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本音で語ることの価値 ~現代における信頼構築の鍵~

公開日:2025.11.27

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HRナレッジライン編集部が、管理職の皆さんのお悩みについて一緒に考える「管理職は悩ましい」シリーズ。今回のテーマは「本音で語る」です。
ビジネスのグローバル化、テクノロジーの進化、そして多様性の拡大により、企業を取り巻くコミュニケーションの在り方は大きく変化しています。従来の「察し合う」文化に根ざした日本的なスタイルでは、価値観や背景の異なる相手との意思疎通が困難になる場面も増えてきました。こうした時代において、互いの立場や考えを率直に伝え合う「本音のコミュニケーション」が、信頼関係の構築と成果の最大化において、これまで以上に重要な意味を持つようになっています。
しかし「部下の本音を聞きたい!」と思う反面、自分の本音を伝えるのは難しいと思う方も多いのではないでしょうか。 なぜ今「本音で語ること」が求められているのか、その背景やチームにもたらすもの、実践のポイントについて考えます。

なぜ本音で話すことが重要なのか

コンテクスト文化の違いがもたらすコミュニケーションの課題

現代のビジネス環境は、かつてないほど多様性に富み、変化のスピードが加速しています。こうした状況下では、従来の日本的な「察し合う」コミュニケーションスタイルが、必ずしも効果的とは限りません。

日本は「ハイコンテクスト文化」に分類され、言葉にしなくとも相手の意図をくみ取ることが美徳とされてきました。これは「あうんの呼吸」や「空気を読む」といった言葉に象徴されるように、共通の価値観や経験を前提とした暗黙の了解によって成り立っています。

一方、欧米諸国を中心とする「ローコンテクスト文化」では、言語による明確な説明が重視され、直接的かつ論理的なコミュニケーションが求められます。グローバル化が進む現在のビジネスシーンでは、こうした文化的背景の違いが、意思疎通の障壁となることも少なくありません。

そのため、本音で語ること=率直かつ誠実な意思表示が、信頼関係の構築と成果の最大化において、ますます重要な要素となっています。

コンテクスト文化の違い

種類 特徴 その傾向が強い国
ハイコンテクスト文化
(言語依存度が低い、察し合う文化)
  • 曖昧な表現を好む
  • 多くを話さない
  • 質疑応答の直接性を重視しない
主に日本、アジア諸国
ローコンテクスト文化
(言語依存度が高い、説明が求められる文化)
  • 直接的で分かりやすい表現を好む
  • 単純でシンプルな理論を好む
  • 質疑応答では直接的に答える
主に欧米諸国

組織における「本音」の役割とは

本音とは「本心から出た言葉(大辞林)」という意味です。ビジネスや組織における本音とは、単なる感情の吐露ではなく、業務や取引の成功を目指す真摯な意思表示です。組織において本音が果たす役割は多岐にわたります。
本音で語り合うことは、その仕事や取引が目指す理想、ビジョンを明確にする効果があり、また、本音を語ることが当事者同志の本気さ、前向きさを伝える効果があります。

ビジネスや組織で「本音」が表現するもの

  • 目指す理想やビジョンの共有
  • 相互のメリットを明確にする対話の起点
  • 当事者の本気度・前向きさの伝達
  • 信頼関係の構築と維持
  • 意思決定の迅速化と質の向上

本音で語ることは、単なる情報交換を超え、組織の成長や個人の成熟に寄与する戦略的コミュニケーションといえるでしょう。

本音によるコミュニケーションのメリット

本音でのコミュニケーションのメリットには次のようなものがあります。本音で話すことで、議論がスピードアップし、内容が深まり、互いの関係性を構築することが可能になります。議論を早期に深められることで新たなアイデアが生まれるなど、より高度な仕事ができるようになります。また、相手に本音で話すことで取り組みへの真剣さが増し、それが自身を成長させることにもつながります。

本音によるコミュニケーションのメリット

  • 自分が率直に話すことで、相手の本音を引き出すことができる
  • 対等な立場での建設的な議論が可能になる
  • 議論の深度が増し、新たなアイデアの創出につながる
  • 短期間で信頼関係を構築できる
  • 自身の言葉を精査する習慣が身に付き、成長につながる
  • 業務上のストレスやフラストレーションを軽減できる

これらのメリットは、単なる対話の質を高めるだけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にも直結する要素です。

本音で語るための基本姿勢と実践ポイント

「真摯に取り組む」「相手のことを考える」が大切

本音でのコミュニケーションでは「真摯に取り組む」「相手のことを考える」ことが大事になります。その第一歩は自分の本音をはっきりさせることです。自分の本音がはっきりしていれば、相手の普段の言動や行動から、それに対する相手の反応はある程度予測できます。そこから「なぜ相手がそのような反応になるのか」と理由を考えていくと、相手の本音が何かを想像できるようになるでしょう。互いの本音がわかれば相手との関係性や思いが明確になり、なぜ今本音のコミュニケーションが大事かという理由も自覚できます。そうした準備をしたうえで、「互いによい方向に向かうために行っている」ことを相手が納得するまで何度でも説明しながら、話を進めていきます。最終的に相手に選択権を与えるつもりで話すようにすれば、よりよい結果につながるはずです。

本音でのコミュニケーションの基本

  • 自身の本音を明確にしておく
  • 対面での対話を重視し、表情やトーンを活用する
  • 相手との関係性を踏まえた段階的な伝え方を心がける
  • 組織内に「心理的安全性」を構築する
  • 話す目的とタイミングを意識する
  • 相手に選択権を与える姿勢で臨む

ちなみに、組織内で心理的安全性を構築するためには、「発言の機会を皆に均等に与える」「競争よりも協力し合う関係性を目指す」「普段からポジティブ思考を持つ」「新人はチーム全体で支援する」「組織内の風通しをよくする」といったことがポイントになります。
また、SNSなど文字中心のコミュニケーションでは、トーンや表情が伝わりにくく、誤解を招くリスクが高まります。だからこそ、対面での本音の対話が今後ますます重要になるといえるでしょう。

本音を伝える技術とバランス感覚

互いに同レベルで「本音で語れている」と思えるバランスを感じる

自分が本音を言って話を進めるためには、相手にも本音を話してもらう必要があります。そのうえで相手とスムーズに話すには「お互いが同じようなレベルで本音を語れているな」と思える「本音のバランス」を意識することが重要です。そのため、自分が本音を話したらそれに対応する相手の本音を聞き出す、自分が強い言い方をした場合はフォローを入れる、相手の立場に配慮した言い回しを選ぶなど、言葉の選び方と態度の工夫が求められます。

スムーズに相手に本音を伝えるコツ

  • 相手の立場に立った言い方をする
  • 自分が本音を言ったときは、相手の本音を引き出すような質問をする
  • 言いづらい内容は、たとえ話や前置きを活用する
  • 強い言い方には、必ずフォローの言葉を添える
  • 相手を引きつけるような言い方や態度を意識する
  • 本音を伝えることが上手な人の言動を観察し、学ぶ

伝える難しさを知れば、本音の会話はうまくなる

本音を伝えるうえで、もっとも難しい媒体といえるのがSNSです。SNSを見ていると、誤解を招かずに本音を伝えることがいかに難しいかがわかります。SNSの特徴は「文章で伝える」「基本的に文章は短い」「言葉のトーンが伝わりにくい」「相手の表情が見えない」「基本的に相手に突然伝わる」などです。実際にSNSにある文章を読んでみると、さまざまな捉え方ができ、どんなトーンで言っているのかわからない例が多いことに気付きます。そのため、本音をスムーズに伝えるには、これらと逆のことを行うのが効果的です。例えば「相手に会って、言葉で伝える」「物事の前後を伝える」「言葉のトーン、話すときの表情を大事にする」といったことがポイントになります。本音を語るうえで、その本音が誤解されることは実に怖いことだといえます。

現在のビジネス環境においては、本音で語ることが信頼と成果を生む鍵となります。相手を尊重しながら、自身の思いを率直に伝えることは、組織の風通しを良くし、より良い人間関係と成果につながるのです。

本音の対話は、単なる言葉のやり取りではなく、未来を共に創るための意思の共有です。今こそ、私たちは「本音で語る力」を磨き、より良いビジネスの在り方を築いていくべき時代に来ているのではないでしょうか。

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