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【企業向け】派遣社員との「面談」「面接」の線引きは?法的な注意点を解説
公開日:2025.11.12
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派遣社員の「面接」は、労働者派遣法で原則として禁止されています。これは、「派遣労働者の特定を目的とした行為をしないよう、努めなければならない」といった主旨が労働者派遣法で定められているためです。
しかし、「事前に派遣社員と顔合わせすらできないのだろうか」「人材の受け入れのミスマッチを防ぐために、事前にどのようなことを確認できるのだろう」と疑問に感じる担当者もいるでしょう。
そこで本記事では派遣社員との面談に関して、行ってよいことや禁止されていることを分かりやすく解説します。また、派遣社員を受け入れる際にミスマッチを防ぐポイントも紹介します。
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派遣社員との面談とは
派遣社員との面談とは、就業前に職場の雰囲気や業務内容を共有することを目的に、採用選考に該当しない形で実施される情報交換の場を指します。
一方、面接は、人材を特定・選考する行為であり、労働者派遣法第26条第7項で原則として禁止されています。
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派遣社員の「面接」は法律で禁止されている
企業担当者がまず理解するべきポイントは、派遣社員の「面接」は労働者派遣法で原則として禁止されている点です。
禁止されている理由は、派遣社員は人材派遣会社と雇用契約を結んでおり、派遣先企業が直接雇用する労働者ではないためです。労働者派遣法第26条第7項で「派遣先は、(紹介予定派遣を除き)派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」と定められています。さらに、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」では、この「特定目的行為の禁止」について具体的に「事前面接、履歴書送付、若年者限定など派遣労働者の特定目的行為を行わないこと」と明記されています。
もし、派遣先企業が派遣社員に対して「面接」を行った場合、この法律や指針に違反する可能性があります。
派遣の「特定行為」について、詳しくはこちらの記事でも解説していますので、あわせてお読みください。
>>【企業向け】派遣の特定行為を解説 禁止の背景や注意点は?
職場見学の場での「面談」は実施可能
派遣社員を受け入れる前の「面接」が法律で禁止されているとはいえ、派遣社員に安心して就業してもらうため、そして派遣先企業として求めるスキル・経験を持つ人材かどうかを確認するために、「職場見学」といった形であらかじめ顔合わせ(面談)の場を設けることは可能です。
この場合の職場見学は、「面接」とは明確に区別されるべきです。職場見学の目的は以下の点です。
- 派遣社員側の目的:実際にはたらく職場環境や業務内容、職場の雰囲気を知ることで、安心して就業できるかを判断する。
- 派遣先企業側の目的:人材派遣会社から提供された情報だけでは分かりにくい部分を補足的に確認できる。例えば、業務遂行スキルに関する質問・確認をして、人材の受け入れのミスマッチを低減する。
重要なポイントは、この職場見学の場が「採用選考」ではないということです。あくまでも派遣社員の希望があった場合に実施されるものであり、双方の認識合わせと、派遣社員が円滑に業務に入るための情報共有の場として捉える必要があります。
なお、職場見学についてこちらの記事でも詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
>>人材派遣の職場見学とは?流れや留意点、必要な準備についてご紹介
職場見学(面談)で聞いてよいこと・よくないこと
職場見学の場では、主に業務内容や職場環境に関する情報共有、および派遣社員のスキルや経験の確認に留める範囲で、直接のコミュニケーションを取ることができます。
職場見学で聞いたり伝えたりしてよいこと
職場見学で派遣先企業と派遣社員の間で、言及したり尋ねたりしてもよいことは以下の通りです。
| 具体的な業務内容の説明 | 派遣社員に依頼する業務の具体的な内容や1日の流れ、繁忙期などを派遣先企業から説明します。 |
|---|---|
| 職場環境・雰囲気の説明 | 職場のレイアウトや一緒にはたらくメンバー、部署の雰囲気などを伝えます。 |
| 業務に関係のあるスキルや使用可能なITツールの確認 | 人材派遣会社から事前に提出された個人情報を含まないスキルシートに基づき、使用経験のあるソフトウェアやツールなどのスキルについて補足確認ができます。 |
| 通勤時間や勤務開始希望日など、一般的な事務連絡 | 業務開始にあたっての一般的な確認事項です。 |
| 質疑応答 | 派遣社員からの質問に答えます。 |
派遣先企業がしてはいけないこと
以下の項目に言及するのは「面接」とみなされる可能性があり、労働者派遣法に違反することもあるため、避けてください。
| 派遣社員を特定する行為 | 履歴書の提出を求めたり、氏名、住所、生年月日などの個人情報を尋ねる行為。 |
|---|---|
| 派遣社員に対する評価につながるような質問 | 「前職を辞めた理由は何ですか」「当社ではたらく意欲はどれくらいありますか」など、「派遣先企業に採用の決定権があるのではないか」と受け取られるような質問。 |
| 適性検査や筆記試験の実施 | 派遣社員の能力を測るための試験の実施。 |
| 依頼する業務と関係のない質問 | 家族構成などの個人のプライベートに踏み込む質問。 |
派遣社員の受け入れのミスマッチを防ぐためのポイント
派遣社員との「面接」が禁止されている中で、ミスマッチを最小限に抑え、円滑な受け入れを実現するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
必要なスキル要件を策定する
派遣社員の受け入れにおけるミスマッチを防ぐには、事前に採用要件を明確に決めておくと効果的です。
企業が求める、業務に必要なスキル・経験などの人物像を詳細に定義し、人材派遣会社に具体的に伝えることで、自社のニーズに合致しない候補者が紹介される確率を低減できるでしょう。結果的に、求める条件に合った派遣社員と出会う可能性を高められます。
なお、採用要件の決め方については以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
>>採用要件の決め方|具体例や採用ペルソナとの違いを解説
人材派遣会社との密な連携
人材派遣を依頼する際に、求めるスキル・経験・人物像・業務内容などを具体的かつ詳細に派遣元企業に伝えましょう。これにより、人材派遣会社が適切な人材を選出しやすくなります。
スキルシートの事前確認と質問事項の準備
人材派遣会社から提出される個人情報を伏せたスキルシートを事前にしっかりと読み込み、不明な点や補足確認したい点を事前にリストアップしておきましょう。
ただし、職場見学(面談)の場で前述した禁止行為をしないように注意が必要です。
紹介予定派遣もミスマッチ防止に有効
派遣社員の受け入れにおいて、採用ミスマッチの防止は重要な課題です。
通常の人材派遣とは異なり、将来的な直接雇用を前提とした「紹介予定派遣」も、この課題を解決する有効な手段となるでしょう。
紹介予定派遣では、一定期間(最長6ヶ月)派遣社員として就業した後、派遣先企業と派遣社員双方の合意があれば、直接雇用へと切り替えることができます。この期間中に、派遣先企業は派遣社員のスキルや勤務態度、社風との適合性をじっくりと見極めることが可能です。
派遣社員側も、実際の職場ではたらきながら業務内容や職場の雰囲気を感じ、自身の希望と合致するかどうかを確認できるため、入社後の「事前に思っていたものと違った」といったギャップを防ぎやすくなります。
このように、紹介予定派遣は事前の派遣就業期間を通じて企業と人材の双方にとって最適なマッチングを実現し、長期的な雇用関係へとつながる可能性を高める効果的な選択肢です。通常の人材派遣では面接ができない制約がある一方、紹介予定派遣の場合は面接・選考を実施できるため、企業が人材を見極める貴重な機会となります。
紹介予定派遣について詳しくはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
>>紹介予定派遣とは?メリットや通常の派遣との違い、留意点を解説
派遣社員との面談に関してよくある質問
派遣社員との面談に関してよくある質問をまとめました。
Q1.派遣社員の受け入れを急いでいるのですが、職場見学(面談)は必ず行うべきですか?
法律で義務付けられているわけではありませんが、派遣社員からの希望があった場合には実施する必要があります。職場見学を行うことで、派遣社員は安心して就業でき、派遣先企業はミスマッチのリスクを低減できます。結果的に、スムーズな業務開始と長期的な就業につながりやすいでしょう。
Q2.派遣社員の面談時に、自社で用意した履歴書を書いてもらうことはできますか?
いいえ、できません。派遣社員に履歴書を記入してもらう行為は、派遣先企業が採用選考を行っているとみなされる可能性が高く、労働者派遣法に抵触する恐れがあります。
派遣社員の個人情報は、人材派遣会社が管理するものです。派遣先企業は、人材派遣会社から提供されるスキルシートや職務経歴書を確認するに留めましょう。
Q3.職場見学の場で、派遣社員のスキルが業務内容と合わないと感じた場合、どうすればよいですか?
人材派遣会社にその旨を伝え、相談してください。職場見学は採用選考ではないため、その場で派遣の受け入れを断るような言動は避けるべきです。
人材派遣会社には、派遣社員が持つスキルや経験と、貴社の求める業務内容との間に認識のズレがある可能性を伝え、適切な人材を改めて紹介してもらうよう相談しましょう。
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適切な面談で派遣社員との良好な関係を築きましょう
派遣社員との就業前の面談に関しては、法的な制約があります。
しかし、労働者派遣法のポイントを理解し、「面接」ではなく「情報共有と認識合わせの場」として適切に面談(顔合わせ)を実施することで、人材受け入れのミスマッチを低減できるでしょう。
本記事で解説した、面談の場で「行ってよいこと」「禁止されていること」のポイントをふまえ、人材派遣会社との密な連携、そしてスキルシートの事前確認を徹底しましょう。また、ミスマッチ防止の選択肢として紹介予定派遣も有効活用できます。
人材派遣にご関心をお持ちの企業担当の方は、お気軽にパーソルテンプスタッフにご相談ください。
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監修者
HRナレッジライン編集部
HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。
編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。
法務監修や社内確認体制のもと、正確な情報を分かりやすくお伝えすることを大切にしながら、多くの読者に支持される存在を目指し発信を続けてまいります。
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