけの6段階を提示していますが、仕事の意味をどう伝えるか、どう受け取られるかによって、本人の積極性は大いに変わってきます。例えば賞罰で行動を統制すれば「しかたない」となりますが、本人がしっかりと腹落ちすれば「しよう」という感覚になるのです。

このように、組織や社会が持つ規範を、自分自身の規範として受け入れることを「内在化」「内面化」といいます。理念も言葉そのものを取り入れるのでなく、丁寧なコミュニケーションを通じて、メンバーが「しよう」「したい」と思える環境をつくることが大切です。

※参考:エドワード・デシ「人を伸ばす力」

仕事は「意味がある」からがんばれる

仕事において、最も大切な「意味」とは何でしょうか。それは2つに絞られるでしょう。ひとつは、その仕事は「社会においてどういう意味を持つか」、もうひとつは「自分にとってどういう意味を持つか」ということです。前者はチームの存在意義であり、後者は個人の働く意義です。

この2つの意味は密接に関係しています。組織が数字を目指せば、社員は物質的なゴールのために働くようになり、組織が社会的使命を追求すれば、社員もおのずと精神的なゴールを目指すようになります。両者は仕事の動機づけを通じて、深く結びついているのです。

意味を一方的に「押し付ける」と弊害が生まれます。頭と心で腹落ちすると「やらされ感」が消えます。
組織や社会の規範やルールも、本人が自ら「意味づけ」して「内在化」すると、気持ちが「しよう」に変わっていきます。リーダーとは「情報」と「仕事」を配る人ではありません。「意味」と「希望」を伝え、共有できる人なのです。

仕事の意味を忘れた組織はどうなるでしょうか。競合との戦いに勝つために、日々のレースに参戦することになってしまいます。組織が持つ巨大な力が、社員や顧客の幸せのためではなく、必然性のない数字を追うことだけに費やされてしまいます。

その仕事は「義務」か、それとも「天職」か

経営学者のエイミー・レズネスキーは仕事観を以下の3つに分けて説いています。

  • ジョブ … 義務としての仕事。経済的報酬のために働く
  • キャリア … 出世の道具。成功願望を実現するために働く
  • コーリング … 使命感に基づく仕事。仕事自体を楽しむ

コーリングとは、日本語では「天職」のことで、神からの呼びかけられた、与えられた使命という意味です。レズネスキーは、人間が「自分の仕事をどう見ているか」によって、人生から得られる満足感は大きく異なるとしました。仕事そのものや、仕事の環境を変えようと変えまいと本人の仕事に対する意味づけが変わらなければ、深い満足は得られないということです。

また、どんな仕事でも、意味を追求することで「天職」になる可能性があることも、彼らの研究でわかっています。 例えば、病院の掃除係28人を対象とした研究では、毎日の仕事に意味を見出していた掃除係は効率よく仕事をこなし、医師や看護師が治療にもっと時間を割けるように願って掃除をしていた。さらには、患者のために、仕事以外のこと(患者を励ますようなこと)も行っていた。というような。

このように、仕事に対する意味づけ、思考の仕組みによって、自分にとっての仕事も、その結果も大きく変わってきます。

働きがいをチームで手づくりする

自分の潜在的な強みとは?

「意味のある人生」のために、大切なことは「自分の強み」を知ることです。自分より大きな何かに捧げる「自分の最も高い強み」はどう発見し、育てればよいでしょうか。

ポジティブ心理学のツールを利用して「潜在的な強み」を探ってみるなどのワークやサーベイを行ってみることもよいでしょう(検索してみると無償でチャレンジ可能なサーベイもあります)。
強みトップ5に対して「これは自分の特徴的強みだろうか?」と自問し、一番実感できて、成長意欲を感じられるような強みをひとつ選んでみましょう。そして、現実の仕事で「潜在的な強み」を生かした挑戦課題を考えます。

例えば、あなたが「営業チーム5人のリーダー」だとして、

  • 自分の強みが「創造性」
    営業プロセスを見直し、仲間も顧客もハッピーな仕組みを考えてみる。

  • 自分の強みが「向学心」
    今、チームに求められている新しい知見に関して勉強会を開いてみる。

  • 自分の強みが「親切心」
    顧客視点に立ち、かゆいところに手が届く顧客サービスに改善してみる。

  • 自分の強みが「勇気」
    誰も言えていない本質的な問題を発見し、その改善案を提案してみる。

このように挑戦課題を仕事ベースで考えれば「意味の追求」につながっていくでしょう。そして、強みを育てるための課題を、継続的に実行することです。いわば強み育成プラクティスです。

そして、人はさまざまなタイプ、さまざまな強みを持っています。個々のメンバーが、仕事で自己実現を追求するチームを目指すことが大切です。

チームの北極星~使命感を共有しよう~

夜空の中で、動くことない北極星。目指す北極星、パーパスがある組織は強いです。北極星を機能として分解すると「ミッション・ビジョン・バリュー」で構成されます。
組織の目指すところは「Why(ミッション)」「What(ビジョン)」「How(バリュー)」という問いに対するものであり、ひとつのまとまりとして「自分たちは何を信じるのか」の答えとなります。

ミッション
(社会における存在意義)
社会のどんな課題や需要に対して、持続的にどんな価値観を創造するか
ビジョン
(組織にとって望ましい未来像)
社員が夢を感じ共に歩みたいと心から願う未来像になっているか
バリュー
(組織で共有する価値観)
社員の創造性や協働を促進し、独自の価値創造につながる必要充分な内容か

*ここでは「社会における存在意義」をあらわす言葉として、単体で使う場合は、内発性を感じる「パーパス」を、ビジョンやバリューと連携して使う場合は「ミッション」としている。両者はほぼ同義であるが、「自己選択したもの」か「与えられたもの」かという言葉の響きが違う。近年は「自らの選択としてのパーパス」を使うケースが増えてきた。

北極星は全社組織に限るものではありません。部や課、プロジェクトなどのチームでも北極星を持つことはできます。異なる点は、チームは変化していくものなので期間が限定されることと、組織全体の理念と整合性をとる必要があることです。
それを前提にチームの「ミッション・ビジョン・バリュー」をみんなで考え現実の仕事に活かしていくことは、とても有意義で、メンバーの意欲も刺激するものとなるでしょう。

おわりに

今、あなたが「仕事に求めているもの」は何でしょうか。
あなたにとって「働きがい」とは、何でしょうか。

あなたの仕事は、どんなことで、誰を笑顔にする仕事でしょう?
チームみんなでそれを意識できたら、どうなるでしょうか。

あなたの「チームの課題」を、振り返ってみましょう。
明日からの「はじめの一歩」、どんなことができそうでしょうか?

個々のメンバーが、仕事で自己実現を追求するチームを目指しましょう。

“十分な数の人々が「内発的な動機から自分の幸せに全力をあげる」ようになったときこそ、組織の進化における決定的瞬間である”

*「学習する組織」著者ピーター・センゲ 学習する組織「自己マスタリー ~ なぜそれを目指すのか?」より

※出典:斎藤徹 著「だから、僕たちは組織を変えていける」

>>斉藤氏のインタビューはこちら

Profile

hint 斉藤 徹 氏

ビジネス・ブレークスルー大学 経営学部 教授
株式会社hint 代表取締役
株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役
斉藤 徹 氏

慶應義塾大学理工学部を卒業し、1985年、日本IBM株式会社入社。29歳で日本IBMを退職。1991年、株式会社フレックスファームを創業、ベンチャーの世界に飛び込む。激しいアップダウンの後、2005年、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業。詳細は著書『再起動 〜 リブート』をどうぞ。2016年、学習院大学経済学部特別客員教授に就任。2020年、ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授に就任。専門分野は組織論と起業論。2019年には「hintゼミ」を創設、卒業生は1,200名を超えている。最新著書『だから僕たちは、組織を変えていける』は10万部を超え「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」(マネジメント部門)を受賞した。他にも著書は多数。

\もっと詳しく知りたい方、学びたい方はこちら/
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