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【企業向け】紹介予定派遣のトラブルを防ぐには 押さえる8ポイントを解説

公開日:2025.09.30

人事ナレッジ

紹介予定派遣とは、人材派遣を経て企業との直接雇用に移行できる仕組みで、採用のミスマッチを防ぐ効果的な手法です。しかし、ポイントを押さえずに進めてしまうとせっかく導入したにもかかわらず、後々トラブルに発展してしまうケースも考えられます。

本記事では、企業が紹介予定派遣を成功させるためにあらかじめ知っておくべき重要なポイントを解説します。ポイントを理解してトラブルを防止し、効率的な採用活動を実現しましょう。

紹介予定派遣の基本

紹介予定派遣とは、最長6ヶ月の派遣期間終了後、派遣社員と派遣先企業双方の合意のもと、派遣社員が派遣先企業の直接雇用(正社員、契約社員など)となることを前提としたサービスです。

派遣期間を通じて企業は派遣社員のスキルや適性を見極めることができ、派遣社員も企業文化や仕事内容を理解できるため、双方にとってミスマッチを防ぐ有効な手段となります。

通常の人材派遣が一時的な人員補充を目的とするのに対し、紹介予定派遣は将来的な直接雇用を視野に入れている点が大きな特徴です。

人材派遣との違い

人材派遣とは、人材派遣会社と雇用契約を結んだ派遣社員が、派遣先企業で業務を行うサービスです。雇用契約は人材派遣会社と派遣社員の間で結ばれ、給与の支払いなども人材派遣会社が行います。

人材派遣は必要な期間、人材を派遣するサービスであり、期間が終了すれば派遣先企業での就業は終了するのが一般的です。

一方、紹介予定派遣は将来的な直接雇用を前提としており、この点が人材派遣と大きく異なります。紹介予定派遣の派遣期間は、企業と派遣社員がお互いを見極めるための期間として設けられています。

項目 紹介予定派遣 人材派遣
サービスの目的 将来的な直接雇用を前提とした
人材採用の支援
一時的な人員補充を目的とした
専門スキルを持つ人材の派遣
雇用元 派遣期間中:人材派遣会社
直接雇用後:企業
人材派遣会社
雇用期間 最長6ヶ月の派遣期間後、
双方合意のもと直接雇用に移行
原則最大3年
直接雇用 予定されている 原則として予定されていない
選考 可能 不可

なお、人材派遣の基本については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
>>人材派遣とは?仕組みや料金、活用時の留意点を解説

紹介予定派遣の基本や仕組み、メリットについては以下の記事でもさらに詳しく解説しています。あわせてお読みください。
>>紹介予定派遣とは?メリットや通常の派遣との違い、留意点を解説

紹介予定派遣でよくあるトラブル

紹介予定派遣には、いくつか注意すべき点があります。事前にどのようなトラブルが起こりうるのか、あるいは、契約違反に該当するのかについて知っておくことで、より安心して紹介予定派遣を利用できるでしょう。

ここでは、特に注意しておきたい2つのトラブルについて解説します。

紹介手数料の返金に関する認識のずれ

派遣期間を経て自社との直接雇用に至った場合、派遣先企業は人材派遣会社に対して紹介手数料を支払うのが一般的です。

しかし、中には紹介された人材が入社後、自己都合で退職してしまうケースも想定されます。

直接雇用後に社員が早期に退職してしまった場合、必ずしもこの紹介手数料が返金されるわけではありません。返金の条件や期間は、企業や人材派遣会社によって異なりますが、この認識に齟齬そごがあるとトラブルにつながることがあります。

紹介手数料に関する契約を結ぶ際には、どのような場合に返金が発生するのか、その期間はいつまでなのかをしっかりと確認しておくことが重要です。これらの条件は通常、契約書に明記されていますので、必ず確認しましょう。

人材派遣会社を通さない直接雇用

紹介予定派遣から、自社との直接雇用に切り替える際、ごく稀に派遣先企業が人材派遣会社に知らせず、当該の派遣社員との間で直接雇用契約を結んでしまうケースが見られます。

しかし、このような行為は契約違反となり、発覚した場合、違約金を請求される可能性が高くなります。加えて、労働者派遣法第26条の10で「人材派遣会社との労働者派遣契約内容に変更が生じた場合、派遣先企業は人材派遣会社に情報を提供しなくてはならない」という主旨の規定があるため、法律に抵触する可能性もあります。

紹介予定派遣でトラブルに陥らないための8つの留意点

紹介予定派遣は、企業の採用活動を支援する一方で、利用にあたっていくつかの注意点もあります。以下に、企業が紹介予定派遣を利用する際に留意すべき点をまとめました。

1.自社の採用ニーズの明確化

紹介予定派遣が自社の採用課題解決に適した手法であるかどうかを、事前に検討する必要があります。通常の直接採用や人材派遣など、他の採用手法と比較検討した上で、マッチした方法を選択することが重要です。

2.紹介手数料に関する明確な合意

直接雇用が成立した場合に発生する紹介手数料については、事前に人材派遣会社から料率、支払い時期など詳細な条件について十分な説明を受け、書面で明確に合意しておく必要があります。

パーソルテンプスタッフの紹介手数料に関して、よくあるご質問を以下のページにまとめています。あわせてお読みください。
>>人材紹介や紹介予定派遣は、いつから紹介手数料が発生しますか?|パーソルテンプスタッフ

3.直接雇用に至らない可能性の考慮

派遣期間満了時に、派遣先企業または派遣社員の意向によって直接雇用に至らない場合があります。この可能性を事前に理解しておき、その際の対応についても検討しておくことが重要です。

4.派遣期間の厳守

紹介予定派遣の派遣期間は法律で最長6ヶ月と定められています。この期間を越えて派遣契約を継続することはできませんので、期間内に直接雇用の判断を行う必要があります。

5.法令遵守の徹底

紹介予定派遣を含む派遣社員の就業には、法律や契約上のルールがあります。派遣契約期間中は人材派遣会社と連携し、法令を遵守した適切な手続きを進めるように注意が必要です。

派遣社員が担当できない業務

労働者派遣法により、派遣社員は以下の業務を担当できません。

  • 港湾での荷役作業
  • 建設現場での作業
  • 警備業務
  • 病院などでの医療行為(ただし、紹介予定派遣は例外的に可能)
  • 弁護士や会計士などの「士」業
  • 労使協議における使用者側の直接的な交渉担当

派遣禁止業務については以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
>>派遣禁止業務とは?3つの禁止理由や罰則、例外業務について解説

契約内容に記載がない業務はできない

派遣期間中は派遣社員に、人材派遣会社との契約で定められた業務以外を依頼することはできません。契約外の業務を依頼すると契約違反になる可能性があります。新たな業務を依頼したい場合は、人材派遣会社に相談の上、契約内容を見直さなければなりません。

二重派遣の禁止

派遣社員を、派遣契約を結んだ会社ではなく、別の会社ではたらかせる「二重派遣」は法律で禁止されています。これは派遣社員の不当な賃金低下につながる可能性があるためです。

二重派遣の禁止については以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
>>二重派遣は違法?禁止の理由と具体例・企業のリスク回避方法まとめ

6.派遣期間中の適切な受け入れと評価

派遣期間は、派遣社員の能力や適性を見極める重要な期間です。企業は、派遣社員に対して適切な業務指示やフィードバックを行い、双方が納得できる評価を行うための体制を整える必要があります。

派遣社員受け入れのポイントは以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
>>派遣スタッフの受け入れとは?初日に必要な準備や留意点について

7.派遣社員の視点の理解と誠実な情報提供

派遣社員は、直接雇用への期待を持ちながらも、一方で将来直接雇用に移行するかどうかは確定ではないという、不安定な立場であることも理解する必要があります。

企業は、派遣社員の立場に配慮した丁寧な対応を心がけることが重要です。

そして、派遣社員が直接雇用を検討する上で、雇用条件、待遇、企業文化といった必要な情報を、可能な範囲で誠実に提供することが望ましいです。透明性の高い情報共有は、双方の信頼関係構築につながるでしょう。

8.長期的な視点での人材育成

紹介予定派遣を通じて採用した人材を、長期的な視点で育成していく計画を立てておくことが望ましいです。直接雇用後のキャリアパスや研修制度などを提示することで、エンゲージメントを高めることができるでしょう。

人事戦略については以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
>>人事戦略とは?定義・プロセスから最新トレンドまで徹底解説!

紹介予定派遣に関するよくある質問

紹介予定派遣に関してよくある質問と回答をまとめました。トラブル対応や料金について解説しているので、紹介予定派遣を検討している際に参考にしてください。

Q1.紹介予定派遣でよくあるトラブルは?

紹介予定派遣でよくあるトラブルは、「紹介手数料の返金に関する認識」のずれと、「人材派遣会社を通さない直接雇用」です。

直接雇用が成立した場合に発生する紹介手数料や、その返金の条件については、事前に人材派遣会社と書面で明確に合意しておく必要があります。

また、人材派遣会社を通すことなく自社との直接雇用に切り替えることは、契約違反となります。

Q2.紹介予定派遣の料金システムはどうなっていますか?

紹介予定派遣の料金システムは、派遣期間中の料金と直接雇用成立時の紹介手数料となります。

派遣期間中は、派遣社員が就業した時間に応じて、実働時間数に時間単価を掛け合わせた金額が派遣料金として発生します。この点は、一般的な人材派遣と同様です。

派遣期間を経て、企業と派遣社員の間で直接雇用が成立した場合、人材派遣会社に対して紹介手数料が発生します。この紹介手数料は、一般的に直接雇用後の年収に基づいて算出されますが、具体的な手数料率は人材派遣会社や紹介する職種、年収などによって異なります。

紹介予定派遣の特徴を適切に理解し、トラブルを防ぎましょう

本記事では、企業の採用活動における選択肢として、紹介予定派遣の基本や、人材派遣との違いや特徴、企業がサービスを利用する際の留意点について解説しました。

紹介予定派遣の留意点を適切に押さえることで、採用のミスマッチやコストを低減し、求める人材を確保するための有効な手段となるでしょう。

「人員補充を検討している」「紹介予定派遣についてさらに詳しく知りたい」「自社の状況に合った人材戦略について相談したい」といったお困りごとのある担当者の方は、どうぞお気軽にお問い合わせフォームからパーソルテンプスタッフへご相談ください。

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監修者

HRナレッジライン編集部

HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。

編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。

法務監修や社内確認体制のもと、正確な情報を分かりやすくお伝えすることを大切にしながら、多くの読者に支持される存在を目指し発信を続けてまいります。

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