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【ナレッジコラム】
だから、僕たちは組織を変えていけるvol.004
職場の人間関係(3) 報告がなく、指示待ちの部下
公開日:2025.12.18
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ビジネス・ブレークスルー大学 経営学部 教授
株式会社hint 代表取締役
株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役
斉藤 徹 氏
HRエキスパートのナレッジをお伝えする『ナレッジコラム』。hintの創業者で、書籍『だから僕たちは、組織を変えていける』の著者、斉藤 徹 氏によるVUCAな時代の組織のお話を連載コラムにてお届けしていきたいと思います。
第4回は「職場の人間関係(3) 報告がなく、指示待ちの部下」です。
▼バックナンバーはこちら
vol.001:はじめに&自走するチームを作りたい ~組織は「統制」から「自走」へ
vol.002:職場の人間関係(1) 言いにくいことを、どう伝えるか
vol.003:職場の人間関係(2) 問題を解決する対話って?
職場の人間関係(3) 報告がなく、指示待ちの部下
対人問題を解決する技術を学ぼう
今回と次回は「自分が所有する問題」を前提にしたケースをそれぞれ1つずつ、ご紹介していきます。
職場の人間関係その(1)(2)でご紹介したメソッドを使って、職場でありがちな難しい適用課題を解決する技術を学んでいきしょう。
自分に主導権~報告がなく、指示待ちの部下のケース
「自分が所有する問題」を前提に、自分に主導権がある「指示待ちの部下」との問題を想定してみます。
| 会話内容 | |
|---|---|
| 私 | 「例の件、連絡はどうなってる」 |
| 部下 | 「いろいろあり、手間取っています」 |
| 私 | 「問題がある場合には、早めに報告や相談をしてもらえるとうれしいな」 |
| 部下 | 「申し訳ありません」 |
| 私 | 「期限は今週末なんだけど、仕上がると思っていいのかな」 |
| 部下 | 「すみません。たぶん難しそうです」 |
| 私 | 「それは厳しい状況だね。何か対策は考えているのかな」 |
| 部下 | 「いえ、考えていませんでした。まだほとんどできていません」 |
| 私 | 「仕事が遅れていることをクライアントは知っているの」 |
| 部下 | 「いえ、伝えていません。すみません」 |
| 私 | 「・・・」 |
指示待ちの部下に話す「わたしメッセージ」を自分ごととして考えてみましょう。職場の人間関係その(1)(2)でお伝えしたことをもとに、1on1ミーティングのときに、どんな「わたしメッセージ(基本型)」を話せば、建設的な場になるでしょうか。
※筆者作成
(3)(4)(5)が「わたしメッセージ」になりますね。基本型の「わたしメッセージ」を使って伝えていくには、どのように話したらよいでしょうか。
※問題発生時に根本を解決する思考法「ダブルループ学習」
ここで、問題発生時に根本を解決する思考法と言われている「ダブルループ学習」をご紹介します。「ダブルループ学習」とは、複雑な問題の根本には何があるのかを考え、真因を改善する思考法のことです。
一般的な「シングルループ学習」では、過去の成功体験をもとに問題解決を図ることであり、本質的なエラーを除外できない欠陥を持っています。 それに対して「ダブルループ学習」では、発生した問題に対して既存の目的や前提そのものを疑い、そこから軌道修正を行うアプローチをとります。
これを頭に入れて、以降の会話を追っていきましょう。
※筆者作成
【問題の解決】に向けた対話
先程の1on1から少し時間をあけて、落ち着いて再度話しかけてみます。期限は今週末、まだ何も手を打っていない緊急度の高い問題です。まずは進められない問題となっていることを解決しなければなりません。
| 会話内容 | |
|---|---|
| 私 | 「夕方なのに、時間をとってくれてありがとう」(冷静さを取り戻し、穏やかに話しかけてみる) |
| 部下 | 「いえ。ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありません」 |
| 私 | 「あれから、何か進んだことはあるかな」 |
| 部下 | 「いいえ。停滞したままです」 |
| 私 | 「タスクが遅れているのは、何か進めるのが難しいところがあるからだよね。障害になっているものはなんだろう」 |
| 部下 | 「顧客が悩んでいる“ 集客の課題”を解決するような、いいアイデアがなかなか思いつかなくて」 |
| 私 | 「そうか。ではこの問題を解決するのに、どんな工夫をしてみたのかな」 |
| 部下 | 「ここで止まってしまい、解決策が思いつきませんでした」 |
| 私 | 「なるほど。集客のアイデアは思いつかず、そこでタスクが止まってしまっていたということだね」 |
| 部下 | 「はい。すみません」 |
| 私 | 「チームの中で、集客に関して一番知見を持っているのは誰だろう」 |
| 部下 | 「それはAさんですかね」 |
| 私 | 「うん。たしかにね。この件はSEMの知見がキーになる。A君は多くの実績があるよね。彼には聞いてみたのかな」 |
| 部下 | 「いいえ。思いつきませんでした」 |
| 私 | 「わかった。この問題の優先度は高い。A君に遅延の状況を話して、ヘルプをお願いするのはどうだろう。僕からも話しておくよ」 |
| 部下 | 「ありがとうございます。Aさんにお話ししてみます」 |
| 私 | 「ここまでで、何か質問や聞いておきたいことはあるかな」 |
| 部下 | 「いえ。大丈夫です」 |
| 私 | 「わかった。では、僕からひとつ、お話したいことがあるんだ」 |
| 部下 | 「はい。なんでしょうか」 |
緊急度の高い問題の場合、自分自身も問題解決に関与しましょう。相手は自ら考えることに慣れていないので、問題を分解して例示してあげるとよいでしょう。大事なことは、「先回り」して指示せずに、問いかけて、自己決定するよう導くことです。すると、その後の行動に結びつきやすいでしょう。
【真因】の追求と解決に向けた対話(1)
前回の会話で解決に向けて動き出すことができました。しかし、このようになってしまった真因はどうしてなのでしょうか。どうして「指示待ち」で何も報告をしてくれない、何も言ってきてくれないという状態になってしまっているのか。「わたしメッセージ」「能動的な傾聴」、そして「ダブルループ学習」を使い真因を追求し、対話を進めていきましょう。
| 会話内容 | |
|---|---|
| 私 | 「僕は、このチームを何でも言えるチームにしたいんだ。いいことはもちろんだけど、ネガティブな意見や悪い報告も、気兼ねなく、むしろ真っ先に報告するカルチャーをつくりたいと思っているんだ。前の全体会議でも話したことだよね」 |
| 部下 | 「はい。うかがっていました」 |
| 私 | 「例えば、今回のように進捗が遅れていること、問題が発生していることも、速やかに共有しあって、助け合えるチームにしたいと思っているんだ。悪いときこそ学習の機会だからね。この考え方に違和感はあるかな」 ※わたしメッセージ※ |
| 部下 | 「いえ、ありません。そういうチームになれたらいいと思います」 |
| 私 | 「今回は、この遅れに対して、誰からもバッドニュースが上がらずに来てしまった。それを残念に感じているんだよね」 |
| 部下 | 「すみません・・・」 |
| 私 | 「今回の件で、悪い報告をあげにくかったといったことはあったのかな」 |
| 部下 | 「いいえ、いいアイデアが浮かばず、一人で抱えこんでしまったというか。誰かに相談するという発想になりませんでした」 |
| 私 | 「ただ、お客さまへの提案期限があったよね」 ※能動的な傾聴※ |
| 部下 | 「はい。それがあったので、焦って、少しパニックになっていました」 |
| 私 | 「なるほど。一人で抱え込んで焦っていたんだね。そこの認識を変えることから始めよう。そのためにチームがあるんだ」 |
| 部下 | 「Aさんも忙しそうで、迷惑をかけてはいけないと思って、相談しそびれていました」 |
| 私 | 「A君も忙しいだろう。でも、どのくらい忙しいかはわからないし、優先度はA君が考えるのがいいんじゃないかな」 |
| 部下 | 「確かにそうですね・・・。先回りして気遣いしすぎだった気がします」 |
| 私 | 「この案件は、A君も含めたチームが担当するんだからね。逆に彼の仕事で君がヘルプできることがないかを打診してもいいね」 |
| 部下 | 「私は人に仕事を頼むのが苦手なのですが、それがチームにマイナスになってしまっていたんですね。すぐAさんに相談してみます。ありがとうございます」 ※真因の探求と解決※ |
【真因】の追求と解決に向けた対話(2)
あれから、チームでの話し合いも持ちましたが、結果タスクの進捗の遅れから、プロジェクト全体の計画が後ろにずれることになってしまいました。前回の話し合いで解決できればよかったのですが、それでも同じ状況が繰り返されていたら・・・。今後繰り返さないようにするために、再度、問題の根本には何があるのかを考え、真因を改善しなければなりません。
| 会話内容 | |
|---|---|
| 私 | 「とても大切なことなので、リマインドするね。僕はこのチームを心理的に安全なチームにしたい。バッドニュースが真っ先にシェアされるようにしたいと思っている。今回、君のタスクの進捗の遅れがわかり、プロジェクト全体の計画が後ろにずれることになった。過去の学びが生かされていないようで、今後も再発しそうと不安に感じているんだ」 ※わたしメッセージ※ |
| 部下 | 「報告が遅くなってしまい、申し訳ありません」 |
| 私 | 「今回の件で悪い報告をあげにくかったことはあったのかな」 |
| 部下 | 「いえ。進捗遅れの自覚が足りず、状況判断ができずに報告できませんでした」 |
| 私 | 「進捗の遅れに気付かなかったということか」 ※能動的な傾聴※ |
| 部下 | 「はい。沼にはまってしまい、パニックになっていました」 |
| 私 | 「一人で抱え込んでしまったんだね。何度かこの状況で仕事が止まっているんだが、この問題を自分の力で解決できそうかな」 |
| 部下 | 「自覚が足りないんですね。指示されたことをすることに慣れていたので、自分で気づくという意識が薄いのかなと感じました」 |
| 私 | 「そうかも知れないね。ただ、この状況の改善は、このチームにとても大切なことなんだ。それは感じているかな」 |
| 部下 | 「はい。おっしゃる通りだと感じています」 |
| 私 | 「改善しよう。そのために率直に相談させてほしいんだ。もし、同様のことが今後もおきるようであれば、今のポジションの仕事を君に任せるのは難しい。その覚悟でもう一度チャレンジするか、それとも誰かをサポートする役割に変わるか、もしくは別の環境に移りたいか、3つの選択肢でどれが君にとってベストか考えてほしいんだ。答えはすぐでなくていい。どうだろう」 |
| 部下 | 「もう1度チャレンジするか、サポート役に回るか、別の環境に移るか、の三択ですね。わかりました。よく考えてみます」 |
| 私 | 「理解してくれてありがとう。僕にとってベストなのは、君自身の意思で、君がより主体性を持ち、チームでの相互信頼が再構築されることだ。ただ、それができるかどうかは、君が変わろうとする意思にかかっていると思う。危機こそ成長の機会だからね」 ※真因の探求と解決※ |
| 部下 | 「はい。よく考えて、今週末までに返答させていただきます。親身になって考えていただき、ありがとうございます」 |
まとめ
初回も三度目の話し合いも、同じく「タスクが遅延している」という現象であり、その原因の「進捗を改善する」ための対応が必要でした。その根本に何があるのか(=再発防止する仕組み)は、初回は心理的安全な場をつくることが改善、解決でした。しかし、三度目の話し合いの際には、「部下自身が主体的に仕事に向き合うこと」これをしないことには、改善、解決はしません。それを率直に「わたしメッセージ」と「能動的な傾聴」を使った対話を再度することで、部下も自覚をし、解決に向けて進むことができましたね。
※筆者作成
しかし、「指示待ちの部下」…自ら動かない、指示をしないと動かないと安易に「動かない人」というレッテルを貼らない、ということも大事です。指示待ちに見える人には、それぞれ個別の理由があり、人は自らを変えることができます。そう信じて、1on1のコミュニケーションにより、相互理解からはじめることです。自分のマネジメントを顧みることも必要です。「対話」にはさまざまな意味、見方、方法がありますね。
>>斉藤氏のインタビューはこちら
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だから僕たちは、組織を変えていける
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だから僕たちは、組織を変えていける
Profile
ビジネス・ブレークスルー大学 経営学部 教授
株式会社hint 代表取締役
株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役
斉藤 徹 氏
慶應義塾大学理工学部を卒業し、1985年、日本IBM株式会社入社。29歳で日本IBMを退職。1991年、株式会社フレックスファームを創業、ベンチャーの世界に飛び込む。激しいアップダウンの後、2005年、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業。詳細は著書『再起動 〜 リブート』をどうぞ。2016年、学習院大学経済学部特別客員教授に就任。2020年、ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授に就任。専門分野は組織論と起業論。2019年には「hintゼミ」を創設、卒業生は1,200名を超えている。最新著書『だから僕たちは、組織を変えていける』は10万部を超え「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」(マネジメント部門)を受賞した。他にも著書は多数。
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