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【ナレッジコラム】
だから、僕たちは組織を変えていけるvol.005
職場の人間関係(4) 数字に厳しく、詰めがちな上司

公開日:2026.02.27

スペシャルコンテンツ

ビジネス・ブレークスルー大学 経営学部 教授
株式会社hint 代表取締役
株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役
斉藤 徹 氏

HRエキスパートのナレッジをお伝えする『ナレッジコラム』。hintの創業者で、書籍『だから僕たちは、組織を変えていける』の著者、斉藤 徹 氏によるVUCAな時代の組織のお話を連載コラムにてお届けしていきたいと思います。
第5回は「職場の人間関係(4) 数字に厳しく、詰めがちな上司」です。

▼バックナンバーはこちら
vol.001:はじめに&自走するチームを作りたい ~組織は「統制」から「自走」へ
vol.002:職場の人間関係(1) 言いにくいことを、どう伝えるか
vol.003:職場の人間関係(2) 問題を解決する対話って?
vol.004:職場の人間関係(3) 報告がなく、指示待ちの部下

職場の人間関係(4) 数字に厳しく、詰めがちな上司

自分ごととして考えてみよう

「相手が所有する問題」を前提に、「詰めがちな上司」との問題を想定してみます。
「職場の人間関係」でお伝えしたことをもとに、詰めがちな上司に話す「わたしメッセージ」を、自分ごととして考えてみましょう。

相手に主導権~数字に厳しく、詰めがちな上司のケース

会話内容
上司 「今月の売上、予算は確実に達成してくれよ」
「ご相談したい件があります。大口クライアントから、納期を三ヶ月後ろに延ばしてほしいと」
上司 「三ヶ月延ばして、予算は達成できるのか?」
「いえ、この四半期は厳しいです。目標には5%ほど届きません」
上司 「ありえない。結果が全てだ。1%でも未達なら、仕事をしていないも同じことだ」
「しかし、クライアントの強い要望で、関係は良好で、長期的に見れば売上も変わりません」
上司 「だめだ。その甘えた感覚が、会社の危機につながるんだ」
「・・・」
上司 「なんだ。だんまりか」
「・・・」

いかがでしょうか。読んでいるだけで胸がいたくなってきますね。
でも、上司の立場になって考えてみる、どうでしょうか。立場が上になるほど、業績やお金に対するプレッシャーが厳しくなるものですよね。その不安感ゆえ、上司はあなた以上に、命令的、管理的な話をしてしまいます。その結果、上司は孤立し、人も辞めがちになり、不安がさらに増してゆくことになります。
もし、あなたが「上司の立場」だったらどんな部下がいたら、うれしく感じるでしょうか。人間は、不安感や孤独感に苛まれている 時ほど「信頼できる人間」がほしいものです。では、どんな人が信頼されるのでしょう。

※信頼のトライアングル~信頼されるための3つのドライバー
気にかけてくれている人が相手を信頼するのは、以下3つのドライバーがそろった時です。

  • 相手が本心で接してくれている(オーセンティシティ)と考える
  • 相手の判断や能力(ロジック)を信じる
  • 相手が自分のことを気遣ってくれている(エンパシィ)と感じる

※筆者作成

オーセンティシティ(真実性):あなたが、うそいつわりのない本心で接してくれていることがわかる
ロジック(論理性):あなたの思考や判断が理にかなっているので、あなたなら実現できるとわかる
エンパシィ(共感性):あなたは、わたしのことや、わたしの成功を気にかけてくれている

「もっと組織をよくしたい」「そのためのチカラになりたい」「やる気に満ちたチームをつくりたい」
あなたも上司も「組織をよくしたい」という思いは一緒ではないでしょうか。
信頼のトライアングルであるこの真実・論理・共感を大切に、情熱を込めて伝えれば、きっと状況は変わっていきます。

では、次の対話より実践的に上司との適用課題を解決する技術を学んでいきましょう。

【問題の解決】に向けた対話

会話内容
「お忙しい中、お時間をいただきありがとうございます」(考えと情報を整理した上で、冷静に話はじめる)
上司 「どうしたんだ。何か言いたいことでもあるのか」(実は部下からの申し出に、辞めるかもしれないと心の中は不安でいっぱい)
「はい。自分自身の中に迷いがあり、ご相談したいと思って 時間をとっていただきました」
上司 「迷いって、どんなことなんだ」
「はい。まず、先程の件で追加のご報告です。スケジュールが三ヶ月後ろ倒しを希望される理由をしっかりお話できていなかったことが問題でした。実は前向きなお話で、社内でこのプロジェクトが評判になっており、先方は本格的に進めたいとの意向です。その調整に三ヶ月 ほど要しますが、規模も大きくなりそうで、年度でみるとプラス要因にできる可能性が高いと思います」
上司 「そうだったのか。それは悪くない報告だ。ただし、四半期の予算達成にとってはマイナスだな」
「はい。おっしゃるとおりです」
上司 「そのショート分をリカバリーするプランはないのか」
「はい。不足分を丸ごとカバーできるかどうかはこれからの話となりますが、いくつか有望な見込み案件が出てきています」
上司 「そうか。そのうち確度の高いものはあるのか」
「はい。確実とは言えませんが三件 ほどあります。まずA社で〇〇、B社で●●、C社で△△です」
上司 「わかった。なんとしても進めたい。よろしく頼む」
「はい、がんばります。一つ ご相談ですが、A社の信頼を得るためにDさんの力をお借りすることは可能でしょうか」
上司 「D君か。確かに彼は長くA社の担当をしていたからな。当時顧客の信頼感も抜群だった。わかった。D君に話してみるよ」
「ありがとうございます。とても助かります」
上司 「わかった。その代わり、予算達成、頼むぞ」
「がんばります。それともう一つ お話したいことがありました」
上司 「わかった。短めに頼むな」

いかがでしょうか。後述する「イエス・アンド法」で、相手の意見を受容しながら、自分自身の考えを付加していきます。相手の不安を解消しながら、相手がこだわる目的を達成するために何をすれば良いかを伝えます。

※心理的な反発を防ぐためのゴールデンスキル「イエス・アンド法」
イエス・アンド法とは、まずは「YES」で相手の意見や気持ちに共感し、その後「AND」を用いて自分の意見を主張する話法です。
イエス・バッド法より柔らかく、心理的な反発を防ぎ、相手の気持ちを受け入れ、その問題を解決するための建設的な提案ができます。

※筆者作成

自分ごととして考えてみよう~詰めがちな上司に話す「わたしメッセージ」を考えてみよう

ここまでの対話で、今回の大口のクライアントのスケジュールが三ヶ月後ろ倒しになる問題については、何とか解決することができました。しかし、このような状態になっている真因は別のところにありませんか。
どんな「わたしメッセージ(応用型)」をお話すれば、建設的な場になるでしょうか。

※筆者作成

3、4、5が「わたしメッセージ」になりますね。

会話内容
「はい。お伝えすべきかどうか自分でも迷ったのですが、この組織に貢献するために、思い切ってお話したいと思います」
上司 「どんなことだ」
「この組織では、数字重視・結果重視のオペレーションが徹底されています。私も結果を出すことの大切さはよく認識しているつもりです。一方で、顧客アンケートでは『受注の前と後で営業の態度が変わる』『サービスが期待以下だった』などの声とともにリピート受注にも影響が出てきました。私自身もストレスを感じることがあります。私はこの組織をもっとよくしたいです。だからこそ、これらの点について、率直なお話し合いができたらと思い、今日、お時間をいただきました」  ※わたしメッセージ※
上司 「なるほど。リピート受注へ影響というのは、最近売上が落ちているA社やB社のことか」
「はい。おっしゃるとおりです」」
上司 「そうか。この業績不振の原因が数字に対するプレッシャーからだというのか」
「はい。適度なプレッシャーは「ラーニングゾーン」に導きますが、今の状態は「パニックゾーン」に近い感じで、売上が上がればプロセスは問わないといった短絡的な思考が目立つようになり、それがエンゲージメントや顧客満足度を下げていると感じます」
上司 「そうか。これくらいのプレッシャー、昔は当たり前だったんだがな。残念だ。言いたいことはそれだけか」
「いえ。私としては、この状況改善に少しでも貢献したく、打開するための作戦を考えました。聞いていただけますか」
上司 「わかった。どんな作戦か聞かせてもらおう」
~話し合い~
上司 「その作戦は君に任せて大丈夫か」
「はい。大丈夫です。そこで一つ ご相談ですが、その間、数字のプレッシャーは控えめにしていただくことは可能でしょうか。この作戦の効果を最大限にするために重要と考えます。私のほうから適時報告を入れますので、その時に叱咤激励いただければと」  ※わたしメッセージ※
上司 「わかった。まずはやってみよう。様子を見て、相談させてくれ」
「はい。承知しました。お役にたてて良かったです」
上司 「ありがとう。組織のエンゲージメントについて、一人で悩んでいたんだ。参考になったよ」
「ありがとうございます。この課を最高のチームにしたいです。がんばります」

まとめ

「詰めがちな上司」は、その人のキャラクターの問題なのでしょうか。vol.004「指示待ちの部下」と同じように、決めつけるのはよくありません。組織に貢献しようという想いで、よかれと思って管理的な行動を強めている、責任感の罠にはまっているだけなのかもしれません。
どんな相手とも傾聴と対話を繰り返し、相手の考えを取り入れながら、臨機応変に「価値を共創していく感覚」が大切です。
一緒に問題を解決するイメージでお話できるといいですね。

>>斉藤氏のインタビューはこちら

Profile

hint 斉藤 徹 氏

ビジネス・ブレークスルー大学 経営学部 教授
株式会社hint 代表取締役
株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役
斉藤 徹 氏

慶應義塾大学理工学部を卒業し、1985年、日本IBM株式会社入社。29歳で日本IBMを退職。1991年、株式会社フレックスファームを創業、ベンチャーの世界に飛び込む。激しいアップダウンの後、2005年、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業。詳細は著書『再起動 〜 リブート』をどうぞ。2016年、学習院大学経済学部特別客員教授に就任。2020年、ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授に就任。専門分野は組織論と起業論。2019年には「hintゼミ」を創設、卒業生は1,200名を超えている。最新著書『だから僕たちは、組織を変えていける』は10万部を超え「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」(マネジメント部門)を受賞した。他にも著書は多数。

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