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労働契約申込みみなし制度の対象となるのは?ポイントと対策を解説

公開日:2023.12.25

更新日:2025.12.18

法律

「労働契約申込みみなし制度」とは、派遣先が違法派遣を受け入れた場合、その時点で派遣先が受け入れている派遣スタッフに対して労働契約を申し込んだとみなす制度です。

違法派遣によりみなし制度が適用されれば、派遣先企業にも大きな影響が生じます。労働契約申込みみなし制度の概要を理解し、違法派遣に該当しないようどのようなことに留意すべきかを認識しましょう。

労働契約申込みみなし制度とは

労働契約申込みなし制度とは、派遣先企業によって違法派遣が行われた場合に、派遣先企業が派遣元と同一の労働条件で派遣社員へ労働契約を申込んだとみなす制度のことです。

なお、派遣先企業などが違法派遣に該当することを知らず、 かつ、知らなかったことに過失がない場合(善意無過失の場合)は適用されません。

派遣先企業が労働契約の申込みをしたものとみなされた場合、みなされた日から1年以内に派遣社員がこの申込みに対して承諾する旨の意思表示をすることにより、派遣社員と派遣先企業との間の労働契約が成立します。

労働契約申込みみなし制度とは

労働契約申込みみなし制度の対象となる違法派遣5つ

労働契約申込みみなし制度の対象となる違法派遣は以下の5つです。どのような内容が違法派遣になるのかをあらかじめ理解して、トラブルや法令違反のリスクを減少させましょう。

  • 派遣禁止業務で派遣社員を受け入れた場合
  • 無許可・無届の人材派遣会社から派遣社員を受け入れた場合
  • 事業所単位の期間制限に違反して派遣社員を受け入れた場合
  • 個人単位の期間制限を超えて派遣社員を受け入れた場合
  • 偽装請負で受け入れた場合

一つずつ解説していきます。

派遣禁止業務で派遣社員を受け入れた場合

労働者派遣法により、人材派遣が禁止されている業務があります。以下の業務において派遣社員を受け入れることは禁じられています。

  1. 港湾運送業務
  2. 建設業務
  3. 警備業務
  4. 病院・診療所等における医療関連業務

「4.病院・診療所等における医療関連業務」のうち、産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務や、紹介予定派遣によるものなどは対象外です。

派遣禁止業務については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>派遣禁止業務とは?3つの禁止理由や罰則、例外業務について解説

無許可・無届の人材派遣会社から派遣社員を受け入れた場合

許可を受けていない人材派遣会社からの派遣社員の受け入れも、違法派遣となります。許可事業主については、厚生労働省が運営する人材サービス総合サイトで確認できますので、派遣社員受け入れを検討する際には確認しておきましょう。

事業所単位の期間制限に違反して派遣社員を受け入れた場合

事務所単位の期間制限に違反した派遣社員を受け入れた場合も違法派遣となります。具体的には下記の内容です。

  1. 抵触日の1ヶ月前までに過半数労働組合などから意見聴取を行わずに引き続き派遣社員を受け入れた場合
  2. 意見を聴取した過半数労働者が管理監督者であった場合
  3. 派遣可能期間を延長するための代表者選出であることを明示せずに選出した者から意見聴取を行った場合
  4. 使用者の指名などの民主的でない方法によって選出された者から意見聴取を行った場合

個人単位の期間制限を超えて派遣社員を受け入れた場合

個人単位の期間制限を超えて派遣社員を受け入れた場合も、違法派遣となります。具体的には、同一の派遣社員を3年を超えて同一の組織単位に従事させた場合です。派遣元が異なる場合であっても、同一の派遣社員であれば派遣期間が継続しているとみなされます。派遣先企業は、個人単位の期間制限に違反することを理由として、派遣元に対し派遣社員の交代を要求できます。

派遣の期間制限については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>派遣の抵触日のルールや派遣先企業が行うべき手続きは?図解で分かりやすく解説

偽装請負で受け入れた場合

労働者派遣法などの規定の適用を「免れる目的」で、請負や業務委託など労働者派遣以外の名目で契約を締結し、必要な事項を定めずに労働スタッフの役務の提供を受けた場合、偽装請負での受け入れとなります。この場合も労働契約申込みみなし制度の対象となります。

偽装請負などの目的の有無については、個別具体的に判断されます。書類上の契約形式ではなく、請負や業務委託の注文主と労働者との間に指揮命令関係があるなど、実態が偽装請負などの状態かどうかがポイントになります。

偽装請負については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>偽装請負の代表的なケースと問題点 企業の罰則・法的リスクや注意点を解説

労働契約申し込みみなし制度のポイント

労働契約申込みみなし制度では、どのような労働条件で労働契約を申し込んだとみなされるのでしょうか。また、どの時点で労働契約が成立するのか、制度のポイントに関して解説します。

申し込んだとみなされる労働条件

違法行為の時点における、派遣元と派遣社員間の労働契約上の労働条件(労働契約期間や賃金など)と同一の内容で申し込んだとみなされます。また、口頭合意や就業規則に定めるものも含まれます。派遣元に固有の労働条件(例えば資格取得手当など)については、使用者が変わっても社会通念上、承継することが相当であるものでなければ労働条件には含みません。

労働契約の成立時点

派遣社員が、制度に基づく労働契約の申込みに対して承諾の意思表示をした時点で、労働契約が成立します。なお、派遣先企業は違法派遣を受け入れていた最後の時点から1年間は労働契約の申込みを撤回できず、派遣社員はその間いつでも承諾の意思表示ができます。

違法派遣に該当しないために留意したいこと

違法派遣に該当してしまい、労働契約申込みみなし制度が適用され、派遣社員がこれを承諾すると、派遣先企業と派遣社員の間には労働契約が成立し、直接雇用する義務が発生します。人件費や教育費などのコストが増え、採用計画に変更が出てしまうこともあります。違法派遣にならないようにするためにはどのようなことに留意すればよいのでしょうか。

派遣にまつわる法律を熟知する

労働者派遣法や労働基準法、職業安定法など複数の法律により、人材派遣のルールは詳細に定められています。まずは派遣社員を受け入れる際に、派遣先企業が対応する範囲を明確化することが重要です。さまざまな事態に対応することを想定し、派遣元とこまめにコミュニケーションを取り、違法派遣にならないよう、法律を理解しながら業務を進めましょう。

労働者派遣法については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>【最新版】労働者派遣法の概要や改正、違反例や企業の注意点を解説

労働基準法については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>労働基準法とは?概要やルールを分かりやすくご紹介

職業安定法については、こちらでさらに詳しく説明しています。
>>職業安定法の2025年までの改正や企業が留意すべき点を分かりやすく解説

契約を明確化し派遣社員の権利を尊重する

契約内容を明確化することは非常に重要で、派遣社員のスムーズな業務の進行以外にも、コンプライアンスの遵守、紛争の予防、労働者の権利保護、企業の信頼性向上など、多くの面で効果が期待できます。派遣先企業は、契約を慎重に策定し、法令に適合させることが大切です。

労働契約申込みみなし制度についてよくある質問

ここでは、労働契約申込みみなし制度についてよくある質問とその回答を紹介します。

Q1.どのような場合に労働契約申込みみなし制度が適用されますか?

派遣先企業が、以下の5つのいずれかに該当する場合に、労働契約申込みみなし制度が適用されます。

  • 派遣禁止業務で派遣社員を受け入れた場合
  • 無許可・無届の派遣元から派遣社員を受け入れた場合
  • 事業所単位の期間制限に違反して派遣社員を受け入れた場合
  • 個人単位の期間制限を超えて派遣社員を受け入れた場合
  • 偽装請負で受け入れた場合

ただし、派遣先企業が上記に該当することを知らず、過失がない場合は適用されません。

Q2.派遣社員が承諾しなかった場合はどうなりますか?

労働契約申込みみなし制度が適用される派遣社員が、みなされた日から1年以内に何の意思表示も示さなかった場合は、直接雇用の労働契約は成立しません。

Q3.労働契約申込みみなし制度が適用された事例を教えてください

2021年11月4日に、兵庫県内で住宅建材を扱う企業で労働契約申込みみなし制度が適用される事例が発生しました。大阪高裁の判決により、20年以上にわたって偽装請負にあったことが認定され、雇用終了時から判決時点までの未払い賃金の支払いが命じられています。

労働契約申込みみなし制度の概要や派遣先企業への影響を理解する

労働契約申込みみなし制度は、派遣先企業によって違法派遣が行われた時点で、その派遣社員の雇用主である人材派遣会社との労働条件と同じ内容の労働契約を派遣先企業が申し込んだとみなす制度です。派遣社員を受け入れる企業は、労働者派遣法などの法令への理解を深め、どのような内容が制度の対象になるのかきちんと認識した上で、派遣社員を受け入れるようにしましょう。

労働契約申込みみなし制度の対象となり、派遣社員が直接雇用を申し込むことになれば、採用計画の変更が必要となる場合も考えられます。自社の運営にも影響を及ぼす可能性もあるため、違法派遣に該当しないよう、適切に管理することが重要です。

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監修者

HRナレッジライン編集部

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