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人件費削減とは?メリット・留意点や具体的な方法を解説!

公開日:2023.02.10

更新日:2025.01.29

企業の課題

企業はさまざまな費用を支出し、利益を生み出すために活動します。

ただし、経営状態あるいはさまざまな要因によっては、支出の見直しを求められることがあります。費用の中でも大きな割合を占める人件費の削減は、さまざまなメリットがある反面、留意点やリスクもあります。

本記事では、人件費削減のメリットや留意点に加えて、人件費削減の具体的な方法や成功させるためのポイントを解説します。

人件費とは?

人件費とは、企業が支出する経費の中で「社員の労働」などに対してかかる費用を指します。

この章では、人件費の種類や計算方法について詳しく解説します。

人件費の種類

人件費と聞くと、社員に支払う「給与」をイメージする方が多いのではないでしょうか。実は、それ以外にもさまざまな費用が人件費に含まれます。

人件費に分類される代表的な費用は以下の通りです。

  • 給与・賞与・雑給
  • 福利厚生費
  • 法定福利費
  • 退職金
  • 人材研修費・採用費

採用コストについては、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>採用コストとは?相場や削減方法について徹底解説

人件費率の計算方法

人件費率は、売上高に対する人件費の割合であり、以下の計算式で算出可能です。

人件費率(%)= 人件費 ÷ 売上 × 100

仮に売上が1,000万円、人件費が200万円の場合、人件費率は以下の通りです。

200万円(人件費) ÷ 1,000万円(売上) × 100 = 20%(人件費率)

業種ごとの人件費率

人件費率は、業種によって大きく異なります。主な業種の人件費率は以下の通りです。

業種 人件費率
建設業 6~12%
製造業 5~12%
情報通信業 14~28%
運輸業・郵便業 8~16%
卸売業 4~6%
小売業 11~13%
不動産業 7~15%
宿泊業・飲食サービス業 27~33%
生活関連サービス業・娯楽業 11~21%
サービス業 17~22%

※引用:e-stat|中小企業実態基本調査 / 令和3年確報(令和2年度決算実績) 確報

人件費削減によるメリット

人件費を削減することによる、主なメリットをご紹介します。

人件費以外の費用も削減できる

人件費を削減すると、人件費以外の費用も削減できます。

例えば、業務効率化の結果、残業時間の大幅な削減に成功したと仮定します。その場合、水道代や電気代といった水道光熱費をはじめ、携帯電話料金や通信費などの経費を削減できる可能性があります。また、文房具やガソリン代などの消耗品費も同様です。

このように、人件費を削減することでその他の費用の削減につながる点はメリットといえます。

事業投資の可能性が広がる

人件費を削減すると、事業投資の可能性が広がります。

企業が長期にわたり事業を継続するためには、適切なタイミングで事業投資を行うことが重要です。ただし、その投資を行うためには、原資が必要となります。

人件費削減によって生み出された余剰資金を原資とすることで、既存事業の拡大や新規事業の創出など、事業投資の可能性を広げることができます。

金融機関からの評価や株価が上がる

人件費を削減すると、金融機関からの評価や株価が上がる可能性があります。

企業が事業拡大を行うとき、あるいは自己資金が不足したときは、資金調達を行う必要があります。資金調達にはいくつかの方法がありますが、金融機関からの借入はその一つです。

人件費を削減し、利益の増加や財務状況の好転が実現された場合は、金融機関からの評価が上がり、融資を受けやすくなることがあります。同時に、投資指標が向上し、株価の上昇が期待できる場合もあります。

人件費削減による留意点とリスク

人件費削減にはさまざまなメリットがある反面、留意点やリスクもあります。具体的には以下の通りです。

労働意欲が低下する

人件費を削減すると、労働意欲が低下するリスクがあります。

社員にとって、毎月の給与や年に数回の賞与は労働に対する意欲を維持、向上させる効果があります。内閣府の「令和3年度の世論調査」によれば「働く目的」として「お金を得るために働く」と回答した人が61.1%という結果でした。

安易に給与や賞与を削減し、社員の意欲を低下させないよう、取り組むべき手段を検討していく必要があります。

企業イメージが低下する

人件費を削減すると、企業イメージが低下するリスクがあります。

企業が経費を削減する場合、「即効性」や「効果」などを考慮して優先順位をつけて実行します。一般的には、以下のような経費の削減から着手します。

  • 水道光熱費などのエネルギー関連コスト
  • コピー代や通信費などのオフィス関連コスト
  • 出張などに関するコスト
  • オフィスの賃料などに関するコスト

そのため、人件費を削減するということは経営が逼迫ひっぱくした状態にあると判断されてしまいます。また、社員に優しくない企業というイメージになりかねません。

人材不足で生産性が下がる

人件費削減のために社員数を減らすと、人材不足で手が回らなくなり、一人ひとりの生産性が下がるリスクがあります。

また、給与や賞与が削減された場合、会社に対する不満は大きくなり、退職リスクも高まります。このリスクは、ハイスキルな人材あるいは実績が豊富な人材ほど大きなものとなるでしょう。

人材不足に陥ると、これまで対応できていた業務を同一時間で終わらせることができなくなります。この状況になると、残った社員が抱える業務量は限界を超え、心身の不調が発生するリスクも上がってしまいます。

結果として、さらなる人材不足を招くという悪循環に陥ってしまうリスクも考えられます。

人材不足なのに人件費を削減する目的については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>人手不足なのに人件費を削減する目的や人手不足の解消方法について

法律に抵触する恐れがある

人件費を削減すると、法律に抵触する恐れがあります。

労働契約に関する基本的な事項を定めた労働契約法には、以下の条文があります。

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

※引用:e-GOV 法令検索 | 労働契約法 第8条

この条文からも分かるように、労働者の合意を得ないまま、一方的に企業側が給与などの人件費を削減することは法律違反となってしまうリスクがあります。

人件費削減の具体的な方法

ここまで人件費削減のメリットや留意点などを説明しました。では、人件費削減が必要な局面になった場合、どのように進めればよいのでしょうか。

次に人件費削減の具体的な方法を解説します。

業務フローの改善

1つ目の方法は、業務フローの改善です。

業務フローは、時代の流れや環境の変化に合わせて、常に最適化していく必要があります。ただ、現実としては長年の慣習などにより、固定化された業務フローに多くの「無駄」が入り込んでいることがあります。そのため、どの工程にどのくらいの人数を投入すべきか、あるいは削減できるかを定期的に見直し、改善することが重要です。

どの企業でも必ず発生する事務業務の効率化について詳しくこちらで解説しています。ぜひご覧ください。
>>事務効率化によるメリットとは?効率化のためのコツもご紹介

ITシステムやツールの活用

2つ目の方法は、ITシステムやツールの活用です。

人件費を削減するためには、既存業務の省力化を検討しましょう。ITシステムやツールを活用すれば、現在より少ない人数でも同一の業務量に対応できる可能性があります。

また、人材管理システムなどにより社員のモチベーションを管理あるいはコントロールすることで、パフォーマンスを高める方法もあります。

これらのITシステムやツールを活用すれば、生産性向上による人件費削減を期待できます。

既存社員のスキルアップ

3つ目の方法は、既存社員のスキルアップです。

研修やOJTなどにより既存社員がスキルアップできれば、生産性は向上します。

同一の業務量でもスキルアップにより生産性が向上した結果、作業完了までの時間が早くなれば、より多くの仕事をこなせるようになります。

その結果、人件費を削減できる可能性があります。

アウトソーシングの活用

4つ目の方法は、アウトソーシングの活用です。

自社で行うべき業務と、外部に委託可能な業務を整理して、一部業務のアウトソーシングを検討しましょう。アウトソーシングを活用すれば、業務量に合わせながら人件費を最適化できます。

アウトソーシングについてこちらでさらに詳しくご説明しています。
>>【分かりやすく解説】アウトソーシングとは?活用方法と派遣との違い

人件費削減の失敗パターン

実際に人件費の削減で失敗した企業は少なくありません。ここでは、人件費削減の失敗例をご紹介します。

減給や人材不足がモチベーションを低下させる

社員は「減給 = 会社から必要とされていない」と捉え、モチベーションを大きく低下させてしまうリスクがあります。

また、満足できる報酬を得られない場合や減給に強い不満を感じる場合は、退職を選択する人も増えるでしょう。

その結果、組織が人材不足に陥ったり、職場の雰囲気が悪化するなど、減給対象以外の社員に対してもネガティブな影響を及ぼす点にも注意が必要です。

労働時間が減らずサービス残業が横行する

現場の業務状況を把握しないまま、人件費を削減してしまうと、本来必要であった要員まで削減してしまうリスクがあります。

その結果、目の前にある業務を消化するために労働時間が増え、サービス残業が横行することもあります。

人件費削減を成功させるポイント

人件費削減は大きなリスクがあり、失敗するケースも少なくありません。では、人件費削減を成功させるためには、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。

この章では、人件費削減を成功させるポイントを解説します。

現場のヒアリングを行う

まず、現場のヒアリングを行います。

人件費削減を成功させるためには、現場ではたらく社員へのヒアリングが重要です。ヒアリングのポイントとしては、以下の点が考えられます。

  1. どのような業務があるのか
  2. どのような人材が必要なのか
  3. 余剰のある業務はあるか

もちろん、現場の声が必ずしも正しいとは限りませんが、取り組みをスムーズに進めるには現場の意見をふまえた対応を取ることが求められます。

改善方法を洗い出す

次に、改善方法を洗い出します。

ビジネスシーンでは、正解が1つであることの方が少なく、さまざまな策を検討する必要があります。思いついた改善方法に着手するという方法もありますが、それでは費用対効果のシミュレーションなどができません。

そのため、可能な限り改善方法を洗い出すことが重要です。

徐々に改善策を実行していく

最後に、徐々に改善策を実行します。

人件費削減を一気に進めてしまうと、人手不足や社員間のあつれきなどさまざまな弊害が発生してしまい、業務が立ち行かなくなる恐れがあります。

徐々に改善策を実施することで、現場に必要以上の負担をかけずに人件費を削減できるでしょう。

人件費削減のメリット・留意点を理解する

本記事では人件費削減のメリットや留意点をご紹介しました。

企業にとって、人件費は重要かつ大きなコストになり得ます。そのため、時には人件費削減に踏み切る必要もあります。ただし、現場の意見を無視した人件費削減、あるいは計画性に乏しい人件費削減は、残された社員や企業にとって、業務負担や悪影響につながる可能性があります。

そのような状況を防ぐためにも、本記事でご紹介した内容を参考にしながら、人件費削減を慎重にご検討ください。

その他、コスト削減についてはこちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>コスト削減とは?発生するコストごとに具体的な施策をご紹介

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