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【セミナーレポート】
だから僕たちは、組織を変えていける
ー 組織を自走させる「人事のアジャイル型組織変革」ー 

公開日:2025.05.28

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ビジネス・ブレークスルー大学 経営学部 教授
株式会社hint 代表取締役
株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役
斉藤 徹 氏

VUCAの時代に対応するためには、「管理職の統制」から「社員の自走」に組織の原動力を変える必要があります。そんな中、人事部においては「若手社員の離職に歯止めがかからない」「シニア社員のモラル低下が著しい」といった問題が増え続けています。トップとボトムをつなぐ人事部は何に取り組むべきなのでしょうか。本講演では、『だから僕たちは、組織を変えていける』の著者である斉藤徹氏が、組織を自走させるためのメソッドをお伝えしました。

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これからの組織は「統制」から「自走」へ

近年、社会は指数関数的に変化しています。一方で組織の骨組みは100年前からほとんど変わっていないのが現状です。
VUCAの時代に適応するには、従来の工業社会の統制型マネジメントでなく、自走する組織へ変革することが求められます。
組織を変えるためには、一人ひとりが主体性を発揮することが重要です。これに対し、「7つの習慣」の著者であるスティーブン・R・コヴィー氏は、関心と影響の2つの輪を描くことで、「自分が直接コントロールできる、あるいは大きく影響できる領域」を意識できると提唱しており、私自身も強く共感しています。主体的な人は「変えられないこと」に関心を持つものの、積極的には関与しません。なぜなら、自分の時間や心理的エネルギーは限られていることを知っているからです。つまり組織を変革するためには、一人ひとりが「影響の輪」に集中するべきといえます。この原則は、経営層でも人事部門でも基本的に変わりません。例えば、人事が組織を自走させたいのであれば、まずは自分のチーム(半径5m)を自走させることが肝心です。全社に施策を展開しようとしても、自らの経験なしでは“紺屋の白袴”となり、どれだけ言葉を述べてもメンバーの心には響かないでしょう。

「成功の循環」に変えるには「関係性」から着手すべき

インターネットの登場前、情報は組織のトップや経営層のみに集まり、現場社員はただ指示に従っている状況でした。しかし情報があふれる現代では、一人ひとりが有益な情報やアイデアを持つことが可能です。つまり組織環境は一変したのです。このような知識社会では、チーム単位で学習し、共感し、自走するというクリエイティブな経営モデルが求められます。
とはいえ、やみくもに一人ひとりが自走すればよいというわけではありません。チーム内で目的や価値観を共有していく必要はあります。ここで押さえておきたいのが「無理に結果を作ろうとすると、失敗の循環にハマる」ということです。例えば無理な数字を掲げることで、次第に強制が増え、ストレスが溜まり協働も進みません。パフォーマンスも落ち、さらに達成圧力が高まり、結果的に退職者が続出してしまいます。一方で人の心を意識し、関係性から入ると、成功の循環は持続します。対話や交流を通じて、相互信頼が深まると多様な気付きが生まれます。自律的な行動が増えることで、パフォーマンスが向上し、一人ひとりにさらに結果を高めたいという想いが芽生えてくるのです。

まとめ

かつての工業社会に対応した統制型の組織から、知識社会に適した自走型の組織を作るには、一人ひとりが意見やアイデアを言えるような健全な関係性づくりが第一歩です。これは心理的安全性という言葉で表すことができ、チームを成功に導くカギであり、協業の基盤になります。加えて「価値を生み出したい」という想いのもと、自然体の自分をさらけ出し、本音で共創する場を作ることも非常に大切です。さらにVUCAの時代における組織づくりでは成功循環を作ることも重要であり、その成功循環を回し続けることも欠かせない要素となってきます。

Profile

hint 斉藤 徹 氏

ビジネス・ブレークスルー大学 経営学部 教授
株式会社hint 代表取締役
株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役
斉藤 徹 氏

慶應義塾大学理工学部を卒業し、1985年、日本IBM株式会社入社。29歳で日本IBMを退職。1991年、株式会社フレックスファームを創業、ベンチャーの世界に飛び込む。激しいアップダウンの後、2005年、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業。詳細は著書『再起動 〜 リブート』をどうぞ。2016年、学習院大学経済学部特別客員教授に就任。2020年、ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授に就任。専門分野は組織論と起業論。2019年には「hintゼミ」を創設、卒業生は1,200名を超えている。最新著書『だから僕たちは、組織を変えていける』は10万部を超え「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」(マネジメント部門)を受賞した。他にも著書は多数。

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