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2030年問題の概要や企業に与える影響、取るべき対策をご紹介

公開日:2024.05.31

更新日:2025.01.29

企業の課題

先進国では高齢化の進行が深刻な問題となっています。特に日本での高齢化の進行スピードは速く、生産年齢の人口の減少が懸念されています。日本国内の企業であれば少なからず影響を受ける「高齢化」ですが、さまざまな要因により企業が高齢化社会の影響を大きく受けるタイミングがあります。その一つが、2030年問題です。一体どのような問題なのか、また取るべき対策などを解説します。

2030年問題とは

内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、2030年に日本国内人口の30.8%が65歳以上の高齢者となり、「超高齢化社会」に突入します。超高齢化社会によって起こる諸問題を「2030年問題」といいます。

内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、諸問題のなかでも問題視されているのは、生産年齢人口の減少です。生産年齢人口が少なすぎることで起こる社会保障制度の崩壊や、GDPの減少による国力の低下など、多くの問題の誘発要因になる可能性があります。

※引用:内閣府|令和5年版高齢社会白書

2025年問題との違い

2025年にも、深刻化する問題が予想されています。いわゆる「2025年問題」といい、2030年問題はその延長線上にあります。2025年問題とは、第一次ベビーブーム、つまり団塊の世代(1947~1949年)で生まれた約270万の人口が75歳を迎え、後期高齢者になります。その世代の医療費や介護費、年金など社会保障費の負荷が急速に膨張する問題を指します。

女性や高齢者の労働参加が進んでも生産年齢人口は減少すると予想され、一人あたりの社会保障負担はますます重くなることが予想されます。

2025年問題については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>危惧されている2025年問題の概要と企業が取り組むべきこととは

2040年問題との違い

また、2040年問題もあります。2040年問題は、1971年~1974年の第二次ベビーブームに生まれた団塊ジュニア世代が65歳以上となることで生産年齢人口の割合が減り、財源の不足やインフラの老朽化、人材不足が起こる問題です。

内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、2040年には、2030年よりも高齢者の割合が増加しており、高齢者の割合が、34.8%となることが予測され、約1.6人で1人の高齢者を支えるという計算になります。2030年問題よりも一層、はたらく人の割合が減ることで税収や社会保険料収入も減り、財源の不足はもちろんインフラの老朽化や人材不足など、問題がより深刻になると予測されています。

2054年問題との違い

「2054年問題」とは、生産年齢人口が減少する反面、75歳以上の人口が2054年まで増え続けるという問題です。2054年の日本は4人に1人が75歳以上という、「超々高齢社会」となるのです。内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、2054年には65歳以上の人口が約38%になると予測されており、いわゆる高齢者が4割近くの割合となります。高齢者の定義も、時代に合わせて変わっていく可能性も考えられるでしょう。

2030年問題が企業に与える影響

2030年問題は企業にどのような影響を与えるのでしょうか。はたらく人の減少により、人材不足、人件費の高騰など、特に人材に関する影響が考えられます。

人材の不足

2030年問題で問題視されている生産年齢人口の減少により、人材不足が深刻化します。人材不足は企業にとって大きな問題です。企業の経営継続に影響を与えることもあり、倒産につながるリスクも考えられます。

人手不足倒産については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています
>>人手不足倒産とは?深刻化の原因と解決策を詳しく解説

人材採用の難易度増加

人材不足により、採用競争の激化が予測されます。適切なスキルと経験を持つ求職者が限られ、企業が求める要件にマッチする人材の採用の難易度が高まります。採用を成功させるためにより一層の工夫が必要となるでしょう。

組織の力強い成長を支えるため、採用は非常に重要です。HRナレッジラインでは、採用活動を成功させるポイント、年齢や性別に関わらずそれぞれの企業にマッチした採用方法など、幅広い視点で解説しています。自社に合った人材活用の参考にしてください。

人件費の増加

人材の確保・維持するため、これまでより高い給与や福利厚生を提供する必要も発生します。自社に入社してもらうために、また自社ではたらき続けてもらうために、人件費増加は必須な費用といえるでしょう。人件費の増加は避けられない中で、できる限り人件費の増加を抑えるための対策の検討も必要です。

人件費削減については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>人件費削減とは?メリット・留意点や具体的な方法を解説!

2030年問題で特に影響を受けると予想される業界

この章では2030年問題で特に影響を受けると予想される5つの業界についてご紹介します。

運輸業・郵便業

運輸業・郵便業は、ECサイトの普及に伴う物流量の増加により、人材が不足しています。日用品だけでなく、食材や薬などもWebで買うことができるため、物流業界の必要性は増え続けています。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、巣ごもり需要が発生しました。ECサイトでショッピングする人がさらに増え、既存の人材では足りないほど物流量が増えています。物流業界は、高まり続けるニーズに対し、対応する人材が不足している傾向にあります。

サービス業

ここでいうサービス業とは、飲食サービス業などに分類されないものを指し、廃棄物や自動車整備などを扱う業種です。

サービス業は離職率の高さが人材不足の主な原因といえます。2022年に厚生労働省が調査した「令和4年 雇用動向調査結果の概要」によると、サービス業(他に分類されないもの)は宿泊業、飲食サービス業と生活関連サービス業、娯楽業に次いで離職率が19.4%と高い数値を示しました。

※引用:厚生労働省|令和4年 雇用動向調査結果の概要

サービス業は労働時間の長さに加え、休日や深夜勤務が発生しやすい業種です。そのため、労働時間の長さが原因で離職率の高さにつながっていると考えられます。

医療、福祉

医療、福祉業界は需要と供給のバランスが崩れていることから人材不足になっています。
2018年10月23日に公表されたパーソル総合研究所と中央大学が共同研究した「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には医療・福祉業界は187万人の人材が不足すると考えられていました。また、2020年から流行した新型コロナウイルス感染症の影響により、医療現場の人材不足がさらに深刻化しています。

宿泊業、飲食サービス業

宿泊業と飲食サービス業は、離職率の高さが人材不足の原因になっています。宿泊業と飲食サービス業の離職率が高い原因として、以下のような原因が考えられます。

  • 土日祝に営業している店舗が多い
  • 深夜営業や盆正月に営業している店舗もある
  • 長期的に連続した休暇を取ることが難しい職種も多い

土日祝に休暇を連続して取ることが難しいという状況から、宿泊業と飲食サービス業を敬遠する求職者が多いと考えられます。

飲食業界の人材不足については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>飲食業界の人手不足の現状と背景、解決策をご紹介

建設業

建設業は、人材が定着しづらいことも人材不足の原因です。また、建設業の離職率が高い原因は、一般的に次のような原因が考えられます。

  • 重量のある資材の持ち運びなどで体力が必要とされる
  • 現場への移動に充てる時間が長くなりやすい
  • 日給月給制が多く収入が安定しづらい

ただし、外国人や女性の雇用を進めることで、2030年には建設業の人材不足が解消するという試算もあります。

2030年問題に向けて企業が取り組むべき対策点

では、2030年問題に向けて、企業が取り組むべき対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

はたらきやすい環境作り

まずは、自社のはたらく環境について見直します。はたらきにくい、不満が生まれやすい環境になっていないか再確認し、人材の流出を防ぐとともに、採用の際に自社を選んでもらうためにも、リモートワークの環境整備や福利厚生の充実、休暇や休業の取得の推進などに取り組みましょう。

シニア人材の活用

人材不足を解消する大きなカギを握るのは、シニア人材の活用です。人材不足で採用コストがかかり、人材不足が解消されないなどの場合に、経験豊富で実績のあるシニア人材を採用できれば、企業にとっても大きなメリットとなります。シニア人材も、年金の支給年齢が引き上げられた背景などから、まだはたらきたいと考えていることも多いようです。

シニア採用については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>シニア採用が必要とされる背景、メリットと留意点についてご紹介

外国人人材の活用

日本人の人材の確保が難しくなる一方で、外国人人材の活用を検討するのも一つの方法です。海外に拠点を持つ企業やこれから海外展開を検討する企業にとっては、外国人人材の採用も検討するという方法もあります。外国人の採用や育成のノウハウがなく、自社での採用が難しい場合には、人材派遣を活用することも解決策となります。

パーソルテンプスタッフでは、外国人の人材派遣・人材紹介を行っています。詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

リスキリングの実施

部署や職種によって人材不足の深刻さに差がある場合、リスキリングを実施しましょう。リスキリングを実施することで、最新の需要に対応するスキルや社内で不足しているスキルのある人材が増えます。その結果、人材不足が深刻な部署に、リスキリングをした人材を配置でき、人材不足解消を図ることができます。

IT技術の活用

人材の確保が難しい場合は、IT技術の活用も検討します。RPAやデジタルツールを新たに導入することにより、これまで人材が必要だった業務が改善されたり、スタッフがコア業務に集中できるようになり人材不足の解消につながることが期待できます。

パーソルテンプスタッフでは、RPAに関連するサポートも行っています。詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

外部企業の活用

自社で施策を行っても人材不足が解消できない場合は、外部企業の支援を受けるのも一つの方法です。 今回は、人材不足解消につながる外部企業の支援についてご紹介します。

  1. 人材派遣
  2. アウトソーシング
  3. 人材紹介

【人材派遣】必要な時に必要なスキルを持った人材を活用する

人材派遣は、必要な時に必要なスキルを持つ人材を受け入れることができます。人材派遣の活用は、人材確保のコストや工数が軽減するうえ、自社で雇用しないため労務管理の負担などもありません。 「繁忙期に人員補充がしたい」「急な退職や育児休業の社員の代替が必要」というシーンで活用しましょう。

【人材紹介】採用業務の負荷軽減は人材紹介を活用する

人材紹介は企業に求職者を紹介し、採用業務を支援するサービスです。求人票の作成支援から求職者情報の整理、条件交渉まで自社の代わりに行います。 採用活動の負担軽減と効率化が大きなメリットといえます。採用業務の負担は軽減しながら直接雇用する人材を採用したい場合にぴったりです。

【アウトソーシング】自社業務の一部を外部に委託する

アウトソーシングとは、自社の業務の一部を外部に委託することを指します。事務業務を委託する「BPO」や情報システム業務を委託する「ITO」などいくつか種類があり、自社に合った方法を選択します。 業務の一部を外部の専門企業に委託することで、経営資源の選択と集中や外部企業の知見やノウハウを活かして品質向上につなげられます。 社内体制が整っていない企業や、人材の採用や管理などの手間を抑えたい企業に適しています。

2030年問題に備え前もって対策を打つ

高齢者の割合が大幅に増加することにより起こる2030年問題。企業は、人材不足やニーズの変化に対応していかなければなりません。2030年問題に直面する前に対策を進め、2030年問題の影響を最小限に抑えるようにしましょう。

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