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コンプライアンスとは?定義や具体的な違反事例を分かりやすく解説

公開日:2025.07.11

更新日:2026.02.13

企業の課題

企業におけるコンプライアンスとは、企業・組織が法律・規則を遵守するだけでなく、倫理・道徳基準や社会規範に従って行動することを指します。

企業・組織内でコンプライアンス違反が生じると、罰金・課徴金といった経済的リスクや、経営陣が法的責任を問われたり、行政指導や業務改善命令を科されるなど経営的リスクも想定されるほか、社会的信用の失墜やブランド価値の棄損、業界における地位低下など、さまざまな影響が及ぶと考えられます。しかし、企業におけるコンプライアンスは対象が広いため、「何がコンプライアンス違反になるのか分からず不安」という方も多いでしょう。

この記事では、コンプライアンス違反に該当する具体的な事例を交え、違反した場合のリスクを解説するとともに、企業が体制を整備するためのポイントもご紹介します。

コンプライアンスとは?

はじめに、コンプライアンスという言葉の定義や、ビジネスの現場でよく混同されがちな他の用語との違いを解説します。

コンプライアンスの定義

コンプライアンス(Compliance)は本来、法令遵守を意味する言葉です。

現代の企業には、単に法律・規則を遵守するだけでなく、明文化されていない倫理・道徳基準や社会規範に従って行動することが求められています。例えば、ハラスメント防止やジェンダー平等への対応、労働環境改善(過重労働の是正)、情報セキュリティ対策(機密データの適正管理)などには法律で明確化されていない部分もあるため、企業による自主的な取り組みが必要です。

コーポレートガバナンスとの違い

コーポレートガバナンスは、企業統治と訳されます。株主や社外取締役を中心に、顧客や地域社会など、企業のステークホルダーが経営者の経営を監視することを意味します。

経営者による不祥事を防ぎ、健全な経営によって利益を最大化することが、コーポレートガバナンスの目的です。企業と利害関係のない社外取締役の登用などが、その強化策として挙げられます。

CSR(企業の社会的責任)との違い

CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)とは、持続的な成長を目的に、企業が社会や環境に配慮した活動を行うことです。直接的、短期的には自社の利益につながらないようなことでも、社会の一員としての役割を果たしていくことが求められています。

例えば、再生可能エネルギーを活用して環境への負荷を下げること、自社から出る産業廃棄物を減らすこと、途上国への支援をすることなどがあります。

コンプライアンス CSR(企業の社会的責任)
目的 法令や規則の遵守が主な目的 社会や環境へのポジティブな影響を目指す自主的な取り組み
義務 外部規制に基づく義務で、違反すると罰則が科される 内部的な動機から行われるもので、法的義務ではない
労働法や環境規制の遵守 地域社会への貢献、環境保護活動

内部統制との違い

内部統制とは、正社員やアルバイトなどの雇用形態を問わず、社内の全員が参加して業務を健全化する仕組みのことです。

コーポレートガバナンスが企業や経営者を外から監視する仕組みであるのに対し、内部統制は経営者自身が内側から責任をもって健全化に取り組みます。具体的には、以下の4項目を達成するための仕組みを構築することと定義されています。

  • 業務の有効性・効率性:企業全体で生産性を高め効率的な業務を行う
  • 財務報告の信頼性 :決算書などの財務情報が正しいことを保証する
  • 法令などの遵守:法律や規則、社会規範などを守る
  • 資産の保全 :会社の資産(お金、もの、情報など)が不正なく適切に管理される

コーポレートガバナンスを実現するための手段が内部統制です。また、コンプライアンスは内部統制の取り組みによって実現されるものです。

コンプライアンスが重要とされるようになった背景

企業におけるコンプライアンスがこれほどまでに重要視されるようになった背景について、企業内と企業外の要因に分けて解説します。

企業不祥事による影響

バブルが崩壊した1990年代以降、さまざまな企業で、巨額の損失隠しや粉飾決算、リコール隠し、産地偽装、談合などの不祥事が相次いで発覚し、これらの企業や経営者は、法的責任を問われただけでなく、顧客や取引先、投資家からの信頼を損なう結果となりました。

社会からの信用失墜は、顧客離れや取引停止、株価の下落などにつながり、倒産に追い込まれるケースも散見されます。また、倒産には至らずとも、売上の減少、資金繰りの悪化、リストラなどで企業のブランドイメージは失墜し、長きにわたる経営不振を余儀なくされました。

こうした背景から、健全な経営で社会から信頼を得ている企業が評価されるようになり、コンプライアンスの重要性も認識されるようになったのです。

社会や経済環境の変化

コンプライアンスが重視されるようになった背景には、企業の海外進出や環境問題もあります。

今日、企業はただ利益を追求するだけではなく、社会の一員として責任を果たすべきだと考えられるようになっています。CSR(企業の社会的責任)も同じような背景で注目されるようになりましたが、コンプライアンスはその大前提として位置付けられています。取引がある国のルールを遵守することはもちろん、現地の習慣や文化を尊重することが求められます。

特に、海外で広く事業展開している企業は、事業活動を継続するため、グローバルな視点でのコンプライアンス体制の構築が必須となっています。

ここまで、コンプライアンスが重要とされるようになった背景を説明しましたが、重視するべき理由を簡潔にまとめると、以下の通りです。

法的リスクの回避 違反による罰金・訴訟を防ぐ
信用維持 不祥事が企業イメージを棄損し、取引先・消費者からの信頼を失うことを防ぐ
従業員の健全な労働環境の整備 サービス残業やハラスメントの防止で離職率低下やモチベーション向上につなげる
持続的成長 長期的な企業価値を高め投資家からの評価を得る

コンプライアンス違反となる具体的な事例

どのような行為がコンプライアンス違反に該当するのか、発生件数の多いものや企業へのダメージが大きいものを中心に具体例をご紹介します。

労働や人権に関する違反

従業員の心身の健康を損ねたり、権利を侵害したりするものが該当します。法律に反する長時間労働や賃金未払い(サービス残業)に加え、近年ではハラスメントについても法律が制定されるなど、関心が高まっています。

パワハラ

パワハラは、職場で優越的な関係にある相手を対象とした言動により業務上必要かつ相当な範囲を超え、労働者の就業環境を害する行為、と法律で定義されています。

部下に対して机をたたきながら長時間大声で怒鳴る、業務上の指導とは無関係な発言を繰り返すなどの行為は、パワハラと認定される可能性が高いです。特定の部下だけを仕事から外して長期間別室で作業させる、コピーだけを1日中させる、などの行為も行ってはいけません。

優越的な地位を背景に行われるのがパワハラの特徴で、経験豊富な部下から若い上司に対しても起こり得ます。

セクハラ

職場にて労働者の意に反する性的な言動により労働条件の不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることがセクハラと定義されています。

セクハラというと、必要もないのに身体を触ったり、執拗に食事に誘ったりすることが一般的に想像しやすいでしょう。職場で性的なからかいをすることも該当する恐れがあります。性別を問わない点や、行動だけでなく発言も対象になることに注意が必要です。

妊娠、出産、育児休業ハラスメント(マタハラ、パタハラ)

マタハラ、パタハラは、職場の上司や同僚からの妊娠、出産、育休の利用などに関する言動により、妊娠・出産した女性労働者や、育休の申し出・利用をした男女の労働者の就業環境が害されることとされています。

産休や育休の取得、時短勤務をした社員を解雇や減給にしたり、上司から「休むなら辞めてもらう」「男の育休はありえない」などと発言したりすることを指します。

会計や経営に関する違反

会計や経営に関する違反は、主に経営層や経理担当者によって行われます。自社の業績をよく見せるために架空の売上を計上したり、違法に経費を翌期に繰り延べしたりする粉飾決算、複数の企業間で実態のない取引をくり返す循環取引で売上を水増しすることなどが該当します。

会社ぐるみではなく、営業担当者が私的な飲食代を交際費として虚偽に申請することも、会社のコンプライアンス違反となります。

関係者の数や金額の規模が大きくなったり、役員が行ったりすれば、会社のイメージを大きく押し下げる要因にもなります。

また、補助金や助成金の不正受給も許されません。コロナ禍では、売上が下がった企業を対象とした雇用調整助成金の不正受給が横行し、存在しない社員の名前を使う、勤務実態を偽るなどの手口が報道されました。

情報管理に関する違反

近年増えているのが、情報管理に関する違反です。

情報は経営資源の一つであり、情報セキュリティマネジメント(ISMS)に基づいて、企業ごとに情報セキュリティ対策基準や実施手順が定められ、管理・運用されています。

情報にアクセスできる社員が増え、活用しやすくなれば、生産効率の向上や新商品開発による利益拡大に大きく貢献します。しかし、アクセスできる社員が増えれば情報漏洩のリスクも高くなります。故意や過失を問わず情報漏洩が発生すれば、企業のブランドイメージに影響するだけでなく、経営にも大きな影響を与えるでしょう。

持ち出し厳禁の顧客情報が入ったUSBやパソコンを社外で紛失する、退職時に営業秘密や技術情報を個人のUSBにコピーし転職先で不正に使用するなどの行為が、コンプライアンス違反に該当します。社内ルールに反して会社のネットワークから外部のWebサイトにアクセスすることもコンプライアンス違反です。コンピューターウイルス感染により情報が抜き取られる、システムを乗っ取られるなど、重大な被害につながることが想定されます。

また、自社やグループ企業の新製品開発や合併情報を公表前に知った社員が自ら、または家族や友人に伝えて株を売買して利益を得る行為も重大なコンプライアンス違反です。インサイダー取引と呼ばれ、法律で厳しく罰せられます。

取引やサービスに関する違反

取引やサービスに関する違反は、顧客や取引先からの信用を失う行為です。例えば、機械製品の検査データを偽って国の品質基準を満たしていない製品を出荷したり、外国産の商品を国産と偽って販売したりする行為が該当します。これらは商品に直接的な影響があるため、特に消費者の信用を損ねます。

取引先に対しても、優越的な立場を利用して下請け業者に不当に低い金額で発注したり、代金の支払いを一方的に遅らせたりすると、下請法違反に該当します。

社会規範に関する違反

明確に法令に違反するとはいえないまでも、社会から一般的に求められる常識から大きく逸脱した行動を取れば、コンプライアンス違反の指摘を受ける可能性があります。

例えば、会社の懇親会で社員が泥酔し暴れて無関係の客や店に迷惑をかける、社名のステッカーが貼られた営業車で他の車や歩行者に迷惑となる運転や駐車をする、自社の社員が暴力団関係者とゴルフをするなどの行為がSNS上で投稿されると、会社のイメージを大きく損ないます。

SNSについては、自社の社員やアルバイトが店舗内で商品や食材で悪ふざけをしたり、社名を名乗って不適切な内容をくり返したりすることにも注意が必要です。

コンプライアンス違反による企業へのリスク

コンプライアンス違反に対して、以下の法令により処分や罰則を受けます。

  • 個人情報保護法(改正法で罰則強化)
  • 金融商品取引法(粉飾決算に対する刑事罰)
  • 労働基準法(過重労働是正命令)

内容にもよりますが、行政から違反を指摘されることそのものよりも、その事実が世間で認知されることの影響の方が大きい場合もあると認識しましょう。罰金を払ったり是正命令に対する改善計画を提出したりするだけでは終わらず、長期にわたって経営にダメージを与えるリスクがあります。

コンプライアンス違反が企業にもたらすリスクとしては、以下のような事態が想定されます。

経済的リスク 罰金・課徴金(脱税や不正受給で重加算税が課される例も)
株価への影響や投資家離れ
経営的リスク 経営陣の刑事責任(懲役・罰金)
行政指導や業務改善命令、業務停止命令
長期的リスク ブランド棄損(回復に数年~数十年を要する)
業界での地位低下(入札資格喪失など)

コンプライアンス体制整備のポイント

最後に、企業がコンプライアンス体制を整備するためのポイントについてご紹介します。

コンプライアンス研修を実施する

コンプライアンス研修は、従業員の法令遵守意識を高めるために不可欠です。

実施にあたっては、まずアンケート調査で従業員の理解度を把握し、対象者(新入社員・管理職・役員など)や部署ごとにカスタマイズしたプログラムを組む必要があります。加えて、定期的な実施スケジュールも策定しましょう。

具体的には、専門講師による対面研修やeラーニングなどを活用し、ケーススタディを通じて実践的な判断力を養うことがポイントです。研修後は理解度テストやアンケートで効果を測定し、継続的な改善を行うことも重要です。

また、管理職には部下指導のためのリーダーシップ研修を、役員には経営責任を問われる事案への対応訓練を重点的に行うことも必要です。

教材には自社の行動規範や過去の違反事例も盛り込み、実践的な学びにつなげることが大切です。

従業員の意識を向上させる

研修の実施だけでなく、日常的なコミュニケーションを通じてコンプライアンス文化を定着させましょう。例えば、社内ニュースでの事例紹介や表彰制度の導入により、法令遵守が企業価値を高める行動だと従業員に認識してもらう方法などがあります。

特にハラスメント防止や情報管理についてはくり返し周知し、部門ごとのロールプレイング訓練で実践力を養うことが有効です。

情報漏洩対策を講じる

個人情報や機密データの管理は、コンプライアンスの重要課題です。データやドキュメントへのアクセス権限の厳格化や暗号化技術の導入に加え、紙文書の取り扱いルールを徹底する必要があります。

また、クラウドサービス利用時にはベンダーとの契約内容を精査し、業務委託先の監査も定期的に実施すべきです。

不正防止策を講じる

不正リスクを抑止するには、複数名による入出金の多重承認などの仕組みを作っておくことが有効です。特に経理部門では作業の分業化を推進し、一つの業務を単独で完結させない体制を構築することが重要です。

相談窓口を設置する

内部通報窓口は、コンプライアンス違反を早期に発見するための重要な仕組みです。匿名での報告を可能にし、報復防止措置を徹底することで、従業員が安心して利用できる環境を整える必要があります。

窓口担当者は独立性の高い部署(監査部門など)が担当し、通報内容に応じて迅速な調査と是正措置を実施することが重要です。また、定期的な運用評価を通じて制度の信頼性を高めることも求められます。

コンプライアンスに関連する取り組みを定期的に見直す

少なくとも年1回など定期的にコンプライアンス体制の見直しを行い、新たな法令改正や社会情勢の変化に対応することも必要です。特に、内部監査の結果や通報窓口のデータを分析し、リスクが集中する部門に対して重点的な対策を講じることが求められます。

適切なコンプライアンス体制を整備しよう

コンプライアンス違反が社内で発生すると、短期的な経済的・経営的ダメージに加え、長期にわたるブランド棄損や業界内での地位低下など、さまざまなリスクが想定されます。そういったリスクを避けるためにも、ソフト・ハード両面での体制整備が必要です。

自社が持続的に成長し、業界内で競争力を維持し続けられるよう、自社のコンプライアンス体制が適切かどうかを継続的に見直しましょう。

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監修者

HRナレッジライン編集部

HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。

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