HRナレッジライン

カテゴリ一覧

【年末調整×人手不足】繁忙期の負担を減らす人材派遣という選択肢

公開日:2025.09.30

人事ナレッジ

年末調整の繁忙期は、企業が集中的に処理を行う必要がある一方で、人手不足が深刻化しやすい時期でもあります。通常業務と重なる負担をどう軽減していくか、多くの企業で課題となっています。

その対策として注目されているのが、人材派遣の活用です。即戦力となる人材をスポットで確保することで、年末調整業務の混乱を未然に防ぎ、効率化を図ることが可能になります。

年末調整で深刻化する人手不足:人事の現場で何が起きている?

年末調整の時期になると、人事・労務担当者からこんな声がよく聞かれます。

「給与計算や勤怠チェックと重なって、手が回らない」
「申告書の確認作業が手作業で、深夜対応が続いている」
「人手が足りず、他部門の社員に応援を頼むしかない」

特に中小企業では、年末調整を少人数の人事・総務部門で回しているのが現状です。
繁忙期のピークには、本来の業務に支障をきたすケースも少なくありません。

さらに、拡大する控除制度への対応や新たな法改正に伴う申告書の変更など、毎年少しずつ増える作業も労務担当者を悩ませる要因となっています。
特に2025年以降は、年末調整に関わる所得控除の見直しなども予想されており、従業員への周知や新たな計算方法の習得など、労務担当者にとって負担の増大が懸念されます。

年末調整期に人手不足が起きやすい理由

年末調整が行われる11月~12月は、年間でも特に業務が集中する時期です。
給与計算や勤怠管理といった通常業務に加え、家族構成の変更や収入状況の確定など、決まった期間内に人事・経理部門が同時進行で対応すべきタスクが増え、結果的に処理量が急増します。
こうした短期間での大量処理は、人的リソースが限られる企業にとって大きな負担となります。

さらにこの時期は、年末年始の予定に合わせて早めに休暇を取得するため社員の有給取得や長期休暇が重なり、社内全体で人が少なくなることも多いです。また、パートスタッフも休みに入りやすく、サポート要員を増やそうにも確保が難しくなる傾向にあります。

こうした状況により、少ない人数で膨大な業務を抱えることとなり、人事・総務部門は一気に多忙になります。

労務担当者の負荷が増える要因

年末調整の手続きは年々複雑化しており、基礎控除や扶養控除の要件見直し、さらには控除限度額の拡大など、法改正への対応が必要になります。
これに加えて従業員への周知や書類の確認、計算誤りのチェックといった多岐にわたる業務をこなさなければなりません。

こうした状況では、専任の労務担当者が不足している企業ほど、期末に業務が重なり負担の増大につながります。また、業務の特性から属人化されやすく、特定の担当者しか内容を把握しておらず他の人が代われない状態が慢性化しているケースもあります。

結果として、人手不足に起因する業務の遅れが生じ、ミスのリスクや従業員からの問い合わせ増加も重なって現場はさらに忙しくなってしまいます。
さらに、近年のテレワーク化により、紙使用をベースとする業務との折り合いがつかず混乱するケースもあります。

現場を圧迫する突然の欠員と対策の遅れ

年末調整が最繁忙に差し掛かる時期に、突発的な退職や休職が発生すると、担当者が減って一気に業務負荷が高まります。
欠員が出ても即時に穴埋めできる人材は限られており、そのまま人手不足による作業遅延やミスの増加につながるケースも少なくありません。またマニュアル未整備・引継ぎ不足で、他の社員がカバーできず業務が滞ることもあります。

対策が後手になってしまうと、他の部署からの一時的な応援要員だけでは十分に対応できず、書類提出が年を越してしまうなどのトラブルも考えられます。
こうした緊急事態に備えて、事前に外部リソースやマニュアルを整備しておくことが重要です。

年末調整における人手不足対策

年末調整の繁忙期を「乗り切る」のではなく「備える」ことが大切です。

限られた期間に多くの処理を行う年末調整では、社内リソースだけで対処しきれないケースも多々あります。こうした時には、外部リソースの活用が効果的な選択肢の一つとなります。
例えば、アウトソーシングを利用すれば専用のノウハウを持つ業者に任せることができ、社内担当者の負担を大幅に軽減できます。

一方で、人材派遣を活用する場合には、必要なスキルをもった即戦力の人材を短期的に活用できるメリットがあります。ただし、それぞれコスト構造やリスクヘッジの仕方が異なるため、導入前に自社の状況を見極めることが大切です。

ここでは、アウトソーシングと人材派遣の活用について、それぞれ解説します。

アウトソーシングの活用で負荷を軽減

アウトソーシング(外部委託)では、年末調整のフロー全体や一部業務を外部業者に委託します。 専門性の高いスタッフが関わるため、処理の正確性が高く、法改正などへの素早い対応も期待できます。
さらに、ノウハウを社内に持たなくても良いという点で、企業にとってはリスク低減となる場合も多いです。

一方で、委託先との連携がスムーズにいかないと、進捗確認に時間を取られたり、書類のやり取りが煩雑になったりすることも考えられます。委託範囲や連絡体制を事前にしっかりと決めておくことで、アウトソーシングのメリットを最大化できるでしょう。

申告書のチェックやデータ入力、税額計算など、定型的でルールに基づく業務は、アウトソーシングと相性が良いです。

特に以下のようなケースで有効です。

  • 専門知識をもった社員が社内にいない
  • 人事・労務担当が本来業務に集中したい
  • 処理件数が多く、ミスが許されない環境で作業品質を担保したい

また、最近ではクラウド型の年末調整アウトソーシングサービスも充実しており、紙のやり取りを減らすことで、申告書の提出率向上や業務の可視化にもつながります。

年末調整のアウトソーシングについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
>>年末調整のアウトソーシングとは?業務委託できる内容やメリットをご紹介

一時的な人材派遣の活用

人材派遣を活用するメリットは、必要な期間とスキルを指定してピンポイントで即戦力を補強できるにあります。
社内のフローやルールに沿って動く必要がある業務(例:書類の仕分け、社員からの問い合わせ対応など)は、短期の派遣社員を活用するのが効果的です。

人材派遣は、特に以下のようなケースで有効です。

  • 必要な期間だけ、即戦力を確保したい
  • 書類の物理的な整理・入力など、人手が欲しい作業を任せたい
  • 業務を見ながらその場で業務指示をしたい

派遣会社によっては、年末調整の実務経験があるスタッフを紹介してくれるケースもあります。労務に関する知識を持った人材を派遣してもらうことで、年末調整の実務に即対応しやすくなり、既存社員の負担が減るメリットもあります。

また、契約期間を限定しているため、繁忙期が過ぎた後はコストを抑制しやすいのも利点でしょう。社内にノウハウをある程度残したい場合にも、派遣社員と協力しながら作業マニュアルを整備するという方法があります。

アウトソーシングか人材派遣、どちらが良いか迷ったら

コスト構造やセキュリティ管理、将来的に社内で同様の業務を継続したいかどうかなど、企業の状況によってベストな選択肢は異なります。自社の課題に合った手法を選択することが大切です。

アウトソーシングか人材派遣でどちらが良いか迷った際は、次の表やチェックリストを参考にしてみてください。

アウトソーシングが向いている場合 人材派遣が向いている場合
対象業務の種類 定型業務・ルールに基づいた処理(入力・計算など) 書類整理・社内対応など現場業務・柔軟な作業
必要なスキル・知識 専門的な知識が必要な業務(税務対応など) 社内ルールの理解が必要な業務
業務量の変動 ボリュームが多く、効率的に外注化したい 一時的に人手が足りない状況
マネジメント体制 管理の手間を最小限にしたい 指示を出して進めたい(現場で都度調整が必要)
スピード・即応性 スケジュールに沿って着実に処理してほしい 即日~数日以内でサポートが必要
拠点・対応範囲 全国対応OK/リモート前提で進行可能 現地対応が必要/オフィスでの作業が中心
情報セキュリティの観点 外部委託が可能な体制・契約がある 社外に持ち出せない情報を扱う業務がある場合

<チェックリスト>

アウトソーシング向き

  • 書類やデータの処理を大量かつ正確に行ってほしい
  • 社内で税務の専門知識が不足している
  • 社内に手間を増やさずに対応したい
  • すでにクラウド管理などを導入している
  • 一定のスケジュールで確実に業務を遂行したい

人材派遣向き

  • 現場で動ける人手が必要(紙の書類整理や対面対応など)
  • 急な欠員や繁忙による一時的な人材不足がある
  • 自社ルールに沿った対応を求められる
  • 研修・指示をその場で出せる体制がある
  • 就業場所や時間帯に合わせてはたらける人材がほしい

また、以下の記事も参考にしてください。
>>アウトソーシングと人材派遣の違いは?利用シーンや留意点を解説

年末調整業務での人材派遣活用のメリット

限られた人員で対応する中小企業にとっては特に、「必要なときに、必要な人材を確保できる」人材派遣の活用は非常に効果的です。

ここでは、人材派遣を導入する際のメリットをご紹介します。

必要なスキルをもった即戦力の人材を活用できる

過去に年末調整業務の経験を積んだ派遣社員も多く在籍しています。

特に以下のような人材を派遣会社に依頼することで、現場の負担は格段に軽減されます。

  • 年末調整の流れや申告書チェックの経験がある
  • 勤怠・給与計算に関する基礎知識がある
  • 自社が使用している人事システムに対応できる

繁忙期だけのスポット依頼が可能

人材派遣の大きな利点の一つが、「必要な期間だけ依頼できる」という点です。
年末調整のように時期が明確な業務であれば、あらかじめ勤務期間を設定し、ピンポイントで人材を確保することができます。

  • 11月中旬〜12月中旬までの1ヶ月のみ
  • 曜日や時間帯を限定した短時間勤務(週3日勤務など)

上記のように、無駄な人件費を抑えつつ確実に業務を回す体制を整えられることが強みです。

繁忙期に合わせて追加要員を確保することで、既存社員への負担を一時的に軽減でき、全体としての処理品質を落とさずに年末調整を乗り切ることが可能となります。

教える負担も最小限に

年末調整の実務経験を持つ派遣社員なら、最初のレクチャーだけで即日から戦力として活躍できる場合もあります。研修や教育にかかるコストも軽減され、社内リソースの少ない中小企業にとって特にありがたいポイントです。

ただし、独自のシステムやフローを採用している企業では、その部分のレクチャーは必要になります。スムーズに作業を任せられるよう、最低限の引継ぎ資料は準備しておくと良いでしょう。

また年末調整業務が未経験であっても、社員が本来のコア業務に集中できるという点で大きなメリットになります。

人材派遣を依頼する際のチェックポイント

年末調整や繁忙期対応のために人材派遣を検討する際、「とにかく人が来てくれればいい」という考えでは、ミスマッチやトラブルの原因になりかねません。
人材派遣の活用を成功させるためには、事前の確認・準備が非常に重要です。

以下を参考に、スムーズな受け入れ体制を整えましょう。

1. 依頼する業務内容とスキルを明確にする

派遣社員に求める年末調整業務の範囲を事前に洗い出し、必要なスキルや経験をリストアップしておくことが大切です。例えば、申告書のチェック、データ入力、社員対応など、具体的な業務範囲をリスト化し、使用システムがある場合は明示します。

また年末調整業務の経験が必須かどうかも伝えましょう。税務の専門知識が必要なのか、パソコンでの入力作業が中心なのかによって、適合する人材像は大きく変わります。

企業内での業務フローを理解してもらうために、可能であれば年末調整の手順書や以前の実績データなども用意しておくと、職場見学の段階でスムーズに説明できるでしょう。 明確な業務要件は、人材のマッチング精度を高める鍵となります。

人材派遣の依頼について詳しく知りたい方は、以下を参考にしてください。
>>人材派遣を依頼する方法とは?流れやポイントをご紹介

職場見学について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
>>人材派遣の職場見学とは?流れや留意点についてご紹介

2. 勤務条件・期間の調整

年末調整は限られた期間での集中作業となるため、派遣社員が対応可能な勤務日数や時間帯などの条件をしっかりとすり合わせる必要があります。

  • 勤務開始日・終了日、時間帯、勤務日数を決定しておく
  • リモート対応が可能か、出社必須かも確認する
  • 社内の繁忙スケジュールと照らし合わせ、余裕を持った期間設定をする
  • あらかじめ残業に対する考え方や、急な延長があった場合の対応なども協議しておく

「あと1週間早く来てくれていれば…」という後悔を防ぐには、しっかりと勤務条件や期間を固めたうえで、早期依頼をすることがポイントとなります。

3. 情報管理体制の確認

年末調整に関わる個人情報やマイナンバーなど、機密性の高いデータを扱う場合は、派遣社員がそれらに触れることを想定し、セキュリティ対策が必要です。人材派遣会社の情報管理体制や、機密保持契約の有無をあらかじめチェックしておきましょう。
セキュリティ対策は「企業としての信頼性」にも関わります。

4. 契約内容の確認

人材派遣の活用をスムーズに進めるためには、自社・人材派遣会社(派遣元)・派遣社員の三者関係を正しく理解し、契約内容を明文化することが不可欠です。

派遣社員の業務内容、就業場所、就業時間、賃金、契約期間など、詳細な労働条件を明確にすることで、人材派遣会社・派遣先企業・派遣社員の間の認識のずれを防ぎ、トラブルを未然に防ぎます。

また、人材派遣会社と派遣先企業のそれぞれの責任範囲を明確にし、派遣就業が円滑に進むようにします。突発時の対応フローやサポート体制も事前に確認しましょう。

派遣社員の受け入れ時に必要な派遣先管理台帳については、以下の記事を参考にして下さい。
>>派遣先管理台帳とは?記載内容や保管方法を分かりやすく解説

5. 受け入れ体制の準備

派遣社員の就業初日までに、デスクやパソコン、必要書類などの環境を整備しておくことで、作業開始後の混乱や時間の無駄を最小限に抑えることができます。特に、社内システムへのアクセス権限や書類の共有方法などは事前に設定しておくとスムーズでしょう。

  • 初日のスケジュール(挨拶、業務説明、マニュアルの共有)を組んでおく
  • 指導役や質問の窓口となる社員を決めておく
  • 作業場所・アカウント・社内ルール(服装、セキュリティ)なども整備

受け入れ準備を丁寧に行うことで、派遣社員の業務効率が大きく変わります。
また、派遣社員に対しても担当者とのコミュニケーションルールや報告手順を分かりやすく提示しておくことで、短期間でも質の高いパフォーマンスを発揮してもらいやすくなります。

派遣社員の受け入れについては、以下の記事を参考にしてください。
>>派遣スタッフの受け入れとは?初日に必要な準備や留意点について

人手不足に悩まない年末調整へ

適切な人材活用の仕組みを整えることで、年末調整の人手不足問題を効果的に解消できます。自社に合った対策を選び、年末調整をスムーズに進めていきましょう。
忙しくなる前に、まずはお気軽にパーソルテンプスタッフへご相談ください。

人材に関するお困りごとはお気軽にご相談ください

監修者

HRナレッジライン編集部

HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。

編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。

法務監修や社内確認体制のもと、正確な情報を分かりやすくお伝えすることを大切にしながら、多くの読者に支持される存在を目指し発信を続けてまいります。

おすすめの記事