HRナレッジライン

カテゴリ一覧

知っておきたい労働者派遣法の違反例についてわかりやすくご紹介

公開日:2023.11.09

法律

派遣先企業は、派遣スタッフを守るために制定された労働者派遣法を遵守して派遣スタッフを受け入れる必要があり、違反した場合は厳しい行政処分が科せられるおそれがあります。
派遣先企業の担当者は受け入れる前にあらかじめ正しい知識を身につけて、日々の業務を行うことが大切です。労働者派遣法における違反事例や罰則規定、禁止されている派遣行為などを解説する中で、「派遣スタッフを受け入れるにあたって気をつけるべきこと」「派遣法において違反となる行為は何か」といった知識を身につけましょう。

労働者派遣法の違反となる行為について

派遣先が労働者派遣法に違反した場合、行政処分を科せられる可能性があります。ここでは、労働者派遣法違反の代表的な事例をご紹介します。「知らなかった」とならないように、派遣スタッフを受け入れる際には事前に確認し、違反となる行為をしないように気を付けましょう。

労働者派遣法とは派遣スタッフを守るための法律のことです。人材派遣会社などが行う労働者派遣事業が適切に運営されることと、派遣スタッフの権利を保護することを目的に制定されました。

労働者派遣法については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>【最新版】 労働者派遣法とは?詳しい内容や歴史、違反例を分かりやすく解説

派遣受け入れ時に派遣スタッフを特定する行為の禁止

企業が派遣スタッフを特定して受け入れる行為も禁止されています。例えば事前に履歴書の提出を求めたり、面接行為をすることが該当します。

特定行為については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>派遣の特定行為とは?禁止の背景や注意点をわかりやすく解説

同一事業所における派遣契約期間の制限

派遣スタッフを受け入れる際には労働者派遣の期間制限を厳守しなければなりません。同一の事業所において3年を超えて派遣スタッフを受け入れることは違法となります。3年を超えて就業してもらいたい場合は、過半数労働組合などへの意見聴取を行い派遣期間の延長を行うか、直接雇用に切り替える必要があります。

派遣の抵触日については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>派遣の抵触日とは?抵触日の種類や派遣先企業の注意点について解説

二重派遣の禁止

二重派遣とは人材派遣会社から派遣された派遣スタッフを他の企業に派遣し、その企業の指揮命令で就業させることです。例えば人材派遣会社であるA社がB社に労働者を派遣し、B社の指揮命令下で就業するのは問題ありません。A社から派遣された派遣スタッフをB社がC社に派遣して、C社の指揮命令で就業することを二重派遣といい、違法となります。

同一労働同一賃金

現在の労働者派遣法では同一労働同一賃金が原則となっています。派遣スタッフにも、同種の業務に従事する正規雇用労働者と同等の待遇が求められます。

同一労働同一賃金については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>同一労働同一賃金での中小企業への影響とは?ガイドラインなどをご紹介

労働基準法、労働安全衛生法などの適用

派遣スタッフであっても労働基準法や労働安全衛生法などを遵守しなければなりません。これらの法律を遵守して業務に従事させていれば問題はありませんが、労働者派遣法上、派遣スタッフの労働時間の管理責任は派遣先企業に課されており、派遣元(人材派遣会社)が定めた36協定の上限時間を超える時間外労働をさせた場合には、派遣先が労働基準法違反として罰則の対象となります。

労働基準法については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>労働基準法とは?概要やルールをわかりやすくご紹介

派遣契約解除時の留意点

人材派遣会社は、派遣スタッフの雇用を守らなければいけません。派遣先企業から労働者派遣契約が解除された場合、派遣スタッフのあらたな就業機会を確保する必要があります。例えば人材派遣会社が別の派遣先を探す、企業と連携して派遣先の関連会社などで受け入れるといった措置をとっていれば問題ありません。企業はなるべく派遣スタッフが就業し続けられるよう、人材派遣会社に協力する必要があります。

離職後1年以内の派遣スタッフの受入禁止

企業を離職して1年以内の労働者を同一の企業が派遣スタッフとして受け入れることはできません。例えば、A社の契約社員として東京支社ではたらいていた人が退職して、半年後に派遣スタッフとしてA社の横浜支社に就業するといったことができません。例外として「60歳以上の定年退職者」は1年以内に派遣スタッフとして受け入れ可能です。

日雇派遣の原則禁止

日雇派遣とは1日ごともしくは30日以内の期間を定めて就業することを指します。例外はあるものの、基本的に「今日だけ」「1週間だけ」という日雇派遣は禁止です。人材派遣会社は、例外に該当する場合や、31日を超える雇用期間のある派遣スタッフを派遣することが可能です。

日雇派遣については、こちらでさらに詳しくご説明しています。
>>日雇派遣は原則禁止?例外となる条件、メリットや留意点を徹底解説

労働者派遣法に違反した場合は行政処分が下される場合がある

派遣先企業が労働者派遣法に違反した場合、以下のような行政処分が科せられる可能性があります。

企業名の公表

派遣スタッフを派遣禁止業務に従事させている場合や、労働者派遣事業許可をもっていない者から労働者派遣サービスを受けている者は、違法行為を是正するよう勧告され、勧告に従わない場合は、企業名が公表されることがあります。

罰則の対象となる

派遣先管理台帳の整備、派遣先責任者の選任が適切に行われていない場合は、罰則の対象となり、30万円以下の罰金が科されます(労働者派遣法61条3号)。

業務改善命令

重大な違反があり、口頭や文章による指導で改善されない場合は、改善命令が出されます。改善命令を受けた派遣先企業は、改善計画を作成して計画に従って是正処置を行う必要があります。労働局の指導や監視を受け、是正完了まで追跡調査されます。

労働者派遣法違反のよくある事例

労働者派遣法違反で人材派遣会社や派遣先企業が処分を下されることがあります。特に注意が必要な事例を2つご紹介します。

外国人派遣スタッフが不法就労をしたケース

外国人派遣スタッフが不法就労をした場合、不法就労助長罪が適用されるのは、原則として派遣スタッフと人材派遣会社です。しかし派遣スタッフのオーバーステイが発覚した際、派遣先企業がその事実を知った(知っていた)にもかかわらず、その外国人派遣スタッフをはたらかせていた場合には、派遣先企業も不法就労助長罪に問われる可能性があります。派遣先企業が、受け入れ時に外国人派遣スタッフの在留カードを確認することなどは個人情報保護の観点からできません。
在留カードの確認は人材派遣会社の責任です。派遣先企業は、確認をしているかなどを人材派遣会社に念のため問い合わせてみましょう。

30日以内の日雇派遣をしたケース

2012年の労働者派遣法改正により、「日雇派遣」が原則として禁止されました。日雇派遣とは、人材派遣会社が「日々または30日以内の期間を定めて雇用する派遣スタッフを派遣すること」をいい、例外条件に該当する場合を除き、原則禁止されています。
人材派遣会社と派遣先企業との「派遣契約期間」を制限するものではありませんので、例えば3日間の派遣契約を締結し、その期間のみ派遣サービスを利用することも理論上は可能です。しかし、派遣先企業との「派遣契約期間」と派遣スタッフとの「雇用契約」を同一期間とする人材派遣会社も多く、派遣契約の締結可否に影響する場合があります。

  • 日雇派遣禁止の例外として認められる場合

(1)業務が以下の場合 (政令第4条第1項に定められた業務)

1号 情報処理システム開発
2号 機械設計
3号 事務用機器操作
4号 通訳、翻訳、速記
5号 秘書
6号 ファイリング
7号 調査
8号 財務
9号 貿易
10号 デモンストレーション
11号 添乗
12号 受付・案内
13号 研究開発
14号 事業の実施体制の企画、立案
15号 書籍等の制作・編集
16号 広告デザイン
17号 OAインストラクション
18号 セールスエンジニアの営業、金融商品の営業

(2)労働者が以下の場合(派遣元と派遣スタッフの間で、要件に該当するか否か確認)

  • 60歳以上の者
  • 雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる昼間学生)
  • 副業として従事する者(生業収入が500万円以上の者)
  • 主たる生計者以外の者(世帯収入が500万円以上あり、世帯収入に占める本人の収入割合が50%未満の者)

労働者派遣法の違反となる行為を覚えておく

派遣スタッフを守るために制定された労働者派遣法は、人材派遣会社も派遣先企業も遵守すべき法律の一つです。しかし法改正が行われた際や、どのような行為が違反に該当するのか、わかりにくくなることもあるかもしれません。
派遣スタッフ受け入れ時に面接をしていないか、気が付かないうちに二重派遣の状態になっていないか、派遣契約期間の制限を守れているかなど、派遣先企業としての違反行為や注意すべきポイントをきちんと把握し、派遣スタッフがはたらきやすく、その能力が十分に発揮できる職場環境を目指しましょう。

おすすめの記事